猫の膀胱炎とは?

溜まった尿を体外へ排泄する膀胱(および尿道)が、何らかの要因で炎症を引き起している状態のことを「膀胱炎」といいます。
膀胱炎になると、次のような症状が出ることが多くなります。

①血尿
膀胱の内部は、口の中のような粘膜で覆われています。炎症が起こると簡単に出血し、これが尿に混じって血尿が出ることが多いです。

②残尿感
排泄しても尿が出きらない感覚(残尿感)が残り、頻繁にトイレに通うようになります。この残尿感が強いと、トイレが間に合わず、普段粗相をしないのに、トイレとまったく違う場所で排泄してしまう場合も。
また頻回にトイレに行くため、1回の排尿量は少なくなり、ほとんど出ていないこともあります。

③痛み
炎症が強いと排尿時に痛みを伴うようになり、排尿しながら鳴く猫もいます。また痛みや違和感から、しきりに下腹部や陰部、陰茎を気にしたり舐めたりすることがあります。

やけにトイレにこもっているな、というとき、「尿が出ているか」が重要なポイントになりますので、愛猫をよく見てあげてください。尿が出ていない場合は、膀胱炎ではなく尿道閉塞の可能性もあり、命に関わります。

猫の膀胱炎の原因は?

主な原因としては、尿路結石症、ストレス、細菌の3つに分けられます。このうち細菌による膀胱炎は、猫では少ないと言われています。

①尿路結石症によるもの
尿中の酸性度(pH)が正常値(pH6.0)から大きく外れると、膀胱に溜まっている尿の中で、結石のもととなる結晶が作られます。結晶を含んだ尿は、入れ過ぎて溶け残った砂糖水のような、じゃりじゃりの状態です。これが膀胱や尿道の粘膜を傷つけることで、炎症が起きて膀胱炎となるのです。

結晶は、酸性度によって種類が異なります。主に酸性(pH5程度)に傾くと「シュウ酸カルシウム結晶」が、中~アルカリ性(pH7~8)に傾くと「ストラバイト結晶」が作られます。
どちらも結晶尿の状態が改善されないと、やがて結晶同士が凝り固まり、結石となります。結晶ができる原因としては、マグネシウムを主とする、ミネラル分の過剰摂取があげられます。

②ストレスによるもの
猫はストレスによる特発性膀胱炎が少なくありません。「特発性」とは「尿路結石症など、他に原因がない」ということです。

猫はストレスの強い状況に置かれると、自律神経のバランスが崩れ、膀胱に炎症が起こります。
ストレスの原因は猫によってさまざまで、トイレが汚い、寒くて行きたくない、他の猫が使うのが嫌、新しいトイレが気に食わないなどのトイレ事情から、長時間の留守番あるいは来客、季節の変わり目による気候の急変動などの環境的なものまで、さまざまです。

③細菌によるもの
細菌が直に炎症を引き起こすことは少ないですが、上記2つの要因により膀胱粘膜が弱っていると、簡単に細菌感染が起こり、炎症を助長することがあります。

猫の膀胱炎の治療法は?

どのような原因でも、治療は主に抗生剤と止血剤の投与、そして食事管理です。
炎症など痛みを伴う症状が強い場合は、消炎鎮痛剤を使用する場合もあります。また、体の水分量を増やして、排尿による自浄作用を促すため、皮下点滴を行うこともあります。
注射による薬剤の投与のほうが確実なため、数日通院をお願いする病院がほとんどです。その後は、頻尿や血尿などの症状が治まるまで、飲み薬を処方します。

頻尿症状が強いときは難しいですが、落ち着いてきたら、必ず病院で愛猫の尿検査をしてもらいましょう。尿を見ることで、結晶による炎症か否かの判別がつきます。
結晶が含まれる場合、特にオスだと、尿道に結晶が詰まって排尿できなくなる「尿道閉塞」の危険性が出てきます。排尿できているか、必ずおうちでも確認してください。

膀胱炎による症状の治療であれば、通院や飲み薬により2、3週間ほどで症状が良くなることが多いです。
費用も尿検査代や注射・飲み薬代程度になります。ただし、結石でもストレス性の膀胱炎でも、根本は体質に原因があります。
治療で炎症は治りますが、食事管理やストレスを減らすための環境改善など、治療後も飼い主が気をつけてあげないと、再発は必至です。

また、ストレス性の場合、気候の変動など、飼い主では改善できない原因もあります。
症状をなるべく早く見つけるためにも、定期的に動物病院を受診し、尿検査をしてもらいましょう。
膀胱炎を何度も繰り返す猫は、結晶が結石になっている可能性があります。
その他にも、炎症の原因が腫瘍などのこともあるので、レントゲン検査や超音波検査など、より詳しい検査が必要になります。

猫の膀胱炎の予防法は?

結石が原因の膀胱炎の場合、自宅でのケアは、とにかく食事管理が重要です。
結石の原因である尿のpH変動は、食事の影響を受けます。まずは食事を専用の療法食に変えてください。
ミネラル分の摂取を減らすため、にぼしや乾燥の小魚は与えないようにしましょう。また、普段の飲水も、ミネラルウォーターではなく、水道水がおすすめです。

前述の通り、体質が根本原因にあるので、療法食は一生続けていく必要があります。治療食により尿pHを正常値に保てれば、結晶は作られにくくなります。
結石になってしまった場合、シュウ酸カルシウム結石もストラバイト結石も、治療は困難を極めます。結晶を作らせず、膀胱炎を引き起こさないことが、治療のポイントにもなるのです。

また、ストレスを減らすたんぱく質が含まれた療法食は、ストレス性膀胱炎の予防に効果的です。
ストレス性の場合は、ストレスとなる原因をなるべく取り除いてあげることが、膀胱炎予防の大きなポイントです。まずは何がストレスであったのか、かかりつけの獣医師と相談してみてください。

その他、膀胱の自浄作用を促すために、なるべく水分を取らせることも、再発を防ぐのに効果的です。
ウェットタイプの療法食を食べられるなら、トッピングに使ってあげてください。
また、飲み水に、ささみの茹で汁を少し混ぜるなど、風味付けをするとお水をたくさん飲んでくれる猫もいます。愛猫に合う方法を試してみてください。

まとめ

膀胱炎は、飼い主が食事やストレスの管理に気をつけてあげることで、早期の治療や再発の防止につながります。日頃から愛猫の様子を観察し、おしっこの異変を見逃さないようにしてあげてください。
 執筆者プロフィール
「今日は猫ちゃんにお注射した? 」と仕事に行くたびに聞く4歳の長男と、寝るときも猫とひよこのぬいぐるみが離せない2歳の次男に毎日振り回されながら、埼玉県三郷市の動物病院でパート勤務をしている獣医師です。
当たり前のことかもしれないけど、飼い主様の話をよく聞いて、一緒に治療を進めることを心がけながら、病気じゃなくても、ペットに関する心配事をぽつっと相談してもらえるような、飼い主様に寄り添える獣医さんを目指して、日々研鑚しています。

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