犬の歯石とは?

歯石の基礎知識

歯石とは、歯の周りについた菌の塊が石灰化したものです。その名の通り、石のように硬く、歯石1gあたりに3億個もの細菌がいるといわれています。

なぜ歯石ができるのか

ドッグフードを食べてから6~8時間後くらいに、歯の表面にネバネバしたものができてきます。これは、歯に付着した菌が増殖してできるもので、歯垢(プラーク)と呼ばれています。
歯垢はやわらかいので、ガーゼや歯ブラシで歯磨きをすればすぐに除去できます。
歯垢が除去されずそのまま残っていると、歯垢に唾液中のミネラルが沈着し、2~5日くらいで石灰化してきます。これが歯石です。

歯石がつくとどうなるのか

歯石の表面はザラザラしていて歯垢が付きやすいです。できてしまった歯石を放置すると、その上へ上へと歯石が蓄積し、雪だるま式に増えていくということになります。
歯石は口臭の原因になるだけでなく、じわじわと歯茎を傷め、歯の根元を破壊します。このように歯の周りの組織が炎症を起こす状態を「歯周病」といいます。
歯根にたまった膿で顔が腫れたり、顔の皮膚に穴があいたりしてしまうケースもあります。歯周病は放置すると、肝臓や腎臓といった臓器にも悪影響を及ぼす可能性も示唆されています。

年齢は関係ない

口の中の食べカスが歯垢となり、除去されなかった歯垢が歯石となりますので、歯石沈着に犬の年齢は関係ありません。

犬の歯石を取る方法は?

歯石に気付いたら、まずはかかりつけ医に診てもらいましょう。その場で獣医さんが取り除いてくれることもあります。
同じように自宅でも

・愛犬がおとなしくしてくれる
・歯石はついて間もない、比較的やわらかい状態
・歯石がついた歯が簡単に見える場所にある
・犬が動かないように支える役と、歯石を取り除く役、二人いる

以上の条件がそろえば、除去が可能です。

自宅での除去方法

■スケーラー
鉛筆サイズくらいで、先端がとがっている金属の器具です。歯と歯の間に入れ引っ掻いたり、歯の表面を沿わせるようにして歯石を削ったりするものです。
手軽で便利そうな商品ですが、先端が鋭利になっており、犬の歯肉を傷つけたりケガをさせたりしてしまう恐れがあるため、一般の方の使用はおすすめしません。使用前、購入前に、一度病院に相談してみましょう。

■歯石取りペンチ
片方を歯肉と歯石の間に入れ、もう片方を歯の先にあて、縦に挟んで割るように除去するものです。
作業的にはそれほど難しくないかもしれませんが、犬が口の中の金属を嫌がったり、歯石が割れる音に驚いたりする可能性があります。危ない動きをとらせないように、犬の体はしっかり保定しましょう。

■歯石除去スプレーやジェル
犬の歯に塗るだけで、歯垢・歯石の除去と予防ができるケア用品です。
器具を使った除去に比べると安全で、ケガの心配がないというメリットがあります。
しかしながら歯石除去には数カ月かかると説明しているものも多く、予防効果に関していえば、毎日の歯磨きに勝るものではありません。メーカーや商品によって効果や使用法は違いますので、成分や説明書きはしっかり確認しましょう。

器具を使用した自宅での除去作業は強くおすすめしませんが、歯磨きや歯磨きガムで、ついてしまった歯石を取り除くことは難しいです。

犬の歯石取り① 麻酔なし(無麻酔)

最近、無麻酔下で歯石取りを行う施設を多く見かけるようになりました。どのようなメリットとデメリットがあるのでしょう。

メリット

①気軽に行ける
無麻酔処置を行う動物病院が増えてきました。よく知る場所で、まずは気軽に問診をお願いできるのがメリットです。
動物病院以外の施設、トリミングサロンなどでも行うところが増えてきたようです。ただし、無麻酔処置に獣医の資格は必要ないので、病院以外の施設での処置は獣医師によるものではありません。不安や疑問があれば必ず確認し、解決しておきましょう。

②体に優しい
麻酔を使わないという点からみれば、体への負担が少なく、犬の体に優しいといえます。とくに、麻酔のリスクが高いとされる短頭種の犬や、持病がある犬にとっては、頼れるところとなるでしょう。

③費用が安い
平均費用は1回1万円弱と、全身麻酔下の歯石除去手術と比べるとかなり安く設定されているようです。

デメリット

①細かい場所の除去はできない
歯周ポケットや、歯の裏側の除去はできません。
また、上顎の歯と重なっている下顎の歯は、処置を行わないところも多いようです。歯根が露出していたり、歯周病を発症したりしている場合も施術を受けられません。

②表面がザラザラになる
歯石は完全に除去できるのではなく、歯の表面にザラザラとした状態で残っています。そのため、その後も歯石はつきやすく、定期的なケアが必要となるケースが多いです。

③嫌がる犬にはできない
処置中、犬は動けないよう保定され、長い時間その体勢をキープしなければなりません。
犬が協力的でない場合や嫌がる場合、また、椎間板ヘルニアや関節炎、呼吸器系や心臓の持病がある犬は受けられません。お座りや仰向けの姿勢がきつくなってきた老犬にとっても、難しい体勢です。

犬の歯石取り② 全身麻酔

全身麻酔下で行う場合のメリットとデメリットをみていきましょう。

メリット

①犬の性格に関係なく行える
無麻酔下での処置は犬の性格によるところが大きいですが、ここではまったく関係ありません。

②細部まですべて除去できる
歯周ポケットや歯の裏側の除去と、抜歯、歯周病の治療もおこなえます。

③歯垢がつきにくくなる
歯の表面の研磨を行うので、歯垢はつきにくくなります。術後、毎日の歯みがきを徹底すれば、歯石の沈着も再除去の心配もいりません。

デメリット

①病院でしか行っていない
全身麻酔を用いた獣医師による医療行為です。

②麻酔のリスク
健康な犬でも麻酔のリスクはゼロではなく、老犬や短頭種、持病がある犬などはリスクが高まります。現在は多くの病院が血液検査やレントゲンによる麻酔前検査を取り入れています。不安があれば獣医師に相談しましょう。

③費用が高い
病院や犬の大きさによって違いますが、小型犬で2~5万円が相場のようです。無麻酔下での費用より高くなりますが、その後ケアを怠らなければ、再処置の必要はありません。

歯石になる前に予防しましょう

歯石除去の方法とそれぞれのメリット・デメリットをご紹介しましたが、どちらにしても歯石の除去はおおごとです。ついてしまうと大変ですが、予防は決して難しくありません。今日からでも早速始めましょう。

歯磨き

体調が悪くできない日もあるかもしれませんが、1日に1回を目標に行いましょう。愛犬が嫌がる場合にはフレーバー付き歯磨き粉がおすすめです。歯磨きはもっともシンプルでもっとも効果的な予防法ですので、習慣になるよう心がけましょう。

液体歯磨き

歯や歯茎に直接塗り、歯ブラシを使わずにケアができる「液体歯磨き」も、たくさんの種類が出ています。
スプレータイプのもの、マッサージするように塗り込むジェルタイプのものなど、使用法はそれぞれ異なります。使用する際には必ず、成分表や説明書きに目を通してください。

まとめ

歯石は沈着するとあっという間に大きくなり、歯石が歯茎を覆えばたちまち歯周病など厄介な疾患にかかります。
歯石が大きくなったり歯周病を患ったりした場合には、無麻酔処置方法も選択できません。まずは予防につとめましょう。
毎日の歯磨きで簡単に、歯石知らずの健康な口内を保てます。
 執筆者プロフィール
No dog No life

特に牧羊犬が大好きです。
一番の関心事は「シニアわんことの暮らし」。
「人と動物の共生」「ワンヘルス」にも関心があり勉強中です。

動物愛護フェスティバル実行委員。
某県の災害時動物救護ボランティアチームに所属。
某県の動物愛護センターの登録ボランティア(おうちに帰れなかった犬たちの保護と譲渡のお手伝い)もしています。

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