そもそもマイクロチップってどんなもの?

動物用のマイクロチップ
動物用のマイクロチップは、長さ約8~12mm、直径2mm程度の円筒状の電子機器。世界でひとつだけの15桁の数字が割り当てられていて、専用のリーダーで読み取ることができます。

15桁の数字はデータベースと連動していて、データベースには

・ペットの情報(名前、生年月日、性別など)
・飼い主の名前
・住所
・電話番号


などの情報が登録できます。
あくまでもペットの身元を明らかにするのが目的のものなので、GPS機能は備わっていません。

もし迷子のペットが保護された場合、まず専用の読み取り機で、マイクロチップを読み取ります。読み取った識別番号をデータベースで検索、登録されている飼い主情報取得します。
その情報をもとに、即座に飼い主に連絡を取り、ペットが家に帰れるという仕組みです。

マイクロチップの情報を読み取る専用のリーダーは、動物病院や保健所、動物愛護センターなど、限られた場所に設置されています。

マイクロチップは電池交換などの必要がなく、半永久的に使用できるので、一度埋め込めばペットの生涯に渡って使うことができます。非常に小さな電子機器ですが、外からの刺激などで破損することはほぼありません。

海外ではマイクロチップがなければ犬猫が入国できない国もあり、世界的に見てもマイクロチップは常識になりつつあります。
農林水産省「動物検疫所・犬、猫を輸出するには」

「相手の国に入国するための条件」をご覧ください。入国したい国によって条件は変わります。犬や猫を海外に連れていきたい場合は、入国を希望している国の条件を確認し、マイクロチップの装着を検討しましょう。

マイクロチップ義務化へ

犬と猫
海外では一般的なマイクロチップですが、日本ではまだ認知度が低いのが現実です。
しかし、2019年6月12日に成立した改正動物愛護法に基づき、犬猫へのマイクロチップ装着が義務化されました。

この法律が適用されるのは、2022年6月1日から。
マイクロチップの装着は、犬猫を販売するペットショップやブリーダーなどの繁殖販売業者に義務付けられ、犬猫を取得した日(生後90日以内の犬猫を取得した場合は、生後90日を経過した日)から30日経過するまでに、環境省が定める基準に適合したマイクロチップを装着しなければなりません。

つまり、2022年6月1日以降に販売業者から犬猫を購入した場合は、すでにマイクロチップが装着された状態ということになります。
また、マイクロチップの情報が登録されている犬猫を購入した場合は、変更の届出が必要です。

なお、施行前にすでに飼われている犬猫に対しては、飼い主に努力義務が課せらます。
努力義務とは、法律の条文で「~するよう努めなければならない」「~努めるものとする」と規定された義務のことです。
「必ずマイクロチップを装着しなければならない」というわけではありませんが、「なるべく装着するよう努めなければならない」という意味になります。

マイクロチップを入れるには動物病院へ

病院
マイクロチップを埋め込むときは、インジェクターという注射器のようなものでペットの体内に挿入します。埋め込む場所は、首の後ろの皮下が一般的です。

注射器より太めの針を使用するので、やはり装着時にはいくらか痛みがあるようですが、注射を打つのと大差はないようです。
病院によっては局所麻酔を使うこともあるようなので、医師に相談してみるといいですね。

マイクロチップの装着は獣医療行為にあたるため、獣医師しか行えません。かかりつけ医にマイクロチップを装着してもらえるのか聞いてみるといいでしょう。

なお、ペットの状態によっても差はありますが、犬は2週齢、猫は4週齢から装着が可能です。
費用はマイクロチップの装着に約5,000円、情報の登録に1,000円ほどかかるようです。

マイクロチップ登録・変更の手続き方法

チェック用紙
マイクロチップを装着した際、データベースへ情報を登録するための申込用紙をもらいます。
その用紙に必要事項を記入し、マイクロチップの管理団体に書類を送付します(場合によっては別途登録料を振り込む必要があります)。

この手続きを怠ると、データが空っぽのマイクロチップが埋め込まれただけの状態になってしまいます。無駄にならないよう、忘れずに登録をしてください。

無事に登録が完了されれば、登録完了の通知ハガキが届く流れになっています。

なお、下記のような場合は、情報変更の手続きが必要です。

・譲渡などで飼い主が変わった場合
・転居などで連絡先に変更があった場合
・ペットが死亡した場合


登録変更の手続きは、原則としてデータ登録時の飼い主しか行えません。
もしペットを譲渡された際には、マイクロチップの有無を確認し、前の飼い主に変更の手続きを依頼してください。

飼い主の情報が古いと、いざというとき何の役にも立たないものになってしまうので、注意が必要です。

マイクロチップのメリット

犬の足跡
マイクロチップのメリットは、自分のペットであることを証明できることです。
ペットが迷子や災害、盗難の被害にあってしまったとき、飼い主が「私のペットです」と言っても証明のしようがありません。

迷子札でも代用できないわけではありませんが、マイクロチップと違って、なにかの拍子に外れてしまったり、文字がかすれて読み取れなくなったりするリスクも考えられます。
マイクロチップが入っていれば、飼い主の情報がデータベースに残っているため、スムーズにペットを探し出して連れ戻すことができます。
実際に迷子になった犬猫がマイクロチップを装着していたおかげで、無事飼い主のもとに帰ることができたという例もあるようです。

またマイクロチップは登録した内容を変更するのにも15桁の数字が必要なので、管理さえきちんとすれば悪用される可能性が少ないこともメリットのひとつです。

気になるのは、やはり健康面への影響。人工物を体に埋め込むので不安に思う方も多いと思いますが、マイクロチップは安全性が高く、ペットの体に影響を及ぼすことはほぼありません。
日本獣医師会によると、日本国内において、マイクロチップの副作用やショックなどの被害報告は、今のところ1件も寄せられていないそうです。

参考文献 マイクロチップを用いた動物の個体識別 http://nichiju.lin.gr.jp/aigo/index.html

マイクロチップの登録団体はひとつではない?

仲良しの犬猫
現在、犬や猫のマイクロチップの情報を正式に管理しているのは、「動物ID普及推進会議(AIPO)」という団体です。AIPOは「全国動物愛護推進協議会」や「日本獣医師会」などで構成された組織で、平成14年に設立されました。

実は、マイクロチップの登録団体はひとつではありません。
犬や猫の購入先によってはAIPO以外の団体に情報を登録しますが、動物病院や保護施設には、AIPOの専用リーダーしか用意されていないことがほとんどです。

せっかくマイクロチップを装着したのに、情報が読み取れないと意味がありませんよね。

きちんと登録されているか心配な場合は、かかりつけの動物病院などでリーダーをかざしてもらってください。確かにマイクロチップを埋め込んだのに、情報が読み取れない場合は、AIPO以外に登録されている可能性があります。

15桁の数字さえわかれば、複数の団体に登録することができます。登録料は1,000円と安価なので、もしほかの団体に登録していた場合はAIPOにも登録するのがおすすめです。

まとめ

犬と人
世界でひとつの個体識別番号やデータベースに登録された飼い主の情報などはマイクロチップの最大のメリットですし、装着の義務化を機に、もっと広まるでしょう。これをきっかけにお近くの動物病院で相談してみてはいかがでしょうか。
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『みんなのペットライフ』編集部スタッフが、わんちゃん・ねこちゃんの飼い方、しつけのアドバイスなど、毎日のペットライフに役立つ知識や情報をお届けします。