長年、猫の多頭飼いを楽しむ筆者。我が家にはおもしろエピソードには事欠かない個性豊かな面子がそろっていますが、なかでも元野良のメス猫「ふらっぷ」は過去、さまざまなものを飲み込んでは私をヒヤヒヤさせた誤飲の女王なのです……。

▽お騒がせ猫「ふらっぷ」など猫4匹と暮らす筆者の「猫暮らし」エピソード満載の記事はこちら

猫が誤飲しやすい理由は「舌」にあった!

猫に体を舐められると、ヒリヒリして痛くありませんか? 
それは、猫の舌の表面のほとんどがトゲ状の突起で覆われているからです。突起を糸状乳頭(しじょうにゅうとう)といいますが、ネコ科動物によく発達しています(生まれてすぐの子猫にはありませんが、成長するにつれ生えそろいます)。

糸状乳頭の重要な役目のひとつは、「骨から肉をそぎ落とす」こと。猫の仲間は獲物を食べる際、骨にこびりついたわずかな肉も舌のトゲできれいにそぎ落としながら食べていきます。骨から肉をはずせるほどの突起なのですから、痛いわけですよね。

さらに、トゲ状の突起のひとつひとつが口の奥に向かって生えているので、トゲに捕まったものは自動的に口の奥へと進むしくみになっています。
つまり、一度トゲにひっかかってしまうと、猫が意識して吐き出しでもしない限り、自然に口の奥へ奥へと運ばれてしまうのです。これが、猫が誤飲しやすい理由のひとつとなっています。

①ひも類は誤飲・誤食率No.1

ひも類は糸状乳頭に絡まりやすく、一度絡まると猫自身が吐き出そうとしてもうまくできません。猫がじたばたしているうちにどんどん口の奥に運ばれてうっかり飲み込んでしまう、ということもよくあります。

また、タオルなど布地のほつれ糸を猫が飲むこともよくあります。飼い主さんの髪の毛を毛づくろいしている最中に飲み込んでしまうということもあるので要注意です。

飲んだらどうなるの?

ひも類のなかでも細い糸や髪の毛は特に危険。腸にひもがひっかかることで腸が引きつり血行障害が起こり、腹膜炎を起こしたり、量によっては腸閉塞になったりもします。
万が一、肛門から糸が出ていたとしても、無理に引っ張ることは止めましょう。素人が引っ張ると腸を傷つけることがあるので危険です。そのままの状態で至急病院に連れて行きましょう。

対策は?

ひも類は無くなっていることに気付きにくく、飼い主さんが現場で見ていないと発見が遅れます。
とにもかくにも危険の芽を摘むことが大切です。あらかじめ、糸状の物は猫の届かないところにしまいましょう。
家具や寝具、クッションなどでほつれやすい布地は避けること。また、猫とひも状のもので遊んだ後も、ひもの長さを確認してみてください。短くなってはいませんか? 遊んでいるうちにひもを噛み切っていることもあるので、毎回チェックしましょう。

◇ふらっぷの誤飲&誤食①・猫じゃらしのひも
ある日、いつものように猫じゃらしで遊んでいたふらっぷ。その様子を眺めていたら、じゃれているうちにひもを食いちぎり、しまいには食べてしまいました。
「これはいけない!」と、即刻病院に連れていきましたが、飲み込んだひもの長さが2cmほどと短かったこと、レントゲン検査をしても映らないかもしれないとの理由から様子見することに。
翌々日、ひもは無事うんちと一緒に排出され、事なきを得ました。

②小物類には危険がいっぱい

机の上に置きっぱなしだったり、うっかり床に落としてしまった小物……これらも猫が誤飲・誤食しやすいもので、猫が遊んでいるうちに口にして、飲み込んでしまうことがあります。遊びに夢中な子猫や噛み癖のある子によく起こる事故です。

おもちゃ、ボタン、輪ゴム、電池はもちろん、ぬいぐるみの目や耳など、おもちゃのパーツも要注意ですよ。

飲んだらどうなるの?

柔らかい輪ゴム類は、腸を傷つける可能性は低いものの、硬いもの、鋭利なものの場合は食道、胃や腸の壁を傷つけたり、刺さったりすることもあります。さらに危険なのはボタン電池です。体内に入ると放電してアルカリ性の液体が流れ出して内臓組織を溶かし、短時間でも胃や腸を損傷し穴をあける恐れがあります。猫がボタン電池を飲み込んだときは、直ちに動物病院に連れて行ってください。

対策は?

小物を出しっぱなしにせず、猫の手の届かない場所で保管すること。知らずのうちに床に落ちていることもありますから、床のチェックも怠らないでくださいね。
また、おもちゃ類で遊ぶ時は、飼い主さんが付き添うようにしましょう。遊んでいるうちに取れてしまいそうなパーツは、あらかじめ取っておくのもひとつの策です。

◇ふらっぷの誤飲&誤食②・ドアストッパー
子猫の時、ウレタン製のドアストッパーをかじって破片を飲み込んでいたことがありました。私は気付かずにいたのですが、ある日ふらっぷが毛玉を吐いたと思ったら、ドアストッパーが一緒に吐き出されてきたのでびっくりしました。無事だったので良かったものの、今思えば冷や汗もののエピソードです。

③食事の残りモノにも注意が必要

人間の食べ物には、猫にとっては毒になる食べ物がたくさんあります。食べ物そのものに注意を配るのはもちろん、人間の食べ残しや食べ物(特に肉や魚)が付いたラップや串を誤食することがあるので注意が必要ですよ。

食べたらどうなるの?

そもそも人間の食べ物は塩分が高すぎて猫にはよくありませんが、その中でもネギ類は中毒性があり危険です。ネギ類には猫の血液を破壊する成分が含まれるため、重い貧血が起こったり、血尿などを引き起こしたりします。ラップ類は飲み込むと中で塊になって胃腸障害、腸閉塞を起こします。串類は食道・腸を傷つけます。重症化すると食道炎、腹膜炎を起こす場合もあります。

対策は?

そもそも台所や食卓に近づけないようしつけること。さらに我が家では、万が一のために、調理後の鍋の蓋をクリップで止めています。原則、人間の食べ物は与えないようにし、残飯類やラップ、串、つまようじは必ず蓋つきのごみ箱に捨てましょう。

◇ふらっぷの誤飲&誤食③・タマネギ入りカレー
ある日、私がつくったタマネギ入りのカレー。ふと気づくと、なんとふらっぷがカレー鍋の蓋を開け、中に手を突っ込んで食べているではないですか……! ネギ類の危険性は知っていたので、あわてて病院に連れていきましたが、幸い何事もなく無事でした。青くなってオロオロする私をよそに、ふらっぷはやたらケロっとしていて拍子抜けしたのを覚えています。

獣医さんの話によれば、どうやらタマネギ中毒を起こす量は個体差が激しく、スプーン1杯でもダメな子もいれば、それ以上食べても平気な子もいるのだそうです。ふらっぷの場合は大丈夫でしたが、基本的に猫はタマネギの成分に敏感に反応する子が多く、やはり「与えてはいけない食べ物」として厳重注意が必要だと思います。

④その他/危険は日常にあふれている!

家の中によくあるもので、猫が食べたり飲んだりすると重大な中毒を引き起こすものを紹介します。

観葉植物

猫草を好む猫は、観葉植物の葉や花を食べることがあります。インテリアとして家に観葉植物を置いている方も多いと思いますが、猫に害があるといわれる植物は何百種類にもおよびます。
毒性がわかっていないものも多く、基本的に置かないことをお勧めします。ユリ科、ツツジ科の植物は非常に毒性が高く、神経麻痺、心臓麻痺、呼吸困難などを引き起こす場合もあります。命にも関わるので、猫が出入りする場所に置かないよう気を付けてください。

アロマ(精油、エッセンシャルオイル)

アロマテラピーも人間にとっては癒しのアイテムですが、猫には害があることが報告されています。
精油(エッセンシャルオイル)の成分の中に、猫が解毒できないものが含まれていているからです。猫は完全肉食性なので雑食性の人間や犬とは違い、植物に含まれる一部の有機化合成分を解毒するしくみを持っていません。

解毒できなかった成分は排泄されることなく体内に残り、やがて肝臓に大きなダメージを与えます(肝臓は解毒の役割を持つ臓器です)。安全だと証明された精油(エッセンシャルオイル)は現状ではまだありませんので、使用は控えましょう。

サプリメント(α‐リポ酸)

α‐リポ酸は、ダイエットサポートやアンチエイジングに効果的だと謳われ、人間用のサプリメントとして普及していますが、猫にとっては大変危険なものです。猫が食べるとわずか1粒でも低血糖を引き起こし、命が危険にさらされます。
厄介なことに、この成分は猫にとって美味しい香りがするようで、猫をひき付けてしまうとか。α‐リポ酸が含まれるサプリメントは、ケースに入れて引き出しの中で保管するなどして厳重に管理し、猫が誤飲しないように気を付けてください。

もし猫が誤飲・誤食したら?

誤飲・誤食した内容によっては毒性があったり、無理に吐かせては危険なものがあります。自己判断せずに医師の指示を仰ぐのがベストです。
猫が誤飲や誤食したら、ただちに動物病院に連絡して
・何を
・どれくらいの量を
・どのくらい前の時間に
飲み込んだか、食べてしまったかをチェックし、説明をしましょう。

まとめ

いかがでしたか? 家の中には、誤飲事故につながるものが意外とあるのです。誤飲した後ではなかなか良い手立てがなく、手術や胃洗浄など大がかりなことになることもあります。誤飲は、可能な限り未然に防ぐことがポイント。愛猫の性格や癖もよく考慮し、愛猫から危険を遠ざけてあげましょう。

参考文献:
矢沢サイエンスオフィス編(2002)『もっともくわしいネコの病気百科』学習研究社.

「知ることで防げる事故 α-リポ酸と猫」猫専門病院の猫ブログ http://nekopedia.jp/alfa-lipoic-acid/
「αリポ酸は猫には大変危険です」公益社団法人 埼玉県獣医師会 http://www.saitama-vma.org/topics/%CE%B1%E3%83%AA%E3%83%9D%E9%85%B8%E3%81%AF%E7%8C%AB%E3%81%AB%E3%81%AF%E5%A4%A7%E5%A4%89%E5%8D%B1%E9%99%BA%E3%81%A7%E3%81%99
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 執筆者プロフィール
2匹の愛猫と暮らす元博物館学芸員です。専門は古生物学。ペットに関する科学的な知識を分かりやすくお伝えしていきたいと思っています。
保有資格はペットシッター、愛玩動物飼養管理士2級

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