猫白血病ウイルス感染症とは

猫白血病とは、その名の通り、猫白血病ウィルス(Feline leukemia virus, FeLV)に感染することによって起こる病気で、世界中で発生が認められています。

主な感染経路は、感染猫の唾液や鼻汁との長期の接触です。つまり、感染猫との毛づくろいや、食器の共有により感染します。母親が感染している場合、生前に胎盤から、または生後に乳汁から感染することもあります。
一方で、便や尿からの感染は少ないといわれています。

1~6歳の比較的若く、かつ、屋外飼育されている猫での感染が多いです。免疫力の低い子猫のほうが感染リスクは高くなりますが、おとなの猫でも感染しないわけではありません。

このFeLVウィルスですが、人には感染しません。猫の体内以外では生存できないと考えられています。
感染していても症状が認められない猫もいて、これを「キャリア」と言います。症状が出ていないので、知らず知らずに接触・感染してしまうことがあるので注意が必要です。

FeLVウィルスは感染後、まず口や喉のあたりで増殖し、その後骨髄へ移ります。
骨髄では、細菌やウィルスと戦う白血球が作られていますが、この感染が持続すると、白血球を介して、ウィルスが全身の臓器に広がります。その結果、免疫力が下がり、さまざまな病変を引き起こすのです。

FeLVウィルスと似た病気で、猫エイズ(猫免疫不全ウィルス:FIV)という名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
こちらも感染すると免疫力が低下し、似た症状を引き起こしますが、ウィルスの種類が違います。
猫エイズ(FIV)と猫白血病(FeLV)の両方に感染している猫は「ダブルキャリア」と呼ばれています。

猫白血病ウイルス感染症の検査

FeLVウィルス感染の有無は、動物病院で検査可能です。
少量の血液を採取して、専用のキットで判定します。「陽性」であれば、ウィルスに感染している、ということです。
価格は病院によって異なりますが、3000円~5000円程度です。

注意すべき点は検査のタイミングです。
新しく迎えた猫や、生まれたばかりの子猫、1カ月以内に屋外で他の猫と接触した可能性のある猫などは、1度の検査だけでは正確な判定ができないことがあります。
体内にウィルスが入っていても、陽性の検査結果が出るまで、2週間程度の時間差があるためです。この場合は、1カ月後に再検査をしましょう。

また、稀にですが、一時的に体内にウィルスが入り、検査では陽性と判定されても、自力でウィルスを排出し、陰性に戻る(陰転する)場合もあります。
しかし、たびたび陰転が認められるFIVと比べると、残念ながらFeLVウィルス検査が陰転する確率は低いです。

このFeLVウィルスの血液検査は、一般的な健康診断で行われる血液検査の項目に入っていないことが多いです。もし調べたい場合は獣医師に相談しましょう。

また、血液検査ではなくレントゲンや超音波など別の検査から偶然病変が見つかり、精密検査をしてみたら、猫白血病ウィルスによるものだった、ということもあるようです。

猫白血病ウイルス感染症の症状

FeLVウィルスに感染した猫では、さまざまな症状が見られます。食欲不振、体重減少、沈うつなどの非特異的な症状から、発熱、貧血、嘔吐、下痢、口内炎、鼻炎、呼吸困難、泌尿器系の異常、目の異常などの特異的な症状まで、多岐にわたります。

このウィルスの感染で最も多く起こるのが、「白血病」か「リンパ腫」です。感染猫のおよそ25%に発生します。
その結果、免疫機能が抑制され、健康時に排除できていた細菌やウィルスに勝てなくなり、いろいろな症状が出てくるわけです。

リンパ腫とは、体内にたくさんあるリンパ節が腫瘍化してしまうことで、その発生部位により、症状も異なります。
多く見られるのは、消化管型、縦隔型、多中心型で、他に腎臓や目にも、リンパ節はあります。

このように発生部位によって症状がさまざまなので、診断に時間を要することがあるかもしれません。発生部位によって治療方法も変わるので、ひとつひとつの検査を丁寧に見極めていく必要があるのです。

いずれにせよ、長期的な治療が必要なので、獣医師と納得いくまで話し合い、信頼関係を築くことが大切です。

研究では、持続感染している猫では、このウィルスに関連した疾患により2~3年以内に死亡するといわれています。
しかし、血液検査で陽性になっても生涯発症せず、寿命を全うする子もいます。発生部位により、その後の経過もさまざまですので、治療方法、寿命も個体によって異なるのです。

猫白血病ウイルス感染症の治療と予防

猫白血病ウィルス感染症を発症した場合、残念ながらこの病気を完治させる薬、ウィルスを退治する薬はまだありません。現在、ウィルスの増殖を制御する抗ウィルス薬も研究されていますが、まだ実用には至っていない段階です。
また、インターフェロンという免疫療法で、元気食欲の改善が見られることもあります。
しかし、この療法は治療開始から効果が見られるまでに4週間程度かかり、また数週間、毎日の接種が必要なので、オーナーさんの通院の負担も増えてしまいます。経口投与もできますが、注射のほうが効果的と言われています。

ウィルスの増殖を制御しながら、発生部位、症状に合わせて治療を行っていきます。
発生の高いリンパ腫には、それぞれのタイプに合わせた抗がん剤治療(化学療法)を行います。腫瘍が大きくなることで生活に支障をきたす場合は、それを取り除く外科手術も必要になってくるかもしれません。
嘔吐下痢、鼻炎には、症状を落ち着かせる治療をしていきます。痛みがある場合は鎮痛剤も使います。

感染発症すると死に至る可能性が高くなる病気ですが、幸いにも有効なワクチンが開発され、FeLV陽性猫はここ25年で劇的に減少しています。
ただし、ワクチン接種をしたからといって予防率が100%というわけではありません。さらに、ワクチン接種の副作用に繊維肉腫といった腫瘍化の報告もあり、オーナーさんの判断が必要になってきます。
また、すでに検査で陽性と出てしまった猫に、ワクチンを接種することは有益ではありません。

ワクチンにはFeLV単体のものと他ウィルスと混合のものと、種類が色々あります。4種混合以上のワクチンにはこのFeLVワクチンが含まれています。
すでに猫3種ワクチンを接種している場合は、FeLVワクチン単体のものを追加接種します。まだ生まれてからワクチン接種をしていない場合は、初回から4種混合以上を接種することも可能です。獣医師に相談してください。

価格は病院によって幅がありますが、単体のもので3000~4000円程度、混合のもので6000~9000円程度です。
また、屋外には出さない、陽性猫との接触を避けるなどの心がけで、感染率を下げることができます。

すでにFeLV感染猫を飼育している場合は、室内で他の猫たちとは隔離し、できるだけストレスをかけずに飼育しましょう。
まだ発症はしていなくても免疫力が下がっているので、健康時には退治できたはずのウィルスや細菌にもやられてしまう可能性があるからです。
多頭飼いの場合はグルーミングや食器の共有で感染するので、しっかり隔離すれば、他の子への感染も防ぐことができます。

まとめ

オーナーさんの献身的なケアが必要になってくる、猫白血病という病気。大切な愛猫のため、病気をしっかりと理解し、獣医師との連携を取っていくことが大切になってきます。愛猫との生活がよりよいものになりますように。
 執筆者プロフィール
獣医師免許取得後、3人の出産・育児をはさみながら、8年間都内の動物病院で勤務。家族の転勤に伴い、各地を転々としています。
現在はアメリカ在住。動物保護シェルターのサージェリー部門にて勉強中です。ママ獣医・転勤族獣医としての在り方を模索中です。
小さいころからウサギが好きで、獣医師になることを決めました。
ペットとの笑顔あふれる生活のために、少しでもオーナーさんの不安が少なくなるよう、病気のとき以外にも何でも相談できる身近な獣医師を目指しています。

猫のブリーダーについて

魅力たっぷりの猫をあなたも迎えてみませんか? 

おすすめは、ブリーダーとお客様を直接つなぐマッチングサイトです。国内最大のブリーダーズサイト「みんなの子猫ブリーダー」なら、優良ブリーダーから健康的な子猫を迎えることができます。

いつでもどこでも自分のペースで探せるのがインターネットの魅力。「みんなの子猫ブリーダー」では写真や動画、地域などさまざまな条件で理想の猫を探せるほか、多数の成約者の口コミが揃っています。気になる方はぜひ参考にしてみてくださいね。

※みんなの子猫ブリーダーに移動します