犬のてんかんはどんな病気?

てんかんは、さまざまな原因によっててんかん発作を繰り返す、脳の病気です。
発作は意識を失う意識障害から、手足や体が震えるけいれん、うろうろ落ち着かなかったりする不安状態など、幅広い状態を指します。
紛らわしい症状として「けいれん発作」があり、これはてんかんに限らず心臓病や腎臓病などでも起こる症状です。必ずしも脳が原因とは限りません。

てんかんは脳腫瘍などが原因で、老齢になってから起こりやすいものと、遺伝的あるいは原因が明確でない特発性で若い犬にでやすいものがあります。
犬は特発性てんかんの発症が多く、「てんかん」と診断されるほとんどを占めます。
ビーグルチワワ、シェットランドシープドッグ、ゴールデンレトリバーなどの犬種で起こりやすいと言われています。

犬のてんかんの症状は?

てんかんは「発作」が起きるのが特徴の病気です。
この発作は、脳から送られる信号の異常により起こり、通常、意識の消失や全身性のけいれんがあらわれます。発作の時間はおおむね1~3分程度。発作の程度が軽度の場合、意識は失わないものの、全身の震えや筋肉の硬直によって倒れてしまうこともあります。

発作は単発の場合と、連続して起こる場合(重積)があります。
発作が20分以上連続すると神経障害が引き起こされることもあり、死にも至る重篤な状態です。緊急的に発作を止める処置が必要になります。
発作には段階があり、前兆→発作→発作の合間(発作間歇期)→後兆の4段階に分けられます。

前兆

発作が起きる数分~数時間前に起こります。
どこかへ隠れようとする、うろうろする、不安そうな顔つきで飼い主に近寄ってくる、おびえたように震える、よだれが出る、嘔吐するなどの症状が出ます。

発作

実際に発作が起きている期間です。
意識を失った場合は失禁することもあります。また、筋肉が硬直するため口が上手く開かず、荒くなった呼吸により悲鳴のような鳴き声が漏れることもあります。

発作の合間

発作と発作の間の期間です。
発作が1回のみで終わった場合は見られません。けいれんの名残で立ち上がろうとしてうまくいかず、よろめいたり這って移動したりする動作が見受けられることがあります。不安から鳴くこともあります。

後兆

発作後から正常の状態に戻るまでの期間です。
発作直後は一時的にもうろう状態、失明、運動障害、不整脈などの自律神経障害、痴呆のような気持ちの不安定、徘徊、異常に食欲が増すなどの症状が出ます。
後兆はまったくない場合から、数分~数時間あるいは1週間近く続く場合まで、さまざまです。

特発性てんかんの場合、発作の起きる間隔が数週間~数カ月と、定期的な間隔で再発することが多いです。
特に大型犬種においては、高齢になるにつれて発作の頻度と重度が増える傾向にあります。
上記でも触れた通り、重積の状態に陥る可能性がありますので、一度発作症状が起こった場合は、症状が治まったあとでも、必ず動物病院を受診しましょう。

犬のてんかんの治療法

てんかんの治療の主は、抗てんかん薬の内服による発作のコントロールです。いかに発作を起こさせないか、という治療になります。

内服は最低用量から始まるので、効かない場合は徐々に薬の用量をあげたり、体の中で薬が適切に効いているのかを血液検査で調べたりします。

おおむね1~3歳くらいの若いときに発症し、かつ発作の間隔が1年以上で、他に神経的な症状が認められなければ、特発性てんかんと診断されることが多いです。
この場合、発作が1回こっきり、あるいは短期間で数回起こっても、その後数カ月無症状の場合は、抗てんかん薬の処方は見送られます。

発作が数カ月ごとに再発する場合は、重積発作を起こさないようにするために、内服が必要になります。
内服はほとんどが一生涯必要です。残念ながら、てんかんは原因が明確でない分、完治はしません。一度だけの発作で、その後生涯症状がでない犬もいれば、薬を飲まなければ発作が起こってしまう犬もいます。

薬が良く効いて発作のコントロールが良好であれば、治療に必要な経費は内服分だけです。
ただし、抗けいれん薬は肝臓に負担がかかるので、定期的に血液検査をして肝臓の機能を調べたほうが良いでしょう。
また、体調によって、薬をきちんと飲んでいても発作が起きることもあり、発作のコントロールのための入院治療が必要になることもあります。

抗けいれん薬の副作用としては多尿・多飲・多食があげられます。
内服している間は、愛犬が欲しがっても、食べさせすぎに注意しましょう。肥満は薬の効きを悪くし、肝臓にも負担をかけます。

最初に発作が起きた年齢が高齢だったり、内服していても発作が頻繁に起きる場合は、てんかんでも脳腫瘍や脳炎など、神経以外の病状が原因のことがあります。
この場合は抗てんかん薬だけでは治療できず、神経以外の原因を探る検査や治療が必要になります。

愛犬がてんかんと診断されたら

発作が起きたときは、愛犬も飼い主もケガをしないようにすることが大事です。

■家の中で発作が起きた場合
意識がないときは、むやみに愛犬を触らないようにしましょう。周辺の物をどけて、愛犬がぶつかったりケガしたりしないようにしてください。
余裕があれば、発作が起こっている時間を測りましょう。発作が単発なのか、連続しているのかの判断につながります。

■外で発作が起きた場合
数分横たわっていても大丈夫な場所まで移動させましょう。この際、顔まわりには絶対に触らないでください。誤って咬まれる危険性があります。

てんかんと診断されて薬が処方されたら、決められた回数を忘れずに飲ませましょう。
発作は、薬の有効濃度が体の中で保たれることで、起きなくなります。
発作の症状がないからと、中途半端にやめたり忘れたりすると、体の薬の濃度が薄まって発作が起こります。このときの発作は突然で、強い発作になることが多く、生死に直結することもあります。

発作の状態によっては、緊急的に発作を止めるための座薬が処方されることもあります。
発作が続けざまに長く起こったり、合間なく起こったりする場合は、座薬を入れましょう。
手で直接触ると薬効成分が皮膚に吸収されるので、ビニール手袋をつけて、肛門から指の関節1個分くらいの位置に入れてください。可能なら少し肛門を抑えておくと、座薬が出てこなくなります。

まとめ

てんかんはどんな犬でも起こる可能性がある病気です。症状もけいれんが出たり、普段とまったく異なる症状が出たりします。発作が起きたときは、ともかくあわてず、愛犬と飼い主がケガをしないように見守りましょう。
そして必ず動物病院を受診し、内服が出たならば上手に飲んでいけるよう、工夫してあげてください。
 執筆者プロフィール
「今日は猫ちゃんにお注射した? 」と仕事に行くたびに聞く4歳の長男と、寝るときも猫とひよこのぬいぐるみが離せない2歳の次男に毎日振り回されながら、埼玉県三郷市の動物病院でパート勤務をしている獣医師です。
当たり前のことかもしれないけど、飼い主様の話をよく聞いて、一緒に治療を進めることを心がけながら、病気じゃなくても、ペットに関する心配事をぽつっと相談してもらえるような、飼い主様に寄り添える獣医さんを目指して、日々研鑚しています。

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