猫のくしゃみの原因について

さて、猫のくしゃみはどこから出るのでしょうか? 答えはもちろん、鼻からです。
体内に外気を取り入れるため、鼻は絶えず病気の原因となる細菌やウイルス・異物などの刺激物に晒されています。
その刺激物を排除し、鼻を保護するための防御システムのひとつとして、くしゃみが起こります。そして、刺激物がなにかによって、くしゃみが一時的な体の反応(生理的反射)なのか、もしくは病気の症状のひとつなのかに分かれます。

生理的なくしゃみを引き起こす原因としては、猫自身の毛や草むらの葉っぱが触れた、急に冷たい空気を吸ったことなどが挙げられます。
これらはくしゃみ自体の風圧や、くしゃみの動きで鼻腔内の温度が上がれば、刺激が排除されて、体は自然に元の状態に戻ります。
また、急に強い光に晒されたときも、神経を刺激されてくしゃみが出ることがあります。

病的なくしゃみの原因としては、アレルギーを持つ猫が花粉やホコリなどのアレルゲンに晒されたり(アレルギー性鼻炎)、ウイルス性の風邪に感染し、その原因ウイルスや鼻水によって鼻の粘膜を刺激されたりすることなどが挙げられます。
また、葉っぱや極めて小さいおもちゃなどのいわゆる異物やできもの(腫瘍やポリープ)が鼻の内部を刺激することもの原因のひとつです。
これらはくしゃみしただけでは刺激が取り除かれないので、それぞれ症状に合った治療や原因を探る検査が必要です。
愛猫がくしゃみをしたら、まず猫をとりまく環境中に、原因があったかどうか確認してみましょう。

正常なくしゃみと危険なくしゃみの見分け方

では、生理的なくしゃみと病的なくしゃみではなにが違うのでしょうか。
一般的に、くしゃみが単発だけの場合は、一過性の生理的な反応になります。
それに対して、長い期間ずっと繰り返し出ているくしゃみは、病気によるものと思われます。特に、急に始まったと思ったら長い期間くしゃみを繰り返している場合は、猫風邪を患っている可能性が高いです。
また、病的なくしゃみが出ている場合は、ほかの症状として鼻水を伴うことが多いです。
さらに、鼻と目は「鼻涙管」という涙の通り道でつながっているため、頻繁にくしゃみが出る猫は、この鼻涙管が詰まって涙が止まらなくなったり、眼脂が多く出たりすることもあります。

異物が鼻に入った場合は、急にくしゃみが連発して止まらなくなったり、しきりに顔を気にしてこすったりします。
高齢の猫で、血混じりの鼻水が出る場合は、鼻の中に腫瘍ができている可能性があります。さらに、歯石の付着が多い猫では歯根膿瘍からくしゃみが引き起こされることもあります。

そのほか、特定の季節や、新しい香水や洗剤・敷物を使い始めた、季節の寝具を出し入れしたなどのタイミングでくしゃみが頻発する場合は、アレルギー性鼻炎の可能性があります。

猫のくしゃみが考えられる病気

くしゃみの原因としては、ウイルス感染・異物・腫瘍・歯からの鼻の内部への刺激・アレルギー・カビ(真菌感染)などが考えられます。

猫風邪(上部気道感染症)

猫において、最もよく見られるくしゃみの原因は、猫風邪(上部気道感染症)があります。
猫風邪は、ヘルペスウイルスのひとつである「猫鼻気管炎ウイルス」と、「猫カリシウイルス」が主な原因です。
猫風邪の症状は、急にくしゃみが出るようになったあと、鼻水や発熱が見られるようになります。
感染は母猫からの胎盤感染が一般的ですが、ウイルスに感染した猫や、その猫の鼻水や唾液に接触することでも感染します。
そのため、家庭に先住猫がいる環境で、新しく保護した子猫を迎える場合などは、その子猫が猫風邪に感染していないか注意が必要です。

猫風邪でやっかいなのは、一度感染すると、治療して症状が治まっても、ウイルスが体内に残ってしまうこと。
ウイルスは、感染した猫が元気なときには悪さをしません。しかし、ストレスが多い環境になったり、体調がすぐれず免疫力が落ちたりすると、活発化し症状を再発させる場合があります。
ときにはこの繰り返しで、慢性症状に移行し、常にくしゃみと鼻水が出るようになる猫もいます。

歯からの二次的感染

高齢で口の中のケアが不十分だと、歯石の付着が多くなります。
歯石には多くの細菌が含まれ、その細菌が歯と歯茎の隙間から歯の根元まで入り込むと、根元が膿んで歯根膿瘍となります。
そして、犬歯などは歯の根元が鼻の内部(鼻腔)に近いため、ときに膿が鼻にまで達して、鼻水やくしゃみを引き起こす原因となるのです。

クリプトコックス症

カビ(真菌)のひとつである「クリプトコックス」が原因の病気です。
元気な猫にはあまり感染せず、ストレス下やエイズウイルスや猫風邪に感染した猫がかかることが多いです。
初期症状として、くしゃみや鼻にかたい腫れが認められるようになります。重症化すると神経も侵される場合があります。

腫瘍

腫瘍が原因でくしゃみを引き起こすこともあります。くしゃみ以外の症状としては、鼻水や鼻からの出血を伴います。
進行すると顔面の変形や眼球突出が引き起こされることもあります。猫の鼻の中の腫瘍は、犬と比較するとまれと言われますが、悪性であることが多いです。

猫のくしゃみの対処法・治療法

くしゃみの原因として最も多い猫風邪は、混合ワクチンの接種が有効です。
人間が打つインフルエンザのワクチンと一緒で、感染を防ぐことはできませんが、症状を抑えることができます。

そもそも家庭に猫風邪のウイルスが侵入する機会というのは、ウイルスに感染している野良子猫を保護して新しく家族に迎える、あるいは外を自由に歩き回る飼い猫が、野良猫からもらってくるというシチュエーションがほとんど。
愛猫にワクチンを接種していれば、前述のような状況でウイルスに晒されても、十分に予防できます。

すでに感染している猫で、くしゃみなどの症状が出る場合は、家の中では加湿をして、ウイルスが活発化しないようにしましょう。
くしゃみで飛んだ唾液や鼻水が固まって、顔や鼻にくっついている場合は、ぬるま湯で濡らしたタオルやガーゼで拭き取ってあげてください。また、栄養のバランスに気を付け、体の免疫力が落ちないようにしましょう。

動物病院では、インターフェロンという免疫力を高める薬を使った治療が主になります。症状が出たときは慢性化する前に早めの診察をおすすめします。

このほか、歯が原因となるくしゃみも、自宅でのオーラルケアで、引き起こす機会を減らすことができます。
歯磨きが最もよいケアになりますが、猫では難しいことが多いです。まずはお口の中を、濡らしたガーゼなど遊び糸が出ない布で拭くことから始めてみてください。

まとめ

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 執筆者プロフィール
「今日は猫ちゃんにお注射した? 」と仕事に行くたびに聞く4歳の長男と、寝るときも猫とひよこのぬいぐるみが離せない2歳の次男に毎日振り回されながら、埼玉県三郷市の動物病院でパート勤務をしている獣医師です。
当たり前のことかもしれないけど、飼い主様の話をよく聞いて、一緒に治療を進めることを心がけながら、病気じゃなくても、ペットに関する心配事をぽつっと相談してもらえるような、飼い主様に寄り添える獣医さんを目指して、日々研鑚しています。

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