犬の認知症の症状

①夜鳴き(夜泣き)

ある日突然、シニアの愛犬が夜鳴きを始めたら、認知症を疑ってみましょう。
夜鳴きの原因を探る際にまず考えるのは、「体のどこかに痛みがある」「ひとり寝が不安」または「水が飲みたい、トイレに行きたいなどの要求吠え」で、このどれにも当てはまらない場合は、認知症の症状である可能性が高いです。

②突然怒ったり噛んだりする

老犬になると、視覚と聴覚の衰えから、見えない聞こえない不安と恐怖で気が荒くなることがあります。体のどこかに痛みがあり、触ってほしくなくて噛むケースも少なくありません。
しかしそれだけでなく、認知症による制御能力の低下の可能性もあります。シニアになり性格が狂暴になるというのは、認知症の症状としてよく知られています。

③抑揚のない声で長時間吠える

単調なトーンで何時間も鳴き続け、話しかけたり撫でたりしてもやめない場合は、認知症の症状といえます。

④異常な食欲と食欲不振

認知症の症状のひとつに「無目的な活動の増加と、目的を持った活動の低下」というのがあります。
代表的なものとしては、ごはんを食べたことを忘れ、もっともっとと欲しがったり、反対にまったく食べなくなったりするというものがあります。
また、ごはんを食べないにも関わらず、おなかが空いたと要求鳴きする犬もいるようです。

⑤徘徊する

認知症による徘徊行動は、人の場合と同じように理由なくうろうろしているわけではありません。犬からすると目的があるものの、自分のいる場所が分からなくなり、そのような行動が現れていると考えられています。
徘徊行動には、グルグル同じような場所を歩き回る「常同行動」、あちこち落ち着きなく歩く「過活動」、迷子になっている状態の「見当識障害」の3つがあり、認知症による徘徊行動はこのうちの「見当識障害」から引き起こされているといわれています。

認知症になりやすい犬

かかりやすい犬種と特徴

認知症にかかる犬のうち約80%が日本犬または日本犬系の犬で、そのうちの約30%を柴犬が占めているというデータがあります。
洋犬と比べ日本犬の発症が圧倒的に多い理由はまだわかっていませんが、日本犬の食生活の変化が関係しているという説があります。

長いあいだ人間の残飯をごはんとして与えられてきた日本犬の食生活は、国内にドッグフードが普及しはじめた1960年頃から大きく変わりました。
魚中心から肉中心になり、同時に、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)の摂取量が不足したことが原因と指摘されています。
それを認知症発症の原因と断定するのは難しいところです。
しかし、認知症の犬とそうでない犬のDHAとEPAの血液濃度を比較をしたとき、認知症の犬のほうが数値が低いことが確認されています。

発症年齢

犬の認知症は10歳を越えるころからみられ、13歳から多くなります。15~17歳になると半分近くが発症しているといわれています。

犬の認知症の治療法

早期発見・早期対策

認知症に対する治療法や特効薬は、今のところ存在しません。ただし、初期や軽度であれば、進行をゆるめたり、症状を改善したりができるようになりました。
認知症は進行性の病気です。早めに症状に気づき、対策をとることが重要です。

病院での治療

病院では食事療法、薬物療法、生活習慣の改善指導を行うのが一般的です。
抗酸化作用を強化したフードや、酸化ストレスや炎症を軽減するサプリメントなどで進行を遅らせることが可能といわれています。症状や状況によっては、睡眠薬や精神安定剤を処方されるケースもあります。
特効薬はなく、治療による完治は望めませんが、かかりつけ医や薬に頼れば、愛犬の症状をやわらげるのはもちろん、飼い主さんの心労や介護疲れも軽減できるはずです。少しでも気になる症状があれば、病院へ相談にいきましょう。

犬の認知症の予防と対策

老化には逆らえませんし、認知症も完治できない病気ですが、予防は可能でとても重要です。ぜひ飼い主さんも一緒に楽しみながら取り組んでみてください。

認知症予防

■頭を使うおもちゃで遊ぶ
愛犬がまだおやつに興味があれば、ノーズワークマットやおやつボールなどを使う「おやつ探しゲーム」がおすすめです。知育玩具で行ういわゆる「脳トレ」で、「考える」「楽しむ」と「匂い」で脳を刺激します。

■散歩コースを変える、他の犬とのふれあいの場を設ける
犬も長生きをすると、日常は慣れ親しんだものばかりになり、物事への関心も薄れ、単調な暮らしになりがちです。「新しい」や「初めて」をたくさん体験させてあげましょう。

■サプリメントの活用
認知症になりやすい犬の項目で解説しましたが、認知症になった犬とそうでない犬とでは、DHAとEPAの血中濃度に差があることが分かっています。
このふたつは脳神経細胞を活性化させたり、血液をサラサラにしたりする働きもあり、予防と発症後の改善対策に用いられています。
ほかにも抗酸化物質やビタミンなど、認知症予防に効果があると考えられている栄養素はいくつかあります。
病院と相談をし、サプリメントや漢方、DHA/EPA高配合のフードなどを与えてみましょう。

■その他
愛犬の留守番時間が長いときには、テレビやラジオなどをつけっぱなしにし、人の声や何らかの音が聞こえるようにするとよいといわれています。留守番中ずっと寝ているだけにならない工夫が必要です。

もし認知症になってしまったら

■ひとりで頑張りすぎない
愛犬が認知症を発症した場合に一番大切なのは、飼い主さんの心にゆとりをつくることです。
何時間も鳴き続けたり徘徊したりする愛犬の姿は、見るだけでもつらく切ないもの。また、ご近所への気遣いで神経をすり減らしてしまう夜鳴きなどは、多くの飼い主さんを悩ませています。
ご近所の方へは思いきって、愛犬が認知症を発症したこと、しつけをしていないわけではないことを知らせましょう。周囲の人にも事情を知ってもらい、相談できる人をつくるのはとても大切です。

■脳に刺激を与える
予防時と同様、発症後も、脳に刺激を与えましょう。
「見えていないから」、「聞こえていないから」と思わず、目を見て話しかけてください。スキンシップやマッサージも効果的です。たくさん触ってあげましょう。
寝たきりにならないよう筋力維持も心がけ、適度な運動を取り入れましょう。散歩に出れば、日光を浴び、音を感じ、匂いを嗅ぎ、五感が刺激されます。
カートに乗せて外へ連れ出すだけでも脳へ良い刺激を与えることができます。お散歩はお互いにとってよい気分転換の時間となるでしょう。

■環境を整える
認知症になるとまさかの隙間に入り込んで出られなくなったり、方向転換がうまくいかず転倒したり角にぶつかったりと、危険です。
家具と家具の間や、ソファの下の隙間などは、クッションや毛布で埋めましょう。隙間や段差が多い部屋には入れないようにするのも方法のひとつです。
徘徊がみられる場合は、サークル内で過ごしてもらうのが一番安全です。広めのサークルを用意しましょう。
丸いサークル、または四角いケージの中にお風呂マットやベビー用大判パズルマットなどを丸になるようにつなぎ、エンドレスサークルを作ります。犬はこの中でいつまでもグルグル回っていますが、いつかは疲れて眠ってくれます。

まとめ

認知症発症は愛犬の長生きの証です。
予防が大切ですが、徹底して予防したからといって絶対にならないわけではありません。それでも、予防対策は、シニアになり単調になってしまう愛犬の毎日をいきいきとさせ、QOL(生活の質)向上につながるはずです。
飼い主さんは、かかりつけ医に相談したり、まわりの人を頼ったり、さまざまなグッズを活用したり、できるだけご自身の負担を減らすように考えてください。長生きをしてくれている愛犬との残りの時間を、少しでも心おだやかに過ごせますように。
 執筆者プロフィール
No dog No life

特に牧羊犬が大好きです。
一番の関心事は「シニアわんことの暮らし」。
「人と動物の共生」「ワンヘルス」にも関心があり勉強中です。

動物愛護フェスティバル実行委員。
某県の災害時動物救護ボランティアチームに所属。
某県の動物愛護センターの登録ボランティア(おうちに帰れなかった犬たちの保護と譲渡のお手伝い)もしています。

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