犬の肉球の役割について

弾力のある、ぷにぷにとした独特の触り心地が、肉球の最大の魅力でしょう。

肉球の表面は厚い角質層で覆われており、内部は脂肪を含んだ線維で構成されています。
肉球といえば、中央にある大きな部分1つと、その上にある小さな4つの部分で構成されていると思う方が多いですが、実は肉球は大きく7つ(うしろ足は5つ)に分かれているのです。

一番大きな部分を「掌球」と呼び(うしろ足は「足底球」)、その上部にあるのが「指球」(うしろ足は「趾球」)、さらに人の親指に当たる狼爪にも「指球」があります。指球の先には爪が生えています。
前足には掌球のうしろに「手根球」という部分もあります。

犬には人のような汗腺が皮膚表面にはありませんが、肉球周囲には大きな汗腺の分布があり、緊張すると、人と同じように汗をかきます。

また、肉球の厚い角質は靴の役割を果たします。全体重を支え、地面の固さや突起物、熱さ、冷たさから足先を守ります。
弾力のある肉球は走ったり、ジャンプしたり。時には足音を立てずにそっと獲物に近づいたりするとき、衝撃から身体を守ったり、足音を消したりしてくることも。

表面は滑りにくい構造をしているので、ブレーキとしても役立ちます。
さらには感覚器としての機能を持ち、犬は足元からたくさんの情報を得ているのです。

犬の肉球にケアは必要?

自然豊かな場所の草や地面の上を歩けば、そこまで肉球は汚れないかもしれません。
しかし、都会で暮らす犬たちは、私たちが靴を履かずに素足で外を歩くのと同じ。お散歩に行けば足や肉球は汚れます。
足の裏は分泌腺も多く、汗、皮脂も出やすく、雑菌が増えやすいです。また足先は急所でもあり、デリケート。
適切な肉球のケアは健康維持にも必要だと考えています。

外から帰ってきたら、まず、足や肉球の汚れを落としてあげましょう。
水で濡らして洗うことは、そのあとしっかり乾かせるかどうかの問題や、赤みや痒みが出るなどのトラブルも多いため、賛否両論あります。
指の間には溝があったり、毛が生えていたりするので、部分洗いが難しい場所です。
また、肉球は個体差も大きいので、トラブルがあるようであれば拭くだけにするなど、その子に合ったケアの仕方を探してください。

肉球表面は分厚い角質層のため、乾燥やひび割れが気になります。
子犬の頃はぷにぷにと柔らかかった肉球も、だんだんと固くなったり、ガサガサしたり、ひび割れたりすることもあります。老化により保湿力が弱まると、さらに悪化する子はよく見られます。

対策としては、保湿ケアをすることが望ましいです。
足先はデリケートな場所なので、慣れないものを塗ると、気にしてすぐに舐めとってしまうことも多いです。
舐められることを考慮し、口に含んでも安全なペット専用クリームなどを選ぶことをおすすめします。
成分によっては人間用のクリームやワセリンを代用することもできますが、足の裏に塗るため、滑りやすくケガの原因にもなります。
成分はもちろんのこと、使用感も確かめたうえで安心して使えるものを選んでください。

また、あらかじめ肉球にかかる毛は切っておきましょう。
毛が伸びていると、肉球本来の役割が果たせず、思わぬケガにつながることもあります。
そうならないためにも、こまめにお手入れしてあげてください。スキンシップの一つとして肉球のケアができると理想的です。

犬の肉球のケガはどう対処する?

出血

肉球は血流の多い部分なうえ、体重もかかるので、なかなか止血ができません。
縫わなければいけないほどの深い切り傷でなければ、清潔なガーゼなどの布でしっかり押さえて圧迫止血をします。
泥などで汚れている場合は、止血の前にまず水できれいに流しましょう。

すぐに病院の受診をするのが理想的ですが、できないときは出血部位を確認し、傷の状況を確かめてください。
消毒はしみることもあるので、無理にする必要はないと考えています。
感染が心配な場合は化膿止めの内服薬の服用をおすすめします。止血後は化膿していないか、数日間こまめに観察してください。

やけど

もともと熱さ、寒さに強い部分なので、肉球をやけどしていても本人が気にしていないこともしばしば。
その場では気づかずに時間が経ったあと、肉球をみたら表面がめくれていた、剝がれていた、というケースも少なくありません。

やけどにすぐ気づけたのであれば、冷やして様子を見ましょう。
表面がはがれ、乾燥している場合は、保湿を行うことで早く治ることもあります。
ただし、判断が難しかったり、痛みや不快感を持っていたりしているようであれば、すぐの受診をおすすめします。

また、熱いアスファルトでやけどする事故はとても多いです。
このような事故を起こさないよう、夏の散歩では地面の温度チェックは忘れずに行ってください。

そして、固い地面やアスファルト、砂利やゴミなど、裸足で歩いている犬たちはけがをしやすいです。
お散歩から帰ったら、足裏のチェックも習慣にしてあげられるとよいでしょう。

犬が肉球を舐めたり噛んだりする理由は?

足の裏や肉球を舐める、噛む、場合によっては、前足、後足全体を舐める、噛むというご相談は非常に多いです。
血がにじむまで噛んでしまったり、真っ赤に腫れてしまったり、痛くて歩けないほどの子も少なくありません。
犬が本気で執拗に舐めたり噛んだりすれば、短時間でひどい状態になることも多いです。

「アレルギーですか?」「病気ですか?」「ストレスですか?」と聞かれることがとても多いですが、明確な判断が難しいケースがほとんどです。

真っ先にアレルギーを疑う方が多いですが、アレルギー反応から舐めるケースは、実際は少ないのではないかと私は考えています。
アレルギーであれば全身に症状が出ることが多いので、肉球だけを気にしている場合は違う原因も探る必要があります。

また、犬のストレスを診断することは難しいです。
最初は肉球にトゲが刺さった、痒かったなど、なんらかのきっかけがあったのかもしれません。
しかし、その後、肉球を舐めること自体がクセになってしまっているケースがあるのではないかと、普段診察していて感じることが多いです。

犬は1日の大半を屋外で過ごし、狩りをし、群れの仲間とコミュニケーションを取るのが本来の姿です。
ところが、飼育されていると自然な生活はできません。刺激の少ない室内で、長時間をひとりで過ごす犬たちは暇です。
暇に任せて、肉球を舐め続け、気づいたら赤く、痛くなっている。そんな子が少なくないと私は感じています。
ご相談を受けたときはお散歩の時間を含めた1日の過ごし方、家族との過ごし方を伺い、犬が楽しめる時間を増やすことを提案しています。

理由はともあれ、肉球を舐めたり噛んだりしているうちは治りません。
炎症がひどい場合は消炎剤や化膿止めが必要なこともありますが、本人にいじらせないように管理することが大切です。
エリザベスカラーをして足先に顔が届かないようにするか、靴下などで足先を物理的にカバーするなどの対策を取りましょう。

まとめ

犬の愛らしい特徴の一つである肉球。
走ったり、ジャンプしたり、しなやかな動きは、肉球があるからこそできることと言っても過言ではありません。そして肉球は犬にとっての急所でもある、大切な部分です。
素足で外を歩く犬たちの肉球は、いつでもケガの危険があります。
お散歩から帰ってきたときの足裏のチェックも欠かさず行いましょう。肉球をマッサージすれば、全身の血流をよくする効果も期待できます。肉球は年齢が出やすい部分です。毎日のお手入れでいつまでも若くて元気な姿を守ってあげてください。
 執筆者プロフィール
獣医師・トリマー・ドッグトレーナー / ペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。

現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。
毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。

プライベートでは一児の母。愛犬はシーズー。
家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています。

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