猫のゴロゴロ音の仕組み

猫を飼っていると、頻繫に耳にするゴロゴロ音。実は音が鳴る仕組みは、現代においてもはっきりと解明されていないのです。
いくつかの説があるなかで、特に有力とされているものを2つご紹介します。

①血流が渦巻くことで音が出ている説

喉元を通る太い血管「大静脈」は、体中の血液を集めて心臓に送り込む働きを担っています。
大静脈の血流が増えると、血液の乱流(血流が渦巻くようになる)が起こり、低い音が出るとされます。
その音による振動が横隔膜によって増幅され、ゴロゴロと音が鳴る、といった仕組みです。

②ゴロゴロ音を出すための「仮声帯」が備わっている説

喉頭(こうとう)にある「声帯」は、開いたり閉じたりすることで鳴き声を出すことができる器官です。
人間やほかの動物にも声帯は存在しますが、猫の場合は「仮声帯」と呼ばれる別の器官も持っており、ここを動かすことでゴロゴロと喉を鳴らしているという説があります。
「ニャー」と鳴く声は声帯、「ゴロゴロ」喉を鳴らすのは仮声帯と、役割が分かれているという訳ですね。
仮声帯は、喉頭室皺壁(こうとうしつしゅうへき)とも呼ばれます。

ご紹介した2つのほかにも、さまざまな説があるゴロゴロ音。現代医学の力でも解明されていないなんて、本当に不思議な現象です。ますます猫への興味が深まりますね。

猫が喉をゴロゴロ鳴らす理由

「猫がゴロゴロ音を鳴らす=気持ちがいい」というイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。
ところが、猫のゴロゴロ音にはもっと深い理由が隠れているようです。
猫が喉を鳴らすのはどんなときなのか、ゴロゴロ音から読みとれる猫の気持ちを探ってみましょう。

嬉しいとき、満足しているとき

まず、ゴロゴロと言えば「気分がいいな~、嬉しいな~」という満足状態を思い浮かべますよね。
そのイメージ通り、実際に猫は嬉しいときや楽しいとき、心が満たされて満足しているときにゴロゴロ喉を鳴らします。
また、リラックスして安心しているときや、飼い主に甘えるときも喉を鳴らすことがあります。特に猫がゴロゴロ喉を鳴らしながら手を噛んだりなめたりしてくるのは、嬉しさの表現や、飼い主を信頼している気持ちの表れです。

よく見聞きするのは、猫が好きな部分をなでたとき、うっとりした表情でゴロゴロ喉を鳴らす、というケース。
このときのゴロゴロは、「あなたが大好き!」という信頼の証でもあります。お礼として、愛情込めてなでてあげましょう。

子猫時代の名残

猫は一体いつごろから喉を鳴らすようになるのか知っていますか?
正解は、生後1週齢から。最初は、母猫と意思疎通を図るためにゴロゴロと喉を鳴らすようになります。

まずは母猫が子猫に向かって「私はここにいるよ」という意味でゴロゴロ音を鳴らします。これは同時に、お乳を与える準備が整った合図にもなっているのです。
そして子猫もまた、「ミルクをちゃんと飲めているよ、お腹がいっぱいになってきたよ」と授乳がうまくいっていることを母猫に伝えるように喉を鳴らします。
このように、母猫と子猫は、お互いに喉をゴロゴロ鳴らし合うことでコミュニケーションをとっているのです。

猫同士や飼い主とのコミュニケーション

母猫と子猫の間だけでなく、猫は成長したあともゴロゴロ音でコミュニケーションを図ろうとします。
仲のよい猫同士や飼い主に向けてのゴロゴロは、信頼感や親近感を抱いていることの表れです。
同じ家で多頭飼いしているとき、猫から猫に向けて喉を鳴らすのが聞けたら、猫同士の関係はうまくいっているとみていいでしょう。
また猫から飼い主に向けてのゴロゴロも、同様の気持ちを表しています。ゴロゴロ音をお返しする代わりに、優しく話しかけたりなでたりして、猫の気持ちに応えるのもいいですね。

なにか要求があるとき

「ごはんちょうだい!」の催促といったように、飼い主に要求を伝えるときにも猫はゴロゴロ音を出します。
イギリスのサセックス大学の研究によると、要求のゴロゴロは通常のゴロゴロと比べて人間に緊急性を抱かせる効果があるといいます。
音声分析をしてみると、要求ゴロゴロには高周波の声が含まれており、通常のゴロゴロとは明らかに違う音になっているようです。この音を聞いた人間は、「猫の要求に応えなきゃ!」と、養育本能を刺激され、猫をほっておくことができなくなってしまうのです。
人間の本能に訴えかけ、たちまち猫の虜にしてしまう……なんともかわいくて恐ろしいゴロゴロ音です。

ストレスから心を落ち着かせようとしているとき

これまでの気持ちとは真逆で、「居心地が悪いな、落ち着かないな」とマイナスの感情から喉を鳴らすパターンもあります。
なんらかストレスがあって緊張したり、イライラしたりしたときのゴロゴロは、自分の気持ちを静めようとしている行動です。飼い主に自分の不調を伝える意味もあります。
例えば、大嫌いな動物病院に連れていかれたとき、獣医さんを目の前にして突然ゴロゴロ音を出す、といった猫もいます。ゴロゴロで緊張の気持ちを伝えようとすることで、「ひどいことしないでね」と自分へのいたわりを求めているのですね。

具合が悪いとき

ストレス状態のときと似ていますが、猫の具合が悪いときやケガをしたときにも、ゴロゴロ音を鳴らすことがあります。このときの表情は険しく、つらそうな顔をしているため、幸せなゴロゴロとは明らかに違うことが分かるはずです。
普段はめったに体調不良を表に出すことのない猫ですから、辛そうに喉をゴロゴロ鳴らしているときは、なんらかのケガや病気を疑いましょう。

さらに、メス猫は出産の痛みに耐えながらゴロゴロと喉を鳴らすこともあります。

猫のゴロゴロ音が人間にもたらす効果

ゴロゴロ音の違いにより、猫の気持ちを知ることができましたか?
さらに、ゴロゴロ音は猫の気持ちを表すだけでなく、飼い主にとってもプラスになる凄いパワーがあると言われています。

骨折の回復を早める効果

驚くことに、ゴロゴロ音には骨折の回復を早めるパワーがあるとされています。
猫は骨折の治癒速度が早いと言われており、そのスピードはなんとほかの動物の3倍。
秘密はゴロゴロ音が鳴る20~50ヘルツの細かい振動にあります。この振動は、骨の密度を高くする効果があるとされています。
実際のスポーツ医療の現場でも応用されており、有名なのはイングランドのサッカー選手デビッド・ベッカムの例です。
彼はなんと全治10週間の骨折を約3倍のスピードで治すという驚異的な治療効果を挙げ、ワールドカップにも出場することができました。

幸せホルモン「セロトニン」の分泌を促す効果

飼い主を癒してくれるゴロゴロ音ですが、そのリラクゼーション効果についても研究が進んでいます。
20~50ヘルツの低周波は、自律神経のうち副交感神経を優位にする効果があるとされ、それにより、別名「幸せホルモン」とも呼ばれる「セロトニン」の分泌が活性化されます。
セロトニンが分泌されると、ストレスから解放されて気分がよくなり、リラックスできるようになるのです。
フランスでは、「ゴロゴロ・セラピー」なるストレス治療も存在しているほど。
仕事や家事でなんだかお疲れモード……という方は、飼い猫のゴロゴロを聞きながら一緒にリラックスしてみるといいでしょう。ゴロゴロを通じて、きっと猫との絆も深まるはず。

まとめ

以上が猫のゴロゴロ音の理由と、そこに込められた猫の気持ちのご紹介でした。
まだまだ謎が多いゴロゴロですが、猫と飼い主にとって、非常に大切なコミュニケーションツールになっているのですね。

かわいい愛猫のゴロゴロに癒されつつ、しぐさやシチュエーションを見ながら猫の気持ちを理解してあげましょう。
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『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。

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