犬の鼻水の原因① 生理現象

冬場ずっと寒い場所にいたら、鼻水がだらだらでてきてしまった、という経験をしたことはありませんか?
外部の刺激から鼻や体の内部を守るため、鼻水は鼻腔内の分泌腺や血管から分泌されています。したがって、健康な状態でも鼻水は作られていて、気が付かないうちにのどに流れて飲み込んでいるのです。

では、冷たい空気に晒されたとき、鼻の中はどうなるのでしょう?
体内に冷たい空気が入らないようにするため、体は鼻への血液の供給を増やします。この反応により鼻腔内の温度が上がり、外気は温められてから体内に入ります。
しかし、同時に鼻腔内の分泌腺や血流が活発化することで、いつもより多くの鼻水が作られます。そうして飲み込みきれなくてあふれた鼻水が、外に垂れてきてしまうのです。
同じような仕組みとして、強いにおい(刺激臭)を嗅いだときも、刺激を排除するための防御反応として鼻水が多く作られます。
どちらの場合も生理的な反応になりますので、原因が取り除かれれば体は通常の状態に戻ります。

生理的な反応で出る鼻水のほとんどは、水のようにさらさらで、透明です。
ただし、あまりにも大量に出たり、原因が取り除かれても鼻水が止まらない場合は、アレルギーなどの病気が根底にあることも考えられるので、注意してください。

犬の鼻水の原因② 病気

鼻に異常がある場合、鼻水はもっともよく見られる症状となります。

感染

細菌、ウイルス、カビ、寄生虫などの感染で、鼻水が出ることがあります。
色がつくような鼻水は、細菌が関与してることが多いです。ただし、細菌が単体として原因になることはあまりなく、他の感染や炎症からの二次的増殖によって生じます。
細菌に限らず感染が起こると、黄白色から緑色のねばついた膿性の鼻水が出ます。また、カビや寄生虫の感染時には、鼻血が認められることもあります。
ウイルスが原因の病気では「ケンネルコフ」があげられ、ペットショップで購入したばかりの子犬では、環境の変化によるストレスから発症がみられることが多いです。

歯周病

特に中年~高齢犬の鼻水の原因としてよく見られる病気です。
口腔内のケアが上手にできていないと、歯石の付着から歯周病(歯肉炎)になります。炎症が進行すると、口と鼻を仕切っている骨が溶けて、一部穴が開きます。
最初は小さな穴なので、口腔内から見ても確認はできません。しかし、この穴から細菌を含む歯垢や食べ物のカスが鼻の中に流れ込み、やがて炎症や感染の原因となって鼻水が出るようになります。
最初は水様ですが、徐々に膿様の鼻水となります。
重症化すると畜膿症となり、溜まりすぎた膿が行き場を失って、鼻づらの皮膚に穴を開けてしまうことも。
根本治療は抜歯となり、全身麻酔の必要性がでてきますので、若いうちから口腔内のケアを行うように心がけてください。

アレルギー

アレルギーによる鼻炎は、空気中のアレルゲンに対する過敏反応として起こります。
初期や軽度では水様の鼻水が出ますが、慢性化したり感染を起こしたりすると膿様の鼻水に変化します。
アレルギーの場合は、ある特定の季節や、敷物を新調したとき、季節の寝具を出し入れしたときなと、決まったタイミングで症状が出ることが多いです。

その他(異物や腫瘍)

鼻の中に異物が入ったり、腫瘍ができていたりすると、鼻粘膜への刺激および炎症から鼻水が出ます。
異物の場合はくしゃみや違和感から頭を振る症状を伴うことが多く、ねばついた膿様の鼻水が出ます。
腫瘍ができたときは鼻出血を伴います。進行すると顔面の変形などの症状が出ることもあります。鼻腔内の腫瘍は悪性である可能性が高いです。

自宅でできる犬の鼻水の対処法

特に膿様の鼻水が出ている場合は、こまめに拭き取ってあげるようにしてください。
鼻水が固まって鼻づまりを起こすと、においが分からないなり食欲低下などを招きます。それによって、栄養状態の悪化が起こり、ますます状態が悪くなってしまうことがあります。
鼻水が固まって取りにくいときは、愛犬の体温より少し高めのお湯(40~42度)で濡らしたタオルを鼻にあて、固まりをゆるめてから取るようにしてあげてください。無理矢理拭き取るのはNGです。

鼻づまりがある場合は、部屋を加湿してください。
獣医師が使う治療の指南書には「蒸気のこもったお風呂場に20分くらい閉じ込める」と書いてあるくらいなので、症状の改善を目指すならかなりの湿度があったほうがよいでしょう。
ただし、この方法はあまり現実的ではないので、人が快適に感じる程度の湿度を目指してください。また、実際に愛犬だけをお風呂場に閉じ込めるのは、溺れる危険性があるので、お勧めできません。

上記で触れたように、気温差によっても生理的な鼻水が出ます。
冬場など、寒い日に愛犬を留守番させるときには暖房を入れるなど、室温が下がり過ぎないようにしてください。
また、夏場は、愛犬のいる場所に直接クーラーの風が当たっていないか確認してあげてください。
クーラーの冷たい空気は物理的に下に溜まります。人より下の位置で過ごすことが多い犬は、人が感じるより冷たい空気を吸っている可能性があるのです。
夏場に愛犬が鼻水を垂らしていたら、まず愛犬がいつもいる場所の温度を確かめてみましょう。

犬の鼻水は予防できる?

ウイルスが原因のケンネルコフは、ワクチン接種で予防できます。
すでに先住犬がいる家庭に新しい子犬を迎える場合は、まず先住犬にワクチンを接種しましょう。
また、万が一、子犬に鼻水などの症状が出たときは、できれば隔離してください。
隔離が難しいのであれば、愛犬達がいる部屋の頻繁な換気と、湿度管理が必要になります。この場合の湿度は50%以下が目安と言われています。

歯周病による鼻水の予防は、自宅でのオーラルケアがかなめです。
食事のカスなどから発生する歯垢を歯石にしないために、定期的に歯磨きをしましょう。理想は毎日ですが、難しければ2、3日おきの歯磨きでも効果はあります。
歯ブラシを嫌がる犬は、柔らかい布を指に巻き、歯を直接こする方法もあります。歯磨きガムや紐のおもちゃの引っ張りっこもいいですね。

この他、鼻水の予防としては、洗剤や香水も含め、刺激臭のするものや臭いの強いものは愛犬のそばでは使わないこと。また、繰り返しになりますが、室内と外気との気温差に気を付けることなどがあげられます。
そして、アレルギーの兆候のある犬の場合は、アレルゲンに触れさせないようにしましょう。

まとめ

愛犬に鼻水が出ていたら、水様や膿様などの状態や、量をチェックしてください。鼻づまりのある場合は、加湿に気を付け、鼻水はこまめに拭き取るようにしましょう。
鼻水が出ていると、人でも不快なものです。今回ご紹介したことに注意し、愛犬が快適に日々を過ごせるようになるといいですね。
 執筆者プロフィール
「今日は猫ちゃんにお注射した? 」と仕事に行くたびに聞く4歳の長男と、寝るときも猫とひよこのぬいぐるみが離せない2歳の次男に毎日振り回されながら、埼玉県三郷市の動物病院でパート勤務をしている獣医師です。
当たり前のことかもしれないけど、飼い主様の話をよく聞いて、一緒に治療を進めることを心がけながら、病気じゃなくても、ペットに関する心配事をぽつっと相談してもらえるような、飼い主様に寄り添える獣医さんを目指して、日々研鑚しています。

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