イタリアングレーハウンドの基礎知識

イタリアングレーハウンドとは、英語で「イタリアの灰色の猟犬」を意味します。ハウンド種のなかでも「サイト・ハウンド」と呼ばれる視覚を使って獲物を見つける犬に分類されますが、一体どのような歴史を持つ犬なのでしょうか。
まずは犬種の歴史や、体高・体重、平均寿命、性格などの基礎知識を紹介します。

歴史・ルーツ

イタリアングレーハウンドの祖先とされているのは、古代エジプトの王族に飼われていた小型のグレーハウンドです。遺跡に残された壁画にそれらしき犬の姿が見られるなど、犬のなかでもかなり古い歴史があることを示す証拠も存在しています。
小型のグレーハウンドは、エジプトからトルコ、ギリシャに渡り、紀元前5世紀頃になると古代ローマ(現在のイタリア)にもたらされました。以降、イタリアやヨーロッパの王族や貴族たちに寵愛され、絵画や調度品にその姿が描かれています。

18世紀後半になると、愛玩犬としてさらなる小型化が試みられるようになりました。近親交配を繰り返すことにより虚弱化してしまったイタリアングレーハウンドたちは、戦争の時代になると絶滅の危機に瀕してしまいます。
イタリアングレーハウンドが復活したのは、19世紀の初頭。アメリカに渡っていた個体とイギリスに存在した個体による交配が進められたことが契機となりました。
以降、世界の血統登録機関に認められ、日本でも人気犬種の一つとなっています。

体型(体高、体重)

イタリアングレーハウンドと言えば、他の犬種と比べてもかなり細身なスタイルが特徴です。長い首やまっすぐ伸びた足、引き締まった腹部をしており、マズルは先端に向けて細くとがった形をしています。

全身がしなやかな筋肉に覆われており、「ダブル・サスペンション・ギャロップ(前脚と後脚がそれぞれ揃い、宙に浮くように走る)」と呼ばれる犬種特有の走り方が特徴です。

耳の形は後方に反り返る「ローズイヤー」が一般的ですが、生まれたときから立ち耳のタイプや、成長するにつれて立ち耳になるタイプも存在します。

体高は成犬で32cm~38cm、体重は最大で5kgと、サイト・ハウンド種のなかでは最も小型とされています。体長は体高と等しいか、それよりわずかに短いのが特徴です。

平均寿命

イタリアングレーハウンドの平均寿命は13~15歳です。純血種の小型犬のなかでは平均~やや長めレベルと言えますが、飼育環境や健康状態によりもっと長生きする個体も多く存在します。

毛質、毛色のバリエーション

イタリアングレーハウンドの被毛は、極めて短いシングルコートです。決まった換毛期がなく、短い毛が抜けては生えてを繰り返します。同じシングルコートの長毛種と比べると、抜け毛が多いのも特徴です。
また、被毛の表面には光沢があり、艶やかなスムースコートをしています。撫でるとすべすべ滑らかで、イタリアングレーハウンドの触り心地に夢中になる飼い主さんも少なくありません。

毛色は犬種名にある通り「グレー」がポピュラーですが、他にもフォーン、レッド、ブルー、クリーム、ホワイト、ブラックといったバリエーションが存在します。
それぞれのカラーのパターンとしては、単色のソリッドカラーと、胸に白い模様(ホワイトマーキング)を持つものが認められています。
子犬の頃はブラックだったのが、成長するにつれてグレーに変わっていった、と言うように毛色が変わるケースもあります。

イタリアングレーハウンドの性格

イタリアングレーハウンドは、穏やかで優しい性格です。とても愛情深い犬で、家庭犬にぴったりと言えるでしょう。
また、犬でありながら猫のように気まぐれで、マイペースな性格と評されることもあります。一筋縄でいかない所も、イタリアングレーハウンドの魅力の一つです。

攻撃性が低い一方で、臆病で繊細な部分も持ち合わせています。何か嫌なことや怖いことがあると、対象から距離を置いたり、その場から逃げ出したりすることで自分の身を守ろうとします。
また、ストレスを溜めやすい性格でもあるため、環境の変化には十分注意をする必要があるでしょう。

もともとサイト・ハウンド(視覚狩猟犬)の血を受け継いでいるだけあって、活発で運動好きな一面もあります。跳ねるように走る姿が特徴的ですが、全速力で走ると時速50kmにもなるほど足の速い犬でもあります。

オスとメスを比べると、若干の性格の違いがみられるようです。
一般的に、オスはメスと比べて友好的な性格です。とても愛情深い代わりに、飼い主にくっついて離れない甘えん坊が多いのもオスの特徴です。
一方のメスは、オスと比べると自立心が強く、クールな印象です。飼い主の言うことを聞く従順さも、イタリアングレーハウンドの魅力です。

イタリアングレーハウンドの子犬を迎えよう

日本でも人気犬種のひとつに数えられるイタリアングレーハウンド。子犬を飼ってみたいと考えている人も多いのではないでしょうか。
健康な子犬をお迎えするために押さえておきたいポイントや、子犬の飼育に必要な準備を説明します。

子犬の価格相場

イタリアングレーハウンドの子犬は、平均21万円程度が相場です。ほかの人気小型犬種よりやや高めか、同程度と言えるでしょう。
一般的に、子犬の価格相場は月齢が低いほど高くなる傾向にあります。血統や毛色、欠点の有無などによっても左右されるため、平均価格はあくまで目安として見ておくのがよいでしょう。

子犬をお迎えする方法

イタリアングレーハウンドの子犬をお迎えする方法は、大きく3つ。ペットショップからお迎えする方法、ブリーダーからお迎えする方法、里親になる方法です。
それぞれのメリット、デメリットを理解したうえで、どこから子犬をお迎えするのかを検討しましょう。

①ペットショップ
はブリーダーのもとで繁殖された子犬や、市場経由で出回った子犬を販売するのがペットショップです。
営業時間内であればいつでも好きなときに子犬を見学し、抱っこさせてもらうこともできます。複数のペットショップを回れば、イタリアングレーハウンドの子犬と出会う可能性も高まるでしょう。
子犬の飼育に必要なグッズがひとそろい用意されているのも、ペットショップならではメリットです。

その一方、ペットショップの飼育環境が子犬にストレスを与えていることを指摘する声もあります。特に月齢が低いうちに親犬から離れた子犬は、精神的にも不安定で育てにくくなるというケースも少なくありません。
ペットショップからのお迎えを考えるときは、子犬の健康状態に問題がないか、見極める必要があるでしょう。

②ブリーダー
育種のプロであるブリーダーからお迎えする方法は、特に初心者飼い主さんにおすすめです。
ブリーダーによって親犬やきょうだい犬とともにのびのび育てられた子犬は、そうでない場合と比べて健康で育てやすくなる傾向にあります。真面目に繁殖に取り組むブリーダーであれば、イタリアングレーハウンド特有の飼育方法やしつけ方などに関する相談にも親身に答えてくれるでしょう。
子犬だけではなく、親犬の様子や飼育環境を見ることができるのも、ブリーダーならではのメリットです。

デメリットは、子犬の見学に予約が必要なこと。ペットショップのようにいつでも気軽に、というわけにはいきません。また近くにブリーダーがいないときは、遠出して子犬を見に行く必要があります。
さらにまれにではありますが、利益追求を優先し、劣悪な環境で繁殖を行っているケースもあります。

③里親
飼い主のいない犬を引き取り里親になる方法です。近年はインターネット上で里親を募集する「里親サイト」も普及しており、居住地や犬種など、さまざまな条件で犬を探すこともできます。
もしいい条件の犬が見つかれば、相場よりも安価に引き取ることができるのも里親制度のメリットです。また、不幸な犬の命を救うことは、社会貢献という面でも大きな意味を持つものです。

デメリットは、必ずしも希望のイタリアングレーハウンドが見つかるわけではないということ。特に月齢の低い子犬は、競争率が高くなる傾向にあります。
また里親になるためにはいくつかの条件を満たす必要があるため、初心者飼い主さんには少々ハードルが高いと言えるでしょう。

健康な子犬を見分けるポイント

すらっと細長い手足に、均整のとれたスタイルが美しいイタリアングレーハウンド。長い間一緒に暮らすパートナーを選ぶのですから、見た目以上に「健康で丈夫な体を持っているか」という点が大切です。
子犬を選ぶときには、実際に抱っこして以下のようなポイントをチェックしましょう。

<各部位のチェック>
 ①目…イキイキしているか、目ヤニが異常に出ていないか
 ②鼻…異常に鼻水が出ていないか
 ③口元…噛み合わせに異常はないか、嫌なニオイはしないか
 ④耳…耳垢、赤みやただれなど、異常な汚れやニオイはないか
 ⑤被毛、皮膚…異常な抜け毛や皮膚の異常はないか、毛ヅヤは良いか
 ⑥肛門…排泄物で汚れていないか
 ⑦体格…抱き上げたときに骨や筋肉が感じられるか、ぐったりしている様子はないか

子犬を飼い始める前の準備

短毛と皮下脂肪の薄さが特徴のイタリアングレーハウンドは、暑さや寒さを苦手とする犬種です。日本では原則、室内飼いが推奨されています。
子犬をお迎えすることが決まったら、さっそく飼育環境の準備を進めましょう。

■サークル、ケージを設置する
室内に子犬が安心して過ごせるスペースを用意します。サークルやケージは成長に合わせたサイズで、犬がかじっても大丈夫なものを選んでください。
設置場所としては、暖房や冷房が直接当たる場所は避けましょう。また臆病なイタリアングレーハウンドでも安心して過ごせるよう、騒音が少なく飼い主の目が届く場所がおすすめです。

■キャリーケースやクレートを準備する
中に子犬を入れて外出したり、寝床としても使用したりできるグッズです。外出に使う際は、子犬が外に飛び出ないよう蓋が閉まるものを選びましょう。
 
■ベッドを準備する
夏場は涼しく、冬場は暖かく眠れる犬用のベッドを用意します。特に冬の寒い時期には、体を冷やさないよう保温性の高いものを選びましょう。
犬用のベッドとしては、介護にも使えるマットタイプ、冬でも暖かいドームタイプなど、犬が使いやすいものがたくさん販売されています。

■トイレの準備
トイレのしつけは子犬の頃からスタートします。丸洗いできるプラスチック製のトレーと交換式のペットシートを用意しましょう。

■フードと食器
お迎えしたばかりのときは、もともと食べていたフードを用意するのが無難です。別のフードに買い替えるときは、子犬用として販売されているもので、成長に必要な栄養素が十分含まれているものを選びましょう。
また子犬が食べやすい大きさのエサ入れ、水入れも一緒に準備しておきましょう。

■寒さ対策用の衣服
イタリアングレーハウンドは、とても寒さに弱い犬種です。犬が凍えて体調を崩してしまわないよう、保温性のある衣服を用意します。
犬種の体格に合わせた「イタグレ用」の服も販売されていますので、好みのデザインを探してみるのも楽しいですよ。

イタリアングレーハウンドの飼い方

かわいい子犬のお迎えが決まったら、いよいよイタリアングレーハウンドとの生活がスタートします。
最後に、必ず覚えておきたい飼い方のポイントや、気を付けたい病気について説明します。

食事のポイント

イタリアングレーハウンドの食事は、朝夕の2回に分けて与えます。
月齢に合ったドライフードをベースに、ウェットフードや肉類、野菜類をバランスよく与えましょう。
デリケートなイタリアングレーハウンドは、ストレスで食が細くなることも珍しくありません。また、太りやすいタイプと痩せやすいタイプが存在します。
犬の体調に合わせて、食事の量や内容を調整しましょう。

必要な運動量、散歩の頻度・回数

イタリアングレーハウンドは、小さいながらも驚くほど足が速く、運動能力の優れた犬種です。特徴である美しいスタイルを維持するためにも、毎日の運動、散歩は欠かさず行いましょう。
散歩は毎日1~2回、距離にして1.5km~2km程度が理想です。また、気温の変化に敏感なので、外に出るときには暑さ・寒さ対策を万全にしておきましょう。

しつけのコツ

穏やかな性格で飼いやすいイタリアングレーハウンドですが、時に猟犬らしい扱いにくさが見られることもあります。また成犬になったときに噛み癖や吠え癖が付いてしまうと、周囲とのトラブルのもとになりかねません。
人や他の犬に対して、噛んだり無駄吠えをしたりしてはいけないこと、決まった場所にトイレをすることは、最低限必要なしつけとなります。

しつけのコツは、失敗しても叱らず、成功したら思いっきり褒めてあげることです。
神経質でデリケートな性格のため、強く叱ることは厳禁。失敗しても決して焦らず、根気強くしつけを続けましょう。

お手入れ方法(ブラッシング、シャンプー、歯磨き、爪切りなど)

短毛のシングルコートが特徴のイタリアングレーハウンド。健康ときれいな毛並みを保つためには、日々のお手入れが欠かせません。

■ブラッシング
イタリアングレーハウンドの毛は換毛期がないシングルコートですが、短い毛がパラパラと抜け落ちます。被毛を清潔に保つためにも、最低でも週に2~3回はブラッシングをしましょう。
短毛用のラバーブラシや、被毛のツヤ出しができる獣毛ブラシを使うのがおすすめです。毛が短いため、ガシガシとブラッシングすると皮膚を傷つける恐れがあります。力を入れず、優しくブラシを動かしてください。

■シャンプー
シャンプーの頻度は2週に1回~月に1回程度。それ以上多くても、少なくても皮膚トラブルの原因になってしまいます。軽い汚れであれば、蒸しタオルやシャンプータオルで拭うだけで清潔を保つことができますので、シャンプーは必要最低限にとどめましょう。

シャンプーするときは、必ず犬用のシャンプーを使い、ぬるめのお湯で洗います。シャンプーの薬剤が残らないようによくすすいだら、タオルでしっかり水気を取ってドライヤーをかけましょう。

■爪切り
犬の爪は毎日のお散歩で自然に削られていきますが、それでも追いつかないぐらいのスピードで伸び続けます。伸びた爪を引っ掛けてケガをしないよう、2週に1回程度で爪切りをしましょう。
犬は爪まで血管が通っており、“深爪”すると出血してしまいます。ペット用の小さな爪切りを使い、先の方から徐々に切り落としましょう。
家で爪切りが難しいとき、不安があるときは、トリミングサロンや動物病院にお願いするのもひとつの方法です。

寒さ・暑さ対策

皮下脂肪が薄く、被毛が短いという特徴から、寒さ・暑さに弱いイタリアングレーハウンド。とてもデリケートな犬種のため、日本特有の気温の変化により体調を崩してしまう恐れがあります。犬にとって快適な室温管理と、衣服での体温調節を行いましょう。

■室温管理
人間にとって快適な温度でも、イタリアングレーハウンドにとっては寒すぎる・暑すぎることは珍しくありません。
震えている、丸くなって動かないような様子が見られたら、寒さを感じているサインです。エアコンで室温を上げるとともに、衣服や毛布を使って体を温めてあげましょう。

■衣服の必要性
イタリアングレーハウンドにとって、衣服とは「暑さ・寒さ対策」、「ケガ対策」のうえで必要なグッズです。
冬場の散歩のときは、必ず防寒用の衣服を着せます。また室内にいても寒がることがあるため、動きやすく温かい衣服を着せてあげるといいでしょう。
夏場は服を着せる必要がないように思えますが、毛が短いイタリアングレーハウンドは直射日光が苦手です。日差しの強い日には衣服を着せて、直射日光が当たることを防ぐとよいでしょう。、また、クール素材の衣服では、熱中症を防止することも期待できます。

かかりやすい病気

イタリアングレーハウンドには、かかりやすいとされる犬種特有の病気や疾患がいくつか存在します。症状や予防方法についても正しい知識を持っておきましょう。

■淡色被毛脱毛症、CDA脱毛症
遺伝的な問題で、ブルーやフォーン、グレーの被毛が部分的に脱毛する病気です。毛色が薄くなるほど、また近親交配であるほど発症リスクが高まります。
遺伝的な病気のため予防は難しく、脱毛症状が見られた場合は衣服を着せて皮膚を保護する必要があります。

■骨折
四肢の骨が細いイタリアングレーハウンドは、骨折のリスクが高い犬種です。段差から飛び降りて骨折、抱いていた犬が落下してしまい骨折・・・というケースは少なくありません。
転倒や転落の恐れがある場所では遊ばせない、十分に運動をさせて筋肉を付けさせるといった対策が必要です。

■網膜剥離、白内障、緑内障
イタリアングレーハウンドの場合、眼にまつわる病気にも注意が必要です。これらの病気が進行すると、視界が狭まり、失明につながる恐れがあります。
眼球や目の周辺に異変が無いか、日常的にチェックする必要があるでしょう。

スタイリッシュで優雅なイタリアングレーハウンドと暮らそう

小型犬でありながら、美しく優雅なスタイルが印象的なイタリアングレーハウンド。実はさまざまなカラーバリエーションがあり、毛色によってさまざまな表情を見せてくれる犬種です。
興味がある人は、ぜひこの記事も参考にかわいい子犬を探してみてくださいね。
 執筆者プロフィール
『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。

イタリアングレーハウンドのブリーダーについて

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