パピヨンの基礎知識

パピヨンとは、フランス語で「蝶」のこと。耳の飾り毛が蝶の羽のように見えることから、その名が付けられました。別名「バタフライ・スパニエル」とも呼ばれます。
まずはパピヨンの基礎知識として、歴史や犬種の特徴、性格、毛色のバリエーションについて解説します。

歴史

パピヨンの祖先となった犬種は、スパニエルの一種である「トイ・スパニエル」です。
イタリアで繁殖されていた犬が、16世紀フランスに広まり、その優雅な見た目から王家や貴族の人々から愛されるようになりました。この時代のパピヨンは、耳よりも尻尾の飾り毛に注目されていたようです。
19世紀になると、ベルギーでもパピヨンが繁殖されるようになります。ベルギーでは、現在のように大きく広がった立ち耳を持ち、小型化したパピヨンが確立され、以降愛玩犬として諸国に広まっていくこととなったのです。

犬種の特徴

パピヨンは、愛玩犬として繁殖されてきた小型犬です。
ジャパンケネルクラブ(JKC)によると、パピヨンのスタンダードは体高28㎝以内が望ましいとされています。
体重は平均2~4kgで、トイプードルとほぼ同じか、やや小さめの体格をしています。

平均寿命

パピヨンの平均寿命は、13~15歳です。犬のなかでは、やや長寿に分類されます。
小さな体のパピヨンですが、飼育環境や健康状態によっては、20歳近く生きる個体もいます。

性格

貴族の愛玩犬として繁殖されてきた影響もあってか、優雅で気品のあるパピヨン。その性格は、「聡明」、「友好的」、そして「警戒心が強い」と言われています。

①聡明
パピヨンは犬のなかでも賢く、飼い主の言うことをよく理解します。物覚えがいいため、しつけもしやすい犬種です。子犬の頃からしっかりしつけを行えば、最良のパートナーとなってくれるでしょう。
頭がよいパピヨンは、いたずらにも知恵が回ります。叱るときはしっかり叱らないと、どんどんエスカレートしてしまうこともあります。

②友好的
パピヨンはほかの犬に対しても友好的で、誰とでも仲よくできる犬です。多頭飼いしたい人にもおすすめの犬種と言えるでしょう。

③警戒心が強い
小さな体のパピヨンは、怖がりで物音に敏感な一面があります。警戒心が強く、突然の来客に反応して吠えるようなことも。
無駄吠えも多い傾向にあるため、しつけでトレーニングする必要があるでしょう。

毛色のバリエーション

パピヨンの被毛のバリエーションは実にさまざま。JKCでは、ホワイトがベース(体の大半が白色が望ましい)になっていれば、すべてカラーがスタンダードとして認められます。
「ホワイト×他のカラー」でバリエーションが決まりますが、大きく分けると、2色の被毛を持つ「パーティーカラー」、3色の「トライカラー」に分類されます。

〇パーティーカラーのバリエーション
ホワイトをベースに、顔、耳、腰やお尻回りに差し色が入ります。差し色の種類は、ブラック、ブラウン、セーブル(明るい茶色)、レモン(セーブルよりも更に明るい)、レッド(赤みのあるブラウン)と、さまざまです。
※ホワイト一色はミスカラーとされ、スタンダードとして認められていません。

〇トライカラーのバリエーション
ホワイトがベースになるのはパーティーカラーと同様ですが、トライカラーの場合は2色の差し色が入ります。
パピヨンのトライカラーは、ブラックとブラウンが入る「クラシックトライ」と、ブラック、セーブルは入る「ハウンドトライ」の2パターンです。

パーティーカラー、トライカラーいずれの場合でも、額の部分に「ブレイズ」と呼ばれる白線が入るものが望ましいとされています。

パピヨンの子犬を迎えよう

「パピヨンの子犬を迎え入れたい!」と考えたとき、どんな点に気を付ける必要があるのでしょうか?
ここでは、パピヨンの子犬の価格相場やお迎えの方法、子犬を選ぶポイントについて説明します。また、子犬を迎える際に必要な準備についても解説しますので、パピヨンを飼いたいと考えている人はチェックしてくださいね。

価格相場は約18万円

パピヨンの価格相場は、チワワやトイプードル、ダックスフンドといった他の人気犬種とほぼ同じか、やや安めの価格相場です。
パピヨンの子犬はチワワやトイプードルほど多く繁殖されているわけではありませんが、専門のブリーダー犬舎やペットショップが身近にあれば、子犬を探すことはそれほど難しくありません。

パピヨンの子犬を迎える方法

パピヨンの子犬を迎えるためには、「ペットショップで購入する」や「ブリーダーから購入する」、「里親制度を利用する」という3つの方法があります。
それぞれの方法にメリット・デメリットがありますので、よく考えて自分に合った方法を選んでださい。

①ペットショップで購入する
比較的誰でも足を運びやすく、手軽に犬を見学できるのがペットショップです。
パピヨンを取り扱っているかどうかは、あらかじめ近くのショップに問い合わせておくとよいでしょう。もしその店舗にいない場合は、近隣の店舗から取り寄せてもらえることもあります。

<メリット>
・いつでも気軽に犬を見に行ける
・パピヨンと他の犬種を比べることができる
・一緒に必要なグッズを購入できる

<デメリット>
・子犬の飼育管理が悪く、健康状態や精神面にリスクを抱えている場合がある
・店員がパピヨンのスペシャリストではない場合が多い


②ブリーダーから購入する
専門ブリーダーは、言わばパピヨンのスペシャリスト。豊富な知識と経験を持ち、健康で優良な子犬を繁殖しています。
日頃からたくさんのパピヨンを見てきていることから、子犬を選ぶときや、飼育で困ったとき等、初心者飼い主さんの強い味方になってくれるケースも多いでしょう。
中には悪徳ブリーダーと呼ばれる業者も存在しますので、事前にネットの口コミ等を調べておくと安心です。

<メリット>
・健康なパピヨンの子犬が手に入りやすい
・パピヨンの知識豊富なブリーダーから、飼育等のアドバイスがもらえる
・犬の繁殖環境や飼育状況が見学できる
・兄弟犬や親犬も見せてもらえることがある
・兄弟犬とともに親元で育てられた子犬は、精神面も安定しているとされる

<デメリット>
・人気のブリーダーの場合は、次の子犬が産まれるまで予約待ちになることがある
・気になったブリーダーが遠方の場合は、交通費や移動時間がかかる
・中には悪徳ブリーダーの存在も。特に初心者飼い主は要注意!

③里親制度を利用する
元の飼い主に捨てられたり、事情があって飼えなくなったりしたパピヨンの「里親」になる方法です。多くは各市町の保健所や動物愛護センターのホームページや譲渡会で犬の情報を知ることができます。

<メリット>
・生体価格がほぼかからないため、初期費用が抑えられる
・殺処分されるはずだった犬を救うことができる
・確率としては高くないが、希望のパピヨンの子犬が見つかることもある

<デメリット>
・純血のパピヨンの子犬に限定して探すことが難しい
・犬が虐待等を受けて、体や心に傷を負っていることがある
・里親になるための条件を満たさない場合は、犬を譲ってもらえない

健康な子犬を見分けるポイント

お迎えしたパピヨンとは長く一緒に過ごしたいものですよね。
なかには体が弱かったり、遺伝的疾患を抱えていたりする子犬もいますので、子犬選びは慎重に行う必要があります。
初心者飼い主さんは、最低でも以下のようなポイントをチェックしておきましょう。

<子犬をチェックするポイント>
 〇目…目に傷はないか。大量の目ヤニが出ていないか
 〇鼻…鼻水が出ていないか
 〇口、歯…上下の歯がかみ合っているか、嫌な口臭がしないか
 〇耳…茶褐色の耳垢が付いたり、耳から臭ったりしないか
 〇被毛…ミスカラーはないか、毛ツヤはよいか、体から異臭はしないか
 〇四肢…元気に動き回っているか、ぐったりした様子はないか
 〇皮膚…ただれや炎症がないか
 〇肛門…肛門の回りが排泄物で汚れたりしていないか
 〇体格…痩せすぎていたり、太りすぎていたりしないか

パピヨンの子犬を選ぶときには、必ず抱っこして各ポイントをチェックするようにしましょう。そして少しでも「おかしいぞ?」と思うポイントがあるときは、必ずブリーダーや店員に確認することをおすすめします。

パピヨンの子犬を飼うための準備

子犬を選んだら、次に考えたいのは子犬を迎える準備です。具体的には、子犬が快適に過ごすための環境作りや、適切な飼育環境作りが必要になります。

①子犬が快適に過ごせる環境作り
ブリーダーやペットショップからパピヨンの子犬を迎える場合は、生後2~3カ月から半年にかけての場合が多いですが、この時期の子犬は成犬以上に環境の変化に敏感なものです。
室温は適切か、安心して眠れる寝床があるか、ケージ内でケガをする可能性がないかなど、パピヨンの飼い主として飼育環境には気を配る必要があります。

②子犬の飼育に必要なグッズを揃えておく
子犬が過ごすサークルやクレートの他にも、さまざまなグッズが必要になります。各グッズは小型犬であるパピヨンの体のサイズに合ったものを選びましょう。
また、子犬が環境になれるまでは、ごはんはそれまでブリーダーやペットショップで食べていたものを与えてください。「子犬用」として販売されているものは、栄養価が高く、子犬の成長に必要な成分が豊富に含まれていることが多いです。

<最初に揃えておきたいグッズ>
・子犬に合うペットサークルやケージ
・子犬に合うクレートやキャリーバッグ
・布団、ベッド
・子犬用のドッグフード
・餌台
・水入れ
・トイレ用品(トイレトレー、ペットシーツ)

<さらに買い足しておきたいグッズ>
・子犬のサイズにあった服(特に冬場)
・おもちゃ
・しつけ用のおやつ
・歯磨きグッズ
・首輪やリード(お散歩デビュー前から徐々に慣らします)

パピヨンの飼い方

室内犬に適しているパピヨンですが、具体的にはどのように飼うのが望ましいのでしょうか。
パピヨンの健康のために押さえておきたい食事や運動のポイント、正しいお手入れ方法、かかりやすい病気について解説します。

食事のポイント

パピヨンに与える食事は、「成犬であれば1日2回、決まった時間に」が原則です。月齢や体のサイズに合った量を調整し、食べさせ過ぎないのがポイントです。
フードは骨格をサポートするカルシウムやリン、被毛や皮膚を美しく保つビタミン、ミネラルを含むものがよいでしょう。
市販されているフードのなかには、パピヨン専門として販売されているものもあります。

<パピヨンのフードを選ぶポイント>
①必要な栄養素がしっかり含まれているもの(骨を作るカルシウムやリン、美しい毛並みや健康な皮膚を保つビタミン、ミネラル等)
②小さなパピヨンでも食べやすい小粒のもの
③余計な添加物やアレルギー物質が含まれていないもの

必要な運動量、散歩の頻度・回数

細く小さな体とは裏腹に、活発で動き回ることが大好きなパピヨン。室内にいるときでも、じっとしていることが少ない犬かもしれません。
室内でたっぷり遊んであげるのとは別に、1日1~2回程度は散歩に連れていきましょう。
時間は1回あたり15分が目安ですが、犬の体力に合わせて時間や距離を調整してください。
運動不足や室内でのストレスを解消するためにも、できる限りパピヨンが満足するぐらいの運動量を確保しましょう。

しつけのコツ

パピヨンは、飼い主の言うことを聞ける賢い犬種です。子犬のうちからしつけを行うことで、ぐんぐん物事を吸収していきます。
遊びも大好きな犬ですから、おもちゃや犬の知育玩具を使って遊びながらトレーニングするのもよいでしょう。

一方、このような賢さは、裏を返せば飼い主の態度次第でわがまま放題に育ってしまう可能性があるとも言えます。
やや気が強い気質がある個体に対しては、飼い主が言いなりになるようなことがあってはいけません。飼い主が毅然とした態度で接したほうが、結果的に犬を安心させたり、精神を安定させたりすることに繋がります。

清潔に保つためのお手入れ方法

パピヨンは、耳の飾り毛をはじめとした長い被毛を持つ犬種(長毛種)です。換毛期のないシングルコートと、換毛期に下毛が抜けるダブルコートの個体がおり、どちらもスタンダードとして認められています。
しなやかな被毛を保つためには、日々のお手入れが欠かせません。

①ブラッシング
シルクのように美しい長毛を維持するためには、毎日のブラッシングが必要です。
まずはスリッカーブラシで全体の毛のもつれを解いてから、コームで毛流れを整えます。
耳回りの毛は無理に引っ張ると痛がる部分です。一束ずつ手に取りながら、やさしくブラシをかけましょう。
ブラッシングに使うブラシは、ハードタイプ、ソフトタイプを使い分けるのがおすすめです。

<パピヨンにトリミングは必要?>
パピヨンの場合、トイプードルやヨークシャーテリアのように、定期的なトリミングは必要ありません。
夏場にパピヨンをサマーカットする飼い主さんもいますが、パピヨンの豊かな長毛は、一度バリカンで刈ると毛質が変わってしまったり、刈った部分が伸びにくくなってしまったりすることがあります。
トリミングをするのであれば、肛門回りや耳の中のムダ毛、肉球回りにはみ出した毛を切ることに留めておき、あとはブラッシングで毎日ケアするのがよいでしょう。

②シャンプー
パピヨンは比較的体臭が少ない犬種です。よって、ひどく汚れたりしない場合は、シャンプーは月に1回程度で十分です。
シャンプーをする際は、全身の毛をブラッシングで解いてからやりましょう(毛がもつれたままのシャンプーは、被毛を痛める原因に)。
シャンプー後はよく泡を流し、ドライヤーで完全に乾かし、コームで毛流れを整えれば完成です。
自分で洗うのが難しいときは、月に1回程度を目安にトリミングサロンにお願いするとよいでしょう。

③歯磨き
犬の口腔ケアで注意したいのが、黒くこびりつく歯石です。歯石は口臭の原因になるものですが、パピヨンのような小型犬の場合、一度歯に歯石が付着してしまうと、キレイに取り除くのが困難になります(動物病院で歯石を除去する場合、全身麻酔で犬の体に負担をかけることになる場合も)。
そうならないためにも、日々の歯磨きに気を配りましょう。
歯磨きを嫌がらない子に対しては、食後に犬用の歯磨きでブラッシングを。口周りを触られることを嫌がる子に対しては、遊びながら歯の汚れを取る「デンタルガム」や、フードに混ぜて使うタイプの歯磨き粉が有効です。
いずれにせよ、子犬の頃から歯磨きに慣れさせておくのが望ましいです。

④耳掃除
大きく広がったパピヨンの耳を清潔に保つためには、週に1~2回程度の耳掃除を行う必要があります。
耳の内側の余計な毛は除去し、耳の内側やふちの部分を耳クリーナーで優しく拭き取ります。
綿棒の使用は、デリケートな犬の耳を傷つけてしまう恐れがあるため、あまりおすすめできません。耳クリーナーを含ませた脱脂綿やコットンを用意しましょう。

⑤涙焼け対策
パピヨンは、目ヤニがたくさん付着することで、目の周りの被毛の色が褐色に変わる「涙焼け」を起こしやすい犬種です。
できるだけ毎日ケアして、キレイな被毛を保つことが望ましいです。
お手入れのやり方は、濡れたコットンやガーゼのような柔らかい布で、優しく目の周りを拭き取るだけです。
ゴシゴシと強く擦りすぎないよう、注意しましょう。
また、市販の涙焼け防止フードを食べさせるのも、対策のひとつです。

こんな病気に注意

パピヨンは基本的には丈夫な犬ですが、体格や遺伝的性質から、いくつかかかりやすいとされている病気があります。

〇膝蓋骨脱臼(パテラ)
その名の通り、膝の皿が脱臼してしまう症状で、先天的なものと後天的なものがあります。
別名「パテラ」とも呼ばれ、パピヨンのような小型犬に多く発症します。
後天的なパテラの原因には、高所からの飛び降りによる関節へのダメージが挙げられます。足が滑りやすいフローリングには滑り止めのシートやカーペットを敷くと、パテラの防止に繋がります。

〇アレルギー性皮膚炎
アレルギー物質により引き起こされる皮膚炎です。エサからくるもの、外部からアレルギー物質を吸引して起こるもの、アレルゲンに触ってしまって生じるものと、原因もさまざまです。

〇白内障
シニア犬の発症リスクが高い病気です。目の水晶体が白く濁ることで、視力が失われていきます。白内障が進行すると、歩いていて物にぶつかる、歩きたがらなくなるといった様子が見られるようになります。

〇壊死性白質脳炎
パピヨンやチワワ、ヨークシャーテリアといった小型犬に起こる脳炎で、特に2kg以下の小さな犬の発症リスクが高いとされています。
詳細原因は明らかになっていませんが、発症すると痙攣発作や運動失調などが見られるようになります。

〇黒色被毛包形成不全
全身に生えている被毛のうち、黒色の部分の毛だけ薄くなる症状です。「ホワイト×ブラック」のパピヨンなど、黒色の毛が混じる犬に発症の可能性があります。

優雅で聡明なパピヨンと楽しい毎日を

古くはフランス王家で愛された、優雅な小型犬パピヨンを紹介しました。
賢く美しいパピヨンとの生活は、人々の暮らしを豊かにしてくれることでしょう。
パピヨンを飼ってみたいという方は、ぜひこの記事を参考に子犬を探してみてはいかがでしょうか。
 執筆者プロフィール
『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。

パピヨンのブリーダーについて

魅力たっぷりのパピヨンをあなたも迎えてみませんか? 

おすすめは、ブリーダーとお客様を直接つなぐマッチングサイトです。国内最大のブリーダーズサイト「みんなのブリーダー」なら、優良ブリーダーから健康的なパピヨンを迎えることができます。

いつでもどこでも自分のペースで探せるのがインターネットの魅力。「みんなのブリーダー」では写真や動画、地域などさまざまな条件で理想の犬を探せるほか、多数の成約者の口コミが揃っています。パピヨンが気になる方はぜひ参考にしてみてくださいね。

※みんなのブリーダーに移動します