犬が震える原因 ①寒さによるもの

なぜ寒いと体が震えるのでしょうか。それは、体温が下がり過ぎないようにするためです。
筋肉を細かく動かす震えという反応によって熱を作り、体温を一定に保とうとします。

犬にとってちょうどいい温度は20℃前後といわれます。
ただし、犬種や個体によって、適温に違いはでてきます。例えば、寒い国原産の犬や、密な毛質や小さい耳の犬種は寒さに強く、暑い国原産の犬や、薄い毛質や大きい耳の犬種は寒さに弱い傾向にあります。

では、犬が寒くて震えている場合、どうすればよいでしょうか。
室内の場合は、まずは部屋の温度を確認しましょう。
冷たい空気は空間の下に溜まりやすいので、私たち人間より下の空間にいることの多い犬は、温度が低い状態にさらされている場合があります。
愛犬のいつもいる場所にすきま風が当たらないかも、確認してみてください。その際、暖房の風が直接当たらないかも、確認できるといいですね。

屋外や、室内でも外出などで暖房のコントロールができない場合は、愛犬がいつもいる場所に、毛布など敷物を敷くのもよいでしょう。犬はおなかから冷えやすいためです。

薄い毛質の犬は、洋服を着せるのもよいでしょう。
ただし、服を着せることで、こすれて皮膚炎になったり、毛がからまって毛玉になったりすることもあります。長期間着せっぱなしにはせず、調節してあげてください。

寒い状態が続き、体が冷えると、血行不良になり免疫力も低下します。
これにより、気管支炎や鼻炎などの呼吸器病にかかりやすくなります。また代謝機能も落ちるため、下痢や膀胱炎が引き起こされることもあります。
特に子犬では低体温症といって、命に関わるほどの体温低下を引き起こすこともあるので、注意しましょう。

犬が震える原因 ②不安や恐怖によるもの

人間でも、緊張したり恐怖を感じたりすると、心臓がどきどきしたり、汗が出てきたりしますね。
これらと同じように体の反応のひとつとして、震えが起こることもあります。震えによって活動のための熱エネルギーを作り、震えを引き起こす原因に対して身構えようと、体が反応するのです。

犬も同じで、緊張や興奮、あるいは不安やストレスを感じているときに震えることがあります。
例えばよくあることとしては、動物病院に連れて行って、診察室に入ってすぐの場面。
久しぶりの健康診断のための受診。ご挨拶をして、さあこれから診察をしましょう、と診察台に乗った途端に、まだ獣医師が手も触れないうちからぶるぶると震え始めてしまう犬がいます。

これは見慣れない環境や人、雰囲気に対する緊張や不安によるものです。
このような場合は、飼い主が「大丈夫だよ」と声をかけてあげたり、体に手を添えたり、場合によっては抱っこをして安心感を与えてあげてください。

このとき、「大丈夫?」と、飼い主が心配、あるいは不安を思わせる反応はしないようにしましょう。
特に小型犬はその気持ちを敏感に感じとり、余計に不安になります。あくまでも明るく声をかけてあげてください。

犬が震える原因 ③老化によるもの

高齢の犬では、骨や神経に異常がなくても、特に後ろ肢が強く震えるようになることがあります。
これは老齢性振戦といって、自律神経のコントロールがうまくいかないのが原因といわれています。人間の高齢者で、手の震えが出たりするのと同じものになります。

肢の震えは、犬が座ったり、寝そべったりしている姿勢から立ち上がろうとするときに出始めることが多く、運動によって悪化します。
特別な治療方法はないので、いつも座っている場所に、滑らないマットなどを敷いて、立ち上がりやすいようにしてあげてください。

震えが出ていなくても、高齢の犬では筋力が衰えてきて、ふんばりが効かなくなることが多くあります。
このような場合でも、寝床周りを滑らないようにすることは、足腰を痛めるリスクを減らすことになります。
愛犬が高齢になってきたら、お気に入りの場所が滑りやすいのかどうか、一度確認してあげられるといいですね。

なお、年齢による震え以外にも、高齢の犬の場合、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能低下症などホルモンバランスの崩れや、股関節の異常や腰回りの神経疾患でも震えが出ることがあります。

震え以外にも気になる症状がある場合は、動物病院を受診されることをおすすめします。

犬が震える原因 ④病気によるもの

震えはさまざまな病気の症状のひとつとしても起こります。重篤なものとしては、けいれん(けいれん発作)があげられます。
発作は脳から一時的に制御不能な信号が送られてしまう状態で、その結果、体の震え以外にも気を失う・失禁(おもらし)・よだれが出る、などの症状が起こります。

けいれんを引き起こす病気は、原因が頭の中にあるのか、頭以外の場所にあるのかのふたつに大きく分けられます。

頭の中が原因の病気は、生まれつきの奇形によるもの・てんかん・腫瘍が代表的なものです。
なかでもてんかん(特発性てんかん)は、犬においてけいれんを引き起こす、最も一般的な原因になります。6カ月~3歳くらいまでに最初のけいれんが起こり、明らかな原因が見つからないことが特徴です。
残念ながら根本的な治療法はなく、発作の回数が多い場合は、抗けいれん薬を飲んで回数をコントロールする治療が行われます。

また、けいれんと似たような症状として体の震えだけが出る振戦(しんせん)というものもあり、こちらも抗けいれん薬やステロイドを飲んで、震えの回数をコントロールする治療が行われます。

頭以外の場所が原因の病気は、中毒・低血糖を引き起こす病気・肝疾患・腎不全による尿毒症などがあげられます。
これらの病気が原因の場合は、けいれん以外の症状を伴うことが多いです。
例えば中毒であれば嘔吐が、尿毒症であれば、最初におしっこや水を飲む量が増えたりします。

けいれん以外にも、痛みを隠したりこらえたりしているときにも、震えることがあります。
言葉をしゃべれない犬にとって、震えは痛みのサインになることもあるのです。例えば下痢になる直前、人間と同じように犬でもおなかが痛くなります。このようなとき、痛みをこらえて震える犬もいます。

また、発熱しているときも、寒いときと同じ原理で震えが起こります。

いずれの場合も、血液やレントゲンなどの検査で、震える原因の診断が行われます。
その際、いつ震えが発症するのか(例えば必ず食後に震える、興奮すると震える)、震えの前後で別の症状を伴うのか(例えば気を失う)、震えが続く時間・頻度、などがわかると、獣医師が病気を診断する手助けになりますので、震えが起こったときは確認してみてください。

まとめ

震えは目に見えるわかりやすい症状なだけに、愛犬が震えていると飼い主は心配になりますよね。
まずは寒さや不安など、愛犬を取り巻く環境に原因がないか確認してみてください。
原因が見当たらない、または飼い主に不安が残る、ほかにも気になる症状がある場合は、動物病院を受診されることをおすすめします。
 執筆者プロフィール
「今日は猫ちゃんにお注射した? 」と仕事に行くたびに聞く4歳の長男と、寝るときも猫とひよこのぬいぐるみが離せない2歳の次男に毎日振り回されながら、埼玉県三郷市の動物病院でパート勤務をしている獣医師です。
当たり前のことかもしれないけど、飼い主様の話をよく聞いて、一緒に治療を進めることを心がけながら、病気じゃなくても、ペットに関する心配事をぽつっと相談してもらえるような、飼い主様に寄り添える獣医さんを目指して、日々研鑚しています。

犬のブリーダーについて

魅力たっぷりの犬をあなたも迎えてみませんか? 

おすすめは、ブリーダーとお客様を直接つなぐマッチングサイトです。国内最大のブリーダーズサイト「みんなのブリーダー」なら、優良ブリーダーから健康的な子犬を迎えることができます。

いつでもどこでも自分のペースで探せるのがインターネットの魅力。「みんなのブリーダー」では写真や動画、地域などさまざまな条件で理想の犬を探せるほか、多数の成約者の口コミが揃っています。気になる方はぜひ参考にしてみてくださいね。

※みんなのブリーダーに移動します