街中シェルターが、人間と猫の憩いの場に

シェルター入り口
東北の玄関口ともいえる、JR仙台駅から東に歩くこと10分。多くのビルが立ち並ぶ宮城野大通り沿いに建つ、9階建ての商業ビルの一室に、保護猫シェルター「おうちにおいで。」はあります。
複合ビル入口
「おうちにおいで。」は、白石市で起こった多頭飼育崩壊の猫たちを救うべく、2017年に設立した保護猫シェルター。保護団体「にゃんこ組」と連携し、現在までに80匹以上の保護猫を里親へと送り出してきました。

ここで暮らす猫は現在13匹。常時15匹前後の猫たちが、シェルターに遊びに来てくれるお客さんたちと触れ合いながら、人とのかかわりを学び、里親に引き取られる日を待っています。
▲「なにごとか?」とのぞきにきたのは、チーズくん

スタッフは2名、猫好きのお客さんに支えられて運営

「おうちにおいで。」の正規スタッフは2名のみ。代表である小野夏樹さん店長の永井貴満子さんが、それぞれほかにお仕事を持ちながら、ボランティアで運営しています。
週1回の定休日はお掃除の日、猫ちゃんのお世話のためにスタッフは休みません。「それでも、お掃除を手伝ってくれるボランティアの方がいるので、助かっています」と笑顔で話す店長の永井さん(写真中央)。
▲右から、「おうちにおいで。」代表の小野夏樹さん、店長の永井貴満子さん、協力団体「にゃんこ組」組長の佐藤十朱(とあけ)さん

猫と暮らしているような感覚を味わえる場所

日当たりがよく清潔な室内には、TVやソファ、漫画などが置かれ、のんびりとくつろげる空間になっています。最初から里親を希望してくる人もいますが、お客さんの8~9割は猫と遊んだりくつろいだりしたくてやってくる人たちだそうです。

「ここでの過ごし方は本当にさまざま。本を読みながら時間を過ごし、寄ってくる猫をナデナデしていく人、おもちゃを用い全身を使って猫と遊び、一汗掻いていく人など……思い思いの過ごし方で猫から癒しを得ているようです」と話すのは、代表の小野さん。

仙台駅近くという立地から、お客さんには街中に住んでいる方も多く、猫を飼うことはできないけれど「猫と過ごしたい」「猫と暮らしている気分を味わいたい」という方が多いようです。
▲小野代表とスタッフ猫のむっちゃん。むっちゃんは人とのかかわり方が上手なので、ほかの子のお手本になります。
イスの下の猫
▲三毛猫のリリアンちゃん。「撮影はなれてるから気にしないわよ」という様子

譲渡のシステム

気に入った猫ちゃんがいたら、里親に応募することができます。受け入れ態勢がしっかり整っていれば、
性別や世帯構成でお断りすることはないそうです。

譲渡にかかる費用は、協力金として一律オス7,000円、メス1万円です。これは医療費の一部として利用されます。

【譲渡の流れ】
アンケート記入や身分証の提示➤➤自宅訪問にて飼育環境の確認➤➤猫ちゃんの引き渡し、またはお届け➤➤トライアル開始(約2週間) ※期間延長も可能 ➤➤正式譲渡

『推しニャン』制度でサポートも!

ボード猫紹介
「気に入った猫がいるけれど、飼えない」という方のために、『あしながさん(推しニャン)制度』があります。推しニャンの応援の仕方は自由、会いに来る、SNSに猫の写真を載せるなど、できる範囲で里親探しのお手伝いをするのです。

「あしながさんになるのは簡単です! ただ『この子推しです』と申告するだけ(笑)。あしながさんには、推しニャンの写真入り会員証が発行されます。これを持っていると延長料金無料特典が受けられるんですよ」と、小野代表

シェルターでの猫ちゃんたちの様子

▲下から見える折りたたまれた足がかわいいハーフちゃん
取材に訪れた時間は午後2時、猫ちゃんたちはまったり時間だったようです。壁に設置されたキャットウォークの上やソファーカバーの中(踏まれそう……)、ケージの上などで、おのおのくつろいでいました。
カメラを向けてもマイペースなご様子です。
▲こっそりのぞいているのは、しじみくん
▲キリっとした目のレモンちゃんは、人が大好きだそうです。

室内の様子

室内には、いたるところにキャットウォークがありますが、これらはすべてスタッフがDIYで作ったもの。飼育スペースも清潔に整えられています。
猫ちゃんの遊び道具は、無料で貸し出しています。

「譲渡会だと猫ちゃんたちは、怯えたり緊張したりしてしまいがちです。でもここではくつろいでいる猫ちゃんの本来の姿を見ていただけるので、譲渡率はいいんですよ」と語る永井店長。

保護活動団体「にゃんこ組」との連携

保護猫シェルター「おうちにおいで。」に暮らす猫ちゃんは、佐藤十朱さんを代表とする保護活動団体、「にゃんこ組」で保護した子たちです。生後6カ月以上で病気のキャリアがなく、比較的人との関わりがスムーズな子のみがここで里親探しをすることになります。

2013年設立の「にゃんこ組」は、3人のスタッフでなんと常時150匹前後の猫を保護し、ケアしている有志のグループ。月1、2回のペースで譲渡会を開き、動物病院やほかの保護団体とも連携しながら里親探しをしています。

猫エイズキャリアの子や臆病な子など、訳ありな猫ちゃんの譲渡会「四つ葉のクローバー譲渡会」も主宰する「にゃんこ組」、現在までに約150匹の猫ちゃんを里親のもとへとつなげています。
にゃんこ組

「見捨ててはおけない」という気持ちからはじめた保護活動

自宅にて現在17匹の猫をケアしている「にゃんこ組」組長の佐藤さん、なかには病気やケガ、高齢で譲渡が見込めない猫ちゃんもいて、その数が減ることはありません!
「お風呂と、台所以外のすべての場所に猫がいます(笑)」と話す佐藤さん、たくさんの猫を里親に引き渡してきましたが、同時にたくさんの猫をご自身で最期まで看取っているのです。

活動に理解のある方々からの支援があるとはいえ、猫たちの医療費で常に団体の収支は赤字、それでも続ける理由を「とても止められない。見捨ててはおけないから」と語ります。

『仙台猫56匹SOS!』の取り組みに参加 

2020年8月、仙台在住の保護活動者の急病にともない、急遽猫55匹*を保護することとなったプロジェクト、『仙台猫56匹SOS!』が始動。にゃんこ組ほか、市内で複数の保護活動者が手をあげたものの、みんなすでに保護猫をたくさん抱えている身、人員も予算もないなかでのスタートだったそうです。

猫白血病ウィルスや猫エイズに感染している猫もおり、譲渡は難航。猫たちのために仮設の受け入れ施設を整備し、ウイルス検査やワクチン接種を行い、ケガや寄生虫の駆除などの処置をするにあたり、莫大な経費も必要になりました。
一時は動物病院に支払いを待ってもらうような事態にも陥ってしまいましたが、クラウドファンディングでの資金集めが功をなし、現在は目標金額を上回る支援をいただいたということです!
とはいえ、譲渡先の決まった猫ちゃんはまだ2匹だけ、残る51匹の猫たちのお世話と譲渡活動はこれから先も続いていきます。*2020年10月13日の状況です。

「にゃんこ組」が主催する「四つ葉のクローバー譲渡会」では、この『仙台猫56匹SOS!』プロジェクトで保護された猫も参加しています。

*当初56匹と思われていた猫ちゃんですが、その後55匹であることが判明。立ち上げ時の混乱によるミスですが、プロジェクト名は56匹となっています。また、2匹がプロジェクト始動後に亡くなりました。

【四つ葉のクローバー 譲渡会】 ※開催日は第3日曜日

【四つ葉のクローバー】では、毎月第3日曜日に譲渡会を開いています。仙台猫56匹SOSの訳ありにゃんこ*も参加しています!! 
*エイズキャリアだったり、恥ずかしがり屋だったり、ちょっとだけ訳ありのにゃんこたちです。
「訳があってもなくても、どんな子にも里親を探してあげたい」というのが、この譲渡会の趣旨です。

2020年 10月18日13:00~16:00
2020年 11月15日13:00~16:00



・入場制限あり
・ご来場の際はマスクの着用をお願いします。


場所:宮城県仙台市宮城野区榴岡4丁目12-5 第一さくらビル4階
  (保護猫シェルター おうちにおいで。が入っているビルです)

「猫の殺処分をなくしたい」という切なる願い

「一匹でも多くの猫ちゃんの命を救いたい」
「にゃんこ組」も「おうちにおいで。」も、同じ願いと目的をもって運営しています。

「どんな人に里親になってもらいたいですか」という質問に、永井店長は「猫を観察して、具合が悪いときには病院に連れて行ってくれる。そして終生面倒を見てくれる、ということが一番大事です。」と答えてくれました。「どんな人というのはないです。猫をちゃんと好いてお世話してくれる人であれば、それだけで十分。」と、小野代表。

また、数多くの猫たちをケアしてきた、佐藤組長は、「猫は100匹いたら100の個性がある。その時々の気分やコンディションがある」と語ります。「猫ちゃんの気持ちを考えて、寄り添ってほしいと願っています。」

まとめ

寝ている猫
今回は仙台の保護猫シェルター「おうちにおいで。」に伺い、シェルタースタッフと協力団体「にゃんこ組」の代表にお話を聞いてきました。

多頭飼育崩壊現場の対応から始まった保護活動。同様のケースは、ここ数年全国で発覚しており、社会問題にもなっています。「保護活動者がいなくなるのが理想」と語る永井店長でしたが、残念ながら保護される猫の数が減っているという感触はありません。適切な飼育を促す啓蒙活動と、地道な支援を続けるしかないのです。

直接的な保護活動をしたり、里親になったりすることはできなくても、猫助けの方法はいろいろあります。
寄付金や物資の援助*、グッズの購入などもそれにあたります。
*「おうちにおいで。」「にゃんこ組」のサイトでは、『Amazon欲しいものリスト』にて必要な物資を支援者にお知らせしています。

そしてもちろん、保護猫シェルターに遊びに来たり、SNSに猫ちゃんを紹介したりするだけでも大事な支援になるのです!『自分自身も猫ちゃんに癒されながらの、ちょこっと猫助け』、あなたもはじめてみませんか。

施設DATA

保護猫シェルター「おうちにおいで。」

営業時間
13:00~20:00 最終受付19:00
定休日
月曜日(月曜祝日の際は翌火曜日)

利用料金
1時間 1,000円
フリータイム 2,500円
延長 30分 500円
(ドリンク1本付き)

宮城県仙台市宮城野区榴岡4丁目12-5 第一さくらビル6階
022-352-4024

Instaglam
https://www.instagram.com/hogoneko_cafe_outinioideyo/

Twitter
https://twitter.com/outinioidey
おうちにおいで。
 執筆者プロフィール
『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。

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