犬のしこりの原因は?

しこりの原因は、大きく分けて2つに分けられます。

①腫瘍

多くの腫瘍の初期症状は、体の表面に現れるしこりです。それは、皮膚腫瘍はもちろん、リンパ腫のような内臓の腫瘍でも、「リンパ節の腫れ」がしこりとして触知されて、病気が発覚することもあります。

②炎症

皮膚炎や外傷を原因として、なんらかの炎症物質や膿が皮膚の下に溜まってしまうと、しこりとなることがあります。また、治療のための使われた注射などでできるしこりも、薬液に対する炎症反応の一つです。

犬のしこりから考えられる病気と検査

飼い主さんが気づきやすいしこりは、やはり体の表面にできる腫瘍です。比較的かかることの多い腫瘍をご紹介します。

①腫瘍が原因と考えられるしこり

  1. 脂肪腫
  2. 体の表面を覆っている脂肪の一部が腫瘍化して、しこりとなるもので、脂肪があるところならどこでもできます。脂肪が多い腹部や胸部、刺激をうけやすい腋下や足の付け根などでよく見られます。良性であることが多いです。

  3. 肥満細胞腫
  4. 肥満細胞という、血管の維持に関係する細胞が、異常に増えてしこりとなるものです。悪性の経過をたどることが多く、しこりの他に下痢や嘔吐など消化器症状が併発されることもあります。

  5. 乳腺腫瘍
  6. メスに多い腫瘍です。雌性ホルモンの影響を受け、発情を複数経験しているあるいは未避妊でできた場合は、悪性の可能性が高くなります。

  7. 肛門周囲腺腫
  8. 犬の好発腫瘍で、オスに多い腫瘍です。悪性はまれで、良性であることが多いです。ただし、雄性ホルモンの影響を受けるため、未去勢だと腫瘍が大きくなり、排便などの日常生活に支障がでることがあります。

②炎症が原因と考えられるしこり

細菌感染によりできた膿が、何らかの原因で排出されず、溜まってしこりとなることがあります。膿の量が限界を超えると、突然はじけて中身が出ることも。しこりがある間は、強い痛みを伴います。特に高齢の犬で見受けられるのが、歯が原因で顎にしこりができる歯根膿瘍です。
炎症が原因のしこりは、柔らかく水風船のような感触であることが多いです。膿ではなく、何らかの刺激が原因で液体が溜まる場合もあります。

しこりの検査方法

しこりができたとき、最初にすすめられる検査は、針生検(FNA)という検査になります。
しこりに細い注射針を刺して、細胞を採取し調べる検査です。多くの場合、麻酔などの処置は必要ありません。費用も数千円で、検査に必要な時間も30分程度と、比較的手軽に受けられる検査です。この検査は、針が刺さった一部分の細胞と、針先の少量の細胞での診断なため、推定診断になります。

しこりに対する確定診断は、切除による病理検査です。この検査は結果が出るまでに1週間以上、診断料も別途2万円程度かかることが多いです。それに加え、切除には全身麻酔が必要なことが多く、時間や費用のほかに、愛犬の負担も考えなければいけません。

腫瘍の場合、硬かったり、急激に大きくなったりするものは悪性の傾向が高いと言われています。しかし、見た目や触診だけでは良悪の判断はつきにくく、何らかの検査がすすめられます。

犬のしこりの治療法

炎症が原因のしこりの場合

しこりの原因が炎症の場合、洗浄や抗生剤の投与などの治療でしこりがなくなることが多いです。ただし、外傷や歯石など明らかな原因がなく、突然できたしこりや、抗生剤などの治療になかなか反応しない場合は、注意が必要です。奥深くの核に腫瘍が隠れていて、それが原因で周辺に炎症が起こっているパターンもあるからです。

腫瘍が原因のしこりの場合

しこりの原因が腫瘍であるなら、基本的には切除がすすめられます。それは、切除しないとしこりの原因が何であるか、確実にはわからないからです。ただし、前述のように、切除はさまざまな負担が大きくなります。特に高齢の場合は、手術自体が命に関わることもあるため、慎重な選択が必要になります。

このような場合、上記であげた脂肪腫のように良性であれば、切除せずに経過を見ながら長年お付き合いしていく手もあります。腫瘍が自然になくなることはありませんが、日常生活に支障をきたすことも少ないからです。ただし、脂肪腫でも悪性である可能性もあるので、定期的に大きさの変化など、様子を見ていくことは必要です。

良性と判断される腫瘍でも、肛門周囲腺腫や乳腺腫瘍の場合は、途中で悪性に変わったり、しこりが大きくなったりして、日常に支障がでることもあります。このような場合は、内臓に問題がなければ外科切除を選択したほうが、先々で愛犬自身の負担が少なくなります。

悪性の場合は、全身への転移などを伴うことが多く、外科手術だけでなく、化学療法(抗癌剤治療)放射線治療が必要になることもあります。抗癌剤治療は腫瘍によって費用や通院回数は大きく異なりますが、だいたい数カ月単位で治療が必要です。また放射線治療は個人病院で行えるところは少なく、大学病院などに紹介してもらうことになるでしょう。

犬のしこり、早期発見が鍵

炎症が原因のしこり、特に歯根膿瘍は、歯磨きなどの日ごろのオーラルケアにより予防できます

腫瘍が原因のしこりは、残念ながら予防はできません。しかしながら、早い段階でしこりが見つけられるよう、普段から愛犬の体をよく触ったりブラッシングしたりと、スキンシップをとりましょう。早期発見は大切です。なぜなら、しこりが悪性なら、転移が起こる前に治療を始めることができるからです。早期発見できれば、愛犬の余命が伸びる可能性が高くなります。また、良性でもしこりがまだ小さい早い段階で発見できると、切除する際傷口の範囲が小さくて済むため、愛犬に対する負担を軽くすることができます。

しこりができやすい場所

しこりは全身で認められますが、特に刺激を受けやすい腋下や足の付け根、そして肛門の周りやおっぱいの周辺で認められることが多いです。
しこりに気がづいたら、かかりつけの動物病院にかかる際に、以下のことを確認しておきましょう。
  1. いつからしこりができているのか
  2. 気づいてから動物病院に連れていくまでの間に、大きくなっているか
  3. 愛犬自身が気にして舐めたり、痛がったりするか


特に「2」に関しては、前述のように、急に大きくなるしこりは、腫瘍が原因である場合は悪性度が高い可能性があります。しこりを発見したら、まず自宅で大きさの変化を確認しましょう。ただし、あまりに気にして毎日大きさを測ったりすることは、愛犬自身にも飼い主にもストレスになりますので、注意してくださいね。

まとめ

しこりは、腫瘍の症状であることが多く、場合によっては大きな治療が必要になることもあります。まずは愛犬とのスキンシップを大切にして、日ごろからしこりの有無をチェックできるようにしましょう。そしてしこりを見つけた場合は、なるべく早くかかりつけの動物病院に相談するようにしてください。
 執筆者プロフィール
「今日は猫ちゃんにお注射した? 」と仕事に行くたびに聞く4歳の長男と、寝るときも猫とひよこのぬいぐるみが離せない2歳の次男に毎日振り回されながら、埼玉県三郷市の動物病院でパート勤務をしている獣医師です。
当たり前のことかもしれないけど、飼い主様の話をよく聞いて、一緒に治療を進めることを心がけながら、病気じゃなくても、ペットに関する心配事をぽつっと相談してもらえるような、飼い主様に寄り添える獣医さんを目指して、日々研鑚しています。

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