そもそもノミ・ダニはどんな生き物?

犬に寄生するノミやダニはいろいろな種類がいます。
大きさで分けると「肉眼またはルーペで見ることができる種類」と、「顕微鏡を使わないと見えないとても小さな種類」に分類できます。
「肉眼またはルーペで見ることができる種類」はノミやマダニです。よくお散歩などで犬についてきてしまうのが、このノミやマダニで、予防対象になります。

ノミの大きさは約1~2mmです。
ノミの生活環(ライフサイクル:個体が発生し次の世代が発生するまでの周期過程)は、卵→幼虫→さなぎ→成虫です。

また、ノミは13℃以上あれば繁殖できると言われています。
冬場の散歩などでも犬にくっついてしまうと、室内は温かいため、家の中で寄生→繁殖を繰り返します。一度室内で繁殖すれば駆除はとても大変です。

日本国内に生息するマダニは、フタトゲチマダニ、キチマダニなどがいます。
マダニの生活環は、卵→幼ダニ→若ダニ→成ダニです。各ステージで犬や猫、野生動物などから吸血し、成長していきます。
草むらを好むので、山や林などに多いですが、都心の公園にも生息しています。

ノミ・ダニに寄生されたときの症状

ノミに寄生されると、犬は皮膚の痒みにより足で体を掻いたり、背中を地面にこすりつけたりします。
ノミによるストレスで激しく掻くと、二次感染しやすくなり、ひどいときは化膿してしまう恐れもあります。

痒みなどの症状がまだ出ていなくても、犬の毛に黒いフケ状の塊がついていたら、それはノミ糞の可能性もあります。塊をティッシュなどの上に置き、水を付け、赤く染まったら、それはノミ糞です。

また、ノミアレルギーを持っている犬は、ノミの唾液がアレルゲンとなり、ノミ1匹に寄生されただけでも強い痒みを伴います。
もしノミに多量寄生された場合は、貧血を起こす場合があります。
それだけでなく、ノミが病原体の媒介役となり、食欲不振、体重減少、下痢や嘔吐など引き起こすこともあるのです。

マダニに寄生された場合は、痒みや皮膚炎、貧血を起こします。
犬でマダニが吸血しやすい箇所は、耳、頭、おなか、指の間などです。マダニは皮膚に口部くいこませて吸血します。
マダニは数mmと小さいですが、吸血するとアズキ大になることも。犬の散歩後にアズキ大の塊が付着していたら、それはマダニかもしれません。注意しましょう。

また、マダニは細菌やウイルスなどの媒介役にもなり、さまざまな病気をおよぼします。

ノミ・ダニによって起こる犬の病気

ノミやマダニによって引き起こされる犬の病気はさまざまです。下記でご紹介しますので、もし症状が見られたら動物病院を受診しましょう。

ノミによる皮膚炎や貧血

痒みや発疹、悪化すると二次感染により化膿することもあります。ノミの多量寄生で貧血を起こすこともあります。

瓜実条虫

瓜の種の形をした片節をもつ紐状の寄生虫で、ノミが媒介役となって寄生する病気です。犬や猫だけでなく、人にも感染します。
犬や猫がグルーミングなどをした際、瓜実条虫に寄生されたノミを体内に取り込むと、瓜実条虫は腸内に寄生します。
症状は、下痢や嘔吐、体重減少など。よく糞便や肛門周りに、片節がちぎれ、米粒状になって付着していることがあります。

マダニによる皮膚炎や貧血

マダニによる皮膚炎や痒みなど、また多量に寄生されると貧血を呈します。

犬バベシア症

マダニからの媒介によって、バベシアとういう原虫が犬の赤血球に寄生し、破壊することで発熱、貧血、食欲不振、黄疸などの症状が出ます。重症化すると命を落とすこともあります。
また、一度感染すると完全にバベシアを除去するのは困難なため、マダニ予防がとても大切です。

人間への影響

ノミやマダニの被害は犬だけでなく、人にも影響をおよぼします。
ノミが人に感染すると、発疹、水ぶくれなどの皮膚炎を引き起こします。マダニは、ライム病、日本紅斑熱、SFTS(重度熱性血小板減少症候群)など、ほかにも恐ろしい病気を起こす危険性があります。

犬のノミ・ダニ駆除・治療法

ノミは犬の被毛をかき分けて探すことができますが、ノミを見つけても潰してはいけません。潰すと卵が飛び散り、感染を広げてしまいます。
ノミ取りクシで取れることもありますが、寄生数が少ないと見つからない場合もあります。このため、ノミの駆除には駆除薬が有効です。
現在、駆除薬は、内服薬タイプから皮膚に垂らすスポットタイプなど、いろいろな種類があります。
ノミ寄生による皮膚炎が見られるときは、ノミ駆除と並行し、症状に適した治療(対症療法)が必要です。
瓜実条虫などの寄生があるときは、ノミの駆除と同時に寄生虫の駆除も行います。

また、同時に環境からもノミを駆除しなければなりません。室内はこまめに掃除機をかけ、洗えるものは洗いましょう。
ノミの繁殖サイクルを絶つためには、環境対策と薬剤投与を含めた総合的なノミ対策が肝心です。

マダニは、皮膚に口部をくいこませて吸血しているため、口部を残さないように取らなくてはいけません。知らずにひっぱってしまうと、口部が残ってしまい痒みや炎症などの病気の原因になります。
できれば無理に取ろうとせず、動物病院を受診しましょう。マダニの駆除も駆除薬を投与します。
ノミも一緒に駆除できるもの、内服薬タイプ、スポットタイプなどいろいろな種類があるので、愛犬に合った薬を選びましょう。

また、マダニによる皮膚炎やそのほかの症状がある場合、対症療法が必要です。
マダニもノミと同じく、環境対策と薬剤投与を含め、総合的な対策をとらなければなりません。

犬のノミ・ダニ予防法

ノミ・ダニの予防法はいろいろありますが、方法はひとつではなく、さまざまな方面からの対策が必要です。

環境対策

愛犬がよくいる場所はできるだけ清潔にしてください。こまめに掃除機をかけ、日干しや洗濯できるものは洗濯しましょう。

定期的なシャンプー

定期的なシャンプーやブラッシングをしましょう。
ノミやダニが寄生していないか確認できますし、皮膚の状態もチェックできます。(ノミとりシャンプーなどありますが、効果は一時的です。)

予防薬

市販薬として販売されているスポットタイプや首輪タイプもありますが、ノミやダニを寄せ付けなくさせる忌避効果が主です。駆除薬ではありません。
また、洗うとすぐとれてしまったり、効果が持続しなかったりもするため、駆除や的確な予防法としては、効果はかなり低く感じます。

まとめ

今回は愛犬の身近に潜むノミ・ダニについてお話しましたが、いかがでしたか。
ノミやダニが関与する病気が多く、驚いた方もいるかもしれません。ノミ・ダニは犬のみならず人にも被害をおよぼす恐れもあるため、定期的な予防をおすすめします。
近頃では、市販薬やインターネットでも予防薬が手に入りますが、何かあったときにフォローしてもらえ、安心して服用できる動物病院の予防薬を購入するといいでしょう。
 執筆者プロフィール
鳥取大学農学部獣医学科卒。千葉県出身。
千葉市内の犬猫動物病院勤務後、結婚&出産を経て、現在東京都内「ペットスペース&アニマルクリニックまりも」に非常勤として勤務。

幼いころ、動物に接する機会が何度かあり、小学生のときに念願の柴犬を飼ったのが今思えば獣医師になるきっかけだったように思います。
愛犬はその後、老犬となり痴呆が始まり大変でしたが、最後の1年間は勤務していた院長先生やスタッフ皆さんのお陰で穏やかに過ごすことができました。
この経験から、ペットと飼い主さんの気持ちに寄り添い、治療を行うよう常に心がけています。

現在は、夫と子供の3人家族。家事と仕事と育児に邁進中。

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