1.猫の眼球の大きさは人間と同じ!

猫は、人間とほとんど変わらない大きさの眼球を持っています。猫の頭が人間よりもはるかに小さいことを考えると、猫の目がいかに大きいかがわかりますね。また、瞳孔(瞳の部分)も大きく、猫は目いっぱいまで広げることができます。最大で人間の3倍ほども広がるのだそうです。

しかし、なぜこんなにも猫の目は大きいのでしょうか?
それは、猫が本来夜行性の動物であり、待ち伏せ型のハンターであることが深くかかわっていると考えられます。

暗闇の中で獲物の動きをとらえるには、水晶体や角膜、瞳孔をできるだけ大きく広げてわずかな光でも感知する必要があるのです。そのために猫は大きな眼球を持つようになったとされています。

2.暗闇できらり! 猫の目には反射板がある?

暗闇で猫の目が光って見えるのは、猫の目に反射板があるからです。つまり、反射板に光が反射しているのですね。この反射板をタペタムと言います。タペタムは、暗闇でもわずかな光をとらえるための細胞層で、猫のような夜行性の生き物や深海魚など暗い場所に生息する生き物が持っています。昼行性の人間にはありません。

ここで、猫と人間の光をとらえる仕組みについて違いを比べてみましょう。
光は角膜から入って、瞳孔、水晶体の順に通り、最終的に網膜に届きます。網膜はたとえるならカメラのフィルムのようなもの。光の情報をとらえるところです。

◇人間の場合
→→→角膜|瞳孔|水晶体|網膜→→
※網膜でとらえきれなかった光はそのまま通過する

◇猫の場合
→→→角膜|瞳孔|水晶体|網膜⇔タペタム(反射板)
※網膜を通過した光はタペタムで網膜に戻される

人間の場合、光を網膜でキャッチしますが、とらえきれなかったわずかな光は網膜を通過してしまいます。しかし、猫は網膜の後ろ側にタペタムがあるので、網膜で光をとらえきれなくてもタペタムで反射させて再び網膜に戻すことができるのです。

猫は、人間の1/7の量の光でも、じゅうぶんにものを見ることができると言われていますが、これはタペタムと大きな瞳孔によるものなのです。

猫まめ知識 猫写に注意! 「フラッシュ撮影」で発作や網膜損傷の危険が……

猫を見かけると思わず写真を撮りたくなるものですが、フラッシュ撮影だけは絶対に避けてくださいね。猫にとって大変危険です。

タペタムによってわずかな光でもキャッチできる猫の目ですが、その感度の良さが仇となり、強い光をあてると網膜に障害が起こる可能性があります。一度のフラッシュでは大きな障害が出なくとも、連続して何度も使えば失明する可能性もゼロとは言いきれません。

また、フラッシュによってけいれん発作を引き起こす場合もあり、特に子猫の場合はたった一度のフラッシュでも起こり得ます。
実際に、友人が我が家の子猫の顔をうっかりフラッシュ撮影してしまい、猫がてんかんのような発作を引きおこしたことがあります。すぐに病院で治療をしたので助かりましたが、本当に冷や汗ものの出来事でした。

フラッシュ撮影はもちろん、猫の目に強い光をあてないように注意しましょう。

3.猫の昼顔の秘密。瞳が縦に細くなるのはなぜ?

昼間の猫は、瞳孔が縦に細長くなっていて夜とはまた違った表情を見せてくれます。

瞳孔が縦長の形に開閉するのは、瞳孔括約筋という瞳孔を囲む筋肉の働きによるもの。猫の瞳孔括約筋は上下に細長く、縦長の形に収縮します。猫の縦長の瞳は人間のように丸い瞳孔よりも光量調節が優れていて、わずか1㎜幅程度にまで狭めることもできるんですよ。(もちろん大きく開くこともできます。)

ただでさえ光に敏感な瞳を持つ猫。昼間の瞳孔が細くなるのは、瞳を守るために目に入る光量を調節しているというわけなのです。

猫まめ知識 大型の肉食動物や草食動物の瞳孔は?

細長い瞳孔は猫の特徴でもありますが、ヘビなど小さな肉食動物の多くも縦型なのだそうです。一方、大型の動物や、猫科のトラ、ライオン、ヒョウなどは人と同じ丸く縮む瞳孔を持っています。
詳しい理由は明らかではありませんが、きっと縦型の瞳孔を持っていると猫やヘビなど小型のハンターに有利に働く何かがあるのでしょう。

ちなみに草食動物のウマやウシなどの瞳孔は横長。これは、常に視界を広くして、陰に潜む捕食者をいち早く察知する必要があるからと考えられます。草食動物は肉食動物に狩られる「獲物」の立場ですからね。

4.猫が興味を持っている否かは瞳の大きさで見分けられる?

猫の瞳孔は光の量の調節だけでなく、感情によっても大きさが変わります。猫をじゃれさせているときなどに、猫の瞳孔がググッと一気に大きくなる様子を見たことはありませんか? 猫の瞳孔は驚いたり、興味を惹かれた時に大きくなり、怒っている時には細くなります。

瞳孔の開閉は自律神経(交感神経と副交感神経)によって支配されているため、明暗だけでなく感情によっても開閉します(人間も同じです)。自律神経によって支配されているということは、瞳孔の開閉は自分の意志ではコントロールできないということです。心理学で瞳孔から感情を読み取るテクニックがありますが、猫も人間のように瞳孔に感情があらわれるのです。

私を見つめる猫の瞳孔が大きく開いているときは、「飼い主としてちゃんと興味をもたれているなー」と解釈するようにしています。

5.人間の1/10? 昼間の猫はド近眼!

猫の大きな瞳を見ると、なんとなく視力が良さそうに感じてしまいますが、昼間の猫の視力は人のたった1/10で近視傾向にあります。その近視具合といったら、たった6m離れただけでよく見えなくなってしまうほど。※静止しているものの場合

これは、暗闇でもよく見えるように進化してきた猫の目の負の側面でもあります(猫にとっては負ではありませんが)。わずかな光でも取り込めるように角膜や水晶体も大きくなりましたが、大きすぎて焦点を合わせるなど細かな調節ができないのです。

また、夜に便利なタペタムも昼間は逆効果に。光を散乱させてしまうので視界がぼやけてしまいます。

6.猫の動体視力は人間の4倍

猫の動体視力(動くものを見る力)は非常に優れており、人間の4倍といわれています。
特に、獲物となる小さな動物がちょこまかと動くようなスピードがよく見えるようで、1秒間に4㎜移動するくらいの小さな動きもはっきりとらえることができます。猫は肉食動物で、もともと狩りをしていましたから、獲物の動きをとらえるために動体視力が高まるのは自然のことだったのかもしれませんね。

昼間は、6mほどの近距離でもよく見えないド近眼の猫ですが、それは対象物が静止している場合の話。ちょこまかと動いている場合であれば、30m離れていても優れた動体視力によって認知することができるというから驚きですよね。

ただし、あまりに動きがゆっくりすぎると、静止しているもの区別がつかなくなり、認知することは難しいようです。

7.猫は獲物の距離を正確に測ることができる

猫の目は人間と同じで真正面を見るように顔の前方についています。これは両眼視するためです。両眼視とは左右両方の目で見ること。対して片方だけの目で見ることを単眼視と言います。両眼視は対象物を立体的にとらえることができ、目の位置が前方であるほど両眼視野は広がります。

ここで、猫と犬の視野を比べてみましょう。
・猫の場合 全体視野(単眼視+立体視)…約260度/立体視野…約120度
・犬の場合 全体視野(単眼視+立体視)…約220度/立体視野…約90度

猫の方が広い視野を持っていることがわかりますが、この違いの背景には狩猟方法が大きく関わっています。
猫は待ち伏せ型のハンター。確実に獲物を捕まえるために、獲物との距離を正確に把握する必要があるのです。一方、犬は群れで獲物を追いつめる追跡型のハンターです。追い込めれば仕留められるわけですから、猫ほど距離感を確実に測る必要があまりないのかもしれません。

しかも、猫は立体視野に限らず、全体視野が260度とかなり後方まで見ることもできるのです。猫は獲物を探す視覚が優れているともいえますね。

8.猫が見る景色は青と黄色の世界

猫の色覚は2色型といわれており、猫の見る世界は基本的に青と黄で成り立っています。
特に、赤と緑の区別が難しく、赤色は灰色がかって見えています。夜行性の猫にとっては色よりも明暗や大きさ、模様、動きを識別する方が大事ということなのでしょう。

猫まめ知識 猫は色覚を2色失った?

人間や猫をはじめとする哺乳類の色覚には紆余曲折の歴史があり、一度色覚を失っていることはご存じですか?

魚類、両生類、爬虫類の色覚は基本的に4色型ですが、猫や犬をはじめ多くの哺乳類は2色型です。しかし、哺乳類もかつては4色型色覚でした。

哺乳類の誕生は約2億3000万年前のこと。誕生時は4色だった色覚も、その後まもなく訪れた恐竜黄金時代の間に2色失うことになります。それは、恐竜が闊歩する昼間には活動できず夜行性になったからです。暗闇では色を識別する必要がありません。つまり、生活上、色が必要なくなったのです。

恐竜が絶滅すると、哺乳類は再び昼間の世界に戻ってきます。このとき色覚を3色まで取り戻すこととなりますが、それは霊長類だけで、猫や犬など多くの哺乳類は2色のままでした。

この背景には、森で暮らす霊長類の食性が関わっていると考えられています。霊長類の主食は果実でしたが、果実を食べるためには、たとえば「果実が赤く熟れているか」など熟成度の判断や、果実と葉を区別する必要がありました。しかし、赤や緑を識別できない2色型色覚では判断できません。そのために色覚が進化したと考えられます。

最後に

猫の目の不思議、いかがでしたか? 猫が見る世界は人間とはだいぶ異なることが想像できたのではないでしょうか。でも、猫の世界を少しでも理解すれば、愛猫の気持ちに一歩近づけると私は思います。

猫はじっと見つめられるのが苦手な生きものですが、信頼する相手には見つめ返してくれることがありますよね。まさに目と目で通じ合う仲。愛猫とはぜひそんな関係になりたいものです。



参考文献
ジョン・ブラッドショー(2014)『猫的感覚 動物行動学が教えるネコの心理』(羽田詩津子訳)早川書房.
ナショナルジオグラフィック日本版『研究室に行ってみた。』第4回 なぜ霊長類は3色型色覚を獲得したのか,http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/16/012700001/020300004/
 執筆者プロフィール
2匹の愛猫と暮らす元博物館学芸員です。専門は古生物学。ペットに関する科学的な知識を分かりやすくお伝えしていきたいと思っています。
保有資格はペットシッター、愛玩動物飼養管理士2級

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