猫のワクチン接種の必要性

猫を感染症から守るために、ワクチン接種はとても有効です。
特に子猫は、母親からの免疫(移行抗体)が切れる6週齢頃から感染症にかかりやすいです。この時期に感染してしまうと、体力がないため、最悪の場合は命を落としてしまう危険性があります。
なお、子猫のうちは、1回のワクチン接種だけでは十分に免疫(抗体価)が上がらないことから、初めの年は2~3回接種します。

「成猫になってもワクチンの接種は必要なの?」「うちの子は家から出ないから必要ないでしょ?」などの質問を受けることがよくあります。
ワクチンで得る免疫は一生あるものでなく、徐々に薄れていきます。このため、生後1年以降も年1回のワクチン接種をおすすめします。

また、室内飼いだからといって、感染症にかからないとは言いきれません。
例えば、ご自宅の周りに野良猫がくる場合、ウイルスの種類によっては網戸越しから感染してしまったり、お皿やトイレから間接的に移ってしまったりすることもあります。

震災時など万が一のときに備え、ワクチン接種をしておくと安心感も違ってくるでしょう。
そして、ペットホテルなどで猫を預けるときに備えて、自己防衛としてワクチンを接種しておくことも重要です。

猫のワクチンの種類・効果

猫のワクチンは、感染症を予防するものです。ワクチンには、いくつか種類があります。
1種類の感染症を予防するワクチンを「単体ワクチン」、複数の感染症を予防するためのワクチンを「混合ワクチン」と言います。
猫の混合ワクチンは、猫免疫不全ウイルス以外のワクチンを組み合わせたものです。
ここでは主に3種、5種混合ワクチンについてお話しますが、ほかにも4種や7種混合ワクチンなどもあります。

動物病院によって扱っているワクチンの種類や値段は異なりますので、直接お問い合わせください。

<猫の3種混合ワクチン>
猫ヘルペスウイルス(猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス)
猫カリシウイルス
猫汎白血球減少症ウイルス

<猫の5種混合ワクチン>
猫ヘルペスウイルス(猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス)
猫カリシウイルス
猫汎白血球減少症ウイルス
猫クラミジア
猫白血病ウイルス

<猫の単体ワクチン>
猫白血病
猫免疫不全ウイルス

上記のワクチンで、以下の感染症を予防することができます。

猫ヘルペスウイルス(猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス)

感染猫の眼や鼻からの分泌物や唾液から感染する。
症状は、元気消失、発熱、くしゃみや鼻水などの鼻気管炎、結膜炎。進行すると肺炎、呼吸困難、失明することもある。
  

猫カリシウイルス

複数の株があり、症状はくしゃみや鼻水などの鼻気管炎、口腔内潰瘍、肺炎などさまざま。

猫汎白血球減少症ウイルス

「猫パルボ」とも呼ばれている。感染力が非常に強い。
症状は元気消失、発熱、激しい下痢や嘔吐で、子猫が感染すると命を落としてしまうことも多い。

猫クラミジア

猫クラミジアと言う細菌の一種によって引き起こされる。
症状は鼻汁、くしゃみ、結膜炎、角膜炎、咳などで、重症化すると肺炎から呼吸困難で亡くなってしまうこともある。人畜共通感染症でもある。

猫白血病ウイルス(FeLV)

症状は貧血、発熱、口内炎、慢性鼻炎など。FeLVに感染し発症すると、さまざまな病気のリスクが高くなり、寿命が短くなる。
感染初期の症状は気付かれないまま経過することが多く、数カ月~数年後に二次感染、FeLVにより誘発されるリンパ腫などの腫瘍、貧血、免疫介在性疾患などが発症する。

猫免疫不全ウイルス(猫エイズ)

猫同士の咬傷などを介して広まり、徐々に猫の免疫力を低下させ、その結果さまざまな病気にかかりやすくなる。
病期は急性期、無症候キャリアー期、持続性全身性リンパ節症期~AIDS期に分類される。
症状は口内炎、歯肉炎、上部気道感染症などで、一般的に難治性となる。AIDS期に入ると著しい削痩、日和見感染が認められる。
そのほかに貧血、腫瘍、神経症状などがみられることがある。AIDS期の多くは数カ月以内に命を落とすと言われている。

猫のワクチン接種をする時期・頻度

初めて打つワクチンは、母猫からの免疫(移行抗体)が少なくなってくる、生後6週~2カ月齢頃に打ちます。その後、ある一定の期間をあけて2~3回打ちます。
ワクチンでできる免疫(抗体価)は、一生効力があるわけではないので、その後は年1回のワクチン接種が理想的です。

ワクチンを接種するときは、体調がよいときでなければなりません。
元気や食欲がない、下痢や嘔吐など何か症状があるときは、先に治療が必要なこともあります。また妊娠中や授乳中は接種できません。
ほかに既往症や以前にワクチンによる副反応が出たなど、ワクチン接種による副反応リスクが高い場合、接種はおすすめできません。

ワクチン接種後は、自宅で安静に過ごし、愛猫の状態を観察しましょう。
接種後の副反応が起きた場合は、速やかに獣医師の指示を仰ぎましょう。(副反応が起きてもすぐ対応できるよう、ワクチン接種は午前中がおすすめです。)
また、ワクチン接種後2~3日間は、シャンプーを控えてください。

そして、ワクチン接種をしてもすぐに抗体はできません。
抗体ができるまでは約3~4週間と言われていますので、その間、新しくきた猫をほかの猫と接触させないようにしましょう。

猫のワクチン接種による副作用

ワクチンの副作用は、アナフィラキシー反応(呼吸困難、血圧低下、体温低下、震えなど)、アレルギー反応(蕁麻疹、顔が倍くらいに腫れてしまうムーンフェイス、掻痒など)、発熱、元気消失などがあります。

最も危険なのが、ワクチン接種直後のアナフィラキシー反応です。
ワクチン接種15~30分後までは、異常がないかよく観察し、何かあればすぐに治療できるよう近くで待機しましょう。特に子猫で初めてワクチン接種をするときは、注意してください。

そのほかにもワクチン接種数時間後に起きやすいのが、蕁麻疹やムーンフェイスなどです。これらの症状が見られた場合、すぐに動物病院に連絡し、治療を受けましょう。

また、ワクチン接種部位が固くなり小さなしこりができることがあります。
たいていは自然と消失しますが、だんだんと大きくなってしまうことがごく稀にあります。これをワクチン反応性肉腫といいます。
このため接種後は、患部が熱をもっていないか、腫れていないかを確認してください。

ほかにも何か気になる症状があれば、動物病院に連絡し、指示を仰ぎましょう。

まとめ

猫のワクチンには感染症から身を守るという大きなメリットがありますが、副反応のリスクも忘れてはなりません。
病気にかかるリスクと副反応のリスクを天秤にかけ、愛猫の性格、健康状態、生活環境を十分に考慮し、獣医師と相談のうえ、ワクチンの接種を決めましょう。
 執筆者プロフィール
鳥取大学農学部獣医学科卒。千葉県出身。
千葉市内の犬猫動物病院勤務後、結婚&出産を経て、現在東京都内「ペットスペース&アニマルクリニックまりも」に非常勤として勤務。

幼いころ、動物に接する機会が何度かあり、小学生のときに念願の柴犬を飼ったのが今思えば獣医師になるきっかけだったように思います。
愛犬はその後、老犬となり痴呆が始まり大変でしたが、最後の1年間は勤務していた院長先生やスタッフ皆さんのお陰で穏やかに過ごすことができました。
この経験から、ペットと飼い主さんの気持ちに寄り添い、治療を行うよう常に心がけています。

現在は、夫と子供の3人家族。家事と仕事と育児に邁進中。

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