シンガプーラの基礎知識

シンガプーラとは、サンスクリット語で「ライオンの町」を意味する単語で、今のシンガポールの由来にもなっている言葉です。
子猫のように小柄な体格でありながらも、アイラインに縁どられた大きな瞳に、シルクのような毛並みが美しく、芸能人にも多くの愛好家がいる、現在人気が急上昇の猫種です。
まずはシンガプーラの基礎知識から見て行きましょう。

歴史

シンガプーラの誕生には諸説ありますが、シンガポールの土着猫をアメリカ人のメドゥ夫妻が自国に持ち帰り、育種を進めた猫という説が有力です。
小さな体にセピア色の短毛が美しい猫でしたが、もともとはシンガポールの下水道でネズミ捕りをしていました。一部では、「ドレイン・キャット(排水溝の猫)」と呼ばれていた歴史もあります。

メドゥ夫妻は、1970年代初頭、赴任先の東南アジアで捨て猫だったシンガプーラを譲り受けます。1975年、任期を終えてアメリカに戻るときには、現在のシンガプーラのもととなる5匹の猫が一緒でした。
その後、メドゥ夫婦によってシンガプーラの育種が進められ、10年足らずの期間でCFA、TICAというアメリカの大きな血統登録機関に認められることとなりました。

シンガプーラの起源については、未だに最終決着がついておらず、メドゥ夫妻が所有していたバーミーズやアビシニアンとの交雑種ではないかという説も根強く残っています。
いずれにせよ、シンガプーラは「世界最小の猫」としてギネスブックにも公認されることで、世界中にその存在が知られることとなりました。

体高、体重

シンガプーラの体高は、25cmほど。体重は成猫でも2~3kgにしかならず、血統登録機関で認められている猫のなかでは「世界最小」サイズです。一方、現在ではアメリカでの育種の過程から、4~5kgまで成長する猫もいます。

<小型猫の体重比較>
・シンガプーラ 2~3kg
・マンチカン 3~4kg
・シャム 3~4kg
・アビシニアン 4kg
・ペルシャ 3~5kg

猫の平均的な体重は、4~8kgほど。ほかの小型猫と比べても、シンガプーラの小ささは際立っていますね。

平均寿命

「小さくて身体が弱い」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、平均寿命は10~15歳と、ほかの純血種と大きく変わるわけではありません。
いくつか注意すべき病気もありますが、日々の健康管理に気を遣うことで平均より長生きするシンガプーラもいます。

性格

まるで犬のような性格とも称されるシンガプーラ。小さな体とも相まって、集合住宅でも飼いやすい猫であると言えます。

■鳴き声が小さくおとなしい
集合住宅向きとも言える小さな鳴き声は、シンガプーラの特徴の一つです。基本的にはおとなしく、さほど運動量も必要としません。
広い飼育スペースも必要としないため、初心者でも飼いやすい猫種と言えるでしょう。

■とにかく甘えん坊で飼い主にべったり
シンガプーラの飼い主さんが共通して言うのは、「とにかく甘えん坊!」ということ。飼い主さんに構って欲しいあまり、パソコン作業を邪魔したり、トイレまでついてくるストーカー行為に走ったりと、甘えん坊エピソードには事欠きません。

■陽気な遊び好き
小さいながらも活発な一面も持ち合わせているシンガプーラ。高い場所も大好きで、家具の上から飼い主さんの肩に飛び乗るような驚異のアクロバット芸を見せてくれることもあります。

■寂しがりやで独占欲が強い
とにかく飼い主さんの傍にいることを好むシンガプーラは、お留守番が苦手です。長時間の留守番が、ストレスになってしまうこともあるほど。
また甘えん坊の裏返しか、飼い主さんに対する独占欲が強いため、多頭飼いにはあまり向きません。

■賢く人の言うことを聞く
頭のよいシンガプーラは、猫のなかでもしつけのしやすい猫です。好奇心旺盛で何にでも興味を示すため、よく一緒に遊び、よく話しかけ、頻繁にコミュニケーションを取ることで、お互いよきパートナーとなることでしょう。

とにかく人懐っこく甘えん坊なシンガプーラは、猫とのスキンシップを好む人におすすめの猫種です。小さな子どもや家族とは仲よくできますが、神経質で独占欲の強い部分もあるため、飼うときは、“1匹に最大限の愛情を注ぎこむ”のがいいでしょう。

毛色や肉球、瞳の色

シンガプーラの毛色は、「セピアアグーティタビー(アグーチセピア)」という淡いセピア色が基本。全身がシルクのように輝く毛で覆われており、光を反射してキラキラ光る様子は大変美しいです。
シンガプーラの被毛は、1本の毛に複数の色合いが混じった毛によって独特な模様が浮かびあがる「ティックド・タビー」。おなか側が白く、背中やしっぽの先端に向けて濃くなる色合いも特徴的です。

シンガプーラの肉球は、濃いピンク~薄いブラウンになることが多いようです。また瞳の色合いは子猫から成猫になるまでに何度も変わると言われており、シンガプーラの神秘性を高めています。

シンガプーラの子猫を迎えよう

人気の猫種と比べると、日本ではまだまだ見かけることの少ないシンガプーラ。子猫をお迎えするには、どんな方法が最適なのでしょうか。
ここでは、シンガプーラの価格相場から、子猫の探し方、飼育の準備までを詳しく説明します。

価格相場

シンガプーラの子猫の平均相場は、約22万円。純血種としては、やや高めな部類に入るかもしれません。大型猫と比べると1回に産む頭数が少なく、その希少性から高値で取引される傾向にあります。
また猫種としては小さな個体が好まれるため、成猫時の体重予想が小さい猫ほど高値が付くようです。

子猫をお迎えする方法

シンガプーラの子猫は、どこでお迎えするのがいいのでしょうか?
「ペットショップ」、「ブリーダー」、「里親制度」、それぞれのメリット・デメリットをよく検討したうえで、自分に合う方法を選びましょう。

①ペットショップ
多種多様な猫種が集まるペットショップ。いつでも気軽に猫を見に行けることや、猫の飼育に必要なグッズを揃えられることが大きなメリットです。ほかの猫種と迷っているときに両者を見比べたり、実際に触れてみたりして決めることができるのもポイントですね。

一方で、シンガプーラのようなやや珍しい猫種は、小さなペットショップの店頭ではなかなか出会えないもの。シンガプーラの子猫と出会うためには、事前の下調べや店舗に通い詰める根気が必要になるでしょう。
また、ペットショップ販売では月齢が低いうちから店頭に出ることも多く、それが猫にストレスを与える要因になっています。
なかには“悪徳ペットショップ”のような劣悪環境で猫を扱う店も存在するため、店選びにも十分注意が必要です。

②ブリーダー
シンガプーラの子猫をピンポイントで探すのであれば、直販しているブリーダーを探すのも一つの手です。
最近はWebサイトやSNS、ブログなどで情報発信しているブリーダーも多く、気になった猫舎に直接お問い合わせすることも可能です。シンガプーラはまだまだ繁殖頭数が少ない猫種のため、ペットショップや里親をしらみつぶしに探すよりかは、確実な方法と言えるでしょう。

優良ブリーダーが猫種にこだわって繁殖し育てた子猫は、健康で精神的に安定しており、飼いやすいです。特に初心者飼い主さんには、優良ブリーダーからのお迎えをおすすめしたいところです。

その一方で、いわゆる“悪徳ブリーダー”と呼ばれる儲け主義の業者も横行しています。近親での繁殖や劣悪な環境で飼育を行っているブリーダー、健康管理がいい加減なブリーダーは要注意です。
猫舎を見学する際は、飼育環境や猫たちの様子、資格の有無、ブリーダーの態度などにおかしな点がないか、しっかりチェックしましょう。

③里親制度
飼い主のいない猫の引き取りを考えている人には、里親制度がおすすめです。
全国には何らかの事情で保健所や個人宅で保護され、新しい飼い主を待っている猫たちがいます。そんな猫たちの命を救うのが里親制度です。
近年は「里親サイト」の動きも活発で、里親との出会いを待ちわびるたくさんの猫たちの様子をWeb上で見ることができます。

一方、シンガプーラの子猫や成猫が里親に出されることはごくまれです。また保護猫にはシンガプーラとほかの猫の交雑種も含まれているため、純血種を求める人には向きません。
運よく子猫と出会えても、競争率はかなり高めになることが多く、里親として選ばれるためには相応の飼育経験や知識が求められるケースも。
初心者さんにとって、里親制度はややハードルの高い方法と言えるかもしれません。

健康な子猫を見分けるポイント

はじめて子猫を飼うときには、できる限り健康で丈夫な子をお迎えしたいもの。
ブリーダーやペットショップで子猫と対面するときは、以下のようなポイントをチェックしましょう。

<子猫のここに注目しよう!>
■骨格…抱き上げたときに筋肉や骨格がしっかりしていることを感じられるか
■皮膚…赤みやただれ、フケが出ていないか
■被毛…毛ヅヤは良いか
■おなか…異常なふくらみはないか(※おなかだけ膨れている場合、寄生虫の恐れがあります)
■目…イキイキと輝いているか、涙や目ヤニで汚れていないか
■鼻…鼻水は出ていないか
■口…歯が汚れていないか、嫌な口臭はないか
■耳…耳の中が汚れていないか、嫌なニオイはないか
■肛門…排泄物で汚れていないか

飼い始める前に必要な準備

お迎えする子猫が決まったら、本格的に飼育の準備をはじめましょう。まずは子猫の飼育に必要なものを揃え、猫の成長に合わせたグッズを買い足すのがおすすめです。

<子猫のお迎え前に揃えたいグッズ>
■キャットフード

主に乾燥した「ドライフード(カリカリ)」と肉や魚の食感を残す「ウェットフード」の二つに分かれます。
子猫は成猫の倍近い栄養価を必要とするので、生後約1年までの間は子猫用のフードを与えるのが望ましいです。

ドライフードであれば、シンガプーラのような小さな猫でも食べやすいよう、粒の小さなものがおすすめ。消化にいいとされる「グレインフリー(小麦などのイネ科の穀物を含まない)」のフードや無添加フードも人気がありますが、猫の好みや体質、アレルギーの有無に合わせて適切なものを選びましょう。

■食器(エサ入れと水入れ)
猫がごはんを食べるためのエサ入れと、いつでも新鮮な水が飲むための水入れも大切なグッズの一つです。シンガプーラの体高に合わせて、食べやすい高さに調整できるエサ台があると便利ですね。

■ベッド
ラウンドタイプ、ドームタイプ、ハンモックタイプ……といったように、非常にバリエーションが豊富な猫のベッド。
子猫のうちは体調を崩しやすいため、保温性の高いものを選ぶといいでしょう。

■猫用トイレ、猫砂
トイレは猫の頭数より1つ多い数を準備します。オープンタイプ、ドームタイプ、自動洗浄タイプなど、トイレにもさまざまな種類がありますが、設置場所は猫の好みに合うものを選びましょう。

■爪とぎ
猫の必須アイテムである爪とぎにも、段ボールや綿、木材など、さまざまな材質や形状のものが存在します。なかにはキャットタワーのポールに爪とぎが付いているものや、猫がくつろげるベッドのような形をしているものまで。猫によっては使い勝手が異なるため、ぜひ色々と試してみることをおすすめします。

シンガプーラの飼い方

一般的な猫よりもかなり小さなシンガプーラですが、飼い方に違いはあるのでしょうか。
シンガプーラとの暮らしをより楽しく豊かなものにするために、シンガプーラの飼い方のポイントや、注意すべき病気について押さえておきましょう。

食事

猫の月齢や体重に合わせた量を、1日に4~6回に小分けして与えます。
シンガプーラは食欲にムラがあったり、好き嫌いがはっきり分かれたりすることの多い猫種です。食べムラがあるときは、ドライフードと嗜好性の高いウェットフードを併用し、十分な栄養を摂取させましょう。
市販フードでは、消化のよいグレインフリータイプや、無添加タイプ、低炭水化物・高たんぱくタイプがいいでしょう。少々値が張りますが、人間が食べられるレベルの原料を使ったヒューマングレードのキャットフードもおすすめです。

必要な運動量

家の中では活発に動き回るシンガプーラですが、必要な運動量は体格相応です。激しい運動は必要ないものの、室内でもストレス解消できるよう、十分なスペースを確保してあげましょう。
シンガプーラは高い所に昇ることも大好きです。キャットタワーを設置すると喜んで遊びますが、ときには高いところからジャンプしてしまうやんちゃな一面も。
思わぬ事故を防ぐためにも、猫が出入りする室内の家具は固定し、高いところには物を置かない習慣を付けましょう。

しつけのコツ

まるで犬のように人懐っこいシンガプーラ。とても賢く、飼い主の言うことをよく聞くところも犬と似ていますね。
厳しいしつけは必要ありませんが、トイレや爪とぎのしつけは子猫の頃からおこないましょう。

■トイレのしつけ
はじめは子猫にトイレの場所を教えることからスタートします。子猫が床を嗅ぎ回り、トイレをしたいような素振りを見せたら、すかさずトイレに連れて行って排泄を促します。
成功したら思いっきりほめてご褒美を与えることで、子猫はトイレでの排泄を学習します。
例え失敗してしまっても、叱るのはNGです。排泄物のニオイがこびりつく前にささっとキレイに掃除して、再度チャレンジしましょう。

■爪とぎのしつけ
猫が家具などを引っ掻く仕草を見せたら、しつけのチャンスです。爪とぎの場所まで子猫を連れていき、「ここでといでいいんだよ」と優しく教えます。
親猫がやってみせるように子猫の前で爪をといでみせたり、前足を手に取って爪とぎを引っ掻くように動かしたりするのも有効です。

日々のお手入れ

美しいセピアカラーの毛並みを維持するためには、家庭でのお手入れが重要です。ぜひ猫とスキンシップをとりながら、日々のお手入れを楽しんでくださいね。

■ブラッシング
シンガプーラは短毛種ですが、短い毛並みがびっしりと生えている分、抜け毛も多い猫種です。
通常は週に2~3回程度、換毛期には毎日ブラッシングを行いましょう。
シンガプーラには、抜け毛の除去に便利なラバーブラシと、毛ヅヤを整える獣毛ブラシを使うのがおすすめです。換毛期には、専用の抜け毛取りブラシを使ってみるのもいいでしょう。

■シャンプー
短毛種であるシンガプーラには、基本的にシャンプーは必要ありません。健康的な毛並みを保つためには、年に1回程度のシャンプーをおすすめします。
皮膚が弱い猫には、猫専用の薬用シャンプーや、オーガニックシャンプーのような低刺激タイプを選びましょう。

■爪切り
シンガプーラの爪切りは、2週間に1回程度が適切です。
お手入れの際にはペット用の小さな爪切りを使い、神経や血管を傷つけないように少しずつ切ります。自分でのお手入れが難しいときは、動物病院やプロのトリマーへの依頼も検討しましょう。

かかりやすい病気

遺伝子研究により、シンガプーラは遺伝子多様性が低いことが判明しています。猫種に由来する遺伝性疾患の発症性が高いので、注意が必要です。

①遺伝性溶血性貧血(ピルビン酸キナーゼ欠損症)
ピルビン酸キナーゼとは、赤血球の活動エネルギーを生み出す役割を担う酵素です。これが欠損すると、赤血球が破壊され、貧血状態に至ります。
研究の結果、シンガプーラやアビシニアン、ソマリといった遺伝多様性の低い純血種は、この病気にかかりやすいことが判明しています。

②肥大型心筋症
心臓の筋肉が内側に向かって厚くなり、心室を狭めてしまう症状です。進行すると、体に十分な血液が送れなくなり、心拍数や血圧が上がってしまいます。
肥大型心筋症は猫が抱える心筋症の6~7割を占めるとされています。猫の元気がなくなり、食欲が落ち、水を異常に飲むようになるのは、循環器関係が弱っているサインでもあります。

③進行性網膜萎縮
シンガプーラやアビシニアンに先天的に見られる目の病気で、網膜が委縮することで、動体視力や暗い場所での視力が衰える病気です。失明に至ることもある病気ですが、研究の成果では、タウリンの補給や腎臓への負担の軽減で発症リスクを下げられる可能性も報告されています。

遺伝性疾患のリスクはあるものの、健康で丈夫なシンガプーラは、平均寿命以上に長生きしてくれることもある猫です。
大切な猫と長く一緒に暮らすためにも、飼育環境や食べ物、運動や日々のお手入れに気を配り、ストレスの少ない健康な生活を心がけましょう。
 執筆者プロフィール
『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。

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