犬の白内障とは?

白内障は、目のフィルム(網膜)に映像を送るレンズの役割を果たす「水晶体」が、混濁した状態を指します。この混濁の程度や場所によって、視覚障害が引き起こされます。
水晶体は水とたんぱく質からできています。このたんぱく質が遺伝子や加齢・外傷・病気などで変質することによって、混濁が生じます。
混濁はレンズが「にごる」という変化なので、透明の窓ガラスがくもりガラスに変化するようなイメージです。素材そのものが変わり、光を通さなくなっている状態です。

犬の白内障の原因は?

白内障は症状の発生年齢により、生まれたとき~直後に見られるものを「先天性白内障」、2~5歳に発症するものを「若年性白内障」、6歳以上で混濁を認めるものを「老年性白内障」と区分します。
また、原因別に、生まれついての遺伝子に問題がある場合を「遺伝性白内障」、外傷や病気などから引き起こされた場合を「後天性白内障」と区分します。

遺伝性白内障

好発犬種としてはミニチュアシュナウザーミニチュアプードルトイプードルアメリカンコッカースパニエルなどがあげられます。
発症時期には差がありますが、先天~若年時に症状が出始めることが多く、両目に混濁が認められます。

後天性白内障

■外傷性
トゲや猫の爪などで水晶体に穴が開いたり、交通事故などで強く目を打ったりすることで、変性が引き起こされます。傷などを受けた片目だけ起こることが多く、白内障だけでなく結膜の炎症や水晶体のむくみなど、別の症状を伴いやすいです。

■糖尿病性
糖尿病の進行により、代謝しきれない糖の一部が水晶体内に溜まることで変性が起こります。

■老齢性
加齢により変性が引き起こされます。進行はゆっくりで、数年単位であることも。
人では白内障というと高齢の方の病気になりますが、犬の場合は遺伝的な原因により、若年で発症する白内障が多いです。
高齢犬の水晶体の混濁は、「核硬化症」という病気であることが多いです。

核硬化症は、加齢により水晶体の中心のタンパク質が硬くなることで、白内障と同じように目が白く濁って見えます。
しかし、この混濁はレンズが「くもる」という、素材の変化ではなく見た目の変化に分類されます。
光の透過性はあるため、見えづらさはありますが、見えなくなることはありません。そのため治療の対象にはなりません。ただし、白内障を伴うこともあるので、注意が必要です。

犬の白内障の症状は?

白内障の症状は、混濁の範囲により分類されます。

初発白内障

初期の変化の状態です。
混濁の範囲はごく一部になります。中央が混濁しなければ、視覚への影響は少ないです。従って目立った行動の変化もなく、飼い主でも混濁に気づくことはまれです。

未熟白内障

混濁が進んできた状態です。
混濁の範囲が広がり、混濁の場所によっては、見えづらくなる犬も出てきます。
この頃から、ボール遊びでボールがキャッチできなくなったり、知らない場所を突然怖がったりすることがあります。

成熟白内障

水晶体が全体に混濁した状態です。光を通さなくなるため、失明状態となります。
慣れた家の中でも、物にぶつかるようになります。
構造の変化により、炎症を伴い始めることもあります。炎症を伴うと、痛みから目のしょぼつきや、充血が見られます。

過熟白内障

混濁がさらに強まった状態です。水晶体が変質し、目の奥が沈んだように見えることがあります。

遺伝性の白内障の場合は、見た目の変化(水晶体の混濁)が始まる前に神経の異常が起こるため、夜に目が見えなくなり、暗闇を怖がるようになることが多いです。

もともと犬の視力は人間ほど優れておらず、ぼんやりとした世界の中で過ごしています。それを鋭敏な嗅覚や聴覚で補って生活しているのです。
家の中や慣れた散歩道は、家具の配置やルートなどを覚えて過ごしているので、多少見えづらいときや、場合によっては見えていなくとも、生活に支障は出ません。
しかし、部屋の家具の配置が変わったり、道路の側溝に寄りすぎてしまったりなど、いつもと異なることには対応ができません。ぶつかったり落っこちたりなど不慮の事故に遭わないように、飼い主が気を配ってあげる必要があります。

特に高齢になると、嗅覚や気配をさとる感覚も衰えてきます。このような状態の中で白内障が進み、視覚が乏しくなると、人が近づいたりすることも察知できず、些細な人の動きや物音に驚くことも多くなるでしょう。
白内障になったときには愛犬の変化に気を配りつつ、そのときの状況に合わせた対応ができるといいですね。

犬の白内障の治療法

混濁により失明した目の視覚を取り戻す方法は、外科手術しかありません。
混濁の進行を遅らせる点眼やサプリメントはあります。しかし、水晶体の「素材そのものの変化」である白内障の変化を、元に戻す、つまりは混濁を消すことはできません。

最近では、人用の白内障治療の目薬が出ていますが、ほぼ加齢が原因の白内障とは異なり、犬の白内障は加齢が原因とは限りません。
例えば原因が遺伝的なもので神経に異常が出ている場合は、手術をしても視力は戻りません。従って点眼でも視力が戻る可能性は低いのです。
また、点眼は愛犬にとってストレスになることが多いです。いざ炎症などを併発して点眼治療が必要になったときに、目薬を嫌がる子も少なくありません。
安易に目薬を始めるのではなく、まずは動物病院を受診しましょう。

白内障の手術は、混濁したもとの水晶体を吸引し、人工レンズを挿入する方法が一般的です。成功率は、症例数の多い外科医によって行われれば、90%にまで達すると言われています。
目の手術は特殊な器具や装置が必要です。また、白内障は炎症を伴っていることが多いため、手術後も炎症による合併症や緑内障への移行などの危険性があり、管理が難しいのです。そのため、ほとんどが眼科専門医のいる動物病院でしか行われていません。
二次診療として受けている病院が多いので、まずはかかりつけの動物病院で診察を受けたあと、眼科専門の病院に紹介してもらうようにしてください。

犬の白内障を予防するには

加齢による白内障であれば、点眼やサプリメントの摂取で進行を遅らせることができます。目が白くなってきたかな?と思った初期の段階で始めましょう。
犬用のサプリメントは、抗酸化作用で水晶体のたんぱく質の変性を予防し、白内障の進行を遅らせます。
成分的にはアントシアニンやビタミンE、DHAが含まれます。アントシアニンはブルーベリーなどのベリー類に、ビタミンEはナッツやサバなどに多く含まれます。
これらの食品を愛犬に与えるのも良いかもしれませんが、食品からの必要量を摂取しようとすると、たくさん食べなければなりません。
栄養バランスを考えると、サプリメントを上手に使うのが良いですね。

まとめ

意外と難しい病気である白内障。初期に気づいて治療を始められるかがポイントとなります。
原因が多岐に渡り、どんな犬でも発症する可能性がある病気です。ワクチン接種などで動物病院を受診した際に、定期的に眼もチェックしてもらうと良いですね。
 執筆者プロフィール
「今日は猫ちゃんにお注射した? 」と仕事に行くたびに聞く4歳の長男と、寝るときも猫とひよこのぬいぐるみが離せない2歳の次男に毎日振り回されながら、埼玉県三郷市の動物病院でパート勤務をしている獣医師です。
当たり前のことかもしれないけど、飼い主様の話をよく聞いて、一緒に治療を進めることを心がけながら、病気じゃなくても、ペットに関する心配事をぽつっと相談してもらえるような、飼い主様に寄り添える獣医さんを目指して、日々研鑚しています。

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