小さな顔と大きな耳がキュートな猫「アビシニアン」の特徴と飼い方

約4000年前の古代エジプトでは、猫は女神バステトの化身だと信じられていました。当時の壁画にはバステトの姿として猫が多数描かれていますが、この猫とアビシニアンがよく似ていることから、アビシニアンはエジプトに由来する猫だと言われています。

しかし詳細はよくわかっておらず、最近の遺伝子の研究では、インド洋沿岸や東南アジアの一部地域にいた猫が祖先という説が有力です。

「アビシニアン」という猫種名がついたのは、イギリスです。イギリス・エチオピア間で行われたアビシニア（エチオピアの旧名）戦争の際に、イギリス兵が持ち帰った猫を品種改良し、アビシニアンが生まれたと言われています。

しかし、この説にも懐疑的な意見が増えていて、アビシニアンのルーツはほとんどが謎に包まれています。

ミステリアスな歴史を持つアビシニアンですが、1870年代にはイギリスでキャットショーにデビュー。1896年にはイギリスの猫血統登録団体に公認されました。

日本に初めて輸入されたのは1964年で、そこから現在までずっと高い人気を誇る猫種となっています。

アビシニアンの体重は4kg前後。ボディはスリムで筋肉質なフォーリンタイプで、大きな耳と小さな顔が特徴です。足先は小さく、つま先立ちしたような優雅な歩き方から「バレエキャット」と呼ばれることがあります。

毛色はルディ、フォーン、レッド、ブルーの4色です。なかでもアビシニアンの代表色といえばルディで、原種に一番近い色だと言われています。最近はヨーロッパを中心に、ブルーより薄いラベンダーや、ルディよい濃いチョコレートといった毛色のアビシニアンも繁殖されていますが、公認された色ではありません。

模様のない単色に見えますが、実はアビシニアンはティックドタビーと呼ばれる縞柄をしています。
「ティックド」とは1本の毛に2色以上の色が縞状に入っていることを意味していて、アビシニアンが動きや見る角度によって色味が変わるのは、このティックドタビーによるものです。

目の色はグリーンかゴールド。目を縁取るような濃いアイライン、目尻から頬にかけて入る柄のクレオパトララインが神秘的な印象を与えます。

優雅で気品を感じる外見ながら、アビシニアンはフレンドリーな猫です。
個体差はありますが、オスのほうがより甘えん坊でスキンシップを求める傾向があり、メスは猫らしいツンデレさを見せる傾向があるようです。

「鈴を転がしたよう」と言われるように、鳴き声は小さくかわいらしいので、アビシニアンは集合住宅でも飼いやすいでしょう。ただし、好奇心旺盛で活発なため、部屋のなかで走りまわったり、高いところから飛び降りたりして飼い主を驚かせることがあるようです。

また、アビシニアンは知能が高く、名前を呼ぶと返事をしたり、ボールなどで「取ってこい」の遊びもできたりします。知能の高さは時にイタズラへとつながることもあるので、キャットタワーや猫が追いかけるおもちゃを用意するなど、アビシニアンが退屈しない工夫をしましょう。

アビシニアンは少々神経質な面があり、猫よりも人と一緒にいることを好むため多頭飼いするときにはこ注意してください。

アビシニアンは活発に動くせいか、食欲旺盛です。もともとスレンダーな猫種ですが、要求されるままにフードやおやつを与えていると肥満になってしまうこともあります。

肥満はさまざまな病気の発症リスクを高くするので、きちんとカロリーをコントロールし、一緒に遊んで運動する時間を確保してください。転がしたりひっくり返したりするとおやつが出てくる知育おもちゃなどを活用するのもおすすめです。

アビシニアンはアミロイドーシスという病気を比較的起こしやすいと言われています。アミロイドーシスはアミロイドというタンパク質が内臓の細胞に付着して機能障害を起こす病気です。猫が発症する例は多くありませんが、そのなかでもアビシニアンの報告例は多く、1歳くらいの若い猫でも発症することもあります。

症状はどの内臓でアミロイドーシスを起こしているかで変わり、アビシニアンは腎臓で機能障害を起こすことが多いです。アビシニアンに多飲・多尿、食欲不振、体重減少などが見られたら、すぐ獣医師に相談してください。

アビシニアンの魅力は優雅で美しい外見と、そこからは考えられないほど甘えん坊でフレンドリーな性格。飼い主とのコミュニケーションが好きで、猫と一緒にたくさん遊びたい人にぴったりの猫種です。

食事や運動に気を配り、アビシニアンとの暮らしを楽しんでくださいね。