犬の血尿の症状

尿中に血が混じっている状態を血尿といい、血尿になると尿の色がピンク色~暗赤色になります。血尿を現す疾患は多岐に渡るため、症状も非常に多様です。

細菌性膀胱炎になると血尿のほかに、下記のような症状が表れます。

・異常な尿臭
・失禁
・尿の混濁
・陰部をよく舐める
・いつもより排尿回数が多い
・尿量が少ない
・下腹部痛から背中を丸める
・排尿時に鳴く(排尿の終わり際など)
・唸り声をあげて痛そうにする
・震える
・いつもより食欲がない
・怠そうにする

尿路結石症では上記の症状に加えて、キラキラ光る結晶が尿とともに排出されたり、陰部などの排尿路周辺の被毛に結晶が付着したりすることもあります。

何度も排尿ポーズを取るにもかかわらず、全く尿が出ない場合は尿道閉塞を起こしている可能性も。
この場合は尿道閉塞を解除するための緊急処置が必要となるので、急いで動物病院を受診してください。尿道閉塞の状態を一日放置するだけで高カリウム血症に陥り、不整脈や心停止を起こすケースもあります。
尿道閉塞や腎盂腎炎などで尿毒症に陥ると重度の食欲不振や吐き気、虚脱やけいれんが認められることがあります。

腎盂腎炎では発熱、食欲不振、倦怠感が強く現れるため、早急に積極的な治療が必要となります。

血尿とは異なりますが、血尿と色のよく似たヘモグロビン尿は全身の感染症に伴って出現することがあります。この場合も発熱や倦怠感、震え、食欲不振などの症状が認められます。
これらの症状は細菌性膀胱炎や腎盂腎炎のような、血尿を招くその他の疾患と非常に似ていますが、原因や治療法が大きく異なるため注意が必要です。

ミオグロビン尿症は多くの場合、赤色尿以外の目立った臨床症状を伴いません。
ただし、激しく筋肉を使ったあとに現れるものなので、筋肉の痙攣や筋疲労からの倦怠感を起こす可能性があります。

ビリルビン尿は胆肝疾患や薬物中毒に関連して現れるため、元気消失、食欲低下、吐き気などの症状に加えて、上腹部痛や震えなどの神経症状を伴うことがあります。

犬の血尿の原因

一般的に犬の血尿の原因は、膀胱炎、尿路結石症、腎臓疾患が多く、前立腺疾患、泌尿器系腫瘍などでも認められます。

膀胱に炎症を起こした状態を「膀胱炎」と呼び、その原因が細菌である場合は「細菌性膀胱炎」と呼びます。
環境中の細菌が尿道をさかのぼることによって膀胱に侵入し、そのまま定着すると細菌性膀胱炎を発症します。この場合、尿とともに炎症を起こした膀胱壁からの出血が排出されることで、血尿が現れます。

尿路結石は、カルシウムやマグネシウム、リンなどといったミネラル成分が固まった石の塊のようなものです。
腎臓、尿管、膀胱、尿道といった一連の尿の通り道を「尿路」と呼びます。
尿路結石は発生場所によって「腎結石」、「尿管結石」、「膀胱結石」、「尿道結石」と呼び方が異なりますが、結石が形成され、成長する場所は腎臓や膀胱であると言われています。
結石は非常に硬く、表面は荒く尖っているため、コロコロと転がるだけでも尿路を傷つけ、血尿をもたらします。

腎臓疾患には、腎盂腎炎、糸球体疾患、腎腫瘍などがあります。
腎臓は膀胱の上流に位置する臓器のため、通常、腎盂腎炎は膀胱炎などの尿路感染症に伴って発症します。
糸球体疾患では、腎臓での細菌感染や体全体の免疫異常、内分泌疾患などの要素が複合し、腎臓の糸球体という部位が傷つくことで血尿を招きます。
腎腫瘍では、腫瘍が成長する過程で周囲の正常組織を破壊するため血尿が認められることがあります。

ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿、ビリルビン尿などは似通った色から、血尿と見間違える可能性があるので注意が必要です。
レプトスピラ症、バベシア症、フィラリア症などといった感染症では、ヘモグロビン尿が現れます。
ミオグロビン尿はレースなどの激しい運動のあとや、痙攣発作で筋肉を激しく使用したあとの排尿時に現れることがあります。
薬物中毒などによる急性肝障害や胆汁鬱滞などの際には、全身に黄疸を伴ったビリルビン尿が出る場合があります。

メス犬に起こる発情出血(生理)は、血尿と似ています。
発情出血は一般に1年間に2回ほどで、およそ6カ月に一度の周期で起こります。頻尿や震えなどの症状を現わすことなく、通常2~3週間程度で終息します。

犬が血尿を出したときの対処法・治療法

犬の血尿の原因は数多くあるため、対応法や治療法は原因に基づいて大きく異なります。
血尿に気が付いたら採尿し、動物病院を受診しましょう。採尿ができなかった場合は、排尿時の様子や色を動物病院で伝えられるように、動画や写真に撮っておくことも有効です。

細菌性膀胱炎や腎盂腎炎による血尿では、主に抗生剤や止血剤、消炎剤などによる治療を行います。
糸球体疾患の場合は、免疫抑制剤を用いた治療が行われることがあります。
尿路結石症に伴って出現した血尿の治療には、抗生物質や止血剤に加えて、ミネラルバランスが考慮された療法食による食事管理を行います。療法食は体内にミネラル分が過剰に蓄積することを防ぐとともに、尿を弱酸性に保ち、飲水量を増やすことで尿路結石症の改善効果も見込めます。

大型の結石や溶解しない成分の尿路結石に対しては外科手術を行います。尿道閉塞を起こした場合は閉塞解除のための緊急処置が必要です。
感染性のヘモグロビン尿症の治療には、細菌性膀胱炎と同様に抗生物質が用いられます。ビリルビン尿症は強肝剤や利胆剤が用いられますが、胆管閉塞時には外科手術による治療を行います。

犬の血尿を防ぐための方法

ストレス、不適切な食事、肥満などの要素は、尿路感染症や尿路結石症のリスクを高めます。すなわち、それらを改善することができれば血尿のリスクを低く抑えられるのです。
例えば、尿路疾患用療法食やサプリメントを与えて尿を酸性にすることで一部の尿路結石を溶解したり、発生を予防したりすることができます。
また、酸性尿の中では細菌が繁殖しにくくなるので、尿の酸性化は細菌性尿路疾患の予防にもなります。

療法食の中には排尿による病原体の洗い出しを促進するために、飲水量を増やす意図を持ったものがあります。
飲水量を増やすためには、気が向いたときにすぐ水が飲めるよう、犬の行動範囲内に水飲み場を複数設置することをおすすめします。
ちなみに、水は冷水よりも少しぬるいほうがよく飲んでくれます。
おいしそうな匂いをつける目的でささみの茹で汁や鰹節のだし汁をごく少量入れてあげると、飲水量が増えることもあります。与える水は軟水や水道水を使います。

まとめ

血尿はさまざまな原因によって現れますが、療法食や肥満、高脂血症を避けることなどで細菌性膀胱炎や尿路結石症を予防することができます。血尿を呈する病気のなかには慢性化すると完治が難しくなるものや救急治療を必要とするものがあります。
健常時から愛犬の排尿の様子をチェックしたり、尿路疾患の知識を身に付けたりすることで、早期に血尿に関連する病気を発見できるようにしましょう。
 執筆者プロフィール
北里大学獣医学部 獣医微生物学研究室卒。
2016年ホリスティック・ケアカウンセラーのオープンコース修了。
病気になってからの治療よりも、病気にならない体づくり、薬に頼りすぎた治療ではなく、普段の食生活や過ごし方で自然治癒力を高められるような治療法を重視しています。
現在3人の子育て中。
自宅では心臓に異常があるため引き取った犬1匹と、学生時代に携わっていた動物の保護活動から引き取った猫2匹(元野良と、その猫が自宅出産にて産んだ息子猫)を飼っています。

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