犬の狼爪(ろうそう)ってなに?

グレートピレニーズ
犬の肉球マークを思い浮かべてみてください。指の数は4つです。
しかしそれは「地面につく指」というだけで、実は犬の前足には5本の指がついています。肉球マークに描かれていない指、それが狼爪です。

前肢の狼爪と後肢の狼爪

前肢についている狼爪と後肢の狼爪、どちらも「狼爪」、英語では「デュークロー」と呼びます。しかし厳密にいうと同じではありません。
前肢の狼爪(デュークロー): 前肢の内側にあり、4本のほかの指より高い位置についている親指
後肢の狼爪(デュークロー): 後肢に生じる余剰のあし指(余剰趾)


後肢の狼爪については、JKC(日本ケネルクラブ)犬種標準書ではさらに、「ふつう3~4日で切除するが、グレートピレニーズのように切除しない犬種もある」と書かれています。

前肢の狼爪の役割

愛犬の様子をあらためて観察してみてください。前肢の狼爪を使っているシーンを目にするのはそう難しいことではありません。
歯磨きガムのような長い食べ物をかじっているときは、狼爪を器用に使って食べ物を支えます。
頭や顔のかゆいところを前肢で掻くときも、狼爪を使っているはずです。

後肢の狼爪の役割

前肢の狼爪と違い、愛犬の後ろの足の狼爪は見つけられない飼い主さんが多いのではないでしょうか。
その場合は、生まれつきなかったか、持って生まれたがすぐに切除されたかの、どちらかになります。
後肢の狼爪は、滑りやすくゴツゴツした岩場を登り降りする際に必要だったといわれています。もし役割がそれだけであれば、いま後肢の狼爪を持っているワンちゃんでも、舗装された道をお散歩する家庭犬であれば使っているシーンを確認することはできないかもしれません。

後ろ足の狼爪がある犬とない犬がいる理由

顔をかくシベリアンハスキーの子犬
前肢の狼爪はすべての犬についています。
長毛のワンちゃんでしたら毛の中に隠れているのかもしれません。毛をかき分けて探してみてください。
見当たらない場合は、犬種標準(スタンダード)にそって、ブリーダーにより生まれてすぐに切除されたということになります。

後肢の狼爪は生まれつきある犬とない犬がいる

すべての犬に前肢の狼爪がついているのに対し、後ろ足は個体によります。
生まれつき持たない子がおり、またついていても切除されるケースが多く、いずれにせよ飼い主さんのもとへやって来る頃には、ついていない子がほとんどといっていいでしょう。

狼爪の除去については議論があり、国によっては認めていないところもあります。
しかし今回は動物愛護の観点ではなく、現在日本で暮らす犬たちの狼爪事情と、スタンダードとして明記されている狼爪について解説します。

生まれてすぐに切除する理由

「犬種標準に合わせる」ことをブリーダーが選択した場合、ブリーダーまたはブリーダーに依頼された獣医さんによって切除が行われます。

日本にはJKC(日本ケネルクラブ)による、繁殖指針となる犬種標準があり、これらはFCI(国際畜犬連盟)が定めたものがベースになっています。
このほかにAKC(アメリカのケネルクラブ)が定める犬種標準もあり、繁殖や世界的ドッグショーの基準となっています。

JKC(またはFCI)とAKCのスタンダードは、同じではありません。
日本でも良く知られる人気の犬種をあげながら、両ケネルクラブが定める狼爪スタンダードを紹介していきます。

AKCとJKCのスタンダード

トイプードルAKC「前肢の狼爪は除去しても良い」、JKC狼爪についての記載なし
パグ AKC「後肢狼爪は除去すべき」、JKC「前肢の狼爪は何の機能も持たないが除去されてはならない」
ボーダーコリーAKC「前肢と後肢の狼爪は除去しても良い」、JKC記載なし
ジャーマンシェパードAKC「後肢狼爪は除去すべき」、JKC記載なし、日本警察犬協会「狼爪は大抵後脚にみられて、誕生第一日目に除去しなければならない
シベリアンハスキーAKC「後肢狼爪除去すべき」、JKC「前肢の狼爪は除去する、後ろ足にある場合は取り除かなくてはならない」
シェットランドシープドッグAKC「後肢狼爪は除去すべき」、JKC記載なし
ヨークシャーテリア AKC「後ろの狼爪は除去すべき、前は除去しても良い」、JKC記載なし
ウェルシュコーギーペンブロークAKC「後肢の狼爪は除去すべき」、JKC記載なし
ウェルシュコーギーカーディガンAKC「前も後ろも除去すべき」、JKC「すべてのデュークローは切除しなければならない」
ポメラニアンAKC「前も後ろも除去してよい」、JKC記載なし
チワワAKC「前も後も除去してよい」、JKC「後ろ足のデュークローは望ましくない」
フレンチブルドッグAKC「前肢の狼爪は除去してもよい」、JKC「フレンチブルドッグはうまれつき後ろ足のデュークローがない」
ミニチュアピンシャーAKC「前も後ろも除去すべき」、JKC記載なし
ゴールデンレトリバーAKC「前肢狼爪は除去しても良い」、JKC記載なし
柴犬AKC「狼爪の除去は任意」、JKC記載なし
シーズーAKC「前も後ろも除去してよい」、JKC記載なし

※順不同

後ろ足の狼爪がスタンダードの犬種

後ろ足に狼爪を持って生まれ残すことをスタンダードとする犬種も、少ないですがいます。
ブリアードJKC「後ろ足、2本のデュークローの保持が求められる。デュークローは親指を形成し、爪がある状態で十分離れており、比較的足に近い」
グレートピレニーズJKC「後ろ足には2本のしっかりとしたデュークローがある。両前足には1本または2本のデュークローがある」

狼爪が2本

狼爪を2本ずつ持って生まれる子がおり、それをスタンダードとして望ましい姿とされる犬種がブリアードやグレートピレニーズです。
2本ずつ、つまり指は6本あるということです。
2本ずつのデュークローを求められていない犬種だとしても、先祖返りや隔世遺伝で6本指の子が生まれてくるのは不思議なことではありません。

狼爪が残っているときは切除したほうがいい?

ブリアード

後ろ足に狼爪が残っている場合

ブリーダー判断で切除されなかったか、雑種、または保健所等から譲り受けた子などには、狼爪が残っている可能性は十分にあります。異常なことではなく困ることもありません。しかしつきかたによってはぶらんぶらんした状態で、見ていて不安を感じる飼い主さんはいらっしゃるかもしれません。
どうしても気になるときは動物病院に相談しましょう。

避妊手術等のときに一緒に切除する方法も

獣医さんからみても切除したほうがいいということになれば、全身麻酔のもと切除手術が行われます。
とはいえ狼爪切除だけの手術というのは考えにくく、避妊/去勢手術などほかの手術と一緒に行われることになります。

簡単な手術ではありません。
本当に切除が必要なのか、納得いくまで獣医さんと話し合いましょう。

犬の狼爪の注意点

爪を切られるラブラドールレトリーバー
狼爪の存在を知らなかったり忘れたりで、爪が伸ばしっぱなしになり、ひっかけてケガをさせてしまうことがないよう気を付けましょう。

注意すべきことはこの一点につきると思います。
大切なのは、犬には狼爪があるという事実と、自分の愛犬には狼爪がついているのかいないのかを知ることです。

まとめ

ダルメシアン
私(筆者)の祖父が若いころに飼っていたダルメシアンは、後ろ足の狼爪を2本ずつ持つ、元気な男の子でした。
後ろ足の指が6本ですので、名前は「ロク」。
6本指がはっきり写っている写真は残っていませんが、名前の由来とともに家族の記憶に強く残っている子です。

みなさんも今日は愛犬の愛らしい手に触れ、指が何本あるか、狼爪はついているか、ぜひ観察してみてください。
 執筆者プロフィール
No dog No life

特に牧羊犬が大好きです。
一番の関心事は「シニアわんことの暮らし」。
「人と動物の共生」「ワンヘルス」にも関心があり勉強中です。

動物愛護フェスティバル実行委員。
某県の災害時動物救護ボランティアチームに所属。
某県の動物愛護センターの登録ボランティア(おうちに帰れなかった犬たちの保護と譲渡のお手伝い)もしています。

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