飼い主さんだからこそわかる「いつもと違う」は大事な感覚

人間と同じように、猫も性格や生活習慣には個体差があり、飼い猫の「普段の状態」は飼い主さんしか知りえません。
「もう起きる時間なのに起きてこないなあ」
「いつもと食べ方が違うなあ」
「今日はよく水を飲むなあ」
など、日常の何気ないひとときの中で飼い主さんが感じるわずかな違和感は、意外と当たっていることが多いものです。ときには病気の兆候だったりすることもあります。

特に、その状態が1日以上続いたら要注意。病院に連れて行ったほうがよいでしょう。いつもと違うことに気づくためにも、愛猫の「いつも」がどのような状態なのかをよく把握しておくことが重要です。

一方で、「うちの子はいつもこんな感じだから大丈夫」など、思い込みだけで「大丈夫」と判断するのは危険です。日々の観察から「いつもの状態」とはどんな状態を把握し、違和感をキャッチできるように努めましょう。

シーン別の観察ポイント

食事

猫はもともと、ちょっとしたことでもすぐに食欲をなくす動物です。繊細な性格の猫は、例えば来客があっただけでも食べなくなります。特に問題がなければ食欲はすぐに回復しますが、次のようなケースの場合は要注意です。

・食べたそうにしているのに、なかなか食べない
フードの匂いを嗅ぐ、または食べようとはしているものの、フードをただ見つめて座っている……食欲はありそうなのに食べないときは、口内炎によって口の中が痛むために食べられないでいる可能性があります。よだれが垂れていることもあります。

・ごはんの時間にもかかわらず、呼んでも来ない
完全に食欲がない状態です。まる1日以上続くようであれば、内臓の疾患や感染症などさまざまな病気が疑われます。すぐに病院に行きましょう。
・吐く
我が家の猫の場合、ドライフードを食べた後によく吐くことがありますが、実は胃でドライフードが膨らんで吐き戻してしまっただけで、特に心配ないものです。このように、食事の直後に食べたフードをそのまま吐いている場合は特に問題ないことがほとんどです。

しかし、何度も吐いたり、胃液を吐く、何も食べていないのに吐く(毛玉でもない)場合や、吐いた後ぐったりしている場合はすぐに病院へ。胃、腸、肝臓などに問題があるのかもしれません。また、誤飲や食物アレルギーによって吐くこともあります。

・いつもより水を飲む
暑いわけでもない、あるいは運動直後でもないのに頻繁に水を飲んだり、ずっと飲み続けている場合、糖尿病や腎臓病などが疑われます。猫の一日の飲水量を測るのはなかなか難しいものですが、水入れが空になるくらい飲み続けていたら要注意。多尿の症状が同時に出ていることもあります。

トイレ

猫の排泄回数は基本的に
・おしっこ(尿)1日1~3回
・うんち(便)1日1~2回
が目安ですが、排尿は1日以上、排便は3日以上ない場合は異常です。尿や便の問題は緊急性が高いこともありますので、おかしいと感じたらすぐに病院へ行きましょう。

・しょっちゅうおしっこをする、おしっこをいつもと違う場所でする、おしっこの量が多い
1時間おきにトイレに行く、トイレに間に合わず粗相をしてしまう、おしっこの量が多いという場合は、膀胱炎や糖尿病などが疑われます。糖尿病の場合、おしっこは無色透明に近くなり、臭いもしなくなります。

・トイレに行ったのに、おしっこが出ていない
猫がいつもより長い間トイレにいたり、頻繁にトイレに行く場合は、おしっこがちゃんと出ているか猫砂を見て確認してください。もし、おしっこが出ていないようなら尿道結石など泌尿器のトラブルかもしれません。そのような時は尿に血が混じって猫砂がピンク色になっていることもあります。
・おしっこやうんちのときにいつもと違う大声で鳴く
おしっこやうんちをする際に痛みがあるというサインです。おしっこなら尿路結石、うんちなら便秘、巨大結腸症などの病気が疑われます。我が家の猫もうんちの時に時々大声で「ウワン!」と鳴くことがありますが、そんな時は決まって便がカチカチで、便秘気味になっています。便秘が過ぎるとトイレ中に吐く場合もあります。

・うんちの後、床におしりをこすりつけながら前足だけで進む
思わずクスッと笑ってしまうような姿ですが、実はこれ、うんちの切れが悪くて肛門を床で拭いているのです。便がゆるい子、お腹に寄生虫がいる子によく見られる行動です。
ちなみに我が家の場合、野良猫を引き取った後、すぐさまこの行動が見られたことが。不審に思って肛門を確認したところ、サナダムシが出ていたので、あわてて病院に直行したのを覚えています。

寝る

すやすやと心地よく寝ているのか、具合が悪くて寝ているのか。判断に迷うこともありますが、観察のポイントは睡眠時間、呼吸の様子や、寝ている時の姿勢です。

・いつも起きている時間に起きてこない
そもそも猫はよく寝る生き物なので気づきにくいのですが、食べもせず、おもちゃにも興味を示さず、ずっと寝ている場合は調子が悪いサイン。あらゆる病気が考えられます。食欲がない、熱があるなど他の症状がでていることもあります。

・熟睡中に呼吸数が早い、頭や肩がわずかに上下する
寝ているときに呼吸数が早い(お腹の上下が大きく早い)、頭や肩まで上下する場合は呼吸が荒くなっているサイン。肺や心臓の病気が考えられます。安静時の呼吸数は1分間に20~30回が目安。40回以上のときは要注意です。
・香箱座りでじっとして目をつぶっている(が寝ていない)
猫は具合が悪いと熟睡できず、香箱座りでじっとしていることが多いです。もちろん、ただそのような姿勢をとっているだけのときもありますが、好きなおもちゃを目の前にしても無反応なようであれば、具合が悪いと考えてください。

・暗い所、冷たい所で寝ようとする
猫は体調が悪いと静かで落ち着ける暗い場所や、寒い場所に行きたがります。(発熱している、もしくは逆に低体温のとき。体温を下げて体のエネルギーを温存するという説もあるようですが確かなことは明らかにされていません)
もし、猫が暑くもなさそうなのに、いつもなら行かないような暗い場所や冷たい場所に入って、一人っきりになりたがるときは注意を払ってください。

遊び

運動時にはじめて問題が見えてくることもあるので、遊びながら猫の様子を観察することも大切です。

・追っかけっこの後、口で息をし、いつまでもハアハアしている
猫はかなりの運動量でない限り、口で息をすることはありません。普通の追いかけっこ程度で口でハアハアしていたり、いつまでたっても呼吸が荒い場合は危険信号。心臓や肺に問題がある可能性大です。病院でしっかり検査をしてもらいましょう。

その他のサイン

・目ヤニがでる
分泌物が多い子は目ヤニがよく出ますが、目ヤニとともに涙目であったり、目が赤かったりしないかチェックしてください。結膜炎やアレルギー、目に傷があるかもしれません。

・体にしこりがある
マッサージやグルーミングをすることで気づきます。癌(がん)の可能性もあるので小さくてもすぐに病院で検査をしてください。愛猫の年齢が7歳を過ぎたら、首のまわり、お腹、背中などを日常のグルーミングでチェックしましょう。

・パタッと倒れる(ふらつく)が数十秒以内に何もなかったように普段通りになる
血栓が血管に流れ、血管が詰まったかもしれません。血栓が小さいと、すぐに詰まりがとれて症状が消えるのです。心筋症などの場合に起こりますが、命に関わることですので、普段通りの状態に戻ったとしても一刻も早く受診するようにしてください。

最後に

愛猫の病気は、軽症のうちにできるだけ早く見つけてあげたいですよね。獣医さんから聞きましたが、病気を発見するにあたって飼い主さんの直感はとても大事なのだそう。そして、その直感を培うのはなんといっても毎日の観察です。日常から愛猫とスキンシップやコミュニケーションをはかり、ちょっとした違いにもすぐに気づいてあげられるようにしましょう。


参考文献:
矢沢サイエンスオフィス編(2002)『もっともくわしいネコの病気百科―ネコの病気・ケガの知識と治療』学習研究社.
だいじょうぶ?マイペット(グループサイト)

全国の信頼できる獣医師から無料でアドバイスがもらえるペット健康相談Q&Aサイトです。

 執筆者プロフィール
2匹の愛猫と暮らす元博物館学芸員です。専門は古生物学。ペットに関する科学的な知識を分かりやすくお伝えしていきたいと思っています。
保有資格はペットシッター、愛玩動物飼養管理士2級

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