アビシニアンの基礎知識

ほっそりとした体に、黄金に輝く毛並み、大きな瞳が印象的なアビシニアンは、古代エジプト時代から存在したとも言われる猫です。その見た目の美しさ、愛らしさから、日本でも飼い猫としての人気が高まっています。
今回はアビシニアンを飼ってみたいとお考えの方に向けて、猫種の基礎知識や子猫の迎え方、上手な飼育のポイントについて詳しく解説します。

歴史・ルーツ

古くから現代に至るまで、アビシニアンの起源についてはさまざまな研究がなされてきました。原産国はエジプトまたはエチオピアだという説や、インドからイギリスに渡った猫が祖先であるという説など、実にさまざまです。

①エジプト説
古代エジプトの壁画や出土品に、アビシニアンとよく似た猫の姿が書かれていたことに由来する説です。

②エチオピア説
アビシニアンの名前の由来となった説です。エチオピア(アビシニア)を訪れたイギリス兵が現地から連れ帰った猫がアビシニアンの祖先であるとされています。

③イギリス(インド)説
近年の遺伝子研究で、インド大陸ベンガル湾に土着していた猫とアビシニアンの関連性が指摘されたことにより浮上した説です。この祖先猫がインドからイギリスに渡り、品種改良された猫がアビシニアンであるとされています。

アビシニアンは1870年頃にイギリス国内のキャットショーに出陳され、1930年頃にはアメリカや世界中の国々で繁殖されるようになります。
はじめて日本に渡ったのは1964年。日本の猫ブリーダーとしても活躍した森春子氏の猫が第一号でした。

体型・体高・体重

アビシニアンの体型は、「フォーリンタイプ」に分類されます。逆三角形の頭部に、すらりと伸びた長い手足、細く長いしっぽ、スリムな体型が特徴です。
体高は個体差がありますが、約40~60cmほどです。体重は4kg前後と、猫のなかでは中程度のサイズです。

平均寿命

純血種の平均寿命は約10~13年。猫の平均と比べるとやや短めです。
猫が1日でも長く健康で暮らせるよう、食事や運動、かかりやすい疾患には十分気を付けたいものです。

毛色・肉球・瞳の色

アビシニアンの毛色には、CFA公認のルディ(ブラウン)、ソレル(レッド)、フォーン(ベージュ)、ブルーの4色や、シルバー、チョコレートなどが存在します。
いずれの色味でも1本の毛に複数の色合いが混じった、「ティックド・タビー」と呼ばれる模様が入っています。
肉球の色は被毛の色味によって変化しますが、瞳の色はゴールド、グリーンまたはカッパー、ヘーゼルのいずれかになります。

<CFA公認の4カラー>
①ルディ

オレンジブラウンをベースに、黒やダークブラウンのティッキング・タビーが現れます。ルディはアビシニアンのなかでも黒い色素を多く持っており、肉球の色も黒です。
目の下にくっきりとしたアイラインが入る姿から、「クレオパトラ・キャット」とも呼ばれています。

②ソレル
レッドとも呼ばれる赤みのあるマロンカラー。ティッキングはベースのマロンより薄いシナモンで、全身輝くような色味が特徴です。肉球はピンク色になります。

③フォーン
優しげなピンクベージュのベースに、もう一段階濃い色のティッキングが入ります。アビシニアンのなかで一番淡いカラーです。肉球は赤みがかったピンク(モーブピンク)です。

④ブルー
全身が柔らかいブルーグレーで、さらに濃いグレーのティッキングが特徴。毛色と同じく、肉球も青みを帯びた赤になります。

ソマリとの違い

アビシニアンを長毛にしたような見た目のソマリですが、実際にアビシニアンを掛け合わせて生み出された猫です。
原産国はイギリスで、ランダムに生まれる長毛のアビシニアン同士を掛け合わたことで誕生し、繁殖が進められてきました。

生まれたばかりの頃はソマリもアビシニアンのような短毛で、見た目で区別するのは難しいです。また、ソマリ同士で交配した場合でも、まれに短毛のソマリが生まれることがあります。この猫はCFAでは「ショートヘアソマリ」とされ、アビシニアンとは区別されています。

性格

①運動神経抜群な遊び好き
アビシニアンのスリムな体はしなやかな筋肉で覆われており、高い所にも楽々登ってしまえる運動能力があります。とても遊び好きで、室内で駆けまわったりキャットタワーの昇り降りを楽しんだりする姿がよく見られます。

②人懐っこい甘えん坊
高貴な容貌のアビシニアンですが、実際はとても甘えん坊。飼い主によく懐き、一緒に遊んで欲しいとせがみます。ボールを投げて取ってくるような遊びができるため、犬のように従順で賢い猫ともされています。
「鈴を転がすような声」とも形容される小さくかわいらしい鳴き声も、アビシニアンの特徴です。

③デリケートな面がある
アビシニアンは甘えん坊で好奇心が強い反面、やや神経質な面もあります。引っ越しや環境の変化などをきっかけに「突然凶暴化した!」なんてケースもあるようです。
急な環境変化で猫がストレスを感じてしまわないよう、十分留意する必要があるでしょう。

基本的には鳴き声が小さい猫のため、マンションなどの集合住宅でも近所迷惑になる可能性は少ないと言えます。

アビシニアンの子猫を迎えよう

アビシニアンに興味を持ったら、ぜひ自分にぴったりの子猫を探してみてください。
「どこで迎えるの?」、「何を準備すればいいの?」と悩む人のために、子猫を迎える前に知っておきたい価格相場や、おすすめのお迎え方法、飼育準備のポイントを紹介します。

子猫の価格相場

アビシニアンの平均価格は、約18万円です。純血種としては特別高値でもないため、比較的手に入れやすいと言えます。
子猫の価格は、月齢が低く良血統とされるものほど高くなります。また、同じペットショップやブリーダーであっても、毛色により価格が変わる場合もあるようです。

子猫をお迎えする方法

人気猫種であるアビシニアンは、繁殖頭数も多く、子猫と出会うのもそこまで難しいことではありません。
お迎えの方法としては「ペットショップ」、「ブリーダー」、「里親制度」の3つが主流です。それぞれメリット・デメリットがありますので、よく検討したうえで選んでみてくださいね。

■ペットショップ
さまざまな種類の子猫たちと気軽に出会えるペットショップ。生体だけでなく猫用のグッズも販売されているため、猫飼いにとっては便利な存在ですよね。

ペットショップで販売されているのは、全国各地のブリーダーの元で繁殖された猫たちです。しかし子猫を取り巻く環境には大きな違いがあります。
ブリーダーの管理下で親猫や兄弟たちと過ごすのと対照的に、ペットショップでは不特定多数の人の目に晒されています。また月齢が低いうちに親元を離れた子猫は、精神的にも安定せず、扱いにくい性格になってしまうことも。

また、アビシニアンを取り扱っているショップだからといって、必ずしも猫種に詳しいスタッフがいるわけではありません。初心者飼い主さんは要注意ポイントです。

■ブリーダー
アビシニアンの繁殖を行っているブリーダーも、ペットショップと同じく全国各地に存在します。一軒家のような個人宅でブリーディングしているブリーダーや専用の施設を持っているブリーダーなど、規模はさまざまです。

優良ブリーダーが猫種にこだわって繁殖し育てた子猫は、健康で精神的に安定しており、飼いやすいと言われています。

その一方で、悪徳な商売を行っているブリーダーも存在します。近親での繁殖や劣悪な環境での飼育、健康管理がいい加減なブリーダーは要注意です。
猫舎を見学する際は、飼育環境や猫たちの様子におかしな点がないか、しっかりチェックすることをおすすめします。

■里親制度
全国には何らかの事情で保健所や個人宅で保護され、新しい飼い主を待っている猫たちが存在します。そんな猫たちの命を救うのが里親制度です。
以前は保健所、動物愛護センター経由でのお迎えが一般的でしたが、最近ではネットの里親サイトでお迎えできるケースも増えてきています。
社会貢献という観点ももちろんですが、里親制度の場合ペットショップやブリーダーと比べて初期費用が安く抑えられることも利点です。

一方、アビシニアンの純血種はとても人気があり、競争率も高めです。理想の猫をお迎えできるかどうかは運とタイミングにも左右されます。また、保護猫や虐待猫の場合、健康状態に問題があることも。
何があっても最期まで責任を持って飼えるのか、覚悟を持って引き取る必要があるでしょう。

健康な子猫を見分けるポイント

アビシニアンの子猫を選ぶとき、とても大切なのは健康面のチェックです。実際に抱っこしてみて、異変がないか念入りに確認しましょう。

<子猫のここに注目!>
・骨格…脚が曲がっていないか、抱き上げたときに体のしなやかさを感じるか
・皮膚…赤みやただれ、フケが出ていないか
・被毛…毛づやはいいか、汚れていないか
・お腹…異常なふくらみはないか(おなかだけ膨れている場合、寄生虫の恐れあり)
・目…イキイキとしているか、目ヤニで汚れていないか
・口…歯や歯茎がきれいな状態か
・耳…耳垢で汚れていないか
・肛門…排泄物で汚れていないか

子猫の体に汚れが見られたら、病気が隠れているサインかもしれません。特に初めて子猫を飼う方は、健康状態と病気のリスクについてよく検討することをおすすめします。

飼い始める前に必要な準備

子猫をお迎えする前に、飼育環境の整備や飼育グッズの準備を始めましょう。飼育グッズはまず最低限必要なものから揃え、子猫の成長に合わせて買い足していくことをおすすめします。

<はじめに揃えたい猫グッズ>
■キャットフード

フードを手作りする方法もありますが、まずは子猫用に販売されているものを用意するのが無難です。種類は大きく「ドライフード」と「ウェットフード」に分かれますが、主食のフードは子猫の成長に必要な栄養素が十分含まれているものを選びましょう。

■食器
キャットフードと水を入れておくために必要なグッズです。子猫の顔の高さに合い、なおかつ安定感があるものがいいでしょう。

■ベッド
子猫が温かく安心して眠れる寝床を用意しましょう。サイズは大きすぎず、小さすぎず、体に合ったものを選びます。
市販品には、屋根がないオープンタイプや、丸い天井で覆われたドームタイプなどの種類があります。

■猫用トイレ、猫砂
トイレは猫の頭数より1つ多い数を準備してください。子猫の頃からトイレのしつけをはじめられるよう、専用トイレと猫砂は必ず用意しておきましょう。
トイレはオープンタイプ、ドームタイプ、自動洗浄タイプなど、さまざまな種類があります。猫砂の飛び散りやニオイ対策の必要性、設置場所を考慮したうえで選んでくださいね。

■爪とぎ
爪とぎは猫の必須アイテムです。段ボールや綿、木材など、さまざまな材質や形状の爪とぎがあり、猫によっても好みがあるようです。
爪とぎは消耗品のため、購入費用も考慮して選択しましょう。

アビシニアンの飼い方

飼育の準備が整ったら、念願のアビシニアンとの生活まであともう一歩!
最後に飼い方のポイントとして、食事やお手入れ方法、アビシニアンがかかりやすい病気について見ていきましょう。

食事

猫の場合、1日の中で4~6回に小分けして食べるのが理想の食事スタイルです。体重や月齢に応じたフード量を少しずつ与えましょう。
ほっそりスリムなシルエットが特徴のアビシニアンですが、実はやや太りやすい猫種。カロリーオーバーにならないよう、食事量に気を付けましょう。特に食欲旺盛な猫の場合、台所や食卓からの拾い食いにも要注意です。
市販フードを与える場合は、消化のよいグレインフリータイプや、低炭水化物・高たんぱくタイプがおすすめです。

必要な運動量

遊びや運動が大好きなアビシニアン。他の猫と比べて運動能力が高く、必要とする運動量も多いです。肥満やストレス防止のためにも、アビシニアンが毎日しっかりと運動ができる環境を整えてあげましょう。

■キャットタワーの設置
アビシニアンは高いところに昇ったり、降りたりしながら体を動かすことが大好きです。高さのあるキャットタワーを設置し、運動欲を満たしてあげましょう。

■家具の転倒に注意
アビシニアンの場合、家中走り回ったり、高いところの家具に飛び乗ったりする姿がよく見られます。
ぐらつきがあるような安定感に欠ける家具は、思わぬ事故の原因になることも。猫が生活する部屋の家具は安定感のあるものにする、しっかり固定するなどの対策も忘れずに行いましょう。

しつけのコツ

「犬のように飼い主の言うことを聞く」とも言われるアビシニアン。基本的にとても賢い猫のため、厳しくしつけずとも素直に言うことを聞いてくれる場合も多いです。
とは言え、トイレや爪とぎなどのしつけははじめが肝心。しつけは子猫のうちからスタートしましょう。

子猫がトイレをしたい素振りや爪とぎをする仕草を見せたら、しつけのチャンス。すかさずトイレや爪とぎの場所に連れていき、成功したらおやつなどのごほうびを与えて、褒めてあげましょう。
はじめは失敗してしまうこともありますが、そんなときでも叩いたり叱ったりすることは逆効果です。賢い猫であっても学習には少し時間がかかるものと心得て、繰り返ししつけに取組みましょう。

日々のお手入れ

アビシニアンの美しい毛並みを保つためには、毎日のお手入れが必須となります。健康維持の観点でも大切になる基本のお手入れ方法を覚えておきましょう。

■ブラッシング
通常、短毛種のアビシニアンには、長毛種ほどの入念なブラッシングは不要です。頻度は1日1回程度、短毛種のお手入れに適したラバーブラシや獣毛ブラシを使って全身をマッサージするようにブラッシングします。
換毛期は、特に抜け毛が増える時期です。ブラッシングに加えて、定期的なシャンプーで毛を取り除いてあげましょう。

■シャンプー
普段は毛づくろいで清潔を保っている猫ですが、定期的なシャンプーで汚れや抜け毛をすっきりさせることも必要です。
頻度は猫の体質にもよりますが、月に1回程度から2週間に1回程度が適切です。洗い過ぎは被毛や皮膚を傷め、猫にストレスを与える原因にもなります。

猫用のシャンプーを使って、頭からお尻に向かって泡立てていきましょう。すすぎ残しは皮膚トラブルの原因になるため、シャワーで念入りに洗い流してください。

■爪切り
部屋の中を走り回ったり自分で爪とぎをしたりすることでも爪が削れますが、それでもまだまだ不十分です。
2週間に1回程度、爪切りで伸びた部分をお手入れしてあげましょう。
お手入れの際にはペット用の小さな爪切りで、猫を傷つけないように少しずつ切っていきます。自宅でのお手入れが難しいときは、動物病院やトリミングサロンにお願いする方法もあります。

かかりやすい病気

アビシニアンには、先天的にかかりやすいとされる病気や疾患があります。いずれも早期発見がカギとなりますので、常日頃から欠かさず健康チェックを行いましょう。

■肥満
アビシニアンは太りやすい猫です。運動不足やカロリーオーバーにより肥満状態になると、脚の間接や筋肉に負担がかかり、怪我や関節炎のリスクが高まります。
また、“肥満は万病のもと”と言うように、心臓病や糖尿病、呼吸器不全などの原因になることもあります。適切な食事と十分な運動を心がけましょう。

■進行性網膜萎縮
アビシニアンに先天的に見られる目の病気の一つです。網膜が委縮することにより、動体視力や暗い場所での視力が衰え、最終的に失明に至るケースもあります。
先天的理由での発症を抑える方法は確立されていませんが、目の栄養として必要なタウリンの補充や、腎臓病といった目の病気を併発する病気の予防で後天的理由での発症率を軽減することが可能です。

■アミロイドーシス
アミロイドと呼ばれる不溶性のタンパク質が腎臓や肝臓に沈着することで、さまざまな障害を引き起こす病気です。
重症になると腎機能障害や肝臓破裂が起こる可能性のある恐ろしい病気ですが、未だ確実な治療法は発見されていません。

■腎臓病
一般的に猫は腎臓病のリスクが高いとされていますが、アビシニアンも例外ではありません。
血液中の老廃物をろ過する機能が壊れ、慢性腎不全の状態になると、過剰な水の摂取や食欲不振、下痢嘔吐などの症状が現れます。
早期発見できれば、食事の改善などで症状を緩和ができる場合もあります。日々猫の行動や食事の様子を欠かさずチェックしましょう。

■ピルビン酸キナーゼ欠損症
ピルビン酸キナーゼとは、赤血球の活動エネルギーを産出する役割を担う酵素です。これが欠損すると、赤血球が破壊され、貧血に至ります。
研究の結果、先天的にアビシニアンやソマリがこの病気にかかりやすいことが判明しています。

優雅なアビシニアンと楽しい毎日を

すらりとした気品あふれる美しさから、「クレオパトラ・キャット」「バレリーナ・キャット」とも呼ばれるアビシニアン。そのルーツは諸説あるものの、非常に古い歴史を持つ猫種です。
鳴き声は非常に静かなので、集合住宅でも飼いやすいでしょう。人懐っこく遊び好きな側面もあるため、愛情を注いで育ててあげれば、きっとかけがえのないパートナーになってくれるはずです。
 執筆者プロフィール
『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。

アビシニアンのブリーダーについて

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