犬のけいれん、どんな症状?

病院にきた子犬
けいれんは、体を動かす脳からの信号が、制御不能になって引き起こされます。最大の特徴は、全身性の筋肉の震えです。筋肉の震えには強弱があり、全身が小刻みに震える「振戦」という症状から、倒れて手足をバタバタさせたり突っ張ったりする症状まで、さまざまなケースが認められます。また、手足の一部だけ震えが起こることもあります。
震えのほかにも、意識がぼんやりしたり失ったりする筋肉が過度に緊張してこわばり、動けなくなる、よだれを大量に出し泡をふく、顎をガクガクと震わせる、逆にくいしばって開けられなくなるなどの症状が出ることもあります。

けいれんは、発作の一部の症状です。そして発作が起こるとき、場合によっては「前兆」と「後兆」があります。「前兆」は、けいれんが起こる数分~数時間前に、どこかに隠れようとしたり、不安感が強くなったりする症状が現れます。そして「後兆」は、発作後に数時間~、場合によっては数日の間、運動失調や失明、不整脈、そして何となくボケてしまったような症状が見受けられます。
けいれんが長く続くと、神経障害が引き起こされたり、心臓や全身の臓器への負担が大きくなったりと、命にかかわります。けいれんが一度でも20分以上続いた場合は、早急に原因を調べて、けいれんを繰り返さないための治療が必要になります。

けいれんの特徴である震えは、痛みや恐怖、寒さでも引き起こされます。寒さや恐怖は状況からわかりやすいと思いますが、痛みによる震えは、時にけいれんの一症状のように見えることもあります。ただし痛みからの場合は、意識を失ったり泡をふいたりすることはありません。また継続的に震えるということは少なく、断続的にあるいは思い出したように震えだすことが多くなります。

犬のけいれんから考えられる病気

悲しそうな眼をしたトイプードル
けいれんが引き起こされる病気は、大きく二つに分けられます。

①頭が原因の病気 

神経自体に異常が起こり、けいれんが引き起こされます。若い犬ではてんかんや生まれつき(先天性)の奇形、高齢の犬では脳腫瘍が多いです。
先天性の異常がある場合は、生まれた直後から行動や外見の異常が認められます(例えば水頭症の子犬は、明らかに頭が大きく膨れています。チワワマルチーズなどの犬種で起こりやすいと言われています)。

てんかんは、犬ではもっとも多いけいれんの原因となる病気です。てんかんの特徴としては、血液検査やCT・MRIなどの検査で、内臓および脳の構造や働きに明らかな異常がないことです。けいれん発作が起こって初めて、「てんかんを患っている」という可能性が出てくるので、診断が難しい病気になります。
てんかんによるけいれんは、6カ月齢から3歳齢の間に初めて起こることが多く、大抵は1~2分の間震えが起こります。意識はあっても飼い主を判別できないような状態になる、泡をふく、おもらしをするといった症状や、震えが収まったあとに吐くなどの症状を伴います。

腫瘍の場合は、MRIなどの画像検査で異常が認められることが多いです。症状が緩やかに進むことから、「急に老けた」と感じることも特徴の一つです。徐々にけいれんの頻度や大きさが増すという性質があるのです。

②頭以外に原因がある病気 

病気が二次的に神経を侵すことでけいれんが引き起こされます。低血糖・中毒・腎不全・熱中症など、主に代謝異常の病気があげられます。根本に神経以外の病気があるので、けいれん以外の症状を伴います。

上記のうち、低血糖は、糖尿病などの病気以外でも、元気な子犬でも起こることがあります。激しく遊び回ったあとに、急にぐったりしたり震えだしたりした場合は要注意です。
中毒は、原因となる物質を摂取後、急速にけいれんを発症し悪化します。激しい嘔吐や大量のよだれが出るなどの症状を伴うことが多いです。けいれんが出る中毒としては、殺虫剤(有機リン系物質)があげられます。
熱中症・腎不全によるけいれんは、症状としては末期の状態で起こる症状です。熱中症でのけいれんは高熱により、腎不全でのけいれんは体から排泄できなくなった代謝物質が溜まり過ぎることで、神経が侵された結果です。熱中症でけいれんまで起こった場合は、そのまま多臓器不全に陥り、数日で亡くなってしまうこともあります。腎不全の場合も、けいれんの症状は体が限界を迎えている証なので、数週間のうちに亡くなってしまうことが多いです。

犬のけいれん、治療法は?

ハートモチーフとフレンチブルドッグ
けいれんが出たときに、継続的な治療が重要になってくるのは、てんかんと診断されたタイミングです。
愛犬が若く、短いけいれんが1回起こったきりで、次のけいれんが数カ月起こらないならば、多くの場合、積極的な治療は必要ありません。
けいれんが1カ月以内に再度起こる、あるいは症状が悪化してくる場合は、抗けいれん薬による治療が必要です。残念ながら薬を飲んでいても根治することはなく、一生薬を飲んでけいれんが起きないようにコントロールしていかなければなりません。もし服薬が途切れれば、反動で大きなけいれん発作が起こる可能性がありますので、注意してください。

薬を飲んでいても発作が起こる場合は、血液検査で様子を見ながら薬の量を増やしたり、薬を別のものに替えたりします。
一般的に使われる抗けいれん薬では、副作用として多尿や食欲増進があげられます。愛犬が食べたがっても、必要以上に食事やおやつをあげないようにしましょう。また肝臓に負担がかかる場合もあるため、定期的に血液検査をしましょう。
腫瘍が原因の場合は、外科切除という選択もあります。しかし頭の中の腫瘍は、ほとんどの場合切除が難しいのが現状です。また脳は特殊な器官であるため、抗ガン剤治療の効果もあまり期待はできないのです。てんかん同様、抗けいれん薬やステロイドにより、けいれんをコントロールしていくことが主な治療になります。

犬がけいれんをおこしたときの対処法

具合の悪そうな犬
愛犬がけいれんをおこしたとき、可能であれば以下の3点についてメモにとったり、余裕があれば動画を撮ったりすると、診断の手助けになることがあります。

けいれんの様子(震えるだけか、倒れて足が泳いだりするほどなのか、意識はあるのか、など)
けいれんの続いていた時間はどれくらいか
けいれん以外に嘔吐やおもらしなどの症状があったか

また、愛犬がけいれんしているときは、無理に触って押さえつけようとしないでください。特に顔まわりには絶対に触らないでください。けいれん中は愛犬自身も体をコントロールすることができないので、誤って噛んで、飼い主様が大ケガを負う危険があります。また、愛犬がぶつかってケガしないよう、周りのものに注意を配って、けいれんが落ち着くのを待ってください。
なお、前述のように、けいれんのあとに後兆が出て、ふらふら歩きまわることもありますので、愛犬の行動には十分注意を払いましょう。

まとめ

抱き上げられる子犬
愛犬がけいれんを起こしたときは、まずは落ち着いて、愛犬と飼い主自身の身の安全を図りましょう。そして持病がある場合でも、けいれんが落ち着いたところで、早めに動物病院を受診しましょう。
てんかんと診断された場合は、様子を見てもよい場合と、投薬治療を開始すべき場合とがありますので、かかりつけの先生とよく相談されてください。
 執筆者プロフィール
「今日は猫ちゃんにお注射した? 」と仕事に行くたびに聞く4歳の長男と、寝るときも猫とひよこのぬいぐるみが離せない2歳の次男に毎日振り回されながら、埼玉県三郷市の動物病院でパート勤務をしている獣医師です。
当たり前のことかもしれないけど、飼い主様の話をよく聞いて、一緒に治療を進めることを心がけながら、病気じゃなくても、ペットに関する心配事をぽつっと相談してもらえるような、飼い主様に寄り添える獣医さんを目指して、日々研鑚しています。

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