サーベルタイガーって猫なの? いったいどんな動物?

「サーベルタイガー」は学術名ではなく、長さ20cm以上にもなる長~い犬歯を持つネコ亜目の大型動物の俗称になります。タイガーとは言っても分類学的にはトラではありません。日本語では剣歯虎とも呼ばれています。

サーベルタイガーの特徴は、その名のとおりサーベルのように長く鋭利な牙。大きさは口を閉じてもあごからかなりはみ出してしまうほどでした。この恐ろしい牙を武器に、自分よりも大きな動物も狩っていたそうです。
ネコ類の長い進化の歴史のなか、長い犬歯を持つさまざまな動物がさまざまな系統に出現しました。より古い時代には、真のネコ科とは異なる「ニムラブス科」にもそのような種が見られました。
ちなみに、ネコ科では「マカイロダス亜科」(現代の猫とは違う系統)がサーベルタイガーのグループ。マカイロダス、ホプロフォネウス、スミロドンなどがいました。

このように何種類もいるサーベルタイガーですが、なかでも最も有名なものがスミロドンです。今回はスミロドンについて詳しく解説します。

サーベルタイガーの代表格「スミロドン」

個性的な外見や特徴からか、アニメや映画などに登場することもあるスミロドン。そのインパクトは、パニック映画の題材になったこともあるほどです。身近なところでは「ポケモン」の登場キャラクターのモチーフにもなりました。

◇スミロドンって?
スミロドンとは、250万年前~1万年前、南北アメリカの森林やブッシュ(低木の茂み)に住んでいた動物です。人類の祖先とも共存していました。

正式には下記の3種に分類されます。
・スミロドン グラシリス
・スミロドン ファタリス
・スミロドン ポピュラトル

最大種のポピュラトルの場合、体長約2m、体高約1.2m、体重は約300kg程度。ライオンに近い体格ですが、スミロドンはライオンよりも骨太でした。ときには体重500㎏にもなる個体がいたと言われています。

スミロドン最大の特徴は長さ25cmにも達する犬歯。現代の猫の円錐形のような犬歯とは全く違い、薄くて平たいナイフのような形をしていました。この犬歯をフル活用するために、あごは120度以上も開いたとされています。想像するとちょっと恐ろしいですよね。

ほかには
・大型ネコ類に比べると尾が短い
・現代の猫と比べると下あごの犬歯は小さく目立たない
などの特徴があります。

長大な牙を使ってマンモスをも倒していた?

最強の捕食者とも言われているスミロドンですが、どんな動物を獲物としていたのでしょうか。北米あたりに生息していたスミロドンは、バイソン、ペッカリー、ラクダなどの大型草食哺乳類のほか、ときにはマンモスやグリプトドン(巨大アルマジロ)をも狙っていたようです。

どれも大きな動物ばかりですが、気になるのは捕捉方法。注目すべきは牙の使い方です。たとえば百獣の王・ライオンなら、相手の喉に噛みつき、強靭なあごの力と太い犬歯で骨ごとかみ砕いて窒息死させます。しかし、サーベルタイガーの場合、あごの力はライオンほど強くなく、牙も薄いために突き刺すことには特化していません。そのため、サーベルタイガーは、犬歯をナイフのように使って獲物の皮下の血管を切り裂き、失血死させたと考えられています。

また、単独行動が多いネコの仲間としては珍しく、集団で狩りをしていたと言われています。マンモスのような超巨大な動物も集団で襲いかかって倒していたのでしょう。当時は、スミロドン以外にもアメリカライオンやアメリカチーター、イヌ類最大種のダイアウルフなどの猛獣がいて、熾烈な生存競争が繰り広げられていました。

サーベルタイガーが絶滅した理由

長いネコ類の進化の中でしばしば現れたサーベルタイガーも、スミロドンを最後に地球上から姿を消しました。

スミロドン自体が絶滅したのは、氷河期終わりに起きた大量絶滅が原因と言われています。気候変動が起き、地球環境が激変したことによって多くの生物が絶滅しましたが、スミロドンの獲物である大型草食動物も例外ではありませんでした。このとき同時にアメリカライオンやアメリカチーターなど、ほかの大型捕食者も絶滅の道を辿っています。食料が少なくなったことにより、種として存続できなかったのでしょう。

マンモスのように人類が絶滅に関与したと考える研究者もいますが、絶滅理由は解明しきれていないのが現状です。

現代型ネコ科にサーベルタイガーのような犬歯を持つものがいないことを考えると、長い犬歯をもつ形態(サーベルタイガー)よりも、円錐形の犬歯を持つ形態(現代型ネコ)のほうが肉食として効率がよく、サーベルタイガーたちは絶滅してしまったのかもしれませんね。

ロマンあふれるサーベルタイガー

太古には、私たちの想像を超えるような思いもつかない不思議な生物がたくさん生きていました。サーベルタイガーもそのひとつ。

もし、絶滅せずに今も生きていたら?
もし、家畜化されてペットになっていたら?

恐ろしさを感じると同時に、そんなロマンをかき立てられるのは、未だ謎に包まれている部分が多いからかもしれません。まさに地球史のなかのひとつのミステリーですね。

スミロドンの標本が見れる国内博物館

貴重な展示に触れて、ネコ類を科学してみてはいかが? スミロドンの標本を展示している博物館を紹介します。
◇日本
国立科学博物館|常設展示 スミロドン(東京都)
ねこの博物館|古代絶滅 ネコ科動物(静岡県)
◇海外
La Brea Tar Pits and Museum(ラ ブレア タール ピット博物館) (アメリカ・ロサンゼルス)

参考文献 冨田幸光(2011)『新版 絶滅哺乳類図鑑』 丸善.

 執筆者プロフィール
2匹の愛猫と暮らす元博物館学芸員です。専門は古生物学。ペットに関する科学的な知識を分かりやすくお伝えしていきたいと思っています。
保有資格はペットシッター、愛玩動物飼養管理士2級

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