シェットランドシープドッグ(シェルティ)の基礎知識

歴史

シェットランドシープドッグは、その名のとおり、イギリス北部に浮かぶシェットランド諸島を故郷とする牧羊犬です。
シェルティの原型となる地犬については、諸説あり明らかになっていません。島にある遺跡の調査から、紀元前3000年頃にはすでに人々は牧畜を営み、犬をパートナーとして伴っていたのではといわれています。
また、同じスコットランド地方の牧羊犬・ラフコリーやボーダーコリーと起源を共有するであろうというのが定説です。
バイキング時代(800~1050年)に、島に寄港した捕鯨船に乗っていたスピッツ系の犬と、島の地犬が交雑したのが、シェルティの先祖犬といわれています。
その後、スパニエル種やポメラニアンとの交雑が開始。1800年代終わりごろ、演習のため島を訪れていたイギリス海軍により、イギリスに紹介されました。
イギリス上陸後はラフ・コリーとの交配も積極的に行われ、コリーと似た現在のシェルティに近い姿となります。
1909年、「シェットランド・コリー」の名でKC(イギリスのケンネルクラブ)に初めて犬種登録されました。それから5年後の1914年、現在の公認名「シェットランド・シープドッグ」に改名となり、1911年にはAKC(アメリカのケンネルクラブ)が公認。そして1955年、初めて日本にシェルティがやってきたのです。

イギリスタイプとアメリカタイプ

シェルティは、イギリスタイプとアメリカタイプにわけられます。
イギリスタイプは牧羊犬としての性能を重視して作られてきましたが、アメリカに渡ったことで美しい姿形も求められるようになりました。日本に初めて輸入されたシェルティも、現在日本で見かけるほとんどのシェルティも、ゴージャスな毛をまとうアメリカタイプです。

体高と体重

シェルティの理想体高は、オスで37cm、メスで35.5cmとされています。
体重は、上記の体高であれば9kg前後が理想といえるでしょう。
シェルティが小型犬であるか中型犬であるかは、個体差と基準によって変わりそうです。小型犬や中型犬、大型犬という区分には、明確な数字は定められていません。
小型犬は8~10kg以下とするところが多いようですが、シェルティの大きさはちょうどこの間ぐらいの個体が多いのです。
「小型犬は8kg以下」であれば中型犬に、「10kg以下」であれば小型犬に分類されるということになります。

毛色

FCI(国際畜犬連盟)やKC(イギリスのケンネルクラブ)、JKC(日本ケンネルクラブ)、JCC(日本コリークラブ)で認められている毛色は5種類です。
(※下記以外に、作出当初に存在したと思われる「ブラック&タン」というカラーが記載されていますが、今では存在しない毛色のため紹介は省略します。)

・セーブル
茶色系。首と胸周り、足と尾の先に白が入ります。一番多く見かけるスタンダードカラーといえるでしょう。
茶色は明るいホモ(ピュア)から黒っぽいヘテロまで、セーブルのなかでも濃淡によって異なる名前で呼ばれます。

・トライカラー
黒、白、茶(タン)の3色から構成されます。頬、目の上、足、尾の内側に茶色が入ります。

・バイブラック
黒と白の2色。トライカラーの茶がないタイプです。あまり見かけない毛色のためか、ボーダーコリーと間違われることもあるようです。

・ブルーマール
黒の毛色を薄くする「マール因子」によって作り出される毛色で、体全体に大理石のような模様が入ります。シルバーブルーに黒を散りばめたような柄と、白、茶で構成されます。目の色が青い、または、左右色が違うオッドアイが認められています。

・バイブルー
ブルーマールの茶がないタイプです。体全体が大理石のような色で、首と胸周り、足と尾の先に白が入ります。ブルーマールと同様、青い目と、オッドアイが認められています。

コリーとの違い

・体格
一番の違いは体の大きさです。コリーは大型犬で、体高50cm以上になります。

・毛色
シェルティにあるバイブラックとバイブルーは、コリーには存在しない毛色です。また、コリーにはホワイトという体全体が白で構成される毛色が認められていますが、シェルティでは非公認カラーとなります。

・ストップ(額段)
シェルティはスカル(頭部)とマズル(口吻)の間に、ストップ(額段)と呼ばれるくぼみがあり、スカルとマズルの区切りが認められます。コリーは、このストップがごくわずかであることが特徴です。

性格

シェルティは牧羊犬らしく高い運動能力を落ち、聡明で、家族に対し一途な心を持っています。飼い主に忠実で、人を喜ばせることが大好き。
繊細な心と高い知性を持ち、辛抱強く、優しく温和な性格です。
ちなみに牧羊犬といえば、広い牧草地に散らばった羊たちを追い集めるのが仕事というイメージですが、シェルティが任されていた仕事はちょっと違います。
羊集めもしていたものの、本業は羊やほかの侵入者から畑の作物を守ることでした。それゆえ現在でも、動くものや音に対して敏感に反応する個体が多いようです。

シェットランドシープドッグ(シェルティ)の子犬を迎えよう

価格相場

シェルティの子犬の価格相場はおおよそ20万円です。
価格差は、主に親犬の血統などが関係しますが、シェルティの場合はカラーによっても若干差があります。現在はブルーマールが高めの価格になっているようです。

子犬を迎える方法

シェルティの子犬を迎える方法は、「ペットショップで購入する」「ブリーダーから購入する」「里親になる」の3つの方法があります。

①ペットショップで購入する
ペットショップとは、動物を仕入れて販売している店舗のことです。好きなときにいつでも見に行けるのがメリットです。
気に入った子犬を見つけた場合は、「店の衛生・管理状態」「定められた週齢まで親犬と過ごしていたか」「スタッフに犬の知識があるか」「購入後のアフターケア」「病気や死亡に対しての保証制度の有無」などの点は必ず確認しましょう。
シェルティにおいては、ある毛色の個体を「レアカラー」と呼び販売していることがあります。
「レア」という言葉は、公認されていない毛色を表現する際に用いる場合があり、その毛色が公認されていないのには何らかの理由があるのです。
もし、気に入った子犬がそのようなうたい文句で販売されていた場合には、その理由や親犬について質問してみるといいかもしれません。このような質問に対し、誠意ある返答があり、仕入れ先や親犬について答えられるスタッフがいるショップが理想的です。

②ブリーダーから購入する
まず、シェルティを専門にブリード(繁殖)している優良ブリーダーを探しましょう。
優良ブリーダーはいわばその犬種のプロフェッショナル。シェルティを愛し、犬種固有の遺伝性疾患について正しい知識をもち、血統と犬質向上に努めています。
たとえばシェルティの遺伝性疾患「家族性皮膚筋炎」や「コリー・アイ」についての説明有無。ブルーマールやバイブルーの子犬の商談をしているのでしたら、「マール因子」、または親犬の毛色についての説明有無は、優良ブリーダーであるか否か見分けるポイントになるでしょう。
インターネットを通してのブリーダー直販であれば、子犬は親犬と過ごし、購入側は画像や動画で子犬の様子を見ることができます。
ただし、動物愛護管理法では、犬猫販売の際の現物確認と対面説明を義務づけられています。
気に入った犬舎が遠方だった場合には出張費などのコストがかかってしまうデメリットはありますが、子犬が社会性など親犬から学ぶ時間を奪わず、話をすすめられるのは大きな利点です。
シェルティを心から愛し、健全な繁殖をしているブリーダーからであれば、心身ともに健康な子犬を迎えられるでしょう。

③里親になる
全国の保健所・動物愛護センターなどの行政施設には、日々、多くの犬が収容されています。シェルティも例外ではありません。
引っ越しなど家庭の事情で飼い続けることができなくなった人が手放す場合があります。
行政施設に収容された犬たちは、譲渡可能と判断されると、新たな飼い主の募集にかけられます。個人がSNSなどを利用し、新しい飼い主を募集するケースもあります。
県や市、ボランティア団体のホームページ、譲渡会、また、里親募集サイトなどをこまめにチェックしてみましょう。
気になる子をみつけたら、その犬がどのような経緯で保護犬となり現在どのような状態なのか、また、譲渡条件についても、しっかり確認しましょう。
新しい飼い主を待っている犬たちは疾患を持っていたり、心に傷を負っていたりする子も少なくありません。
募集側も「この子に二度も辛い思いをさせないために」と、厳しい譲渡条件を設けている場合が多いです。多少の違いはありますが、面談、環境調査、トライアルを経てようやく正式譲渡という流れが一般的です。
なお、純血種の子犬の募集はあまり多くないので、希望の犬を迎えるまでにはそれなりの時間がかかるかもしれません。

健康な子犬を見分けるポイント

気に入った子犬を見つけたら、健康に問題はないかしっかり観察しましょう。
皮膚はカサカサまたはベタベタしていないか、フケが出ていないか、被毛にツヤがあるかを確認してください。
目には輝きがあるか、動くものを追っているか、鼻には適度な湿りがあるかもチェックポイントです。体格と歩き方の確認も忘れずに。親犬や兄弟犬の健康状態についても聞いておけると安心ですね。

飼い始める前に必要な準備

シェルティを迎えると決めたら、さっそく準備をしましょう。子犬がやってくる前に揃えておくべきグッズをご紹介します。

・ケージ
犬には犬専用の場所が必要です。ケージは必ず用意しましょう。ずっと使うものなので丈夫なもの、成犬になっても飛び越えられない高さのあるもの、または屋根付きタイプを選びましょう。
犬がゆったり横になれる広さのものを選び、中にベッドやトイレなどを設置ししてください。留守番など長い時間を過ごしてもストレスにならない場所にしてあげることが大切です。

・トイレトレー
トイレにしつけには、トイレトレーがあると便利です。トイレトレーはいたずら防止のメッシュ付きのもの、囲いがあるもの、オス用にL字に立てられるものなど、さまざまな種類があります。

・首輪、ハーネス、リード
シェルティは首周りの毛量が多く、頭部と顔は細く小さいです。シェルティが何かの拍子で激しく動いたときに、首輪やハーネスがすっぽ抜けてしまうというアクシデントが少なくありません。すっぽ抜け防止のために、正確なサイズ計測と調整をしましょう。また、ハーネスでしたら8の字タイプがおすすめです。

・ケガ・事故への対策
シェルティは、股関節に負担がかかりやすい犬種です。
長く元気に歩いてもらうためにも、フローリングなど滑りやすい床にはカーペットや滑り止めマット、コルクマットを敷くなどの対策をとりましょう。
特に子犬の頃のシェルティは、好奇心旺盛がゆえに何にでも興味を示します。ゴミ箱、コンセントやコードなど、噛んだら危険なものや噛まれたくないものは、カバーを付けるか届かない場所にしまうなど工夫をしましょう。

シェットランドシープドッグ(シェルティ)の飼い方

食事のポイント

シェルティは毛量が多く、太ったり痩せたりなど体の変化が分かりづらいので、定期的な体重測定を習慣づけるといいでしょう。
市販のフードには必ずパッケージに給餌量が記載されています。運動量や体重の増え方などを考慮し、与える量を決めましょう。
子犬期は日に日に大きくなる成長期です。必要摂取量が変わる可能性があるので、こまめに体重を測り、常に適量を与えられるようにしてください。

成長期の子犬にはたくさんのエネルギーが必要ですが、1回で食べられる量はそれほど多くありません。消化器官も未熟な状態です。
スープやミルクでふやかして食べやすい状態にする、1回の量を減らし与える回数を増やすなど、工夫をして調整しましょう。

生後半年くらいになると成犬らしい体つきになってきます。
1歳前後になり体重の増加が落ち着いたら、成犬用のフードに切り替えてください。もともと食べているフードに少しずつ混ぜながら切り替えるのがポイント。
完全に移行できたら、1回の食事量を増やし、1日の食事回数を減らしましょう。成犬の食事回数は「一日に朝・夕の2回」が一般的です。

必要な運動量、散歩の頻度・回数

シェルティはたっぷりの運動が必要な牧羊犬です。運動不足にならないよう、毎日十分な散歩をしましょう。
成犬のシェルティであれば、散歩は1日2回、1回30分~1時間くらいが目安。時にはコースを変えたりジョギングしたりと、メリハリをつけてあげるのもいいでしょう。
運動欲求が満たされれば、無駄吠え問題などが解消されることも多いです。心身の健康維持のためにも、十分に運動させてください。
身体能力が高く、アジリティやフリスビーで活躍するシェルティもたくさんいます。ドッグランなど広い場所で、かけっこや自由な運動をさせてあげるのもおすすめです。

しつけのコツ

外で過ごすことが当たり前だったシェットランド島の動物たちのなかで唯一、家族の一員として家の中で過ごすことを許されたシェルティの祖先たち。北海からの強風が一年中吹きつける厳しい自然環境のなかで、人と寄り添って生きてきました。

そんなシェルティは学習能力が高く従順なので、しつけのしやすい犬種です。遊びの要素があるトレーニングなども喜んで取り組みます。

しつけの際は、シェルティの持つ献身的で忠実な心と個性を理解し、一貫性のある態度で接しましょう。
飼い主さんが犬にとって頼れる存在であれば、抱えているほとんどの問題は解決できます。

たとえばシェルティの習性として、動くものや特定の音に反応し、吠えたり追いかけたりすることがしばしば見られます。
そこで、覚えさせてほしいのが、「リーダーウォーク」という散歩方法。
リードを引っ張らせず、自発的に飼い主の足元に寄り添って歩くことをマスターさせれば、シェルティとの暮らしがよりスムーズで楽しいものとなるでしょう

また、深い信頼関係が生まれれば、散歩だけでなく、日常生活の中で感じていた問題点も自然と解消されるはず。
音への過敏な反応は、その音に不安要素がなく、何事も起こらないということを教えてあげましょう。
音に対し無視ができたら褒めるなど、飼い主さんの一貫した態度が大切です。

シェルティに安心を与え、頼りがいのある飼い主となれば、あなたの最高のパートナーとなってくれるでしょう。

お手入れ方法

・ブラッシング
シェルティの被毛は、長いオーバーコートと短くて柔らかいアンダーコートからなる、ダブルコートです。
絡みやすく毛玉ができやすい毛質のため、毎日の丁寧なブラッシングが欠かせません。
腫瘍やかぶれなどができていないかなど、皮膚の健康状態の確認はもちろん、スキンシップのためにも、必ず一日に一度は行いたいものです。
また、換毛期は部屋中が抜け毛だらけになる、なんていうことも。換毛期にはブラッシングだけでなく、掃除もこまめに行う必要があるでしょう。換毛期のブラッシングには、スリッカーというブラシを使うと便利です。

・歯磨き
歯のケアは健康維持のために必要不可欠です。歯磨きは子犬のうちから慣らしておきましょう。できるだけ毎日、柔らかい歯ブラシや濡らしたガーゼを巻いた指で、歯と歯茎をマッサージするようにこすってあげてください。

・耳掃除
耳掃除は汚れていないかどうか、定期的なチェックを。汚れていたら、洗浄液を含ませたコットンでやさしく拭き取りましょう。犬が嫌がる場合には無理をせず、動物病院やサロンに相談してください。

・シャンプー、爪切り、肛門絞り
月1~2ペースで行います。シャンプーは行きつけのサロンをみつけておくと便利です。サロンと自宅シャンプー、どちらにも慣らしておくのがよいでしょう。
技術と経験を要する爪切りと肛門絞りは、はじめのうちは健康診断を兼ねて動物病院でお願いしてもいいかもしれません。
ペットサロンに通うようになったら、シャンプーと一緒に処置してもらう方法も。自宅でもできるようになれば、愛犬とのスキンシップにもつながるでしょう。

かかりやすい病気

シェルティがかかりやすい病気としては、遺伝性である「家族性皮膚筋炎」、「コリー・アイ」、遺伝性要因が大きい「股関節形成不全」、「甲状腺機能低下症」などがあります。
また、シェルティだけではなく、コリーやボーダーコリーなど牧羊犬には「MDR1遺伝子の異常・欠損」が多いとされています。
MDR1とは、脳に危険な薬物が入り込まないよう防御している遺伝子で、これに異常があると、特定の薬の成分が代謝できません。代表的なものとしては、フィラリア駆除薬として一般的に処方される「イベルメクチン」があります。
そのような理由から、フィラリア予防薬はイベルメクチン以外のものを使用したほうが安心ですが、気になる点があれば獣医師に相談してみましょう。
また、MDR1遺伝子に関しては遺伝子検査も可能です。
 執筆者プロフィール
『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。

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