犬の爪切りの重要性について

まずはなぜ犬の爪切りが必要なのかをお話しします。

犬の爪は人間の爪と同じように、放っておけばどんどん伸びていきます。
散歩で外を歩けば地面で削れていきますが、地面に着くことのない犬の親指にあたる「狼爪(ろうそう)」は伸び続けるので、そのままするとまるで羊の角のようになってしまいます。
放置しておくとなにかの拍子に爪が引っかかて折れたり、肉球に刺さったりと、ケガの原因になることもあるのです。

また、犬は四肢の肉球でしっかりと体重を支えています。
もし爪が地面につくほど伸びると肉球が接地しづらくなり、スムーズな歩行の妨げや転倒の原因になってしまいます。

そして、人間と構造が異なり、犬の爪は、血管や神経を包んだ筒状になっています。
爪を伸ばしたままでいると中の血管や神経も一緒に伸びていくので、いざ切るときに出血しやすくなったり、犬が痛い思いをしてしまいます。
そうなるとますます爪切りがしにくくなるという悪循環になってしまうのです。

定期的のケアが必要な爪切り、できれば嫌がるのを無理やりやったり痛い思いをさせたりはしたくないですよね。

犬の爪を切る方法について

まずは道具を揃えましょう。
犬の爪を切るときには、犬用の爪切りを使います。犬の爪の構造上、うまく切ることができないので、人間用のものは使わないようにしましょう。

犬用の爪切りもいくつか種類があります。
輪っかになっている部分に爪を入れ、刃を上下にスライドして切断する「ギロチンタイプ」、はさみの先端が弧を描いた刃になっている「ハサミタイプ」、工具のニッパーの先端が弧形になっている「ニッパータイプ」です。
一番主流なのはギロチンタイプでしょうか。ニッパータイプは慣れが必要ですが、大型犬の固い爪を切るには便利なようです。
あとは爪の切り口を整えるやすり、出血してしまったときの止血剤があるといいでしょう。

爪の伸び方は、犬の個体差や生活スタイルでだいぶ変わってきます。前述のとおり、長時間お散歩をするわんちゃんは、爪が削れるぶん伸びが遅く感じます。
しかし、地面に着かない狼爪は伸びていきますので、月に一度、爪の長さのチェックは必要です。
見た目で判断する場合は、犬の足を地面に着けたときに、爪の先端が地面に着かないくらいが理想。フローリングの床で、爪がカチャカチャ鳴るようになったら切りどきです。

爪を切る手順・コツ

爪を切る順番は特にありませんが、前足の爪切りを嫌がる子が多いので、後ろ足の爪から始めて様子を見てあげるといいでしょう。
切るときは手を少し後ろに引き、肉球を上向きにして切るのがコツです。犬からは切っているところが見えないので恐怖感が薄れますし、切っている側としては爪の切断面が見えやすいのです。
どこまで爪を切るかというと、白い爪の犬の場合、血管が透けて見えるのでその手前まで切ってください。
その際、一気にバチンと切ると痛みを感じなくとも、衝撃で犬が嫌がってしまいます。爪の角を削り取っていく感じで、角度を変えながら丁寧に切っていきましょう。
やがて爪の断面の中央に芯のような部分が見えてきますので、それが見えたら終了です。
黒い爪で血管が見えない犬も、断面の芯を目安に切ってあげるといいでしょう。

爪切りを嫌がる犬への対処法

そもそも犬は足先を触られるのを嫌います。まずはコミュニケーションの一環として、スキンシップを取りながら足先を触られることに慣らすところから始めましょう。
爪を切るときは前述したように、足を少し後ろに引き、犬から見えないようにしましょう。そのとき、犬の背中側から抱え込むように手を回し、犬の身体を自分の身体に密着させるように抑えてあげると犬も安心できます。
ただし、力で押さえつけようとはしないでください。ケガの原因にもなりますし、ますます爪切りが嫌なものという認識をしてしまいます。
はじめは一本ずつでも構いません。我慢できたらご褒美におやつをあげるというのも効果的です。

落ち着きがなくじっとしていられないタイプの子は、テーブルなど少し高い台に乗せてやるとおとなしくなることがあります。そのほうが人間もやりやすいのですが、愛犬が飛び降りないようくれぐれも注意してください。

それでもやはり嫌がって暴れるなど、手が付けられない場合もあるでしょう。
愛犬や飼い主さんがケガをしては元も子ありませんし、愛犬との信頼関係が崩れてしまう危険もあります。そんなときは無理をせずトリマーさんや獣医師さんに頼りましょう。

爪切りを失敗したときの対処法

さて、いざ注意して爪切りをしていても、爪から出血させてしまうという事態が起きることもあるでしょう。
そんなときは焦らず、止血をしてください。出血しているということは神経部分にも触れているので、愛犬も少なからず痛い思いをしています。
ここで飼い主さんがパニックになると愛犬も興奮して暴れる可能性があるので、落ち着いて止血するのがポイントです。

出血がにじむ程度の少量であれば、コットンやガーゼなどで爪の断面を抑えて圧迫止血をしてみましょう。
出血量が多い場合ときは、止血剤を使ってください。止血剤のパウダーを指ですくい、爪の断面に押し当て10秒ほど圧迫すれば出血を止めることができます。
水で濡れたりアスファルトで擦れたりすると、止血剤が取れてしまうこともあります。愛犬が舐めとらないように様子を見たり、お散歩は少し時間を置いたりするなど、しばらくの間は細心の注意を払いましょう。

止血剤がない場合、小麦粉や片栗粉で代用する方法もありますが、止血剤の成分に含まれるような止血効果は望めません。あくまで粉で出血部分にフタをするだけになるので、出血量が多い場合は動物病院での受診をおすすめします。

まとめ

さて、今回は爪切りの必要性や爪切りの方法、コツなどを紹介させていただきました。
月に一度やらなければいけない爪のケア。スキンシップの一環として自宅でできるようになれば、愛犬との絆もさらに深まりますね。
ただし、それでも無理は禁物。爪切りのためだけにサロンや動物病院に行くのは大袈裟だと考えてはいけません。
爪のケアも愛犬の大切な健康管理のひとつです。爪の伸びすぎで愛犬がケガをしないよう、飼い主さんが注意してあげましょう。
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 執筆者プロフィール
獣医師 / ペットサロンBEANS
酪農学園大学獣医学科卒業、後に日本獣医中医学院にて中医学を学び獣医中医師の資格を取得。

ペットスペース&アニマルクリックまりも様にて臨床経験を積ませていただきながら経営のノウハウを学ばせていただき、2017年2月、調布市にペットサロンBEANSを開業。

ペットホテルとペットの鍼灸治療を行っています。また、週に2日はまりも様にて代診を行っております。
鍼灸という身体に負担の少ない治療法でペットや飼い主さんの手助けができればと思っています。

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