犬のおならの原因は?

おならとは、消化管に溜まったガスが肛門から放出されることを指します。
おなかに溜まったガスの出口は、口かおしりのみ。口から出ればゲップで、おしりから出ればおならとなります。

ガスの溜まる原因は、大きく分けると2つ。1つは空気を飲み込んでること、もう1つは体内でガスが発生することです。
鼻から吸い込んだ空気は、肺に送られます。平常時にたくさんの空気を飲み込むことはあまりありません。
しかし、犬は緊張したり興奮したりすると、体温調節のために「パンティング」をします。犬がハァハァと口を開けて呼吸する(パンティング)場面を見ることは多いでしょう。このような口呼吸では、どうしても空気を飲み込んでしまうのです。

呼吸以外にも、食事のときに食べ物と一緒に空気を飲み込んでいます。ガツガツと吸い込むように食べる犬は多いです。
胃に空気が入ってしまうと、ゲップとして口から余分な空気は出ますが、腸へ流れたものはおならとして排出されます。

このように、おならとして排出されるガスは飲み込んだ空気がほとんどですが、なかには体内から発生したガスも含まれます。
また、消化の過程でも、ガスは発生します。消化には、たくさんの腸内細菌が関わっているため、腸内細菌のバランスや胃腸の動きに大きく影響されます。

犬のおならが増えたり、臭いが変わったりなどの変化は、腸内細菌や胃腸の調子を評価する一つのバロメーターとなります。胃腸の動きを弱めるストレスや、消化器疾患もおならの原因になるでしょう。

犬のおならは病気のサイン?

犬のおならが気になる場合は、もしかしたら胃腸にトラブルがあるかもしれません。
消化の過程にトラブルがあると、おならが増えたり、臭いが変わったりすることがあります。

食事内容を変えてないか、消化不良を起こしてないか、嘔吐や下痢がないか、便通やおなかの張りの変化をよく観察してください。
また、おならはほとんどが飲み込んだ空気なので、呼吸の様子を含めた日常の様子も注意しましょう。痛みによって呼吸数が増えるなど、呼吸の様子に異変があることもあります。

胃腸のトラブルが原因の場合、病気はたくさんありますが、症状としては下痢、嘔吐、腹痛などがみられます。

胃炎(慢性胃炎・急性胃炎)

言葉の通り、胃の炎症です。何らかの理由で胃の粘膜が刺激され、炎症を起こします。
嘔吐、食欲低下が一般的な症状です。吐血や黒色タール便などがあることもあります。胃腸の動きが悪くなるため、おならが増えたり、臭いに変化があったり、口臭が気になることもあります。

腸炎

小腸、大腸の炎症です。原因はさまざまで消化不良、中毒、ウィルス感染などがあります。
症状は嘔吐、下痢、食欲低下、発熱など。腸内細菌のバランスが崩れ、おならが増えたり、臭いが気になったりすることもあるでしょう。

膵外分泌不全

膵臓からの消化酵素が分泌されず、消化不良を起こす病気です。消化不良の症状としておならが出ることもあります。

消化管腫瘍

胃、小腸、大腸に腫瘍ができることがあります。
腸内環境の変化、消化不良、胃腸の通過障害などにより、嘔吐、下痢、食欲不振などが起こります。胃腸症状で気付くことが多いですが、おならの変化によっても、早期発見につながるかもしれません。

寄生虫感染

犬回虫、犬条虫、ジアルジア、コクシジウムなどの寄生虫が消化管に寄生します。
特に子犬は重症化しやすいので、家に迎えて間もない子犬は、寄生虫感染の有無の確認しましょう。成犬になると、症状は出づらく、無症状のため感染に気付かないことも多々あります。
寄生虫がいる場合、腸内環境の変化が起こります。おならが気になるときは、便検査を受けることをお勧めします。

自宅でできる犬のおなら対策は?

おならは生理的反応なので、止める必要はありません。
人の場合、我慢は身体に悪い、というのはよく言われる話ですよね。犬は我慢はしたくてもできないので心配ないかと思いますが、おなかにガスが溜まると少なからず不快感があります。おならを頻繁にするときは、対策を考えてみましょう

空気の飲み込みを減らす

パンティングをしてる場合は、原因を考えてみましょう。
短頭種や興奮しやすい性格の子などはある程度仕方ないですが、適切な環境を整え、過度に興奮させない環境をつくる努力をしてあげてください。

早食いになってないか

早食いの場合、フードの粒の大きさやお皿を変えると食べ方が変わることがあります。
水分を加えても良いと思いますし、早食い防止のお皿なども試す価値があると思います。

腸内環境の見直し

犬の腸内環境や体調は、現在の食事がもとになっていると言っても過言ではありません。
おならが多いときは、メインにしてるフードの見直しをするのが効果的です。原材料を見て、今とは異なる内容のものに切り替えて変化を見てください。
犬は肉食に近い動物なので、動物性たんぱく質の多く含まれた食事が良いと言われています。ただし、肉類を食べるとおならの臭いは強くなるかもしれません。
また、繊維質の消化は苦手です。野菜を与える場合はなるべく細かくしてあげると、消化不良を起こしづらいです。
体質によるところもあるので、一概にこれが良いとは言えませんが、愛犬の健康を考えたごはん選びが大切だと私は考えています。

腸内環境を整えるサプリメントを活用するときは、継続することが大切です。日々与えやすいものを選んでください。
また、ヨーグルトを与える方も多いと思います。人用の砂糖が入ってないプレーンのもので問題はありませんが、体が小さいので、量は気を付けてください。
体重5kgの小型犬であれば、10分の1以下、ティースプーン1杯以下がひとつの目安でしょう。

おなら以外で犬のおしりが臭いときは?

おならをしていないのに、あれ? 臭いな……と感じたとき。もしかすると、肛門腺が出てる可能性もあります。
一度嗅いだら忘れられない独特の臭いなので、「あ、肛門腺が出たな……」と、すぐにわかります。

肛門から分泌液が出るのですが、肛門腺が溜まったり、分泌液が出たりすることは、生理的なもので異常ではありません。
しかし、強烈なにおいがあり、溜まってくるとおしりを舐めたり、かゆがって気にしたり、地面にこすりつけたり、場合によっては炎症や破裂などトラブルの原因になることもあるので、お手入れとして定期的に「肛門腺絞り」を行います。
分泌液がうまく排泄できなくなった結果、肛門腺破裂で来院する子は少なくありません。
繰り返してしまうことも多いので、一度なった場合は頻繁に肛門腺のチェックをし、再発に気を付けてあげてください。

肛門腺絞りのやり方は、まずしっぽを上に持ち上げます。
そして、時計の4時と8時の位置に肛門腺があるので、時計の真ん中に当たる肛門へ分泌物を絞り出すようにすると肛門腺が絞れます。肛門腺はサラッとしていたり、泥状だったりと個体差があります。自宅の場合は、シャンプー前にお風呂場で行うことをお勧めします。

意外と難しいため、コツが掴めるまでは、病院やトリミングサロン、ペットショップなどでお願いする方も多いです。
私たちプロがやっても難しい子もいますので、自宅でチャレンジしてできなかったら、プロにお願いすると良いでしょう。
そのときに肛門腺が出たか、出ないか、どんな状態だったか、ホームケアのアドバイスを一緒にもらって、再度自宅でチャレンジしてみても良いかもしれません。

まとめ

犬のおならは、病気のサインかもしれません。
気になったら病院に行って診察・検査を受けることをお勧めしますが、何らかの初期症状であることも少なくなく、そのときは検査をしても原因がわからないかもしれません。
異常がなかった場合、診てもらったから大丈夫、と安心してしまうと危険です。症状が続く場合、他の症状がある場合は、再度受診するようにしてください。
 執筆者プロフィール
獣医師・トリマー・ドッグトレーナー / ペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。

現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。
毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。

プライベートでは一児の母。愛犬はシーズー。
家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています。

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