犬の耳掃除は必要なの?

犬にとっても、耳掃除は必要です。
人間と同様、わんちゃんの耳の中にも排泄物がたまります。したがって、放置しておけば、そこに細菌が繁殖し、炎症、感染を起こします。
それを防ぐためには、定期的なケアが必要です。もちろん、動物病院に連れて行けば耳掃除の処置を受けることができます。

しかし、残念ながら耳掃除が好きなわんちゃんは少数派で、毎回の通院は愛犬にとってストレスになってしまいます。
オーナーさんが自宅でケアできれば、いいコミュニケーションにもなり、かつ病気の早期発見も可能です。
耳の病気は一度かかってしまうと、長引いたり繰り返したりすることが多いです。そうならないためにも、ぜひコツをつかんで、おうちでのケアを目指しましょう!

犬の耳の仕組み

耳介から鼓膜まで通じる部分を「外耳道」と呼びます。
人間と異なり、犬の耳は特殊なL字形構造をしています。この外耳道、まずは下に向かって垂直に伸びていますが、途中で約90度に曲がっています。この曲がり角があることで、犬の耳は汚れがたまりやすくなっているのです。

正常な犬の耳は薄いピンク色です。多少の汚れは見えますが、ほんの少しです。
耳垢が大量にたまっている、赤みがある、腫れている、耳周辺を痛がる場合は外耳炎を起こしている可能性があります。
その他に特徴的な行動として、耳をかゆがる(後ろ足で耳の後ろ当たりを掻く)、頭をプルプルとふる場合も、耳に違和感があるサインです。

犬の耳垢について

さて、耳垢について簡単にお話します。
正常の耳垢は白~薄茶色で、サラサラ~多少べたつく程度です。それ以外の色の耳垢が見られた場合、外耳炎の原因として以下のものが考えられます。

・こげ茶色の耳垢
マラセチア・酵母によるもの。
健康でも常在する酵母ですが、過剰に増えてしまうと、外耳炎を起こします。独特な酸っぱい臭いがするだけでなく、とてもべたついています。

・黄色い耳垢
細菌感染を起こした結果、外耳炎となり、膿んでしまっている状態です。
これも悪臭を放ちます。固まっている場合もあれば、ドロドロと流れ出てくることもあります。

・黒い耳垢
耳ダニ(耳疥癬)によるもの。
ダニの一種が耳の中で繁殖した場合は、黒っぽい耳垢が出ることが多いです。目を凝らしてみると、動いている耳ダニを観察することができます。

犬の耳掃除の頻度とやり方

では、どれくらいのペースで耳掃除をしてあげればいいのでしょうか?
これは、個体によって個人差がありますので、一概に「○○日おきでお願いします!」と言うことができません。まずは愛犬の耳の状態をしっかり観察しましょう。
3~4日おきにべたついてくる子はそれより早いペースで拭き取ってあげなければいけませんし、逆に1カ月経ってもずっときれい!という子に対してはむやみやたらに洗浄する必要はありません。

次に、耳掃除のやり方について説明します。
ペットショップや動物病院に、多くの種類の耳洗浄液、イヤークリーナーが売られています。これとコットンを使って洗浄していきます。
まず、外耳道がまっすぐ下に伸びるように、軽く耳介を引っ張ります。そこに直接、洗浄液を流していきます。
いきなり耳道の真ん中に垂らすとびっくりしてしまうわんちゃんもいるので、耳道の壁を伝わらせるように入れるとスムーズです。直接耳に液体を入れることに抵抗があるかもしれませんが、液体が外耳道の入り口まで見えるくらいまで入れて大丈夫です。

そのあと、耳介を持ち上げたまま耳の外側から耳道を揉みます。これで自然を汚れが浮き上がってきます。
軽く耳道にコットンを詰め、耳を離しましょう。すると多くのわんちゃんが自分で耳をプルプルと振ります。これで中の汚れが外に排出されコットンについてくる、というわけです。

あとは耳に残った洗浄液をやさしくふき取ってあげてください。
たまに、わんちゃんの耳の振りが激しすぎて、コットンごと外に飛んでいったり、洗浄液が四方八方に飛び散ったりすることもありますので、できれば耳掃除は浴室などで行うことが望ましいです。

耳の洗浄液の選び方

さて、ペットショップに多く売られている耳洗浄液ですが、あまりに多くの種類があるため、そのすべてを獣医師が把握することは難しいのが現状です。
体に直接触れるものですので、有害なものを避けるのはもちろん、愛犬の体質に合ったものを選んであげたいですよね。
まずは動物病院で、信頼された洗浄液を購入することをおすすめします。
私の今までの経験では、耳の洗浄液が合わずに皮膚がトラブルを起こしてしまったということはないのですが、なかには皮膚がとても敏感なわんちゃんもいるかもしれません。
その場合は、多少洗浄力は落ちますが、界面活性剤不使用、アルコールフリー、できるだけ天然成分からできた製品を選んでください。
アレルギーを持っているわんちゃんには、その成分が入っていないかしっかり確認することが必要です。

どうしても既製品が皮膚に合わないといった場合には、生理食塩水を人肌に温めて使用してみてもいいと思います。
手作りの耳洗浄液として、ホウ酸やお酢を精製水で希釈するものもあるようですが、これらについての研究結果は出ていません。自己判断での使用をお願いいたします。

なお、上記の耳洗浄液の選び方については、あくまで予防の意味での耳洗浄についてです。
すでに外耳炎を起こしている場合は、その症状、獣医師の診断に合った洗浄液、治療薬が必要です。動物病院を受診しましょう。

犬の耳掃除の注意点

先ほど述べた耳洗浄の頻度にも関与してきますが、一般的に、垂れ耳の子のほうが通気性が悪く、細菌や酵母が繁殖しやすい環境にあるため、こまめな洗浄が必要です。
また、耳の中に耳毛が生えてしまう犬種(トイプードル、ヨークシャーテリア、シュナウザーシーズーなど)も、汚れがたまりやすいです。
この場合は、トリミングで耳の中の毛を定期的に抜いてもらってからの洗浄を心がけましょう。

多くのオーナーさんが間違ってしまいがちな耳掃除は、人間のように綿棒を使って耳の中のほうまでグリグリとほじってしまうことです。これは絶対にやめましょう。
先述した通り、犬の耳は途中で90度曲がっていますので、綿棒を使ってもその部分に汚れを置いてくるだけになってしまいます。
そして、曲がった先に入ってしまった汚れは綿棒では取れません。
綿棒を使うとしても、目に見える範囲、耳介の部分にある耳垢に対してだけにしましょう。

犬が耳掃除を嫌がる場合

さて、ここまで耳掃除のやり方をお話してきましたが、実際はそう簡単にはいきません。安心してください、おうちでは多くのわんちゃんが暴れます(笑)。「動物病院ではおとなしくやらせてくれるのに!」とオーナーさんが話しているのをよく聞きます。

わんちゃんにとっては、動物病院、白衣、そして少し高い診察台の上……怖くて固まるしかないのです。その隙に獣医師がパパパッと洗浄するので、とても簡単なように見えちゃいますね。
生まれて初めての耳掃除、これはとても重要です。
これを楽しく終わらせられれば、きっとそれほど耳掃除は嫌いにならないかもしれません。でも、初めての耳掃除がそれはそれは地獄のようなものだったとすると……もちろんトラウマとして残ります。

まず第1ステップとして、日ごろのスキンシップのときから耳を触れられることに慣れさせてください。
耳介に慣れたら、少し耳道の中を覗いてみる、耳道の入り口を触ってみる、コットンをちょっと入れてみる……といったように少しずつです。
焦らずにそれらをクリアしたら、いよいよ洗浄液を使っていきます。

できれば、人間2人がかりで行うのがベストです。
1人がわんちゃんを支え(あまりにがっしりつかむと怖がってしまうので、いつものように優しく、ゆっくりと、です)、1人が洗っていきます。お座りや伏せの体勢がやりやすいです。
動き回ってしまう場合は、動物病院のように少し高い台の上に乗せてしまうのもひとつの方法です。
しっかりお利口にお掃除させてくれた場合には、ちゃんと褒める、おやつなどをあげるなどのご褒美も忘れずに!

それでも、どうしても自宅では嫌がってしまうわんちゃんもいます。オーナーさんとわんちゃんの信頼関係をくずしてまで無理矢理に耳掃除をする必要はありません。動物病院に相談してくださいね。
また、いつもはおとなしくさせてくれたのに、今回は嫌がる、といった場合は、痛みや違和感があるのかもしれません。
他に症状がないかしっかり観察して、気になる点があれば、獣医師に相談してください。

まとめ

慣れてしまえば、とても簡単な犬の耳掃除。
愛犬との良いコミュニケーションになりますし、病気の早期発見につながります。せひ今日からは、今までよりほんの少し、愛犬の耳を気にしてあげてくださいね。
 執筆者プロフィール
獣医師免許取得後、3人の出産・育児をはさみながら、8年間都内の動物病院で勤務。家族の転勤に伴い、各地を転々としています。
現在はアメリカ在住。動物保護シェルターのサージェリー部門にて勉強中です。ママ獣医・転勤族獣医としての在り方を模索中です。
小さいころからウサギが好きで、獣医師になることを決めました。
ペットとの笑顔あふれる生活のために、少しでもオーナーさんの不安が少なくなるよう、病気のとき以外にも何でも相談できる身近な獣医師を目指しています。

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