犬は暑さに弱い動物?

冬はモコモコで暖かそうな犬の毛並みは、夏になると暑苦しく、見ていてかわいそうになることがありますよね。犬種によって多少の違いはありますが、犬は寒さには比較的強いものの、暑さには弱い動物です。

人間は暑いと汗をかき、蒸発するときの気化熱を利用して体温を下げます。犬は足の裏など一部でしか汗をかけないため、暑いときはハァハァと荒い呼吸、「パンティング」で体内の熱を逃がそうとします。口のなかや呼吸器に風を通して水分を蒸発させ、気化熱を放出して体温を下げているのです。
ただしパンティングは筋肉を使って行うので、かえって体温が上がる原因になるという難点があります。また、人間が全身の皮膚で水分を気化させるのに対し、犬は口のなかと呼吸器だけ。人間が「ちょっと暑いな」と思う程度でも、犬は耐えがたい暑さを感じているかもしれません。

犬の熱中症ってどんな病気?

犬の熱中症とは、気温が高い環境でうまく体温を下げられず、体のなかに熱がこもって健康障害を起こすことです。根本は人間と変わりません。熱中症は重症化すると命を落とすこともある恐ろしい病気。自分で体調管理できず、不調を言葉で訴えられない犬は、飼い主がしっかり対策することが重要です。

熱中症というと真夏のイメージがありますが、実際はそれほど温度が高くなくても発症します。熱中症で病院に運ばれる犬のピークは7月8月ですが、実は、急激に数が増えるのは5月。犬の体がまだ暑さに慣れていないため、気温が低めでも熱中症を起こすことがあるのです。
特に、それほど温度が高くなくても湿度が高い梅雨の時期は注意したい季節です。湿度が高いとパンティングしても水分が蒸発せず、体温は上がったまま。熱中症を起こしてしまう可能性が高まります。

熱中症になるとどんな症状が起きる?

犬は自分で体調を管理できません。飼い主が熱中症のサインを見逃さず、適切に対処する必要があります。では、犬が熱中症になったとき、どんな症状があるのでしょうか。

口を開けてハァハァと荒い呼吸をする
体温が上がる(40℃以上)
大量によだれを出す
口のなかや目の粘膜が充血する
ぐったりして起き上がれない
嘔吐
下痢
意識を失う
けいれん


犬の呼吸が荒いのはよくあることですし、寝ていることも多いです。犬の熱中症の症状はなかなか気付きにくく、わかったときには重症になっていることも。予防することが何より大切です。

熱中症になりやすい犬って?

同じ犬でも、熱中症になりやすい犬と、なりにくい犬がいます。では、特に熱中症に気を付けたいのはどんな犬なのでしょう。

短吻種

パグシーズーペキニーズブルドッグチベタンスパニエルボストンテリアボクサーなど、短吻種の犬は体の構造として呼吸がしづらく、体内の熱を逃がしにくいです。

寒い国原産の犬種

シベリアンハスキーアラスカンマラミュートサモエドセントバーナードニューファンドランドボルゾイなど、寒い国原産の犬種は暑さには弱い傾向があります。

肥満の犬

太っていると脂肪が断熱材のように熱を閉じ込めてしまいます。また、脂肪で気管を圧迫することで呼吸の機能が低下し、体温の調節が難しくなります。


体の機能が未発達の子犬や、低下した老犬は体温調節が苦手。また、大型犬は熱を下げにくく、吠える犬・興奮する犬は体温が上がりやすいです。持病のある犬や病後の犬も気を付けたいですね。

熱中症はどんな状況で起こる?

意外にも、熱中症は家族と一緒にいるときにも発症する例があります。犬の快適な温度は22℃と言われていて、それを超えると熱中症になるリスクが高まります。暑い日が続けば犬の体も暑さに慣れてきますが、暑くなり始めで寒暖差のある5月や6月は要注意。人間は快適でも犬は暑く感じている可能性があるので、ふだんから犬の様子をよく観察しまよう。

飼い主の目の届かない留守番は、犬が暑さを感じても避けようがありません。エアコンをつけっぱなしにしておく、氷のうに氷水を入れておくなど、準備は万全に。急激に温度が上がる車での留守番はさせないようにしてください。
屋外で飼っている犬の場合は飲み水をたっぷり用意しましょう。日陰に水を張ったプールを用意しておくと、飲む以外に入って遊ぶこともできるのでいおすすめです。

ドッグランや公園では、運動して体温が上がったり、はしゃいで水分補給を忘れたりすることがあります。飼い主がしっかり管理してください。また、犬の生活圏は地面に近く、照り返しの熱を直に受けます。熱くなった地面で肉球をやけどすることもあるので、夏の散歩は早朝や日が落ちてからにしましょう。どうしても出かける用事があるときは、キャリーやカートなどに入れ、保冷剤などで冷やすといいですよ。

服を濡らして着せる(気化熱で体温が下げられる)、保冷剤が入れられるハーネスを使うなど、グッズを工夫するとなおいいですね。

それでも熱中症になってしまったら

熱中症は対処が遅ければ後遺症が残ることがあり、一歩間違えば死に至ることもある病気。もし発症したらすぐ病院に連れて行きますが、体を冷やすことが何より先決です。流水をかけたり、大きめのたらいなどに水を張ってつけたりして、犬の体を冷やしてください。このとき、氷水だと体の表面の血管が締まって中心部分が冷えないため、水道水がベストです。首や脇、股など大きな血管のある場所を保冷剤で冷やしながら搬送してください。

まとめ

犬の熱中症の予防の基本は、涼しく風通しのいい環境を準備し、適切に水分を補給させることです。犬は自分で温度が管理できないので、飼い主が予防してください。しっかり対策して、暑い季節も愛犬の健康を守りましょう。
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 執筆者プロフィール
『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。
 監修者プロフィール
獣医師・トリマー・ドッグトレーナー / ペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。

現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。
毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。

プライベートでは一児の母。愛犬はシーズー。
家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています。

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