犬や猫にアルコールは厳禁!

イベントが目白押しのこの時期、お酒を飲む機会が増える人も多いでしょう。
人間にとって、お酒は飲みすぎなければおいしいもので、コミュニケーションの手段になることもあります。「百薬の長」なんて言葉もありますね。

しかし、犬や猫にとってアルコールは毒でしかありません。

犬や猫もアルコールを摂取すると、酔っぱらったような症状が出ます。千鳥足になったり、陽気になったり。その様子がかわいくて、ついお酒をあげてしまうという人がいますが、絶対にだめです。
あげるどころか、誤飲にも十分に注意しなければなりません。

ネギ類やチョコレートを与えていけないということは知られているのに、なぜかアルコールの危険性はまだ認知度が低いようです……。

アルコールを摂取すると、犬や猫の体で何が起こる?

個人差はありますが、人間はアルコールを分解する酵素を持っています。アルコールはこの酵素のはたらきで、最終的に体内で水と二酸化炭素になります。
完全に分解されるまで、摂取量や体質によって頭痛や吐き気などを起こすこともありますが、たいていは時間が解決してくれるでしょう。

犬や猫はアルコールを分解する酵素を持っていません。そのため、ほんの少し飲んだだけでも神経に作用して酩酊状態になり、高い確率で中毒になります。
興奮や嘔吐、呼吸困難や意識障害などを起こし、分解されないためその症状が続きます。そのまま死に至ることも少なくありません。

具体的にどういうこと?

犬や猫のアルコール致死量は、体重1kgあたり5.6mlだと言われています。
たとえば、ビールのアルコール度数は5%前後。猫の平均体重は4kg前後なので、中ジョッキ(500ml)1杯程度が致死量に相当します。

もしかすると、「なんだ、意外に多いな」と感じたかもしれません。たしかに、犬や猫がジョッキ1杯分もビールを飲むとは考えにくいです。

人間の場合、体重60kg程度で換算すると、致死量のビールは中ジョッキで12杯くらいです。しかも、1時間以内に一気に飲み干さなければ致死量には相当しません。
たいていの人は致死量の半分でも、かなり酔っぱらって具合が悪くなりますよね。

致死量というのは、あくまで摂取すると死に至るほどの量です。実際はもっと少ない量でも影響がありますし、体の小さい犬や猫なら、ほんの少し舐めただけでも危険性が高いのです。

除菌消臭剤やウェットティッシュなどにも注意してください。犬や猫専用のものならアルコールが配合されていることは少ないですが、使う前には念のため成分を確認しましょう。

もし、犬や猫が誤飲してしまったら?

犬や猫は本能的に発酵食品を好みます。お酒のほとんどは発酵によって作られているため、犬や猫にとって魅力的な香りの可能性があります。
さらに、大好きな飼い主さんがおいしそうに飲んでいるものなら、興味を持つのも当然ですね。

この時期は自宅に人を招いたり招かれたりする機会も多いでしょう。人が多いと管理が行き届かないこともあるかもしれません。愛犬や愛猫から目を離さないようにしてください。

万が一、犬や猫がお酒を誤飲してしまったら、すぐに動物病院に連れて行きましょう。犬や猫はアルコールを分解できないため、ほうっておいてよくなる可能性は低いです。「ほんのちょっとだし」と高をくくらず、獣医師の診察を受けてください。

意識や呼吸が低下しているときは、飼い主が吐かせようと水を飲ませたり塩を与えたりする行為が危険な場合があります。十分に注意が必要です。
できるだけ「いつ」「どのくらい」飲んだのか、正確に獣医師に伝えてください。

お酒のことに限らず、夜間や休日に対応してくれる動物病院を見つけておくといいですね。

まとめ

愛犬や愛猫にお酒を飲ませたらどうなるんだろう、などという安易な気持ちが、一生の後悔につながるかもしれません。犬や猫は家族の一員ですが、人間とは違う生きものだときちんと認識してお世話してください。
夏のイベントシーズンはお酒を飲む機会が増えますが、愛犬や愛猫に誤飲させないようにしっかり管理しましょう。
関連する記事
犬にチョコレートを食べさせてはいけない理由

犬に人間の食べものをあげるのはよくないとされています。なかでも注意したいのが「チョコレート」。しかし、チョコレートがなぜ犬に危険なのか知っていますか? バレンタインシーズンは特に身近なチョコレート...

イカを食べると腰が抜ける? 実は猫が食べると危険な魚介類

「猫がイカを食べると腰が抜ける」という話を聞いたことがある人も多いでしょう。猫といえば魚が大好きなイメージがありますが、腰が抜けるとはどういうことを指しているのでしょうか。実は魚介類は、与え方によ...

 執筆者プロフィール
『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。
 監修者プロフィール
獣医師・トリマー・ドッグトレーナー / ペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。

現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。
毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。

プライベートでは一児の母。愛犬はシーズー。
家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています。