なぜ犬は食べもの以外を誤飲してしまうの?

誤飲(誤食)とは、本来食べるべきではない有害なもの、危険なものを食べてしまうこと。犬だしこれくらいなら大丈夫だろうと楽観しがちですが、形によっては胃や腸が傷ついたり、いつまでも体内にとどまって炎症を起こしたりすることがあります。

犬はあまり味覚が発達していませんが、その代わり、嗅覚は人間の100万倍とも言われるほど優秀です。人間が感知できなくても、犬は「興味をそそられるにおい」を感じ取っていることがあるでしょう。また、犬には興味があるものは口に入れて確かめてみる習性があり、そのため飼い主にすると「そんなのおいしくないよ!」と驚くようなものも口に入れてしまうのです。

犬の誤飲は全体の半数近くが、生後1年未満で発生しているそうです。子犬はいろいろなことに興味津々で、誤飲のトラブルも多いのでしょう。成犬になっても好奇心旺盛なタイプの犬は気を付けたいですね。
さらに誤飲は犬のおなかが空いているときに発生しやすいです。育ち盛りで食欲旺盛な子犬はもちろん、食いしん坊で食べることが好きなタイプの犬、ダイエット中の犬も注意が必要です。

【これは危険!】誤飲が危険な理由とは

気管や食道の閉塞

飲み込んだものが気管や食道で詰まってしまった場合、圧迫されて呼吸困難に陥ってしまうことがあります。吐き出そうとしても飲み込もうとしても動かず、最悪の場合は窒息してしまうことも……。

意外にも犬用のおやつで多く発生していて、特に骨型のガムで多いそう。結び目をかじって取ってしまう犬には別の形のガムを与える、口に入る大きさになる前に捨てる、などの対策が必要でしょう。これからの時期はトウモロコシの芯も気をつけたいもののひとつ。小型犬の場合は、野菜や果物の種にも注意してください。
また、ツルリと丸いおもちゃも、口に入れているときに思わず飲み込んでしまう事故が起きています。お祭りなどでよく見るスーパーボールなどは、絶対に犬に与えないようにしましょう。

犬は食べものをあまり噛まずに丸飲みします。食べものは丸飲みしても詰まらないサイズにし、おもちゃは犬の口に全体が入らない大きなものを選ぶといいでしょう。

消化管穿孔

食道や胃、腸などの消化器官に穴が開いてしまうことです。焼き鳥やだんごなどの串、つまようじ、フォークなどは、人間にとっては刺して食べるための道具ですが、犬にはわかりません。道具ごとおいしそうな食べものに見えてしまうのでしょう。
串などに刺さった食べものを犬にあげるときは外してからにしてください。
鶏の骨プラスチックなど、一見とがっていなくても、割れればとがるものも要注意です。

消化管に穴が開いて急性腹膜炎を起こせば、一刻を争う状況です。消化管を突き破った異物がほかの臓器を傷つける場合も考えられます。

腸閉塞

腸になにかが詰まり、機能しなくなった状態が腸閉塞です。気管や胃を通り抜けられたとしても、腸で詰まってしまうことがあるのです。犬の腸閉塞の一番の原因は異物の誤飲だと言われています。

初期は食欲不振や嘔吐といった症状で、放置すれば腸の詰まった部分が血行不良から壊死してしまいます。激しい腹痛や嘔吐を起こし、やがては死に至る恐ろしい病気です。
腸閉塞を起こす異物として挙げられるのは布製品。犬はタオルぬいぐるみなどを噛むのが好きですよね。なにかのタイミングで飲み込んでしまうと、大変危険です。靴下ストッキングソファやクッションの中綿などにも注意しなければなりません。消化できずに詰まりやすいビニール製品も気をつけてください。

もしも愛犬が誤飲してしまったときは

愛犬が誤飲してしまったときは、基本的にすぐ動物病院へ連れて行ってください。何を、いつ、どれくらい飲み込んでしまったのか、わかる範囲でいいので獣医師に伝えられるようにしておきましょう。すぐ連れて行けない場合、動物病院に電話して相談するのがいいですね。

誤飲したもので窒息や呼吸困難を起こしているときは、一刻も早く取り除かなければなりません。その場合は獣医師が教えてくれるはずですので、指示をあおぎましょう

場合によっては吐かせる必要がありますが、獣医師に指示されたときだけにしてください。吐かせるために大量の食塩やオキシドールなどが使われるようですが、かえって悪化させてしまったり中毒を起こしたりすることがあります。吐いたものを詰まらせてしまうこともあるので、素人判断で行うのはやめましょう

当然、慌てたり焦ったりしますが、できるだけ冷静に。愛犬の命を助けられるのは飼い主だけです。

誤飲させないための予防策

まずはものを置きっぱなしにしないこと。日本は床に座る文化があるせいか、犬の目線にものが置いてあることが多く、それだけ犬が誤飲するリスクも上がります。誤飲の可能性を含め、犬に触ってほしくないものはすべて片づけておきましょう。

子どものおもちゃ電池、ラップでくるまれた食品小さな化粧品布の切れ端など、犬が気になりそうなものはありませんか? ゴミ箱は犬がいたずらできる位置にありませんか?
立ったままではなく、犬の目線から飲み込んでしまいそうなものがないかチェックするのがポイントです。

犬が食べてはいけないものをくわえたとき、「出しなさい!」などと大きな声を出したり、無理やり引っ張ったりしがちですよね。犬によっては、「とられる!!」と慌てて飲み込んでしまうことがあります。犬同士で引っ張りっこをしているときなども、取られまいとして飲み込んでしまう事象があるようです。
犬が誤飲しようとしているときは騒がず、ほかのおもちゃやおやつで気をそらしましょう。犬に「ちょうだい」「貸して」などのコマンドを覚えさせておくと、さらに有効です。

誤飲は家のなかだけで起こるものではないので、拾い食いさせないしつけも重要ですね。

まとめ

犬の誤飲の危険性としては、飲み込んだものによる中毒もありますが、今回は消化管のトラブルについてまとめました。
飼い主にとっては「まさか!」というものでも、犬は飲み込んでしまうことがあります。犬は食べていいもの・悪いものの区別がつかないので、誤飲から守ってあげられるのは飼い主だけです。

愛犬が誤飲しないように環境を整えるとともに、万が一誤飲してしまったときは軽視せず速やかに獣医師に相談しましょう。
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 執筆者プロフィール
『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。
 監修者プロフィール
獣医師・トリマー・ドッグトレーナー / ペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。

現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。
毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。

プライベートでは一児の母。愛犬はシーズー。
家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています。

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