カーミングシグナルってなに?

「カーミングシグナル(Calming Signal)」という言葉を知っていますか? 20年ほど前にノルウェーの動物学者が提唱した、いわゆる犬のボディーランゲージです。27~30通りに分類されていて、これによって謎だった犬の行動が解明されました。
カーミングシグナルは生まれつき犬に備わっているもので、祖先であるオオカミから受け継いだ世界共通言語。人間ならほかの国に行くと言語で苦労しますが、犬同士はすぐに意思疎通できるなんて、ちょっとうらやましいですね。

Calmingは「落ち着かせる」、Signalは「合図・信号」を表し、直訳するとカーミングシグナルは「落ち着かせる合図」。その名の通り、犬が不要な争いやストレス、恐怖などを回避し、自分の心身を守るための行動です。犬がしっぽを振ったり、仰向けになっておなかを見せたりするのもカーミングシグナルなんですよ。

犬同士のコミュニケーション方法ですが、飼い主に向けて犬がサインを送ることもあります。もちろん、人間が犬にカーミングシグナルを送ることもできます。今回は代表的なシグナルを7つピックアップします。

①あくびをする

叱っているときに犬があくびをして、腹が立ってさらに叱ってしまったことはありませんか? 犬があくびをするのは恐怖や緊張、不安でストレスを感じているとき。もちろん眠いときにあくびをしますが、「もうやめて!」という気持ちのときにも犬はあくびをします。
あくびには「相手に落ち着いてほしい」という意味が込められているので、犬が興奮しているときなどに、飼い主があくびをして見せるのも効果がありますよ。

②カーブを描きながら近づく

慣れた相手ではなく、初対面の相手に送るサインです。ゆっくりカーブを描くように近づくときは、相手に敵意がないことを示します。初対面の犬同士がぐるぐる円を描きながら近づくことがありますが、お互いに敵意がない状態なので、仲よくなれそうですね。反対に、初対面の相手の一直線に向かって行くときは攻撃体勢ですから注意が必要です。もちろん、愛犬が一直線に走ってきたときは親愛のサインですよ。
初対面の犬に近づくとき、つい「かわいい!」などと正面から向かってしまいますが、目を合わせずにゆっくり回り込みながら近づきましょう。

③身震いする

犬が水を振り払うようにぶるぶるっと体を震わせるのは、自分を落ち着かせようとしているとき。寒いときや体が濡れたときは生理的現象ですが、それ以外でも犬はよく身震いすることがあります。人間の貧乏ゆすりに置き換えられることがあり、人間ならイライラしたり、不安だったりするときにしてしまいますよね。できれば原因を取り除いてあげましょう。
落ち着こうとするしぐさなので、「うれしくて楽しくてもうどうしよう!」という気分のときも身震いすることがあります。

④そっぽを向く

犬がぷいっとそっぽを向くときは、相手に敵意がないことの表明です。犬が目を合わせるのは威嚇に当たり、戦闘開始の合図。目や顔をそらすのは、「あなたと戦う気はないですよ」と伝えているのです。そっぽを向くのは、相手を落ち着かせる意味もあるそうです。
犬を叱っているときにそっぽを向かれたら、さらにヒートアップしてしまいそう……。しかし、犬は飼い主に威嚇されていると感じ、「ごめんなさい、どうか落ち着いて」という意味で目をそらしているので、飼い主も目をそらしてあげてください。ゆっくりまばたきや、目を細めるのも犬を落ち着かせるのに効果的です。

⑤地面のにおいを嗅ぐ

不安や興奮した気持ちをほぐすとき、犬は地面のにおいを嗅ぐことがあります。初めての場所などで犬が執拗ににおいを嗅ぐのは、においの確認の意味もありますが、気持ちを落ち着けようとしている場合もあります。敵意がないことを表しつつ気持ちを落ち着かせるため、「そっぽを向いてから地面をかぐ」と、コンボでサインを出すこともあります。

⑥お尻をあげて頭を低くする

頭を下げてお尻を高く上げる体勢はプレイボウ(Play bow)と呼ばれ、遊びに誘うサインです。散歩中に犬友達に会ってこのポーズをとるときは、「会えてうれしい! 遊ぼう!」と誘っています。往来なら危険なので広い場所に移動してくださいね。飛びかかろうとしているわけではないのであまり心配はいりませんが、相手が不機嫌だったり恐怖を感じていたりすれば噛まれたり吠えられたりする可能性もあります。
飼い主が犬にこのポーズをとられたなら、思いきり遊んであげましょう。

⑦前足を片方上げる

片方の前足を上げているときは、興奮しすぎた気持ちや極度の緊張を抑えようとしています。猟犬のなかには、獲物を見つけたらその前でポーズ(ポインティング)をとって人間に知らせる犬種がいますが、そのポーズこそ片足を上げる姿勢です。緊張したときに両手で頬を触ったり胸に手を当てたりする人がいますが、犬の場合は片足を上げるんですね。
「ねえねえ」といった感じで、犬が飼い主に片足を上げてタッチすることがありますが、そのときは緊張を抑えているわけではありません。「パピーリフト」と呼ばれ、赤ちゃんのときのお乳をおねだりするしぐさのなごり。なにか要求するときのサインです。

まとめ

何気なく見えた犬のしぐさには、さまざまな意味が込められていました。犬は言葉を発しませんが、会話ができないわけではないんです。
「犬語」のカーミングシグナルを理解できたら、犬とのコミュニケーションが楽しくなるととともに、もっと強い信頼関係を築けそうですね。

参考文献 しぐさでわかるイヌ語大百科 http://www.sbcr.jp/products/4797371437.html

犬のキスはうれしい? 危険? 犬が口をなめる意味を真面目に考える

実は犬のキスはカーミングシグナルの一種なんです。「犬が飼い主にキスするのは信頼の証!」と信じている人に、ぜひとも読んでもらいたい、犬のキスの意味と危険性