猫ブームの陰で犬好きの肩身が狭くなっている!?

世の中は空前の猫ブーム。猫の経済効果をうたった「ネコノミクス」という言葉も生まれ、ペットとして猫を飼う人も増えています。その陰で、犬の飼育頭数は下降気味。犬と猫の飼育頭数が逆転するのももうすぐだ、などという声もあります。

しかし、犬は3万年も前から人間と暮らし、人間の歴史に密接にかかわっています。その証拠に、歴史上の偉人たちにも犬に関するエピソードがたくさん残っているのです。

聖徳太子(574~622年)

聖徳太子(しょうとくたいし)は飛鳥時代の政治家で、一度に10人以上の言葉を聞き分けたという伝説が残っています。最近では「実在していなかった」という説もあり、謎の多い人物です。

そんな聖徳太子は犬好きだったといわれています。はっきりとした証拠があるわけではありませんが、実際に犬を飼っていて、雪のように真っ白な毛並みから「雪丸」と名付けてかわいがっていたそうです。

雪丸はとても賢い犬で、聖徳太子曰く「雪丸は言葉が話せるし、お経まで唱えられる」とのこと。まるで「うちの犬『ゴハン』ってしゃべるよ!」などと自慢する飼い主のようで微笑ましく感じますね。

雪丸は亡くなるとき、自らの言葉で「達磨寺の北東に葬ってほしい」と遺言を残したそうです。雪丸を悼んだ聖徳太子は達磨寺に雪丸を埋葬し、自ら石工に命じて雪丸像を作らせその場に安置しました。
その姿は江戸時代に出版された、各地の名所を絵で表した「大和名所図会」にも残されています。

太子ゆかりの地である奈良県の王寺町では、雪丸が町のゆるキャラとしてマスコットになりました。
ちなみに、「聖徳太子」は亡くなってからの尊称で、現在の小中学生の教科書などでは、本名の「厩戸皇子(王)」と記載されているそうです。
王寺町公式サイト「雪丸の部屋」

藤原道長(966~1028年)

平安時代中期に摂政政治で権力を握り、藤原氏の栄華を築いた藤原道長(ふじわら の みちなが)。証拠となるものが残っているわけではありませんが、『宇治拾遺物語』に道長と犬のエピソードがあります。

平安時代の貴族は猫を寵愛し、冠位を授かる猫さえいましたが、道長は犬好きで知られていました。

晩年、病に苦しんだ道長は、病気平癒や極楽往生を願って法成寺を建立します。道長は建設中から毎日寺に足を運びましたが、このときおともしていたのが、かわいがっていた白い犬でした。

あるとき、道長が建設中の寺の門をくぐろうとすると、愛犬が前に立ちはだかって進めません。犬を避けて通ろうとすると、今度は裾をくわえて引っ張ります。

いつもおとなしい愛犬のただならぬ様子に、陰陽師・安倍晴明を呼んで調べさせると、地面から道長呪詛の土器が出てきました。土器はそれをまたぐと呪いがかかるというもの。
晴明から「白い犬には神通力があるので察して告げたのだろう」と聞いた道長は、よりいっそう白い犬をかわいがったということです。

太田資正(1522~1591年)

太田資正(おおた すけまさ)は名将・太田道灌の子孫で、武蔵国(現・埼玉県)の戦国武将です。

居城である岩槻城と支城の松山城で、資正はそれぞれ50匹もの犬を飼っていて、城内では毎日犬とじゃれ合う資正の姿が見られたそうです。家臣や領民から「うつけ者」と陰口をたたかれることもありましたが、資正はわれ関せずとばかりに、犬とともに2つの城を行き来していました。

あるとき、松山城は北条氏康の軍勢に包囲されてしまいました。あまりに急なことに松山城の家臣たちは成す術もなく、資正に援軍を求めて送った使者も北条勢に阻まれてしまいます。
開城やむなしといったころ、家臣のひとりが、資正が「有事の際は犬を放て」と言っていたことを思い出します。藁をもつかむ思いで犬を放してみると、犬はまっしぐらに岩槻城へ。
包囲していた北条氏も、使者には注意していても犬については警戒しませんでした。

駆け込んできた犬で資正は松山城の危急を察し、すぐさま救援を送ります。思いもよらぬ援軍に驚いた北条勢は逃走し、無事に松山城は守られたのです。

資正は出家した後に「三楽斎」を名乗り、この犬の帰巣本能を使った伝令法は「三楽犬の入れ替え」として伝わっています。日本の軍用犬の起源とも言われ、資正を「戦国時代のトップブリーダー」と呼ぶ人もいるんですよ。

酒井忠以(1756~1790年)

播磨姫路藩(現・兵庫県)の二代目藩主・酒井忠以(さかい ただざね)は、武芸にも優れていましたが、芸術の分野でたぐいまれな才能を表した人物でした。そんな忠以が愛したのが犬の「」。忠以はいつも数匹の狆をそばに置いていました。

江戸詰めだった忠以は、あるとき幕府の名で京に向かうことになりました。
出発の朝、忠以が駕籠に乗ると、察した犬も駕籠に乗り込もうとします。さすがに京に連れては行けないので、家臣が犬を引き離そうとしますが、噛みついて言うことを聞きません。

仕方がないので品川まで、と忠以は犬と一緒に江戸藩邸を出発しますが、品川でも犬が大暴れしたため、結局は京まで連れて行くことになってしまいました。
それを聞いた時の帝は、主人を思う心に打たれ、忠以の犬に位階を授けたそうです。

江戸時代の奇談を集めた「耳嚢(みみぶくろ)」には、犬のほうが位が上なことを嘆いた庶民が作った戯れ歌が流行したことが紹介されています。

「くらひつく犬とぞ兼てしるならばみな世の人のうやまわん」

「位」と「食らい」がかけられていますが、最後の「わん」がなんだかかわいらしいですね。

西郷隆盛(1828~1877年)

明治維新に大きく関与した西郷隆盛(さいごう たかもり)は、上野恩賜公園に立つ銅像からも犬好きであることがわかりますね。

幕末、京都での隆盛は、いつも「寅」という愛犬を伴っていました。祇園で他藩の志士と会うときも座敷に寅を上げ、背中をなでながら日本の未来について話し合っていたそうです。

隆盛が好きだったのは猟犬で、成犬を訓練して猟に連れて行くのが常でした。しかし、隆盛が行っていたのは罠をしかける猟だったので、実のところ犬はほとんど必要なく、山歩きに連れて行っていただけなのでは、とも言われています。

隆盛を知る人は、隆盛の犬好きを「度が過ぎていた」と語ります。山を歩いていると、「お前たちも疲れただろう」と犬を労って食料を与えてしまうので、自分の分がなくなることもしばしば。
山を降りると獲物のウサギや鳥を料理しますが、真っ先に犬に与えてしまい、そのせいで肥満になってしまう犬さえいたそうです。

注文した鰻丼を3杯とも飼い犬に食べさせて店主に叱られたり、湯治に愛犬を13匹も連れて行ったりと、犬好きエピソードが多く残されている隆盛。大久保利通に「太りすぎだから妾でも持て」と提案され、「それは名案だ」と屋敷に迎えたのが2匹の犬だったという話もあります。

隆盛は西南戦争に破れ、最期は城山で自刃します。戦況が悪化すると、犬の世話をしているわけにはいかなくなって、しかたなく愛犬2匹を解き放つことになりました。このとき隆盛は、愛犬と別れることの辛さに人目もはばからず男泣きしたそうです。

天璋院/篤姫(1836~1883)

天璋院篤姫(あつひめ)は、大河ドラマでも知られる女性。今和泉島津家の当主・島津忠剛の長女として生まれ、徳川13代将軍・家定の正室となりました。

江戸城へ輿入れしてからの篤姫は、「サト姫」という三毛猫を飼っていたことがわかっています。サト姫は3人の世話係がつき、年間の食費は25両(約230万円)にものぼりました。
このエピソードから篤姫は猫好きなのかと思われそうですが、鹿児島の実家で暮らしていたころの篤姫は、数匹の狆を飼っていました。

慣れない大奥での孤独感からか、江戸城でも篤姫は狆を手に入れ、「サクラ姫」と名付けてかわいがりました。サクラ姫は篤姫によく懐き、片時もそばを離れなかったといいます。

しかし、夫の家定は大の犬嫌い。篤姫の部屋を訪れるときはサクラ姫を遠くに離すだけでなく、部屋の外に追い出すように命じました。夫がそこまで嫌う犬を飼い続けるわけにはいかず、篤姫は泣く泣くサクラ姫を手放したそうです。

その後に飼い始めたのが、猫のサト姫でした。
現代でも「夫が犬嫌いで犬が飼えない」という悩みを抱えている人は多く、なんとなく親近感を感じますね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
古代から人間のパートナーとして活躍してきた犬は、歴史上でもさまざまなエピソードを残しています。猫ブームといえども、根強い犬好きの人がいるもの確か。
今回あげた人物以外にも、犬好きな偉人はたくさんいます。今後も、犬好きな偉人たちのエピソードを追加する予定です。
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 執筆者プロフィール
『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。

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