犬は仮病を使う? そもそも「仮病」の意識はあるのか

抱っこされる子犬

犬も仮病を使うの?

この質問に対して、ここでは「はい」とお答えしておきます。しかし「仮病」という言葉は正しい表現とは言えず、腑に落ちないところがあります。
というのも、犬には「具合が悪いように見せよう」「病気のふりをしよう」という意識はないからです。

しかし何らかの理由があり、意図的に咳をしたり、震えたり、痛がっているような仕草をみせたりすることがあります。このような行動は、過去に経験した「飼い主さんの反応がよかった場面」を犬が覚えていて、同じ仕草を再現することで欲しい反応を引き出そうとするためであり、病気のふりをしているわけではありません。

ただ私たち人間にとっては「病気やケガをしているかような仕草」に見えるため、「仮病」と表現されてしまうのでしょう。

ほかにも、足を引きずる、びっこを引くなど、足に痛みがあるような仕草をみせることがよくあります。しかしこれらも、意図的ではあるものの過去の経験に基づき行っていることで、犬自身に「仮病」の意識はありません。

愛犬が突然びっこをひいたら……。どうしますか?

その動作がほんの一瞬であればともかく、おそらくほとんどの飼い主さんが獣医さんに相談されるのではないでしょうか。

しかし受診の際にはすでにおさまり、症状がみられないのであれば原因究明は難しくなります。
「家では足に痛みがあるような仕草をみせていたのに、いざ病院に連れてきたら症状が認められず、原因がわからない」
そうなると「しばらく様子を見よう」となるはずです。このようなことが2~3回繰りかえされると仮病を疑いたくなりますが、獣医学的に「仮病」と診断されることはありません。

「なにか病気を抱えているのか」、あるいは「仮病」なのかは、愛犬をじっくり観察している飼い主さんにしかわからないことであり、判断は飼い主さん次第となってしまうのです。

犬はなぜ仮病を使うの?

横たわるブルドッグ
犬が仮病を使うのには理由があります。
寂しい、甘えたい、おいしいものがほしい、構ってほしいなど、飼い主さんの気を引き、なんらかの要求を通したいと考えているときです。
「仮病」という言葉は適切ではありません。しかし犬は経験を通して学ぶことができ、ほしいものを手に入れるためには相手をだまそうとすることもある、とても賢い動物です。
犬は戦略的なウソをつくことができる」という論文も発表されています。

たとえば、「咳をしたときに飼い主さんがずっと抱っこをしてくれた」という経験が強く印象に残っていれば、忙しそうにしている飼い主さんの気を引き、抱っこをしてもらうために「咳をする」のです。
犬は咳が病気の症状であるとは理解していませんが、咳をしたときの飼い主さんの反応を求め、意図的に行うのです。

仮病が疑われる行動を繰り返す場合には、以下のようなことで思い当たることはないか考えてみてください。
コミュニケーションの時間は十分にとれていますか? 
最近お散歩時間が少ない、あまり構っていないなどということはありませんか?

犬は、自らの経験をもとに飼い主さんからの愛情を得るため、注目してもらうため、おいしいオヤツをもらうためなど、何らかの要求を通すために演技をすることがあるのです。

犬の仮病を見分ける方法はあるの?

寝ているパグ
獣医学的に「仮病」という診断はありませんので、仮病かどうか判断できるのは飼い主さんだけです。どこかケガをしたのか、なにか病気が潜んでいるのか、それとも仮病なのか。あらゆる可能性を探り、慎重に見分けましょう。

何度目の行動?

犬は経験をもとに行動します。つまり、たとえばこれまで一度もびっこを引いたことがないのであれば、真似や再現はできません。
愛犬が初めて足を引きずるような仕草をしたのであれば、本当に痛みや違和感を抱えていると考えていいでしょう。
反対に2度3度と同じ仕草を繰り返しているものの、受診時には症状が確認できない場合、またその後ケロッとしているのであれば、仮病の可能性が高いといえるでしょう。
仮病を疑う際には「はじめての仕草かどうか」が前提となります。

犬だけになったときの反応をみる

もし仮病と疑わしき仕草をみせたら……。部屋を出て、愛犬だけになった状態での様子を見てみましょう。お留守番カメラを設置しているご家庭であれば、モニターでチェックしてみるのもいいでしょう。

好きなものを見せて反応をみる

お散歩、ご飯、おやつ、おもちゃなど、普段愛犬が聞いて喜ぶ言葉を言ってみましょう。
差し出された好きなものに対し、うっかり痛がるのも忘れて反応しているようなら、仮病なのかもしれません。しかし痛みより楽しさが勝り痛みを忘れてしまっている可能性も否定できないので、決めつけず慎重に判断する必要があります。

もし愛犬の仮病が発覚したら……。

聴診器を咥えるシェパード
さて、もしびっこを引いたり、震えたり、咳をしたりしているのが仮病であった場合には、どのように対応すればいいのでしょうか。

叱らない

叱ってはいけません。
しかし褒められることでもありませんので、叱らず褒めず、大きなリアクションはせず、仮病を使ってもとくにいいことは起こらないと知ってもらいましょう

一緒にいる時間を増やす、コミュニケーションの時間を大切にする

愛犬の仮病らしき行動を目にし、コミュニケーション不足に気付く飼い主さんも多いのではないでしょうか。
気付きは大切です。これをきっかけに一緒にいる時間を増やす、一緒にいる時間にたくさん話しかける、お散歩時間を増やすなど、愛犬が仮病を使わなくてもいいように十分なコミュニケーションをとるようにしましょう

それでも治らない場合

どうしても治らない場合は必ず動物病院に相談にいきましょう。
仮病だと決めつけず、ケガや病気の可能性はないか、詳しく診てもらう必要があります。
ケガや病気ではなければ、仮病は問題行動として動物行動学の専門医にご相談されることをおすすめします。

まとめ

元気にかけまわるマルチーズ
仮病という表現は適切ではないけれど、犬は自分の好きなものを最大で手に入れるためには相手をだまそうとすることがあるとご紹介しました。

どこのお家でもわりとみられる光景「おいしいトッピングを加えてもらえるまでご飯を食べない」という行動も同じで、学習能力の高い犬ならではの「知恵」なのです。

愛犬の舌が肥えるという現象が起こりましたら、過去の経験にもとづき行動している賢い愛犬をじっくり観察してみてはいかがでしょう。愛おしさが増すに違いありません。
 執筆者プロフィール
No dog No life

特に牧羊犬が大好きです。
一番の関心事は「シニアわんことの暮らし」。
「人と動物の共生」「ワンヘルス」にも関心があり勉強中です。

動物愛護フェスティバル実行委員。
某県の災害時動物救護ボランティアチームに所属。
某県の動物愛護センターの登録ボランティア(おうちに帰れなかった犬たちの保護と譲渡のお手伝い)もしています。

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