犬の生理はいつから始まる? 周期は?

さて、みなさん「生理」と呼んでいますが、犬の場合、正確には「発情出血」といいます。実は人間とはタイミングもメカニズムもまったく異なります。
人間の生理は、排卵と排卵のちょうど中間時期に、妊娠せず不要になった子宮内の血液を外に排出するためのものです。
犬は発情出血の名の通り、発情期の直前に子宮への血管分布が多くなり、そこから血液が漏れ出すイメージです。
したがって、この発情出血のすぐあとに発情期(オスを受け入れる時期)がきて、排卵します。

個体差はありますが、メス犬は生後4~12カ月で性成熟を迎えます(生殖器がおとなになり繁殖可能になる、という意味です)。
大型犬ほど性成熟が遅い傾向にあります。性成熟を迎えると発情するようになり、そのタイミングで発情出血が始まります。
初回の発情は出血量も少なく、オーナーさんが気付かないまま終わっていることも多いです。

発情出血は平均で7~10日続きます。しかし、これにも個体差があり、3日で終わる子もいれば最長18日続く子もいます。
先述した通り、出血が認められるのは発情前期といって、それが終わった後に本来の発情期(オスを迎え入れる時期)がきます。
出血が始まって発情期が完全に終わるまでは、トータルで1カ月程度かかります。

初めての発情出血を迎えたあとは、平均して年2回、6カ月おきに発情期を迎えるといわれています。
ただし、小型犬ではもう少し頻繁にくる子もいますし、大型犬では年に1回しかこない場合もあります。

発情には季節性があり、一般的に春と秋に迎えるといわれていますが、冷暖房完備の現代の生活では季節感がなく、1年を通じて見られるようになってきています。

犬の生理の症状について

さて、少し細かい話に入っていきます。
先ほども説明しましたが、出血が起こるのは発情前期といいます。この期間、出血以外に以下のような症状が見られます。

・陰部が赤みを帯びる
・陰部が厚ぼったく腫れる
・陰部を舐める
・元気、食欲がなくなる
・おしっこの回数が増える
・腰を気にする
・気持ちが不安定になる
・攻撃性が増す
・普段よりオス犬に興味を示す(ただし、まだオス犬を受け入れることはしない)

もちろん個体差がありますので、症状が重い子もいれば、無症状の子もいます。
人間のように血液の塊がはがれるわけではないので、「生理痛」のような痛みはないと考えられていますが、普段とは異なる感じはあるようです。

発情期(この段階では出血は終わっています)に入ると、オスを受け入れるようになります。具体的には、オスの匂いを嗅ぐ、自分の匂いをオスに嗅がせる、オスと追いかけっこするなどの行動をとります。
また、元気食欲低下や気持ちの不安定な状態が続くかもしれません。愛犬のペースに合わせてゆっくり過ごしましょう。

発情後期になるとほとんどの犬が普段通りの状態に戻ります。しかし、まれに偽妊娠(想像妊娠)を起こす子がいます。

・乳腺が腫れてきた
・お乳が出る
・ぬいぐるみなどで子育てを始めた

上記のような症状を示す場合は、偽妊娠の可能性が高いです。
乳腺の腫れは気になりますが、過度に刺激を与えるとそれがまた偽妊娠を助長してしまいます。ぬいぐるみなどは取り上げ、自然に状態が落ち着くことを待ってください。
なかには実際に妊娠している子もいるので、心当たりがある場合は動物病院で検査を受けましょう。犬の妊娠期間は平均66日です。

犬の生理中に飼い主がすべき対策

自分の愛犬に子どもを産ませたいと思っているオーナーさんは、発情期がくる前からしっかり陰部のチェックをして、発情期を見極めることが大切です。
発情出血のあとに本当の発情期、つまり妊娠できるタイミングがきます。そのタイミングも2~3日と非常に短いため、それまでに前もって交配相手を決める、動物病院で膣スメアの検査をするなどの準備が必要です。

子どもをとることを望まないオーナーさんは愛犬の妊娠を防ぐために、さまざまな工夫をしなければなりません。
最も有効なのはオスの去勢手術、メスの避妊手術です。しかし、健康な体にメスを入れるのはかわいそう……と手術を望まれない方もいます。
その場合は、オムツをつける、オスとメスを近づけない、発情中は散歩をお休みにして外出しないなどを徹底しましょう。オムツをつけることは分泌物で床を汚してしまうことも防げます。
分泌物による陰部の汚れが気になる場合は、軽くぬるま湯で拭き取ったり、シャンプーをしたりしてもかまいません。シャンプーあとはしっかり毛を乾かして、清潔を保ってください。

繰り返しになりますが、発情出血のあとに本来の発情期がきます。出血が終わったからと安心せずに、出血開始から1カ月は妊娠する可能性があることをしっかり覚えておいてくださいね。

避妊手術を受けるメリット・デメリット

妊娠を望まれないオーナーさん、多頭飼いでオスとメス離すことが難しいオーナーさんは早期の避妊手術を考えてみてください。
早期に手術を受けることには、以下のようなたくさんのメリットがあります。

・妊娠を防げる。
・乳腺腫瘍の発生率が低くなる(2回目の発情までに手術をすると発生率が低くなることが証明されています)。
・子宮蓄膿症(老齢の避妊手術をしていないメス犬に多い疾患で、子宮内に膿がたまり、重篤な症状を引き起こします)、子宮や頚、卵巣などの腫瘍を防げる。
・発情によって引き起こされる体調不良や精神的ストレスを軽減できる。

もちろん、手術になりますので、以下のデメリットもあります。

・麻酔をかけるので100%安全とはいえない。
・手術による貧血、感染のリスクがある。
・太りやすくなる(避妊手術をするとホルモンの影響で食欲が増える、基礎代謝が下がるなどの報告があります)。
・骨肉腫、血管肉腫、甲状腺機能低下症など、一部の疾患の発生リスクが上がる(アメリカの論文で報告されています)。

犬の生理がこないときは?

前回の発情出血がいつきたか、次はいつ頃くるか、オーナーさんでしっかりチェックしておきましょう。
ただし1年目の発情はタイミングも周期もまだバラバラであることが多いので、神経質にならず、気長に様子をうかがってください。

なお、生理がこない場合は、以下の可能性が考えられます。

・妊娠
・偽妊娠
・発情周期異常
・ストレス
・卵巣嚢腫、腫瘍

動物病院で検査が受けられますので、気になる方は受診してください。

また逆に、生理のタイミングではないのに、陰部から分泌物が出続けている場合は子宮蓄膿症という疾患の可能性が高いです。早急な治療が求められますので、すぐに動物病院を受診しましょう。

まとめ

簡単ではありますが、犬の生理について説明してみました。人間とはまったく仕組みやタイミングが違うことに驚かれましたか?
愛犬の子どもを取るか取らないか、避妊手術を受けるか受けないかは、ご家庭によって色々な考え方があるでしょう。
「絶対にこうするべき!」という選択肢はありません。正解もありません。
獣医師は、みなさんが納得できる選択を選べるように、知識の限り、そのお手伝いをさせていただける存在でありたいと思います。
 執筆者プロフィール
獣医師免許取得後、3人の出産・育児をはさみながら、8年間都内の動物病院で勤務。家族の転勤に伴い、各地を転々としています。
現在はアメリカ在住。動物保護シェルターのサージェリー部門にて勉強中です。ママ獣医・転勤族獣医としての在り方を模索中です。
小さいころからウサギが好きで、獣医師になることを決めました。
ペットとの笑顔あふれる生活のために、少しでもオーナーさんの不安が少なくなるよう、病気のとき以外にも何でも相談できる身近な獣医師を目指しています。

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