猫まる家の歴代の猫のこだわり

食べ物の好みから、指名制のマッサージ、バス停までのお見送りなど、わが家で暮らしていた歴代の猫たちにはそれぞれ奇妙なこだわりがありました。

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《CASE1》グルメ? 偏食? 決まったフードじゃないと嫌な猫

◇ふらっぷ(6才・メス)
女王気質の自立した女子。キジトラの元野良

わが家の紅1点・ふらっぷは、食に一切の妥協を許さない女です。なにせ、ドライフードの場合は1種類しか食べないのです。それどころか製造ロットが変わっただけでダメ出しする始末。製造時期によって原産国が変わるドライフードは、同じ製品でもロットが変わると多少は成分が変わってしまうのですが、ふらっぷはこれを見抜いてしまうわけですね。
そうなるとふらっぷは、たとえ空腹でも手をつけることはありません。飼い主の私は同じロット番号のフードを求めてペットショップを右往左往。本人が元気なうちはこれでもいいのですが、病気で療法食を食べなければならなくなったらどうしようかと。飼い主にとっては頭の痛いこだわりです。

理由は「新しいものを恐れる」から

成猫の食生活は幼年期の食べ物で決まるといわれています。ふらっぷはその傾向がとても強く、新しい食べ物にチャレンジするようなことは絶対にありません。このような行動は「新奇性恐怖」とも呼ばれ、新しいものを恐れるという本能的な心理です。

猫はもともと縄張りを持つ動物。自分の縄張りが「いつもと同じ」であることがとても大切なのです。野生の世界では「見慣れないもの=自分の生活を脅かすかもしれないもの」。用心するに越したことはありません。
新しい食べ物を避けたり、新しい物事を避けたり、一見こだわりに見えるのはこのような行動によるものなのです。

《CASE2》流れる水を求め続ける猫

◇くりっぷ(8才・オス)
兄貴肌でのんびり大らか。ブラウンクラシックタビー

くりっぷの水飲み場は他の猫とちょっと違います。彼の水飲み場はお風呂場のシャワー、トイレの手洗い、キッチンの蛇口。共通点は「水道水が流れてくる場所」です。そう、くりっぷは常に流れる水を求める男。普通の水入れで水を飲むことはほとんどありません。

自分でシャワーを出したり蛇口をひねることはできないので、いついかなるときも喉が渇けば召使い(私)を呼ばわり水を出させるのです。そりゃあもう、夜中だろうと明け方だろうと容赦なく! 飼い主としてはできるだけ水を飲ませたいので、仕方なくお付きあいしています。

理由は「新鮮な水に惹かれる」から

水へのこだわりが強い猫ってけっこういますよね。「うちの子も同じ!」という飼い主さんも多いのではないでしょうか。猫が流れる水が好きな理由は諸説ありますが、ひとつは猫には野生の本能が色濃く残っていて、「流れる水は新鮮だ」とわかっているからというもの。でも、ただ単に動くものとして好奇心をそそられているだけなのかもしれません。

面白いのは、猫は水に対してさまざまなこだわりを見せる点でしょう。くりっぷのように新鮮な水が好きな子もいれば、反対に水たまりのちょっと古い水にこだわる子もいます。猫には水の味を細かく感じることができる受容器があるとの説もあり、もしかすると味覚によって好みが分かれるのかもしれませんね。また、水を飲んだときに偶然面白いことや良いことが起こったりすると、ポジティブな記憶と結びついてこだわりにつながることも考えられます。

《CASE3》 毎晩、夫にだけマッサージをリクエストする猫

◇しろっぷ(8才・オス)
くりっぷと同腹の兄弟で繊細なオトメン。ソリッドホワイト

もともとしろっぷはお腹を揉まれることが大好きな猫でしたが、いつのころからか夜のマッサージが日課になりました。きまってご指名は私の夫。
夕食時になるとウルウルの目で夫を凝視し「60分コースで予約したしろっぷですけど」とマッサージをリクエスト。あぐらをかいた夫の足の上に乗せられたらお腹のマッサージのスタートです。気持ちがよいのか、まるで恋する乙女のようなうっとりした表情になるしろっぷ。さぞかしご満悦の様子で。
悲しいかな、私のところにお願いに来ることは絶対にありません。夫もご指名にまんざらではない様子なのがまた悔しい。完全なふたりの世界に私はただ指をくわえて見つめるのみです……。

理由は「いいことがある」を学習するから

しろっぷのこの行動は、学習による「正の強化」と考えられます。これは、ある行動をしたときに(=夕食時、旦那をウルウルの目で見つめたら)自分にとって良いことが起こった場合(=気持ちのよいマッサージをしてくれた)、その成功体験が行動を強化して、次も同じ行動を行うというものです。成功した行動だけを行うので、他の行動をしなくなる(=私にはマッサージをお願いしない)原因にもなります。これが猫のこだわりに見えるということだと考えられます。

《CASE4》毎朝バス停までお見送りしてくれる律儀な猫

◇ルウ(享年13才・オス)
喧嘩上等の親分気質。茶トラ

ウン十年前になりますが、中学生のときにルウという猫を飼っていました。ルウは毎朝、私が学校に出かける際に近くのバス停まで一緒に行き、私がバスに乗り込むのを見届けて帰る生活をしていました。(今振り返ると、道路を渡ったりするので猫にとっては危ないことをしていたなあと思います)
当時は朝の恒例行事になっていて、同じバス停を利用する人達が「すごい猫ちゃんね」とほめてくれて嬉しかったことを覚えています。

理由は「飼い主が心配」だから

この行動は、おそらく室内飼いの猫によく見られる「玄関まで見送り」と同じ意味と思われます。お出迎えに比べ、お見送りする猫は多くはありませんが、それはお出迎えには「ごはんをくれる人が帰ってきた!」という強い動機があるからです。

ではなぜお見送りするのか? というと、玄関は猫にとってテリトリーの境界線。境界線から出ていこうとする飼い主を心配しているからだと考えられます。「向こうはテリトリーの外だよ、危ないよ」という気持ちなのでしょう。

ルウは普段から外出する猫で、家に限らず外にも広いテリトリーを持っていました。テリトリーの境界がバス停だったのでしょう。バス停まで一緒についてくるのはテリトリーの範囲内だったから。きっと毎朝私がそこから出ていくのを見てはあきらめて帰っていったのではないでしょうか。

《CASE5》迂回してでも右からしか近づかない猫

◇にゃん太(4才・オス)
おしゃべりで甘ったれ、頭の中は永遠の2才児。シャムトラの元野良

にゃん太にはうちに来たその日から、私や食べ物に近づくとき、きまって右からという確固たるルールがありました。たとえ左側にいたとしてもわざわざ回り込んで部屋をぐるっと一周してもやり直します。にゃん太の場合は、こだわりというより執着に近い行動といえます。

理由は「左回りで痛い目にあった」ことがあるからかも?

にゃん太を拾ったとき、彼はすでに2歳を過ぎていて、過去に何があったのか実際のところわかりません。これは推測ですが、野良時代に何かに左側から近づこうとしたときに、怖い目にあったのかもしれません。
あるいは、右側から近づいたときになにか安心できるような環境にあったか。これが右側から近づけば安心、という心理につながったのでしょう。野良時代からすでに何年も経ちましたが、その癖がなかなか抜けず強い執着として残ってしまっています。

誰にだって「こだわり」はある

「こだわり」には、いろいろな原因があり、多かれ少なかれ人間にも当たり前に見られることです。ただ動物の場合は、自分のとった行動が直接生死に関わるかもしれず、こだわりがより強く出る傾向にあります。もともと縄張りを持ち、単独生活をしていた猫はその傾向がさらに強いということなのでしょう。

ただし、ペットとして飼われている猫のこだわりは個体差が大きく、新しい食べ物に果敢にチャレンジする子もいますし、どんな水でも平気な子もいます。それは猫が家畜化され、安全な環境がもたらされたために、どんな子であれ生き残れるようになったからともいえますね。

まとめ

みなさんの猫にはどんなこだわりがありますか? かわいいこだわり、ちょっと困ったこだわりなどきっと個性豊かなこだわりを持っていると思います。猫にとって危険(苦痛)な場合や、飼い主さんの日常生活に支障をきたす場合には矯正する必要があるかと思いますが、多少のこだわりは「猫らしさ」として暖かく見守ってあげてくださいね。

参考文献:
ジョン・ブラッドショー(2014)『猫的感覚 動物行動学が教えるネコの心理』羽田 詩津子訳,早川書房.

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