犬の毛色は退色するもの?

ミニチュアシュナウザー

被毛の退色はさまざまな犬種で見られる

毛色が淡くなったり薄くなったりという変化だけでなく、シニアになりいわゆる白髪になる老化現象も含めれば、退色はほぼすべての犬に起こるものといえるでしょう。

鼻の退色

被毛だけでなく、鼻が退色する犬種もいます。
原因は被毛の退色原因と同じで、遺伝や老化現象によるものから何らかの病気の症状である可能性もあります

鼻の退色の原因

  • 遺伝
遺伝的にメラニン色素が薄い犬の場合は、子犬の頃は黒い鼻をしていても、徐々に薄くなる可能性があります
  • 老化現象
シニアになりメラニンが合成されにくくなり、働きが低下したことにより退色するケースもあります。
  • ウインターノーズ
冬が近づくにつれ色素が薄くなる、「ウインターノーズ」または「スノーノーズ」と呼ばれる現象です。ラブラドールレトリバーやハスキーなどの犬種によくみられます。
あたたかい季節になると元の色に戻る子が多いことから、日照時間と紫外線が関係しているといわれていますが、元に戻らず徐々に薄くなる子もおり、メカニズムの詳細はまだわかっていないようです。
  • 病気
<エリテマトーデス>
エリテマトーデスという、自分の体を攻撃してしまう自己免疫疾患の症状である可能性もあり得ます。
エリテマトーデスには全身の臓器に病変が出る「全身性エリテマトーデス」と、皮膚にだけ症状がみられる「皮膚エリテマトーデス」の二種類があります。
鼻に症状が出ている場合は後者の「皮膚エリテマトーデス」と考えられ、鼻の退色のほかに皮膚のただれ、かぶれ、かさぶた、フケなどの症状があります。

<ブドウ膜皮膚症候群>
免疫の異常によっておこる病気で、目の周り、鼻、唇の色が薄くなったり、赤くなったり、ただれたりします。
鼻の退色よりも、目をショボショボさせている、白く濁っているなど、目の症状の方が顕著にあらわれることが多いようです。

犬の毛の退色、原因は?

4頭のポメラニアン
次は被毛の退色について探っていきましょう。そもそも、犬の毛色はどのように決まるのでしょう。

毛色は、毛皮質内にあるメラニン色素によって発現します。
黒~茶色を生み出す「ユーメラニン」と、赤~黄色を作り出す「フェオメラニン」という2つの色素の割合により、色が作り出されます。

ユーメラニンは真性メラニンとも呼ばれ、多ければ黒に近い毛色になり、フェオメラニンとの割合で赤毛や茶、金色などの色になるのです。
これらの割合は遺伝子の型で決められ、犬の毛色遺伝子は13種類あることが分かっています。

成長

メラニン色素はメラニン細胞によって作られます。メラニン細胞は成長とともに増えるため、通常は成犬になるにつれ毛色は濃くなるということになります。
しかしトイプードルのように、1歳前に退色しはじめ、成長とともに徐々に薄くなったり淡いカラーに変色したりする犬もいます。これは、レッドやアプリコットなどいわゆる中間色の色素が不安定であるために起こるという見解があります。
また、子犬と成犬の毛穴の数は変わらないまま、成長とともに体表が広がるために退色したようにみえる、という見方もあります。

加齢

メラニン細胞は成長とともに増え、老化によって減少します。
シニアになると退色し、白い毛が増えていくという老化現象は、人間の白髪の生える仕組みと同じと考えられています。
老化が原因の場合は、顔の毛から退色していきます。

換毛

換毛するタイミングで退色がみられることがあります。これは毛が抜け変わる毛周期が、毛皮質内にあるメラニン色素の働きと関係しているためといわれています。
換毛は、ダブルコート種のように集中して抜け変わる犬もいれば、年間を通して少しずつ換毛している犬もいます。
また、紫外線の影響を受けるケースもあるといわれており、その場合は、寒い時期からあたたかい時期への換毛では濃く黒っぽい色に、あたたかい季節から寒い時期への換毛では淡い色に退色します。

栄養不足

毛色を生み出すのに欠かせないメラニン色素ですが、メラニン色素を体内で作り出すにはフェニルアラニンやチロシンと呼ばれるアミノ酸が必要になります。これらが足りず、栄養不足で退色する可能性もあります。

トリミング

プラッキングというトリミング方法をご存知でしょうか。
毛をカットするのではなく、トリミングナイフを使って毛を抜いていく方法です。毛を「間引く」とも表現するトリミング方法ですが、ジャックラッセルテリアシュナウザーなどのテリア種に対し、太く丈夫な毛質にし、毛色を濃くするために行われているものです。

本来プラッキングを行うべき犬種にカットやバリカンで処理していると、徐々に退色していきます。
また、毛が一定の長さまでしか伸びないダブルコート種の犬種にバリカンを繰り返すと、毛が生えなくなったり退色したりしてしまうことがあります。

ヨークシャーテリア

華麗な姿と毛色から、「動く宝石」とも呼ばれているヨーキーのように、もともと色が変わる犬種もいます
成長とともに黒い部分はシルバーに、茶色の部分はフォーンやゴールド色に変化していきます。
JKC(日本ケネルクラブ)で認められている毛色は「ダーク・スチール・ブルー&タン」のみになりますが、光沢をもつ美しい毛色が変化していくことで、ふたつとない、個性的なカラーをまとっているのです。

犬の毛の退色は予防法、対処法はあるの?

退色の原因で解説した通り、遺伝子や成長などで起こっている現象である場合がほとんどのため、予防や色を戻すのは難しいといえます。
以下にはそれ以外の、対処が可能なケースをご紹介します。

栄養不足が原因の場合

総合栄養食といわれるドッグフード等を主食にし、栄養バランスの整った食事内容にしましょう。
そのうえで、メラニンの合成に欠かせない「チロシン」を意識して摂取してみるといいでしょう
チロシンが多く含まれる食品は、大豆、高野豆腐、かつお節、チーズなどがあります。
チロシンの吸収と効果を高める相性の良い食べ物は、ご飯やイモ類などの糖質とビタミン類です。

老化現象の場合

回避はできませんが、食事内容を見直すことで老化を緩やかにするのは可能といえるでしょう。

プラッキングがおすすめの犬種

シュナウザーやジャックラッセルテリアなど、トリミングナイフでプラッキングを行うのが理想とされる犬種は、プラッキングでのお手入れを続けることで退色を防ぐことが可能です。

しかし、プラッキングは性格的に受け入れられない子もおり、あえてハサミやバリカンでお手入れしている飼い主さんも少なくないようです。

ハサミやバリカンでのお手入れは退色を避けられませんが、食事療法により濃い色をキープしたり取り戻したりできることもあるようです。SNSで飼い主さんたちの体験談を見つけることもできます。参考にされてみてはいかがでしょうか。

毛色の変化を楽しむことが大切

落ち葉を踏むシーズー
メラニン色素は成長とともに増えるため毛色は次第に濃くなるはずですが、プードル柴犬シーズーのように成長とともに退色がみられる犬種も存在します。

基本的に愛犬の毛色が退色しても困ることはなく、愛犬への愛情も変わらないはずです。愛犬に起こりうる退色について知っておけば心づもりもでき、変化を楽しめるのではないでしょうか。

愛犬の毛色がどのように変化するかは、親犬の毛色を見せてもらったり、同じ毛色の犬の写真を調べてみたりすると、イメージしやすいかもしれません

まとめ

シェットランドシープドッグ
私(筆者)の愛犬の1頭で、幼犬のときは茶色で、成長とともに表面の毛だけが黒っぽくなった子がいます。
カット不要のダブルコート種だったのですが、皮膚病治療のためにバリカンで短く刈り込んだ時期が1年ほどあり、その時には黒い毛色部分は焼けたような赤茶になり、毛質も色も大きく変わりました。

「ともに白髪の生えるまで」といいますが、愛犬のお顔の毛が白く退色するまで、毛色の変化を楽しみ、できるだけ長い時間をともに過ごすことができたら幸せですね。
 執筆者プロフィール
No dog No life

特に牧羊犬が大好きです。
一番の関心事は「シニアわんことの暮らし」。
「人と動物の共生」「ワンヘルス」にも関心があり勉強中です。

動物愛護フェスティバル実行委員。
某県の災害時動物救護ボランティアチームに所属。
某県の動物愛護センターの登録ボランティア(おうちに帰れなかった犬たちの保護と譲渡のお手伝い)もしています。

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