猫は便秘になりやすい!

◇食べ物がうんちになるまで
食事をすると、食べ物は食道を通り、胃とその次に続く十二指腸で消化・分解され、小腸で栄養が吸収されます。小腸を通過するといわゆる残りカスの状態に。これらは大腸に運ばれますが、そこで徐々に水分が吸収されてうんちになっていきます。

◇猫が便秘になりやすい理由
もともと水分をあまり多くとらない猫は、うんちが硬くなりやすい生き物です。水分吸収が行われる大腸(結腸)を通過する過程で硬くなりすぎて詰まってしまうことも。そのうえ、骨盤にある腸が通る穴(大腸を構成する「結腸」と「直腸」のちょうど境目付近にあたります)が他の動物よりも狭く、これまた詰まりやすい構造になっているのです。便秘になりやすいのも納得といえます。

便秘に特に注意すべき猫

・肥満の猫
内臓脂肪が腸を圧迫して詰まりやすくなります。また、肥満猫に多い運動不足も腸の動きを弱らせて排便を困難にして便秘になる原因になります。
・シニア猫
年を重ねると体の水分量が減り、便を押し出すための腹筋や腸の動きも弱くなってくるので便秘になりやすいです。
・病気で体力が弱った猫
シニア猫と同様、腹筋、腸の動きが弱まり便秘になりやすくなります。
・もともとうんちが大きい猫
うんちが大きいと物理的に腸に詰まりやすくなります。
・繊細な猫
「トイレが汚い」「トイレ周りの環境が気になる」などの理由から猫がうんちを我慢してしまうと便秘になります。排便の機会を逃すと感度が鈍り、便意を感じづらくなるためです。

健康なうんちとは?

一般的に、正常な猫のうんちは、だいたい人差し指1本分がつながって、硬すぎず、柔らかすぎない状態です。色は少し薄い茶色(ミルクチョコのような色)からこげ茶色。排便回数は1日に1~3回程度が理想です。

◇食生活によってうんちは異なる
大きなうんちが出ると、「快便」と判断しがちですが、一度そこで食事内容を振り返ってみてください。うんちの量が多いということは、未消化物が多いということ。たとえば、繊維質が多く含まれているフードや肥満対策フードを食べていると、巨大なうんちになります。一般的な食事にもかかわらず量が極端に多い時はフードを見直したほうがよいかもしれません。

あなたの猫、スッキリしてる? 便秘チェックリスト

【軽度】当てはまったら食生活の見直しを

愛猫が便秘か否か……。まずは下記項目をチェックしてみましょう。当てはまるものがひとつでもあるなら便秘がちの状態といえます。最近水を飲む量に変化はあったか、食事内容や食事量に変化はあったか? など、食生活を見直してみてください。

・排便したばかりなのに、うんちが硬くて乾いている
・うんちが短く固まっている。コロコロしている。
・いつものうんちより明らかに小さい、細い。また、そのような状態が続く。
・うんち前のトイレハイ(排便する直前や直後に大声で鳴いたり走り回ったりすること)が激しい
・お腹が張っている
・2日以上うんちが出ていない

【重度】当てはまったら今すぐ病院へ!

下記項目にひとつでも当てはまれば、便秘は重度といえるでしょう。腸閉塞などの病気を引き起こしている可能性もありますので、すぐに動物病院で受診しましょう。

・何度もトイレに行くが、うんちが出ない
・3日以上出ていない
・いきむ際に大声で鳴く
・いきみ過ぎて嘔吐する
・出たうんちが四角く平べったい
・うんちの後に茶色い粘液が出る
・うんちが普段よりも非常に臭い
・お腹を触られるのを嫌がる
・お腹に触ると硬い感触がある
・お腹が膨れている
・吐いたものから便臭がする

※それ、違うかも! 便秘と症状が似ている病気
注意したいのが尿路感染症との混同。トイレに何度も行ったり、おしっこ中に鳴いたりするなど、便秘と同じ症状が見られることがあるため見誤りやすい病気です。便秘と思ってお腹を確かめようと圧迫してしまうと、かえって症状を重くしてしまうことも。おしっこで苦しいのか、うんちで苦しいのか判断がつかない場合は、むやみにお腹に触れず、なるべく早く動物病院に連れて行くようにしてください。

便秘に伴う怖~い病気「巨大結腸症」

「巨大結腸症」とは、便秘によって引き起こされる病気です。便秘が続くと水分が大腸(結腸)に吸収されることによって便が硬くなります。そうなると、結腸が広がったままとなるだけでなく、腸の蠕動(ぜんどう)運動もなくなり、さらに大量の便が溜まるという悪循環に陥ります。

この病気になると猫は重度の便秘に苦しむことになり、摘便や浣腸といった猫にとって非常に辛い治療を、便が詰まるたびに行わなければならなくなります。最終的には外科手術によって伸びた部分を切除することも。
猫に辛い思いをさせないためにも、便秘は放置せず、早めに対処しましょう。

シニア猫・長期療養の猫は特に気を付けて

シニア猫や、病気で体力が落ちている猫は、足腰が弱くなっているために排便時にしっかり踏ん張ることができません。腹筋の力や腸の動きも弱いため、多くの猫たちが便秘になり辛い思いをします。

以前わが家で飼っていた猫は、亡くなる前の1か月間、やはり便秘になり、とても苦しんでいました。排便時、体力がなく踏ん張ることができないため、私が猫のお腹を手で持って支えてあげたものです。力むことに疲れ果ててトイレの中でしゃがみこんだり、力み過ぎて吐いたりすることもしばしば。病院で摘便の処置も受けましたが、とても痛いのでしょう、悶えながら耐えていました。

若くて元気な時は大丈夫でも、シニア猫、病気の猫にはちょっとした便秘も大変なことになります。食事量も少なくなるので難しいとは思いますが、体力が衰えてきたと感じたら、便秘予防のケアもしっかりしてあげてくださいね。

便秘予防に! 普段から取り入れたいサポートケア

1.水分を多くとらせる環境づくり

便秘対策に、こまめな水分摂取はマスト。猫によっては、そのときの気分によって水を飲みたい場所や好みの器が変わる子もいます。いつでも水が飲みたくなるように、部屋のあらゆる場所に水を置いたり、自動給水機、洗面器、コップなどいろいろな種類の器を使ったりするなど工夫をしましょう。また、おやつとしてスープタイプのウエットフードを使ってもいいでしょう。猫用ミルク、鶏肉の煮汁など愛猫が好きなもので水分をとらせてください。

2.トイレを清潔に保つ、トイレの数を増やす

猫は神経質な面があるので、トイレが汚いと排便、排尿を我慢していまいます。また、トイレが誰かに見られるような場所にあると気になってゆっくり力めません。基本として、トイレはこまめに掃除し、静かな目立たない場所に置きましょう。トイレの数を増やすのもいいでしょう。猫のトイレは「頭数+1個」がよいと言われています。きれいなトイレが常にある状態なので、理想的というわけですね。

3.腸を整えるサプリメントでサポート

最近、「整腸」が免疫力アップに効果的なことが知られるようになり、腸内環境改善をサポートする犬猫用サプリメントが数多く販売されるようになりました。乳酸菌やオリゴ糖、野菜発酵エキスなどさまざまな種類があります。猫が元気なうちから愛猫に合ったものを探し、サプリメントに慣らしておいてもいいでしょう。

4.日常的に運動をしよう

腸の動きを活発にするなら運動も効果的です。室内飼いの猫は放っておくと寝てばかりで運動不足になりがち。健康で元気な猫なら、ぜひ運動を取り入れてみてください。1日1回15分程度でもよいので、おもちゃなどを使って、飼い主さんから積極的に遊んであげましょう。

5.普段ドライフードを与えていたら、種類を変える

愛猫の普段の主食が一般のドライフードの場合、消化器サポート機能のあるフードに変更するのもひとつの手です。消化器サポートに優れたフードは可溶性食物繊維の配合が高く、腸内でのうんちの流れを良くします。ただし基本的には療法食になるので、獣医師に相談してから使用してください。

6.お腹マッサージをする

便秘の症状が軽い場合は、マッサージでお腹を刺激して、腸の働きを促す方法もおすすめです。おへそを中心に「の」の字を書くようなイメージで、指先でなでる程度の優しいタッチでマッサージしてください。決して強く押したり揉んだりしてはいけません。数回で充分です。便秘が重い場合は、別の病気によって便秘になっている可能性もあるので、必ず獣医師に相談してからにしてくださいね。

まとめ

時として重い病気を引き起こすこともある便秘。ただの便秘と侮らず、毎日愛猫のうんちの状態をチェックして、対処が必要と感じたら早めに行いましょう。また、腸の健康は長生きの秘訣でもあります。猫は便秘しやすい生き物ですので、猫がいつでも水が飲める工夫や、運動、マッサージ、サプリメントの活用など生活環境、習慣を整えるサポートをぜひ飼い主さんがしてあげてくださいね。便秘の改善だけでなく体全体の健康の向上にもつながりますよ。


参考文献:
東京農工大学 名誉教授・公益財団法人 動物臨床医学研究所 理事・公益社団法人 日本獣医師会 会長著(2012)『イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科 イヌ・ネコからフェレット・ウサギ・ハムスター・小鳥・カメまで』山根義久監修, パイインターナショナル.
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 執筆者プロフィール
2匹の愛猫と暮らす元博物館学芸員です。専門は古生物学。ペットに関する科学的な知識を分かりやすくお伝えしていきたいと思っています。
保有資格はペットシッター、愛玩動物飼養管理士2級
 監修者プロフィール
獣医師・トリマー・ドッグトレーナー / ペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。

現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。
毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。

プライベートでは一児の母。愛犬はシーズー。
家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています。

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