猫の血便がでる仕組みについて

血便とは、血液が混ざった状態で排泄される便のことを言います。
通常であれば、消化の過程で便に血が混じることはありません。そのため、血便が出るということは、口から入った食べ物が胃に入り、小腸・大腸を通過し、肛門から排出される過程で出血が起きていることを意味します。

一概に血便と言っても、体内のどこから出血しているのかによって、見た目や状態が変わってきます。
多くの場合、「血が出ている」と解るのは、便に血液が付着している、またはペットシーツに血が垂れているという状態かと思います。
肉眼で血液とわかる出血が見られる場合、大腸・直腸・肛門といった比較的お尻に近い部分や、下部の消化管からの出血であることが多いです。

一方、胃や小腸といった上部消化管からの出血であった場合、血液が胃酸で酸化するため、黒または暗赤色になることが多いです。
本来、消化管から出血し、肛門から排出されることを総称で「下血」と言いますが、区別するために上部消化管から出血を「下血」、下部消化管からの出血を「血便」として使われることが多いようです。

また、出血の量が少なく肉眼でわからない場合でも、検査キットで血液陽性反応が出ることがあります。このような便を「潜血便」と言います。

猫が血便をしたときのチェックポイント

では、実際に猫が血便をしてしまい、動物病院に連れていくとします。
その際に必ず問診を行うと思いますが、自分で説明できない猫の代わりに、飼い主さんがなるべく多くの情報を獣医に伝えることで治療がスムーズに進みます。そのためにも、血便をしたときにチェックすべきポイントをお教えします。

まずはうんちの形状です。
通常、猫の便の色は濃い茶色をしています。コロっとした固さがあり、水分を含んでいるためツヤがあります。
いつものうんちと比べてどうか、少し柔らかい、泥のような下痢、水のような下痢、固くてカチカチである……など。ニオイもいつものうんちのニオイと比べて臭いといった情報も重要です。
次に血液は便に付着していたのか、ポタポタとトイレに垂れていたのか、便には血液以外に白いゼリー状の物などはついていなかったか。また、付いていた血の量はどの程度だったのか。

ちなみに、便はそのまま便の検査に使用できるので、できる限り診察のときに持っていくようにしましょう。
新鮮な便であることが理想ですが、無理そうならせめて半日以内のものを、ラップなどに包んで乾燥しないようにして持っていくとベストです。

血便がショッキングで気を取られがちですが、それ以外の猫ちゃんの状態も重要です。
食欲がない、元気がない、水をたくさん飲むといった変化や、嘔吐をしている、血尿をしているなど、血便以外の異常も見られるようならそれもしっかり獣医師に伝えましょう。

猫の血便から考えられる病気について

胃腸炎

■細菌性胃腸炎
カンピロバクターやサルモネラといった細菌が原因の胃腸炎で、嘔吐や悪臭のある下痢などの症状が見られます。これらの細菌は腸管の上皮に侵入し、炎症を起こします。
どちらの菌も健康な猫であれば問題はありませんが、子猫や老猫、免疫力が低下している場合など、腸内細菌のバランスが崩れるとこれらの菌が悪さをすることがあります。

■ウイルス性胃腸炎
ウイルスを原因とする胃腸炎で、猫パルボウイルスによるものが有名です。
猫パルボウイルス感染症の主な症状は、食欲不振、元気消失、激しい下痢と嘔吐、高熱、脱水が見られます。子猫や高齢の猫は死亡率が高く、特に子猫では心筋にウイルスが感染し、心不全を起こして死亡することがあります。
腸にウイルスが感染すると、腸の粘膜が破壊され、激しい下痢と血便が見られます。また、腸粘膜が破壊されると、本来腸内にいた細菌が血管の中に入り、敗血症が起きることがあります。

寄生虫性

寄生虫が腸管に寄生することで、下痢を引き起こします。
特に線虫の仲間である鉤虫は小腸の壁にかみつき、吸血します。その際、血液が固まりにくくなる物質を出すため、タール状の黒色便や鮮血便、慢性的な貧血が見られることがあります。
また、原虫の一種であるコクシジウムは腸の粘膜細胞に寄生・繁殖し、腸管内に出てくる際に細胞を壊してしまいます。細胞に傷がつくことで、タール状の黒色便や粘膜便が見られます。

食物性

食べ過ぎや食べなれないものを食べたことによる一時的な下痢や、食物アレルギーでの下痢で血便になることがあります。アレルギーが原因のときは、ほかに皮膚の痒みや脱毛などの皮膚炎症状が出ることもあります。

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患(IBD)とは、炎症を引き起こす細胞が消化器粘膜内に広がっていくことで起きる慢性的な胃腸疾患群のことです。
主な症状は、慢性的な嘔吐・下痢で、時に血便が出ることもあります。進行すると、食欲不振や体重の減少、重症化すると腹水の貯留が見られます。

便秘

丸2日以上便が出ない状態が続くと便秘と言えます。そして、次に便を排泄するときにいきみ過ぎて血便になることがあります。
便秘の原因は水分の不足やストレスによるもの、腸の蠕動運動の低下、腫瘍や異物誤飲による腸の閉塞などさまざまです。

胃腸の腫瘍

胃腸の腫瘍やポリープによる出血で、便に血が混ざることがあります。
また、前述のように腸管できた腫瘍によって物理的に腸管が閉塞され、通過障害による下痢や便秘が起きる場合もあります。
猫の消化器官に見られる腫瘍はリンパ腫によるものが多く、初期の症状としては食欲不振、体重減少、嘔吐、下痢が見られます。

薬の副作用

稀にステロイド剤や非ステロイド性抗炎症剤の副作用で、下痢・嘔吐など一過性の消化器症状が見られることがあります。

猫が血便をしたときの治療法

前述したとおり、血便の原因はさまざまで、その原因によって治療法も変わります。
まずは原因の究明が大切ですので、検査のためにもできる限り猫のうんちは動物病院に持って行くようにしましょう。うんちの検査で寄生虫、細菌、ウイルスの検査が可能です。

寄生虫は、顕微鏡を使い、虫の卵や原虫を見つけることで特定できます。治療法はその虫に合わせた駆虫薬を投与します。
細菌による胃腸炎の疑いがある場合、抗生物質の投与を行います。場合によっては、細菌の培養・同定など詳しい検査を行うこともあります。下痢や嘔吐による脱水が見られるときは、点滴による輸液を行います。

ウイルス性の胃腸炎が疑われる場合、基本的にウイルスへの特効薬はないので、対症療法のみとなります。
脱水を防ぐための点滴治療と、細菌の二次感染を防ぐための抗生剤の投与が主になります。
また、子猫や予防接種をしていない成猫で、激しい下痢・嘔吐、元気消失などの全身症状が見られる場合は、猫パルボウイルス感染症の可能性があります。
パルボウイルスは非常に感染力の強いウイルスで、人間の手や衣服に付着して感染することもあります。
感染を広げないためにも、動物病院へ連れて行く前に予防接種を受けていない旨や症状を伝えておくといいでしょう。

便秘によって血便が起きているのであれば、便秘の改善のために便を柔らかくするシロップの投与や腸の動きをよくする薬の投与、または療法食による食餌療法などがあります。
しかし、異物の誤飲による通過障害であれば、外科手術の必要もあります。
腫瘍によるものであれば、血液検査や病理検査など詳しい検査をしたうえで、ステロイド治療や抗がん剤治療が行われます。

まとめ

わんちゃんと違い、猫ちゃんはトイレで砂をかけてしまったり、お外で排泄したりと、うんちから見つかる異常を見逃しやすいです。
そのうえ、血便をしても、特にケロっとしていれば、ますます変化に気付きにくいでしょう。
しかし、うんちは猫ちゃんの健康状態が反映されています。体調の変化には、常に気にかけるようにしてあげたいですね。
 執筆者プロフィール
獣医師 / ペットサロンBEANS
酪農学園大学獣医学科卒業、後に日本獣医中医学院にて中医学を学び獣医中医師の資格を取得。

ペットスペース&アニマルクリックまりも様にて臨床経験を積ませていただきながら経営のノウハウを学ばせていただき、2017年2月、調布市にペットサロンBEANSを開業。

ペットホテルとペットの鍼灸治療を行っています。また、週に2日はまりも様にて代診を行っております。
鍼灸という身体に負担の少ない治療法でペットや飼い主さんの手助けができればと思っています。

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