犬の歯の構造

歯の本数

犬の乳歯は生後約2カ月で生えそろいます。乳歯の数は上14本、下14本の計28本です。その後、生後4~5カ月で乳歯が抜け落ち、生後7~8カ月までに永久歯に生え変わります。永久歯は上20本、下22本の、計42本で構成されます。

歯の種類と役割

門歯(もんし)
切歯(せっし)とも呼ばれ、人間でいう前歯の部分にあたります。獲物を捕らえ、噛み切る役割を持ちます。永久歯は、3~5カ月目から生え始めます。上6本+下6本の計12本。

犬歯
鋭く長い形状で、獲物を捕らえる、食べ物を固定する、引き裂くなどの役割を持ちます。いわゆる「牙」です。永久歯は、5~7カ月頃から生え始めます。上2本+下2本の計4本。

前臼歯
獲物や食べ物を固定し、はさみのように切り裂く役割を持ちます。生え始めは4~6カ月頃です。上8本+下8本の計16本。

後臼歯
上面がすりこぎ状になっており、食べ物をさらに細かくし、すり潰す役割を持ちます。生え始めは5~7カ月頃、上4本+下6本の計10本。

犬の噛み合わせの種類

シザーズバイト
鋏状咬合(はさみじょうこうごう)とも呼ばれる、正常な噛み合わせです。
私たち人間の正しいとされる噛み合わせと同じで、口を閉じたときに上の門歯の内側に下の門歯の外側がわずかに接します。

レベルバイト
上下の門歯の先端がぴったり合っている噛み合わせです。水平咬合、切端咬合とも呼ばれます。

オーバーショット
下顎より上顎が長く、口を閉じたときに上の門歯が下の門歯より前に出て、上下の門歯が触れ合わない噛み合わせをいいます。
オーバーバイト、上顎前出咬合(じょうがくぜんしゅつこうごう)ともいいます。

アンダーショット
上顎より下顎が長く、口を閉じたときに下の門歯が上の門歯に覆いかぶさっているか、前方に出てしまっている噛み合わせをいいます。
アンダーバイト、または、下顎突出咬合(かがくとっしゅつこうごう)、反対咬合とも呼ばれます。
アンダーショットは不正咬合(正しくない噛み合わせ)とされていますが、ブルドッグパグボクサーなどの犬種ではスタンダード(標準)です。

不正咬合とは

不正咬合とは、標準シザーズバイト以外の噛み合わせをいいます。
ほかに、左右の歯がアンバランスに成長する「ライバイト」、上下の顎は正常ながら、一部の歯並びに異常がある「クロスバイト」という不正咬合もあります。

不正咬合が生まれる理由

1. 遺伝
不正咬合の一部は遺伝の影響を受けています。
アンダーショットをスタンダードとする犬種があり、スタンダードを基準に繁殖が繰り返されているためです。
ブルドッグボクサー、フレンチブルドッグなど、ブルドッグの血を引いている犬に、生まれつきのアンダーショットが多いといわれています。
また、最近はトイプードルにアンダーショットが多く出ているようです。
もともと不正咬合は、大型犬や中型犬より小型犬に多く、小さな顎と歯の大きさのバランスの悪さが原因といわれています。
私たち人間が決めたスタンダード基準、それに基づいた繁殖、小型化を目指した品種改良のための繁殖など、遺伝は遺伝でも、人間が作り出した遺伝といえるかもしれません。

2. 乳歯遺残(にゅうしいざん)
乳歯が抜けずに残ったままの状態で永久歯が生えてくることがあります。
抜けない乳歯は永久歯成長の邪魔をし、その結果、2列で生えたり、クロスバイトを引き起こしたりします。
顎の小さい小型犬に多く起こることが分かっています。

犬の噛み合わせは矯正したほうがいい?

歯にはそれぞれ役割があり、生える位置も決まっている

不正咬合は歯の位置がずれ、噛み合わせがずれている状態ですので、さまざまな不都合が生じる可能性があります。例えば、①フードが食べづらい、うまく食べられない。②歯垢(プラーク)が取り除きにくく、歯石や歯周病などの発症率が高い。③歯茎や口蓋(口の中の上の部分)に歯があたり、傷つけてしまう。などです。

ただし、犬の口内治療は全身麻酔を用いての大掛かりで専門的な手術になることも多いので、③の重度なパターンでない限りは、特に必要ないといわれています。
口内トラブルが起きないよう、日頃から歯磨き、口内チェックを行いましょう。

矯正や治療が必要かもしれない不正咬合による健康被害

上顎と下顎の長さの差が大きい場合には、歯が歯茎や口蓋を傷つけてしまう可能性があります。この場合の顎の差は、目視で確認できるレベルですので、異常に気付いた時点で獣医さんに相談しましょう。

クロスバイトで、前歯や犬歯が口内を傷つけ犬に苦痛を与えてしまうケースがあります。この場合は抜歯や矯正を検討していく必要があるでしょう。
矯正は人間の場合と同じように、歯に矯正器具を装着する方法が基本となりますが、専門性の高い分野なので、すべての動物病院で対応できるわけではありません。

乳歯が生えそろう生後2カ月前後に一度、顎の状態や噛み合わせを診察してもらいましょう。
また、生後8カ月の頃に残っている乳歯は乳歯遺残になりますので、この頃の状態がどのようになっているかで、今後の治療についてはっきりしたことが分かるといえます。全身麻酔での治療が必要になりそうな場合は、去勢/不妊手術などほかの手術と同時におこなう提案があるかもしれません。

犬の噛み合わせの注意点

噛み合わせは悪くても、犬にとってそれほど不都合がないようであれば、矯正や抜歯の必要はないといえるでしょう。
しかし、ドッグショーでは、スタンダードから外れる不正咬合は大きな欠点となります。もし、ドッグショー出場の予定があるなら、治療の可能性が出てくるのかもしれません。しかし、とくに健康被害が見られない、容姿目的での歯科治療は、倫理的問題から引き受けない病院も多いようです。

不正咬合のままで過ごすなら

多くの不正咬合は、程度が低く、治療は行わずとも健康にも生活にも支障なく過ごすことができます。
あとは、発症率の高い歯周病や歯肉炎にならないよう、丁寧なデンタルケアを心がけましょう。
生え変わりが終わり、永久歯になったときに出血などがないかの確認も重要です。

まとめ

噛み合わせの治療は、健康と生活に支障がなければ必要ないと考えて良いでしょう。
しかし、愛犬の不正咬合に気付いた場合には、生え変わりや健康診断の時期を利用し、歯科健診を受けて下さい。
健診で、歯茎の腫れを診てもらった結果、歯根破折(しこんはせつ)が見つかったというケースもあります。
痛みを訴えることができない愛犬の健康チェックは、飼い主さんが責任をもって行いましょう。
 執筆者プロフィール
No dog No life

特に牧羊犬が大好きです。
一番の関心事は「シニアわんことの暮らし」。
「人と動物の共生」「ワンヘルス」にも関心があり勉強中です。

動物愛護フェスティバル実行委員。
某県の災害時動物救護ボランティアチームに所属。
某県の動物愛護センターの登録ボランティア(おうちに帰れなかった犬たちの保護と譲渡のお手伝い)もしています。

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