熱中症ってどんな病気?

熱中症とは、高温多湿の環境下にいることによって体温調節機能がうまく働かず、高体温になって引き起こされる、さまざまな症状の総称です。

熱中症を引き起こす要因のひとつ「環境」
・気温が高い ・湿度が高い ・風が弱い ・日差しが強い ・閉め切った室内
・エアコンの無い部屋 ・急に暑くなった日 ・熱波の襲来

出典:環境省「熱中症の予防方法と対処方法」
実は猫は、人よりも体温調節が苦手な生き物で、より熱中症に気をつける必要があります。
もともとイエネコの原種は砂漠地帯で生活していたため、猫は暑さに比較的強い動物です。しかし、発汗によって体温を下げる人間とは違って、猫は汗腺がほとんどなく、肉球くらいにしかありません。体毛を舐めるか、口呼吸による気化熱を利用することでしか体温調節ができないため、効率よく体温を下げることができないのです。

熱中症の症状

熱中症は次のような過程をたどって重症化します。症状が重ければ命に関わるので、早い段階で気づくことが大切です。しかも猫は具合が悪くても、なかなか表面には出さない生き物。飼い主さんによる注意深い観察が必要です。

症状1.呼吸が速い、元気がない、食欲がない

呼吸の度に上下するお腹の動きを見てください。呼吸が浅く、速い場合は要注意です。時には、肩で息をしていることがあります。猫の平常時の呼吸数は1分間に20~30回ほど。1分間に50回に近いくらい早い場合は異常だと思ってください。また、呼吸が早いときは、動くこともしんどいものです。いつもより元気も食欲もなくなります。

症状2.口を開けてハアハアと呼吸し始める

猫が口を大きく開けて舌を出し、ハアハアと浅くて速い呼吸をし始めたら状態は悪化しています。この時点で体を触るととても熱く感じます。発熱しているときは、内股や耳の根本が熱くなっているので触って確認してみましょう。体温も40℃を超している可能性が高いです。
※猫の平熱は38~39℃(幼年期は多少高く、高齢期になると低い傾向があります)

症状3.よだれをたくさん垂らして、ぐったりする

この段階では、もう歩行は困難な状態です。ぐったりと横たわり、よだれを大量に流します。また、よだれを流すことによって脱水症状が悪化します。目や口の粘膜は赤く充血し、嘔吐することもあります。

症状4.痙攣、意識朦朧

大変危険な状態です。体が痙攣し始め、目の焦点は合わず、チアノーゼ(舌や粘膜が青紫色になる)の状態になることもあります。意識混濁、意識喪失になり、呼びかけたり体に触ったりしても反応がありません。このまま放置するとショック症状が起こり、死に至ることもあります。

愛猫が熱中症になったら

軽症時(症状1、2):応急処置で体を冷やし、症状が治まらなければ病院へ

まず、猫を涼しい場所に連れて行き、体を冷やします。全身に水を浴びせたり、体の下に氷枕やクールマットなど冷たいものを敷いて体を霧吹きなどで濡らしましょう。うちわであおいで風を送るとなお良いでしょう。飲めるようなら水を飲ませてください。
5分ほど経っても体が熱く、呼吸も落ち着かないようであれば病院に連れて行きましょう。できれば体温を測って、平熱の39℃以下になっているか確認しておくといいですね。

重症時(症状3、4):一刻を争う状態! すぐに病院へ

緊急度が非常に高い状態です。応急処置をしながら動物病院に連絡を入れて緊急であることを告げ、症状を伝えて病院へ向かいましょう。

◇応急処置
・猫の体を濡らす。(冷たい水で濡らしたタオルで全身をくるんでもOK)
・タオルで包んだ保冷剤を、首やわきの下に挟みましょう。効率よく体を冷やすことができます。

◇キャリーバッグにもひと工夫
キャリーバッグにもクールマットやタオルでくるんだ保冷剤を入れて、そのうえに猫を寝かせます。とにかく冷やしながら、そしてできる限り早く病院へ向かってください。向かう途中もうちわであおいでもよいでしょう。特に症状4(痙攣、意識朦朧)の時は一刻を争う事態です。できる限り速やかに病院に行くことが大事です。

注意:体温を下げることは重要ですが、下げ過ぎにも気をつけましょう。ときどき体温を計ってください。平熱に戻った時点で冷やすことはやめましょう。

熱中症を起こしやすいシチュエーションとは

晴天時だけじゃない!雨の日も注意が必要

晴れの日は誰でも気をつけると思いますが、湿度の高い日も要注意です。湿度が高いと水分がうまく蒸発せず、気化熱で熱を放散できません。
また、一見気温が上がらなそうな雨の日も油断しがちですが、6月は雨が上がると湿度も気温も一気に上昇することがあります。梅雨の季節は気温差が大きく、体調を崩しやすい時期。熱中症にもかかりやすくなるので部屋の温度・湿度管理に気を配りましょう。

室内こそ熱中症トラップに注意

ペットの熱中症の7割が室内で起きているそうです。閉め切った空間は熱中症になりやすい環境ですが、部屋の中には、家具のすき間など猫が好む狭い閉鎖空間がたくさんあります。また、意外と直射日光が当たる場所も多かったりするもの。「うちの猫は完全室内飼いだから大丈夫」ではなく、だからこそ気をつけるべき点はたくさんあります。
エアコンをつけるのはもちろん、遮光カーテンをするなど対策は万全にしましょう。

留守中は危険がいっぱい

留守中は人の目がいきわたらないために事故も多く、帰ったら猫がグッタリしていた、ということもよくあるようです。外出前は特に念入りなチェックが必要ですよ。熱中症対策については、このあと詳しく説明します。

車内は最も危険な場所?

車内はエアコンが効いているからといって安心するのは禁物です。なぜなら、キャリーバッグの中は熱がこもりやすいのです。タオルに包んだ保冷剤を入れるなどしてキャリーバッグ内も涼しく保ってください。
また、閉め切った車内は温度が上がりやすく最も危険な場所のひとつ。たとえ短時間だとしても、エアコンを切った状態で猫を車内に置いて出ることは絶対に避けましょう。

外に出かけるなら夕方以降に

外飼いの猫の場合は、日没後に出しましょう。夏の日中は猫にはとても危険です。猫は体高が低く、地面に近いために日中のコンクリートからの放射熱の影響を受けやすいのです。コンクリートの他にも、側溝の溝ぶたやマンホールの上などを歩いた時には火傷する恐れもあります。

猫を熱中症にしない5つの対策

日常生活で猫を熱中症にしないための対策をご紹介します。特に人の目が行き届かなくなる留守時は念入りにチェックしてください。

1.エアコンをつける

天候に左右されることなく、留守中も安心・安全なのはエアコンを活用して温度・湿度管理を行うことです。
設定温度は27~28℃が目安です。また、エアコン嫌いな子や体が冷えてしまった時のために、別の部屋にも避難できるようにしておくといいでしょう。冷えすぎた時に、猫が自ら暖まりに行けるように、エアコンの風が直接当たらない場所に毛布などを置いておくのもおすすめです。

家を空けるときは、短時間でもエアコンをつけてください。ただし夏は雷が増える季節。停電の可能性も頭に入れて、次に紹介すること(特に2)も同時に行いましょう。

2.室内に涼しい場所をつくり、自由に行き来できるようにする

猫が自然に涼めるような場所を与えて、自由に行き来できるようにしてあげましょう。冷やす必要のないクールマットもさまざまなタイプがありますし、最近は冷却効果のあるアルミを使った猫つぼなどもあるようです。人間が使っても嬉しい涼感ラグもあります。ぜひ猫のお気に入りを用意してあげてくださいね。

また、暑い中自ら日光浴して寝ている間に熱中症になる子もいます。あらかじめ、窓の外に簾(すだれ)をかけたり、室内では遮光カーテンなどをかけて日差しを和らげると効果的です。

3.水のみ場をたくさんつくる

脱水を防ぐためにも、あらゆる場所に水を置きましょう。いろいろな種類の器を使ったり、電動流水器を利用するなど、工夫してできるだけこまめに水分補給させるようにしましょう。ウェットフードやスープ状のおやつを食べさせて水分補給させるのも良い方法です。

◇猫まめ知識
猫はお気に入りの器がある子もいますが、その時の気分によって飲みたい場所や器が変わることもあります。器が気にくわないと水分摂取に影響することも。バリエーション豊富に器を用意しておくと、そのときの猫の気分にハマる確率が高くなるのでおすすめです。ちなみに、我が家は洗面器からコーヒーカップまで、種類・大きさともにさまざまなものを使っています。猫はその時々で、好きな場所で好きな器から飲んでいますよ。

4.閉じ込め事故に注意

狭い場所に閉じ込められていないか、猫の所在を把握しておくことが大事です。外出時は猫がみんな部屋にいるか確認し、猫が入り込みそうな狭い空間があれば、入れないように塞いでおきましょう。

5.ストレスを与えない

ストレスが熱中症のきっかけになることもあります。わが家のお騒がせ猫「ふらっぷ」は、昨年の夏にエアコン清掃が入った際に熱中症になったことがあります。遠い部屋に隔離していたにも関わらず、怖かったのかソファーの下に閉じこもってしまったのです。出てきたときにはすでに呼吸が荒くなっていました。ソファーの下が特別暑かったわけではないのですが、ストレスが引き金になったようでした。

▽お騒がせ猫「ふらっぷ」など猫4匹と暮らす筆者の「猫暮らし」エピソード満載の記事はこちら

まとめ

熱中症は、飼い主さんがしっかりと注意・対策をすることで防げる病気です。猫は気難しくて、せっかく用意したひんやりグッズも使ってくれないこともありますが、対策を万全にして、猫も飼い主も快適に過ごせるようにしたいものですね。

参考文献:
気象庁地球環境・海洋部「向こう3か月の天候の見通し 6月~8月」http://www.jma.go.jp/jp/longfcst/pdf/pdf3/001.pdf
アニコム損害保険株式会社「STOP熱中症新聞」https://www.anicom-sompo.co.jp/prevention/stopheatstroke/pdf/20140715.pdf
石野 孝 監修(2013)『決定版 うちの猫の長生き大事典 (Gakken Pet Books) 』学研パブリッシング.
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 執筆者プロフィール
2匹の愛猫と暮らす元博物館学芸員です。専門は古生物学。ペットに関する科学的な知識を分かりやすくお伝えしていきたいと思っています。
保有資格はペットシッター、愛玩動物飼養管理士2級
 監修者プロフィール
獣医師・トリマー・ドッグトレーナー / ペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。

現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。
毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。

プライベートでは一児の母。愛犬はシーズー。
家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています。

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