犬の便秘の目安

そもそも、犬は一日にどのくらいうんちをするのでしょうか? 実は、何回が正常、という明確な基準はありません。
一般的には食事の回数±1回くらいが一日の排泄量の目安ですが、お散歩に行ったときしか排泄しない犬であれば、散歩に行く回数しかしません。
また、愛犬の年齢や食事内容によっても大きく変わります。大事なのは、個々の犬で「1日あるいは数日の間隔で何回うんちがでるのか」というリズムが作られていることと、飼い主がそのリズムを把握していることです。
というのも、前述したように、正常な排泄の明確な基準がないため、便秘も「何日以上便が出なかったら便秘」といった基準はないのです。
つまり、「愛犬の正常と比べて」排便の回数が少なく、腹腔内に便が溜まっている状態を便秘と称します。

犬の便秘の要因は?

便秘を引き起こす原因はひとつではなく、愛犬によっては要因が複数存在することもあります。自宅で対処できるケースもありますので、愛犬にあてはまるものがないか確認してみてください。

食事や体調によるもの

ふすま、小麦、大豆など、不溶性繊維質が多く含まれるドライフードを食べている場合、便秘になりやすいです。
不溶性繊維質は、おなかの中で水分を吸収して膨らみ、便の量を増やすことで便通をよくする効果があります。
その一方で、便自体が硬くなる傾向が強く、犬によっては排便しづらくなります。
特に冬場などの寒い季節は水分摂取量が減り、便が硬くなりやすく、繊維質が多いとかえって便秘を招くことがあるのです。
この他、骨由来のおやつを頻繁に食べることでも、便が硬く出にくくなります。
また、愛犬が肥満気味の場合も要注意です。おなか周りの脂肪が増えると、排便のときにいきんでも筋肉に力が入りにくく、結果、排便できない状態に陥ります。
脳からの「排便したい」という信号は、一定の時間を過ぎると消えてしまうため、いきんで出ないと出ないまま終わり、おなかの中に便が溜まったままになってしまうのです。

環境や行動によるもの

引っ越しや部屋の模様替え、あるいは新しく犬を飼った、飼い主に赤ちゃんが産まれたなどの環境の変化があった場合、精神的に対応できなくて便秘になることがあります。
また、関連して、トイレが気に入らない場合も、排便行為自体を我慢してしまうため、便秘になることが多いです。
この「気に入らない」というのは、新品が気に入らないという場合もありますが、トイレが汚れている、多頭飼いの場合はトイレの数が足りないなどの環境面も含まれます。
この他、運動不足でも腸の動きが低下し、便通が滞るようになってしまいます。

病気によるもの

何らかの原因で肛門部付近に痛みがあると、排便のためにいきむことがイヤになり、排便を我慢してして便秘になることがあります。
また、直腸周辺のできものなどで、物理的に排便が阻害される場合もあります。
特に気を付けていただきたいのが、去勢していない雄犬です。
未去勢の犬の場合、前立腺肥大や肛門部近辺の筋肉がゆるむことで、会陰ヘルニアという病気にかかりやすくなります。これら病気でも、物理的に排便を阻害する症状が出ます。
この他、神経疾患や高カルシウム血症など全身性疾患でも、便秘が引き起こされることがあります。

犬の便秘を解消して健康に

人間の便秘解消として「食事、水分、適度な運動」というキーワードを聞いたことはありますか? 犬も同じです。
まずは食物繊維の多く含まれるフードを選ぶようにしましょう。ダイエットを目的としたフードには食物繊維が多く含まれる傾向にあります。このようなフードを与えるときは、十分に水分を取れるようにしてあげてください。水分摂取量が少ないまま食物繊維を多く摂取すると、逆に便が硬くなって出しづらくなります。

けれども、愛犬に「お水飲んで!」と言っても、なかなか飲んでくれないですよね?
愛犬に、便秘以外に大きな病気がないのであれば、少量のウェットフード(缶詰)を混ぜることでも水分摂取につながります。
また、お水に少量のささみなどお肉の茹で汁を混ぜることでも、風味につられてお水を飲んでくれることがあります。 
新しいフードに替えるときは、急にすべて替えるのではなく、初日は今までのフードに新しいフードを1/4量くらい混ぜる、次の日は1/3くらい……と、少しずつに比率を増やしていくと、スムーズに移行することができます。

食物繊維を食べさせるという点で、サツマイモやカボチャ、ふすまなどを食事に混ぜる方法もあります。
おおむね大さじ1杯程度が目安と言われますが、効果には個体差が大きいです。また食事全体のカロリーが増えやすいということにも注意してください。
便秘の治療として牛乳などの乳製品を食べさせる方法もありますが、これはそもそも犬は乳に含まれる乳糖を分解できないことによる過敏反応を狙ったものです。
場合によっては下痢になってしまうことがありますので、あまりお勧めできません。また、もともと牛乳を飲んでも下痢をしない犬では、意味がありません。

関連して、獣医師が処方する場合でも、下剤は個体によって量の調節が難しい薬です。安易にネットなどで買える薬を愛犬に与えた場合、下痢などを引き起こす場合があります。

こんな犬の便秘は病院へ!

便秘の原因はさまざま。上記でも触れたように、病気により正常な排便ができず、便秘になることもあります。
うんちをするときに痛がって鳴く、何度もトイレに行く、あるいはずっとトイレにこもっているという場合は、肛門近辺や直腸内に傷や物理的な閉塞などが起こっている可能性があります。
いつもはトイレを失敗しないのに、家中に点々とうんちや粘液が漏れているという場合も、便が出なくてあちこちでいきんでいる結果のこともあるので要注意です。
この他、排便に異常に時間がかかる、平べったいなどおかしな便をしているときも、肛門近辺の異変が考えられます。

ちなみにトイレに何度も行き来したりトイレにこもったりする症状は、膀胱炎など排尿のトラブルにおいても見受けられます。
愛犬が出せないのが、おしっこなのかうんちなのか、よく見てから病院にかかるようにしましょう。

また、便がおなかの中に溜まりすぎると、食欲や元気がなくなるケースもあります。
そのときは、ともかく浣腸などで便を人工的に出す処置が必要ですので、様子を見ずに病院を受診してください。
愛犬に腎不全など持病があると、脱水により便秘が引き起こされることも。
この場合は点滴などの処置が必要になることもありますので、食事を変更をする前に、まずはかかりつけの獣医師にご相談ください。

まとめ

便秘は慢性化すると頻繁におなかが苦しくなり、病院での浣腸が必要になるなど、愛犬にも負担の多い生活になります。食事と水分摂取、そして適度な運動を心がけて、快調な毎日が送れるようにしてあげられるといいですね。
 執筆者プロフィール
「今日は猫ちゃんにお注射した? 」と仕事に行くたびに聞く4歳の長男と、寝るときも猫とひよこのぬいぐるみが離せない2歳の次男に毎日振り回されながら、埼玉県三郷市の動物病院でパート勤務をしている獣医師です。
当たり前のことかもしれないけど、飼い主様の話をよく聞いて、一緒に治療を進めることを心がけながら、病気じゃなくても、ペットに関する心配事をぽつっと相談してもらえるような、飼い主様に寄り添える獣医さんを目指して、日々研鑚しています。

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