猫にアロマは使っちゃダメなの?

アロマセラピーは、植物の香りや成分を凝縮させた精油(エッセンシャルオイル)・アロマオイルを使い、心身の不調を緩和します。ヨーロッパ諸国では、病気やケガの治療にアロマセラピーが用いられることもあり、日本でいう「漢方」のような位置付けになっています。気分をリラックスさせたり、抗菌作用があったり、効果は精油によってさまざまです。

近年、アロマセラピーは人間だけのものではなく、動物にも取り入れられるようになりました。アロママッサージを提供するペットサロンは多く、動物用シャンプーに精油の成分が配合されていることもめずらしくありません。精油・アロマオイルのいい香りは、ペット独特のにおいが気になったときにも効果がありそうですね。

しかし、実は飼っているペットが猫の場合、アロマオイルは大変危険。アロマオイルをなめてしまった猫が死亡した例や、部屋で毎日アロマオイルを使っていたら飼い猫の肝臓に異常な数値が出た例なども報告されています。

香りを嗅いだだけで効果がある理由

まず、アロマセラピーはどのようなメカニズムで効果を発揮するのでしょうか。

①嗅覚から

嗅覚が精油の香りをキャッチすると、感情や本能に関係する「大脳辺縁系」を刺激し、そこから自律神経系やホルモン系、免疫系などを調整する「視床下部」などに情報が伝えられます。アロマセラピーが理性でコントロールできない気持ちを整えるのは、このような生理的メカニズムに基づいていたからなんですね。

②血管から

血管循環で作用する場合もあります。呼吸によって成分を肺に取り込んだり皮膚から吸収したりして、血管に入って体内を循環します。精油の分子構造はとても小さいので吸収しやすく、皮膚に塗った精油成分が5分後には血液から検出されたという研究結果もあります。

なぜ、猫にアロマセラピーは毒になる?

猫にアロマオイルが作用するのも、人間と同様に嗅覚を通して脳に刺激を与える、皮膚や肺を通して血管に入り体を循環するという経路です。
では、なぜ人間にとってプラスの効果をもたらすアロマセラピーが、猫にとって危険なのでしょうか。それは、猫の体質に理由がありました。

①猫は完全肉食動物

猫は生きていくために植物を必要としない、完全肉食動物です。そのため、体内に植物を消化したり分解したりする機能がほぼありません。そのため、ほかの動物なら問題ない精油の植物由来成分も、代謝できず体内にとどまり続けて中毒を起こすことがあります。
ちなみに、猫以外でも肉食動物は精油・アロマオイルの成分を代謝できないそうです。人間に飼われる完全肉食動物としてほかにフェレットがいますが、フェレットでもアロマオイルの中毒例が報告されています。

②モノテルペン炭化水素類に敏感

人間を含め、ほかの哺乳類には無害な芳香分子の「モノテルペン炭化水素類」に、猫は過剰に反応します。モノテルペン炭化水素類が含まれたもののなかでも特にかんきつ類に過敏で、精油・アロマオイルでいうとレモン、オレンジ、グレープフルーツ、ベルガモットなどに毒性が出やすいです。

③フェノール類・ケトン類に敏感

「フェノール類」や「ケトン類」は、人間も過剰摂取に気を付けなければならない物質ですが、猫は特に過敏。
フェノール類は香り成分で、精油・アロマオイルだとオレガノ、クローブ、シナモン、タイム、バジルなどに多く含まれています。ケトン類も香り成分で、多く含まれているのはカンファー、セージ、ヒソップ、スペアミント、キャラウェイなどです。

④猫は人間より皮膚が薄い

人間も猫も、皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」の三層構造になっています。そのうちの表皮には異物や菌などの侵入を防ぐという機能がありますが、猫の表皮は人間の半分以下しかありません。ほんの少しの成分でも、猫は体内に吸収してしまいやすいのです。

猫を飼うならアロマは厳禁!

アロマセラピーに使う精油・アロマオイルは、自然な状態の花や葉の成分を、約100~1000倍に凝縮したもの。アロマセラピーではポピュラーな精油の「ラベンダー」の場合、1mgの精油を作るためには1.5kgもの花が必要と言われています。
精油・アロマオイルは、人間でも直接なめたり肌につけたりするのはよくないとされています。成分に過敏に反応し、代謝できない猫ならなおさらです。

「猫にとって安全」と証明された精油・アロマオイルまだはなく、今のところ猫にアロマセラピーは厳禁です。
アロマオイルのなかにはノミ・ダニの駆除や消臭の効果を持つものがあります。駆除薬やシャンプーなどに配合されていることがあるので、成分表示には注意してください。特に、猫専用ではない商品には気を付けてください。

猫は頻繁に毛づくろいするため、毛に成分がついていたらすぐに体内に取り込まれてしまいます。猫に対してアロマオイルを使うことはもちろん、猫がいる部屋でアロマオイルを使うこと自体が危険と言わざるをえません。
飼い主がアロママッサージや芳香浴をするのも避け、精油成分入りの商品にも注意してください。どうしてもという場合は猫のいる部屋では行わず、猫と過ごす前に換気と洗い流すことを徹底してください。

まとめ

人間には心身にさまざまな効果をもたらしてくれるアロマセラピー。しかし、残念ながら猫にとっては効果どころか毒になってしまいます。猫を飼うなら家で精油やアロマオイルを使うのは諦め、猫用の商品に精油成分が入っていないかも気を付けてください。
ちょっと残念ですが、アロマセラピーと同じかそれ以上に、猫には癒し効果がありますよ!


※参考
公益社団法人日本アロマ環境協会 http://www.aromakankyo.or.jp/
猫専門病院の猫ブログ http://nekopedia.jp/cat-aromatherapy/
Timeless Edition http://www.timeless-edition.com/archives/4454
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 執筆者プロフィール
『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。
 監修者プロフィール
獣医師・トリマー・ドッグトレーナー / ペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。

現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。
毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。

プライベートでは一児の母。愛犬はシーズー。
家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています。

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