犬の口臭の原因 ①食べ物による影響

口臭の原因として、犬に与える食べ物が影響している場合があります。
消化の悪い食べ物や油分の多い食事は胃腸に負担をかけ、口臭をもたらします。

また、多くの愛犬が食べているペットフードですが、ペットフードに含まれる脂質は空気に触れると徐々に酸化し、劣化します。この酸化したフードが口臭の原因になることもあります。
ドライフードは、日持ちするイメージから、つい大袋で購入してしまいがち。しかし、開封した瞬間からフードの酸化は始まるので、くれぐれも保存には注意しましょう。
ウェットフード(缶詰やパウチタイプ)はドライフードに比べて、歯に残りやすく、歯垢や歯石となって口臭の原因になります。

犬の口臭の原因 ②食糞や内臓の状態によるもの

胃腸疾患のほかに、腎臓や肝臓、糖尿病などでも口臭が発生します。

口臭が糞便臭い場合

食糞行動、または胃腸疾患により、口臭が糞便臭くなることがあります。
食糞とは自分自身の糞便を食べてしまうことです。生理的意義はよくわかっていません。

子犬のうちの食糞行動は、「母犬が捕食動物からわが子を守るために排泄物を食べる」という動作を真似するためとも言われています。
ですが、食糞行動のほかの原因としては、体内に寄生虫がいる、消化器疾患があるなどの理由も考えられます。

また、胃腸疾患の場合、消化不良や腸内環境の乱れから口臭がする場合、さらに腸閉塞や腸重積など重篤な症状のときにも口臭が糞便臭くなることがあります。

腸閉塞や腸重積は、異物や腫瘍、重積が原因で腸の内容物が正常に流れず、時には糞便のような嘔吐物を吐くことがあります。
この場合、元気がない、ぐったりしている、腹痛、排便していない、などの症状を伴うこともあり、非常に危険です。すぐに動物病院を受診しましょう。

口臭がアンモニア臭い場合

腎臓や肝臓に疾患がある場合、口臭がアンモニア臭くなる場合があります。
通常、体外に排泄する老廃物が体の中に溜まってしまうと、独特のアンモニア臭として臭うことがあります。速やかに動物病院を受診しましょう。

口臭が甘い場合

甘い匂いがする場合、糖尿病の可能性があります。
糖尿病とは体内のインスリンが不足したり、インスリンの働きが悪くなってしまったりして血糖値が上がってしまう病気です。悪化すると命の危険を伴います。

糖尿病の場合、多飲多尿、食べているのに痩せてくるなどの症状が見られ、合併症としては白内障、神経障害、腎不全などがあります。
また、糖尿病の場合、免疫力の低下から歯周病にもかかりやすくなります。なるべく早く動物病院を受診しましょう。

犬の口臭の原因 ③口腔に問題がある

歯垢、歯石、歯周病が関与している場合

歯垢は、歯の表面のネバネバした物で、「プラーク」とも呼ばれています。
歯垢は細菌の塊で、さまざまな代謝物を出し、歯肉に炎症を起こしたり、歯周病を引き起こしたりします。歯垢は数日たつと、硬くなり歯石となります。この歯垢や歯石中の細菌、歯周病から生じた膿などからも、口臭が発生します。

近年、「3歳以上の犬猫の約8割が歯周病である」と言われています。
歯周病になると、持続的な口臭を出すだけでなく、進行具合によって歯肉や歯周囲組織を破壊し、歯が抜けたり、鼻腔との瘻管を形成し持続的な鼻汁が出たり、目の下が腫れて膿がでてきたりすることもあります。
また、顎骨の病的骨折を起こすこともあります。

口腔内腫瘍が原因の場合

口腔内腫瘍の場合、大まかに良性腫瘍、悪性腫瘍、繊維肉腫などに分けられます。
特に悪性腫瘍の場合は、歯肉のみならず骨組織も破壊するため、激しい腐敗臭が発生することがあります。この場合、たいていは食欲低下、食べこぼし、食事時の疼痛などがあります。
気になる症状がある場合は、なるべく早く動物病院を受診しましょう。

犬の口臭対策

口臭の対策は原因によってさまざまです。ここでは、それぞれの対策法、予防法などについてお話します。

食べ物が原因の場合

食事内容を確認し、消化の良いペットフードを検討してみましょう。
消化不良や腸内環境の乱れから嘔吐や下痢もしやすい場合は、獣医師の診察を受け、食事のアドバイスを受けるとよいです。場合によっては整腸剤や犬用ヨーグルト、犬用サプリメントも考慮しましょう。

また、開封後のドライフードは、しっかり密閉し、直射日光を避け、温度や湿度の低い所で保管してください。
ドライフードは比較的長期保存できますが、なるべく早く食べきれるよう、愛犬にあったサイズを選びましょう。 
缶詰やパウチタイプは、一度開けたら密閉容器に移し、冷蔵庫で保存するのがおすすめです。できればその日のうちに食べきる方がよいでしょう。

内臓疾患や口腔内腫瘍が原因の場合

原因疾患の治療が必要です。獣医師の診察を受けましょう。

歯垢や歯石、歯周病が原因の場合

口臭として多いのが、歯垢、歯石や歯周病によるものです。
口臭を防ぐには歯についた歯垢が歯石になる前に、毎日磨いてとってしまうことが理想的です。

歯磨きを継続させるために、まず愛犬に歯磨きを好きになってもらいましょう。
まずは口元を触らせてくれるように練習を重ね、それから口の中に指が入れられるように、できたら指にガーゼなど巻いて歯を数秒磨く、といったように徐々に慣れさせてください。できたら、必ず褒めましょう。
愛犬の好きな味の犬用歯磨き粉などを使っても効果的です。最終的には犬用歯ブラシで磨けるよう、無理をせず少しずつ慣れさせましょう。

できれば子犬の頃から少しずつ歯磨きレッスンを行えればよいのですが、すでに歯磨きが難しいようであれば、口腔内の善玉菌を増やし口臭を減らすサプリや、お水に少し入れるだけで口臭がやわらぐもの、歯垢を付きづらくさせる効果のあるもの、おやつ感覚で与えることができる歯磨きガムなどを活用しましょう。現在は多種多様な製品がありますので獣医師にご相談ください。

また、動物病院で行う歯石除去も口臭を減らす方法の一つです。
歯石除去は無麻酔でハンドスケーラーを用いて行う場合と、麻酔下で超音波スケーラーを用いて行う場合があります。
ハンドスケーラーでは硬い歯石は取れず、十分に口腔内を掃除できません。麻酔下で行う歯石除去が効果的ですが、歯石や歯肉の状況、愛犬の全身状態によって選択は異なりますので、まずは獣医師にご相談ください。

ただし、歯石除去を行ったからといって、口臭がすぐに全くなくなるわけではありません。
歯石がついている場合、多くは歯周病があるため、歯周病の治療と家庭での歯磨き、定期的な病院でのメンテナンスが必要です。

まとめ

一言に「犬の口臭」といっても、いろいろな原因が考えられます。
きちんと原因を知り、早期に対策を取ることが重要です。気になることがあれば、獣医師に相談しましょう。愛犬がいつまでも健康で美味しい食事を味わえるよう、毎日の歯磨きと定期的な健康診断をおすすめします。
 執筆者プロフィール
鳥取大学農学部獣医学科卒。千葉県出身。
千葉市内の犬猫動物病院勤務後、結婚&出産を経て、現在東京都内「ペットスペース&アニマルクリニックまりも」に非常勤として勤務。

幼いころ、動物に接する機会が何度かあり、小学生のときに念願の柴犬を飼ったのが今思えば獣医師になるきっかけだったように思います。
愛犬はその後、老犬となり痴呆が始まり大変でしたが、最後の1年間は勤務していた院長先生やスタッフ皆さんのお陰で穏やかに過ごすことができました。
この経験から、ペットと飼い主さんの気持ちに寄り添い、治療を行うよう常に心がけています。

現在は、夫と子供の3人家族。家事と仕事と育児に邁進中。

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