ウェルシュテリアはモシャモシャの毛並みにちょっぴり頑固な性格が逆にキュート

なんとなく聞き覚えのあるような名前なのに、実際の犬を想像できない、そんな犬種がウェルシュテリアではないでしょうか。同じくイギリスのウェールズ出身の犬種・ウェルシュコーギーは有名ですし、「テリア」とつく犬種はたくさんいます。しかし、ウェルシュテリアとは？

犬種の血統登録団体ジャパンケネルクラブ（JKC）によると、2016年に登録されているウェルシュテリアの数は137頭。登録数1位のプードルが7万7000頭を越えていることを考えると、かなり少なめ。日本ではまだポピュラーな犬種ではないようです。
体高が39㎝まで、体重は9～9.5kgの大きめの小型犬。だいたい柴犬くらいの大きさというとわかりやすいですね。長めの顔や前に倒れた小さなボタン耳、まっすぐな手足としっぽに、筋肉質のがっしりした体が特徴です。

もしゃもしゃしたワイヤーコートはブラック＆タンが主で、ブラックにグレーやレッドなどが混じったグリズル＆タンも認められています。生まれたときはブラックの面積が多いですが、生後3カ月くらいまでには変化して成犬と同じような色になります。

テリアというと賢いものの頑固で気難しく、気が強くて興奮しやすいという気質が思い浮かびます。そんなテリアグループのなかでもウェルシュテリアは比較的おだやかで、家庭犬向きの性格といわれています。

陽気で活発で、人を楽しませようとお茶目な行動をとることも多く、家族のムードメーカーとなってくれるでしょう。しかし、警戒心は強いため、初対面の人や犬とすぐに仲よくなることはありません。気に入らない相手には攻撃性を見せることがあるので、来客やドッグランなどでは注意してください。

もともと単独で小動物を捕まえるのが仕事だったため、自己判断能力が高く自立心も旺盛です。テリアグループではおだやかといえども、「人間の役に立つのが幸せ」というような犬種ではありません。
ただし、そういった気位の高さや賢さ、手強さこそがウェルシュテリアの魅力でもあります。

ウェルシュテリアはその名からわかるようにイギリスのウェールズ地方が原産の犬種です。かつては「ウェルシュ・ブラック・アンド・タン・ワイヤーヘアード・テリア」と呼ばれていて、13世紀から存在しているという説がありますが、証拠となる文献などは見つかっていません。キツネやウサギ、カワウソなどの猟犬として重宝されていたようです。

ウェルシュテリアの名が初めて見られるのは1884年。ドッグショーに20頭前後のウェルシュテリアが出陳された記録があります。
この当時、北イングランドでは「オールド・イングリッシュ・ワイヤーヘアード・ブラック・アンド・タン・テリア」というウェルシュテリアによく似た犬種が飼育されていました。この2犬種が同じドッグショーに出陳されると、混乱する参加者や審査員が続出したそうです。

そのため、イギリスケネルクラブ（EKC）は1886年にウェルシュテリアを犬種として認定しました。独自の改良の歴史を歩むことになったウェルシュテリアは、ワイヤーフォックステリアやエアデールテリアなどと交配され、今日のような姿になりました。

小型犬ながらウェルシュテリアは活発で体力のある犬種なので、運動量は多いです。毎日散歩の時間は最低でも30分は確保してください。歩くだけでなく、自由に走りまわったり飛び跳ねたりなどの運動も取り入れると、さらに喜んでくれるでしょう。頑丈で好奇心旺盛なウェルシュテリアはアウトドアのおともにも最適です。

ウェルシュテリアは月に1回～2カ月に1回程度のトリミングやクリッピングが必要です。ショードッグのような独特の毛並みにしたい場合は、ストリッピング（プラッキング）という特別な技術で毛を抜かなければなりません。ペットサロンの費用がかかることは覚悟しておきましょう。
抜け毛は少ないですが、もつれて毛玉になりやすいので家庭でも2日に1回はブラッシングしてください。

丈夫で遺伝的病気もほとんどなく、飼いやすい犬種です。

賢く体が丈夫、大きさも手ごろなウェルシュテリア。飛び跳ねるように走る姿はとてもキュートで、テリアらしい頑固さやプライドの高さは多少あるものの、それこそがウェルシュテリアの魅力。

日本ではまだあまり見かけない犬種ですが、ブリーダーは存在しているので飼うことは可能です。ウェルシュテリアと一緒に暮らせば、かわいいわがままや愛嬌のあるしぐさで楽しませてくれますよ。