胃捻転ってどんな病気?

横たわるドーベルマン

胃捻転の病態

食べ物や液体、ガスなどによって急激に胃が膨らむこと(胃拡張)で、胃の一部で”ねじれ(捻転)”が引き起こされます。胃は90°からひどいものでは360°捻転します。捻転の程度にもよりますが、胃の出入り口を塞いでしまい、その結果、胃内にガスと胃液が充満し、異常にお腹が膨満します。膨張した胃は周囲の臓器を圧迫し、胃のねじれに伴い胃とその周囲の血管もねじれてしまうため、全身性のさまざまな症状を引き起こします。
このような胃の変化は急速に起こり、大きな苦痛を伴い死亡する可能性が高いため、救命措置が必要な場合もあります。

胃捻転の要因

はっきりとした原因は分かってはいません。しかし、ほとんどのケースで胃の拡張に続いて捻転が起きるため、要因として下記が考えられます。

  • 早食いや食べ過ぎ
1日1回の多量な食餌を与えている場合や食欲旺盛な犬によく見られます。
  • 水の過剰摂取
食後の大量の飲水によってドライタイプのフードの体積は1.5倍以上に膨張します。
  • 食後の運動
胃が食べ物で膨れた状態で運動すると、捻転しやすくなります。
  • 加齢
胃を支えている靭帯の緩みと関連しています。
  • 痴呆症による過食
  • 異物の誤飲
本来口にしないものを飲み込んだ場合、消化できないため胃が拡張し、発症する可能性があります。
  • 繰り返しの嘔吐
大量の空気を飲み込み胃が拡張します。
  • 胃の腫瘍
胃の運動や胃酸分泌が抑制され、胃拡張が起こります。

胃捻転にかかりやすい犬種

オスワリするワイマラナー
特に胸の深い大型犬で多くみられます。


しかし、ダックスフントやシーズーなどの小型犬種での発症も報告されています。加齢により胃を支えている靭帯が緩むことや痴呆症による過食などによっても起こりやすくなる傾向にあるので、犬種や年齢にかかわらず注意が必要な病気です。

胃捻転の主な症状

具合の悪そうなボクサー
突然発症する病気です。食後およそ3~4時間以内に下記のような症状と経過が見られる場合には、胃捻転の可能性が疑われます。

初期

  • お腹が膨れる
  • 落ち着かない
  • 動いたり横になったりするのを嫌がる
  • 触られるのを嫌がる
  • よだれが多量に出る
  • 泡を吐く
  • 繰り返しの空嘔吐(嘔吐しようとするが吐けない)
  • 苦しそうに呼吸する

後期

  • 貧血
  • 虚脱
  • チアノーゼ
  • 呼吸不全
  • 血圧低下
  • アシドーシス(血液が酸性になる現象)
  • 不整脈
  • ショック(瀕死の状態)

これら全身性の症状が見られると、急激に状態が悪化します。胃に張り付いている脾臓の血管を巻き込んで胃が捻転するため、脾臓が血液で膨れ上がります。太い血管(後大静脈および門脈)の血流が妨げられると、心臓へ戻る血液量が減少し、歯茎などの粘膜が蒼白になり、舌も真っ青になっていきます(チアノーゼ)。心臓の動きも悪くなり不整脈に繋がり、その後ショック状態に陥いります。また、膨満した胃は、胸(横隔膜)も圧迫するため、呼吸不全になります。

この病気は、短い時間で症状が急速に悪化するのが特徴です。通常、食後1~4時間以内に激しい症状が現れます。突発的に発症し、胃の捻じれから全身の血液循環が正常に行われなくなるため、適切な治療が受けられない場合には数時間で命を落としてしまいます。そのため、なるべく早く症状に気付き、迅速に動物病院へ連れて行くことが重要です。

胃捻転の診断と治療法

セントバーナード

診断

診断には症状と飼い主からの情報がとても重要です。胃捻転が疑われる犬には、与えた食餌量や飲水量、食後の運動の有無などを確認します。また同じような症状でも捻転を伴わない胃拡張であったり、腸閉塞など腸が原因のこともあるため、これらと区別するためにレントゲン検査を行い、胃や脾臓の位置の変化、大きさなどを確認します。症状とあわせたレントゲン検査で、胃捻転を診断することができます。

治療法

【軽症の場合】
胃捻転を伴わない胃拡張の場合は、捻転を起こす前に胃をもとの大きさに戻さなくてはいけません。口から胃にカテーテルを挿入し、減圧処置を行います。カテーテルが入らない場合は、外側から胃に直接針を刺して胃の中のガスを抜き、その後、胃洗浄を行います。
<治療費の目安>およそ3~10万円

【重症の場合】
胃捻転を起こしている場合は、早急に捻じれた胃と脾臓をもとに戻す必要があるため、開腹手術を行います。重症の場合は全身の状態も悪化していることが多いため、まず状態を安定させてから、胃拡張と同様に胃内のガスを抜きます。その後、開腹して捻じれた胃と脾臓をもとの位置に戻します。このときに血液の供給が遮断されたことによる組織の壊死が認められる場合には、その組織の切除が必要になります。壊死がよく見られる部位は、胃の一部や脾臓です。
またこのような整復手術を行っても胃捻転を起こしたことのある犬は、再発率が高いと言われています。そのため、胃を腹壁に固定して動かないようにして、再発予防処置を行うこともあります。
<治療費の目安>およそ15~40万円

※費用はおよその値段で、犬種や重症度、手術方法や入院期間によって変わます。またペット保険が適応される場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

胃捻転の予防法と対策

餌を食べるラブラドールレトリバー
【予防法】
胃捻転を防ぐには、食餌と運動の管理がとても大切です。
大型犬や以前に胃拡張を起こしたことのある犬は、胃捻転を起こしやすいので気を付けましょう。
  • 食後は運動をさせない。(食後の散歩もNG)
  • 1回の食餌量を多くしない。
  • 1日の食餌量を2~3回に分けて与える。
  • 食後に大量の水を飲ませない。
  • 消化の悪いものは与えない。

診察の中で、飼い主から「食餌後に散歩をさせています」と耳にすることがあります。しかし食後の運動は胃捻転を引き起こすリスクを高めるため、止めてください。必ず散歩をしてから食餌を与えるようにしましょう。また犬は興奮すると走り回ったり水を多飲したりする傾向にあるため、食後に興奮させないことも大切です。一度に大量に水を飲ませないためには、いつでも水を飲めるような環境を用意しておく必要があります。

【対策】
食後3~4時間以内に発症することが多いため、早朝や深夜のタイミングで発症する確率が高い病気です。そのため事前に、開業時間外も対応可能な病院や救急病院をあらかじめ調べてリストアップしておくとよいでしょう。胃捻転は時間との勝負になるので、症状が出始めてから対応可能な病院を探していると、その間にも症状は悪化し、最悪の場合は治療が手遅れになることもあるからです。

まとめ

秋田犬
胃捻転は致死率が高く、緊急的な治療が必要となる病気です。急速に症状が進行するため、発見が遅れると命を落とす可能性が高くなります。捻転を起こすはっきりとした原因は分かってはいませんが、さまざまなリスク要因が報告されています。特に食餌との関連が強いことから、餌の与え方と食後の様子に注意を払うことは、予防と治療の観点から極めて重要です。もし食後数時間以内に苦しい様子が見られた場合は、胃捻転を起こしている可能性があるため、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
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